僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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女神の継承

www.youtube.com原題:랑종/THE MEDIUM 
監督・脚本:バンジョン・ピサンタナクーン
タイ・韓国合作映画 2021年
☆☆☆☆

<ストーリー>
小さな村で暮らす若く美しい女性ミンが、原因不明の体調不良に見舞われ、まるで人格が変わったように凶暴な言動を繰り返す。途方に暮れた母親は、祈祷師である妹のニムに助けを求める。もしやミンは一族の新たな後継者として選ばれて憑依され、その影響でもがき苦しんでいるのではないかー。やがてニムはミンを救うために祈祷を行うが、彼女に取り憑いている何者かの正体は、ニムの想像をはるかに超えるほど強大な存在だった……。 

 

非常に怖いと評判のタイのホラー映画。こちらでもやっと公開になったので見て来ました。前半の第一幕目、怖いシーンはあまりなく、エンジンがかかるまで遅い奴か?でもタイの風景とか普段はあまり見ないし、モキュメンタリーとしてこうしてあまり知らない文化を知れるのは楽しいな、とか余裕ぶっこいてました。

 

・・・が!


いざエンジンかかっちゃうと、これが凄いノンストップで怖いシーンが延々と続く。ぶっちゃけ、内心ではもうギブアップ寸前。いやこれもうそろそろ映画終わってほしい、これ以上の恐怖に精神が耐えられない!ぐらいに恐ろしかった。家で見てたら、もしかしてストップボタン押してたかも。


でも映画館はそれが出来ないからこそ良いんですよねぇ。もういいよ、もうこれ以上かんべんしてくれ!と心の中で叫んでましたよ。ホラー映画は好きなジャンルでよく見ますけど、ここまでのはなかなか無いかもしれません。そういう意味では貴重な体験で、そこは大変に面白かった。

 

基本的にはアジア風味のエクソシスト物っぽい感じなんですが、それこそ「ブレアウィッチ」みたいなモキュメンタリー路線で、そもそものウィリアム・フリードキンの「エクソシスト」もドキュメンタリーとうたっては居ませんが、作風としてはドキュメンタリータッチなんですよね。で、あの作品はホラーというより、神に仕える者の高貴な部分も描いてあるから私はオールタイムベストに入れるくらいに大好きな作品なんです。

 

そういう視点で行くとね、今回も神と悪魔とは若干違うかもしれませんが、善と悪の対立みたいな要素はちゃんとあるんだけど、そこは現代ですから、信仰を失い、神は去ってしまった現代というのが上手く描かれてて、そこはとても面白い且つ興味深い話に感じました。

 

あ、モチロン観終わってこうして感想を書くに至ってからの話であって、見てる途中はもう恐ろしさしかなかったんですけれど。

 

若干、この映画からは話がずれるかもしれませんが、他の作品の感想記事でもここ最近私はちょこちょこ書いてるんですけど、信仰を失った現代、神はもう死んだと私は思ってるんですよね。世界的な不況や格差社会、コロナ禍に戦争。神様に祈った所で、誰も人間を助けてなんかくれない。こんな世界で神なんかもはや信じる人も少なくなってしまった。

 

勿論、だからこそ尚更に神にすがる人とかも出てくるケースもあるだろうとは思う。でも、目の前で大切な人を失った人が神様を信じるものでしょうか。どちらかといえば、そういった形で多くの人の信仰心は失われて行くものなのかなと。

 

でも逆にさ、悪魔とか怨霊、悪い瘴気みたいなのは逆により強まるのでは?とも思う。災厄や疫病、そういったものはただの事象でしかないとわかっていても、世界に不幸な気持ちが広がれば、それはある種の呪いであり、そんなネガティブな感情こそが悪魔をより想起させる事になるのでは?

 

つまり、実際に世の中に神も悪魔もそんなものは存在しないんだけど、例えば古くから天災や疫病とか、そういったネガティブなものを悪魔のしわざだと言ってきたわけで、そこに対する希望を求める心こそがこの世界の神の正体なはず。(と、私は考えてるって話ですよ)

 

希望が失われれば、結果として神もその力を失うんですけど、じゃあこんな希望も何も失った今の世の中で、疫病も流行れば戦争も始まり、飢餓にあえぐ人達が増え続け。そこに端を発する妬みや恨みつらみは無限に湧き続けるわけです。

 

なんかね、そんな世の中で、神様が勝つってそもそもありえない、神はが死ぬことはあっても、悪魔が死ぬことはない。負の感情がある限り、永遠不滅の存在であると。(「ジョジョリオン」なんかはそこをテーマにした作品でしたね)

 

いや勿論私は破滅論者とかじゃなく、だからこそ「それでも」と良い方向に向かうヒーローとかプリキュアが好きなわけですが、多分世の中はそういう風に出来ているんだろうなと思ったりするわけです。

 

で、映画に話を戻すと、ネタバレですが、救いが無く終わってしまうと。恐らく、作り手はそこまでの意図は無い気がするんですけど、作品は作り手の物じゃ無く、受け手の解釈にこそ意味があるので、私的にはそんな社会風刺が読みとれる作品だなとも思ったりしました。

 

悪が勝って、ただの後味の悪さだけを残すというわけじゃなく、神と悪魔とは?善と悪とは?この世界の構造とは?という読みとり方をしても面白い作品なんじゃないかと思ったしだい。

 

最初に「ブレアウィッチ」と「エクソシスト」を例に出しましたけど、これがまたどんどん「パラノーマルアクティビティ」になったり「呪怨」になったり「REC」になったりするんですよ。じゃあ良いとこどりの寄せ集めコピー映画、どっかで見たものの切り貼りで作ってあるフランケンシュタイン映画かと言えば、これがね、タイの風景や風土、土着信仰みたいな所がある分、凄く新鮮で面白い。

 

ジャンルこそ違えど、先週見た「RRR」なんかもね、インド映画たまに見る分には新鮮で面白いよね!っていうのと似た感覚で、タイ映画、タイの文化や風土なんかは普段そんなに触れる機会もないので、新鮮でリアリティのあるものに映る。「ミッドサマー」を見て、北欧にはこんな村があるのかもしれない、とか感じちゃうのとも近い物があって、世界各国色々なカラーがあるというのは面白いなと思うし、これが外国の人から見た時に、日本って独特の文化があって面白いよね、ときっと目に映るんだろうな
とか想像出来て楽しい。

 

タイの映画なんてそんなに見た事無いな。名前くらいは知ってる国だけど、ちょっと旅行気分で見てみるか!的な感覚で見るのもオススメです。 

 

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