僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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寄生獣 リバーシ

寄生獣リバーシ(1) (コミックDAYSコミックス)

PARASYTE REVERSI
漫画:大田モアレ
原作:岩明均寄生獣』より
刊:講談社 アフタヌーンKC 全8巻(2018-2021)
☆☆☆

 

日本漫画史に残る名作、岩明均寄生獣」のスピンオフ作品。
私は紙の単行本で読みましたが、作品を描くに至った経緯とかは特に書いて無いので、これはどういう企画だったんでしょう?TVアニメと実写映画やってたの2014年ですし、その辺りに絡めたメディアミックスとかでも無さそう。

 

お話的には「寄生獣」本編で描かれていたのと同じ時系列の裏で繰り広げられていたもう一つの戦い、みたいなのを描く。
主人公は広川タツキ。あの広川市長の息子で、泉新一と同じく高校生。とはいえ直接的な接点は無いし、シンイチも後ろ姿が多少映る程度でこちらの話には絡みません。本編キャラが顔見せはするものの、広川以外はおまけ程度ですし、あくまで外伝・スピンオフには徹した内容。

 

せっかくなのでリバーシの前にまず「寄生獣」の話しておきますか。
私はオールタイムベストの漫画はアラン・ムーアデイブ・ギボンズの「ウォッチメン」です。まあでもそれはアメコミなので、日本の漫画ならまずはこの「寄生獣」かなぁと思ったりするくらいには特別な作品。

 

あれは私が高校生の時でしたがショッピングモールのパン屋さんでバイトをしていて、その隣が本屋さんだったんですよ。そこで寄生獣のコミックスが平積みされてて、あの時はまだ1~2巻くらいだったかなぁ?3~4巻くらいまでもう出てたかなぁ?そこはあまり憶えてませんが、表紙見て「こっわ!」と思ったのが私の寄生獣との出会いです。
でも、怖いもの見たさ的な部分もあったのか、ちょっと手にとって見てみたくなったんですよね。パラパラとページをめくっただけで凄く引き込まれて、まず1巻を買って、続きが読みたくなって、みたいな事をしてる内に単行本出てる分は全部読み切ってしまって、遂には連載しているアフタヌーン誌まで毎月買うようになってしまうくらいに「寄生獣」が好きでした。

 

私は当時から結構醒めた視点を持っていたので「死んだ犬は犬じゃない、犬の形をした肉だ」っていうセリフに、衝撃を受けたというより、正論じゃん!って乗ってしまう方でした。その冷たさ、乾ききったドライさが凄い好きでね。もう少し大人になってから読み返すと、美津代さんの「どんなことがあっても最後まであきらめないでおくれ、臨機応変にね」みたいなセリフが大好きになったりするんですけども。

 

www.youtube.comあとこのMADってニコニコ動画の時代からあるんですけど、これがメッチャ好き。LUNK HEADってこれで初めて知って、このままアニメ版の主題歌でも良かったと思うんですけど実際はそんなはずはなく、アニソンとかとも縁の遠そうなアーティストだしなとか思ってたら「うしおととら」でED担当しててちょっと嬉しかったです。

 

でもってそんなアニメ版や、今やハリウッドでも持て囃されるようになった大監督の山崎貴君がやった実写映画版。どっちもぶっちゃけ見る価値無しです。勿論、原作を再現したシーンとかはグッと来る部分確かにあるんですけど、どっちもディレクションの方向性がウェットな方向性で、私はものすご~~~~~~~くガッカリした。

 

寄生獣、あるいは作者の岩明イズムの本質は、どこまでもドライな所。ザラっとしてる。乾いている。硬質である事です。やわからさとか温かみとか要らないです。
パラサイトの動きって動画で再現するならやっぱり「ターミネーター2」の液体金属じゃないですけど、柔らかくなめらかに動くのが正解だとは思うんです。でもね、私は「寄生獣」読んでて、そんな部分ですらずっと硬いものにしか思えてませんでした。まさしく「お前、鉄で出来てるんじゃないのか」って言いたいくらい。

 

そこがねぇ、寄生獣の、岩明均の魅力じゃないかと私は思うのです。
「風子の居る店」「骨の音」「七夕の国」「ヘウレーカ」「雪の峠・剣の舞」「ヒストリエ」と読んでてそれは変わらない印象。そこがアニメ版と映画版では感じられないので、お話は「寄生獣」のストーリーをなぞってるかもしれないけど、違うものにしか見えない要因。

 

大丈夫か?ここまで「リバーシ」の話じゃなく寄生獣と岩明論しかしてないぞ?って感じですが、何とリバーシ、他の作品と比較したら、結構乾いてると思います。

 

読み始めて序盤で、おや!?これ意外といけるんじゃね?と思わせてくれて、ヒロインの子だけ唯一異物感があるんですけど、それは本編に対する外伝みたいなもので、岩明テイストを真似て作品を描いてるけど、作者本人の違いをそのヒロインの子に集約させてるのかな?と感じました。

 

基本はドラマというより、サスペンスミステリー風でパラサイトの謎に迫っていく刑事達と、主人公タツキの心情をあえてぼかして描き続けることで、物語やテーマがどう転ぶのか先行きが見えない(サスペンスとはそんな気持ちの宙吊りから生まれた言葉なので)感じは結構引き込まれるものがありました。

 

広川タツキの父との冷めきった関係を描きつつ、ベタだけど疑似的なもう一人の父親として深見刑事を配置してそこで軸となるドラマを作ってある辺りは、ただの行き当たりばったりではない構成力は感じる。

 

が!流石に期待しすぎたかな。最後のまとめ方がちょっと小さく閉じた印象になってしまったかなぁと。そこはあくまで外伝・スピンオフとして本編より大きな風呂敷を広げるわけにもいかないだろうし、寄生獣本編の方が広げられる部分をあえて小さく畳んだのが作品の良さにもなってたと思うし、そこを意識したのかなぁとも思わなくもない。

 

右手の少年に対する左手の男、パラサイトと共生する人間みたいな所は、裏表の「リバーシ」というのを意識した部分だろうし、新興宗教と破滅願望みたいなものもね、あの時代とリンクしている部分なのでしょう。今調べたら「寄生獣」って1995年に完結してるんですね。

 

95年って社会学的にも重要な年で、言うまでも無くオウム事件阪神淡路大震災があった時です。当たり前の生活が、意図せぬ不条理であっさり瓦解してしまうという「がんばったところで一瞬で全てが無になってしまう無力感」を空気として感じとったとされて、95年を境に色々と世の中が変わったターニングポイントとされているのが1995年という年です。

 

そういう時代感も多分、このリバーシという作品で取り入れたかった部分なんだろうなと思わせつつ、扱うにはちょっと難しくて、結局雰囲気ぐらいに留めるしか出来なかった感がちょっと勿体無いです。

 

まあ私と同じように、寄生獣は好きだけどアニメ版や映画版はちょっとなぁ、と思う人なら、そっちよりはこれの方がテイストとしては再現してるかも、と思うような気もするけど、保証まではしません。もし興味がおありなら、もしかして行けるかも?ぐらいで。

 

そう言えば「七夕の国」ディズニープラスでドラマ化するんですってね。楽しみな半面、大丈夫なのかなとも。ただ、もう話あんまり憶えて無いので、押し入れ掘り起こしてもし発見出来たら(確か手放してはいなかった気が)そっちを一度再読するかもしれません。

寄生獣リバーシ(8) (コミックDAYSコミックス)

 

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