原題:THE EXORCIST
監督:ウィリアム・フリードキン
原作・脚本・制作:ウィリアム・ピーター・ブラッディ
アメリカ映画 1973年
☆☆☆☆☆
ウィリアム・フリードキン監督がお亡くなりになられたそうです。
私はこれと「恐怖の報酬」くらいしか見て無いと思いますが、昔から「エクソシスト」は私のフェバリットムービーの一つ。
調べてみると、人格的にはちょっと難ありな人だったようで、近年よく話題になる俳優をリアルに追い込む事によってリアルな演技を引き出す、みたいな人で、今の時代的にはハラスメントとかコンプライアンスとかそういうのでNGを喰らってしまうタイプの人だったっぽい。
そういう所は話を聞いてしまうといかがなものかと思いますが、元々がドキュメンタリー出身の人なので、この「エクスシスト」もドキュメンタリー的なリアリズムが非常に重厚な1本。
いわゆる今で言うモキュメンタリースタイルとかそういうこけおどしじゃない。というか、ホラー映画ベストみたいなランキングをやっても今でも入るくらいの名作ですが、そういう単純な怖い怖くないとかで語る映画じゃあない。
つーか1973年ってもう50年前じゃないですか。半世紀前とか流石におっさんの私でもまだ生まれる前の作品なので、当然リアルタイムでは触れて無い作品ですが、私が映画を見るようになって、過去の有名な作品とか片っ端から見てみよう的に作品をチョイスしてた時に、ホラー映画(当時のジャンル的にはオカルト映画ですが)でも有名な奴を見ようと、これを含めて色々有名な奴は見ました。
ホラー映画って、あの作品は本当に怖いとか、見たけど大して怖くなかったとか、そういう基準で語られがちですけど、往年の名作と呼ばれるホラーを見てるとね、怖い怖くないだけじゃない奥深さがあって、そこを語るべきだろうと思わせてくれて、そういう部分に私は凄く惹かれました。それこそロメロの「ゾンビ」とかね。
エクソシストの何が良いかって、まずは悪魔とかそういうものの否定から入る。悪魔なんて実際は存在しないんだよ。それは科学や学問が進化する以前の迷信がそう言われているだけであって、今の時代は医学や精神の問題で全てを説明出来るんだと。
この辺の感覚がね、私は大槻ケンヂの影響を受けてる人なので、オカルトは昔から好きなんですけど、いわゆるビリーバー(信者)は何でもかんでも最初からアリにしちゃうけど、いやいや大半の物は錯覚だとか、理論的に説明出来るものがほとんどなんだよ。でも、そこに至るまでの過程やロジック、そしてそれを語る人の面白さこそ愛すべきポイントなんだっていうスタンスでオカルトを論じるのがオーケンで、私もそこに影響を受けてきたタイプです。
UFOや幽霊、UMAもそれはそういうものが存在するとどこかで耳にした事でそうだと思いこむ集団催眠であり、それは神や宗教にも通じるものでもある、みたいな。
だから、最初から悪魔と対決だ!とか言いださず、ますは身体的な医療や精神の疾患として対応していくものの、それでも何も解決せずに・・・みたいな展開が本当に素晴らしいと思う。
この手の創作物では俗に言う「リアリティライン」の置き方っていうのが重要です。最初から神や悪魔が居る前提でその対決を描くとかになると、見る方は見る方でこの映画はそういう世界観なのねとはなるけれども、それはファンタジーに近いものとして見る形になる。この映画はそこのラインの引き方が絶妙というか、リーガンの変貌は本当に悪魔なのだろうか?というまさしくどっちなのか線引きの部分で揺さぶりをかけてくる。そこがね、やっぱり秀逸だなぁと思う。
そしてついにカラス神父の出番となるわけですが、神父である彼自身も、いや本当に悪魔など存在しうるのか?と自分や神をも疑う事になる。信仰を無くした今の時代に、そもそも神は力を貸してくれるのか?
疲弊するお母さんとリーガン。
そこで本職のエクソシストとしてメリン神父の登場ですよ。文字通り、命をかけて悪魔パズスと対決。
信仰を失ったはずのカラスも、幼い命を救う為に自分の命を投げ出し、神に使える使途としての矜持を見せる。
いやもう超カッコ良くないですか。実は私にとっての「エクソシスト」はヒーロー映画だったりします。
自己犠牲が良い事なのかはいったん置いといて、自身さえ最初は半信半疑だったものが、目の前で幼い子供が苦しんでいて、それを救える可能性があるのは自分だけかもしれない。その為にとっさに自分の命を捨てられるのか?
大好きな映画です。
有名なチューブラーベルスも、恐怖というよりはその矜持みたいなものに思えて好きな映画BGMの一つ。昔ケータイに着メロとかあった時はチューブラーベルスにしてました。
そんなエクソシスト、実は今年正規の続編が公開になります。
そのタイトルは「エクソシスト ビリーバー」
元々続編やシリーズはいくつかあって「エクソシスト2」が割と珍作の部類でね。原作者のウィリアム・ピーター・ブラッディがこんなの俺のエクソシストじゃねーよ!と怒って、自ら「エクソシスト3」を制作。これがちょっと独特の作品で、1と同じような感じを期待すると若干違うのですが、いわゆるサイコホラーみたいなジャンルが生まれる前の早すぎた傑作とされていて、映画ファンには隠れた名作として名高い。
他にも前日譚として「エクソシスト:ビギニング」とかも正規のシリーズではあるのですが、非常に残念な出来でした。
人気作の「死霊館」シリーズもエクソシストへのリスペクトが結構な感じで含まれてますし、今やってる「ヴァチカンのエクソシスト」とかも評判良いですし、50年前の作品ですが、それらに触れた人もせっかくなので原点に触れてみてはいかがでしょうか。
関連記事