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映画 プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!

映画プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!【通常版】 [DVD]

監督:大塚隆史 脚本:村山功
日本映画 2009年
☆☆☆★

 

プリキュア映画6作目。オールスター映画としてはこれが長編映画1作目になります。DVDにも特典として入ってますが、まずプリキュア5周年記念として「5GoGo」のゲームOPで初期3シリーズが集結。(勿論、OP映像だけでなくゲーム中でもクロスオーバーしてます)、その流れで前作映画に「ちょ~短編プリキュアオールスターズ」が作られる事になり、この時点ではあくまで1回だけのお祭り映画としてこちらの「オールスターズDX」が作られる事になります。

 

5周年記念でのお祭り映画と言うのは簡単ですが、それが許されたのは東映という会社の社風も大きい。せっかくなのでその辺りの説明から入ります。


東映は今でこそ特撮の分野で一人勝ちしているものの、映画制作会社としては後発で、作家性や品質よりも売れれば何でもありという、ある意味での節操の無さが特徴の会社。俳優と会社が独占契約を結んでいたスター俳優ありきの時代から、東映オールスター時代劇とかを作っていた歴史もあり、アニメの世界でもかつては「東映まんが祭り」というような、ごった煮コンテンツを排出してきた会社でもある。そういう社風があるからこそ「プリキュアオールスターズ」という企画が実際に通って実現化出来た。

 

逆に言えば、プリキュアを作っているのが東映アニメーションでは無かったとしたら、こういうお祭り企画映画が実現できたかどうか微妙な所だったと思います。

 

スプラッシュスター」の記事にタイトルだけ引き継いで、主人公や世界観を全く別の新しいものにするという試みは、女の子向けアニメではプリキュアが初めてだったと書きました。となれば世界観が繋がっていない別々の物語の主人公が終結する「女の子向けオールスターアニメ」も必然的に「プリキュアオールスターズ」が初めての作品という事になります。そういう意味で、歴史的にとても意味や意義のある重要で貴重な作品になっています。

 

本気でその辺の歴史を踏まえるなら手塚治虫スターシステムとかそういう話にもなるのですが、あくまでおおまかに見ての話です、一応。

 

ただ、せっかくなのでライダーとか戦隊とかのニチアサ枠くらいは触れておきましょう。まずは仮面ライダーから。

ライダーのオールスター物と言えば平成ライダー10周年作品の「仮面ライダーディケイド」です。ディケイドはプリキュアオールスターズと同じく2009年。企画的にもっと前から動いてるはずですので、一概にどちらが先とか片方が参考にしたとか断定はできませんが、ほぼ同時期と考えれば、そういった所からもオールスターズ物は東映の社風である事が伺えます。

 

え?昭和ライダーとかでも先輩ライダーが助けに来たりとかしてたじゃん?とかおっしゃる方も当然居るでしょうけど、一応、昭和最後の「仮面ライダーブラック」までは半ば無理矢理ですが、あれ一応は同じ世界観の続きの話という事になっています。それは何故かと言えば、原作者の石ノ森章太郎先生がご存命だったから、だと思われます。一人の作家が生み出した世界であり一人の作家が生み出したコンテンツというのに拘っていたわけです。(そこも厳密に言えば漫画版が原作では無いのですが、話がややこしくなるのでここではスルー)

 

石ノ森先生が亡くなった後に始まったいわゆる平成ライダーは、「原作:石ノ森章太郎」という表記を今も残しつつも、実際の所は特定の原作者が居ない東映のコンテンツになり、作品も「仮面ライダー」のタイトル以外は過去作とは繋がりの無い1作づつの独立した作品になります。そんな中で、平成ライダー10作品目として「ディケイド」が過去の仮面ライダー全員集合するというオールスター物として、作られました。


元々繋がっていないものを無理矢理繋げたので、世界観や設定的におかしい所、矛盾する所だらけです。これはお祭りなんだから細かい事言うな、というのがとても東映的ですし、前述の通り、もう石ノ森章太郎が亡くなった後なので、矛盾してようが何だろうが、そこに異を唱える人は居ないのです。勿論、ファンは困惑して異を唱える人は大勢居ましたが、東映は作家性や作品性なんてどこ吹く風で、売れたもの勝ちだと好き勝手に突き進みます。だってそれが東映の社風なのですから。

 

続いてスーパー戦隊を見てみましょう。戦隊のオールスター物と言えば「海賊戦隊ゴーカイジャー」です。2009年のプリキュアAS、ディケイドよりも遅くこちらは2011年の作品になります。ファンを困惑させまくったディケイドと違って、その反省を踏まえてなのか、オールドファンにも気を使い、過去作品をただの使い捨てにはせずに最大限のリスペクトを持った上で扱う丁寧な作風で大好評を持って受け入れられました。ええ、私も大好きな作品です。(丁度youtube東映特撮チャンネルでも配信開始されたので興味ある方は是非)

 

ゴーカイジャーはそれでOKです。でも、戦隊の場合、過去作品とのクロスオーバーやオールスター作品としてはゴーカイジャー以前から「スーパー戦隊VSシリーズ」というVシネマがあり、それがそういった流れの源流にあります。現行作品と、前年度作品のクロスオーバー作品で96年の「超力戦隊オーレンジャー オーレVSカクレンジャー」がシリーズ1作目。25周年、30周年作品など特別な区切りの際には前年だけでなく、過去作品から数名厳選された形でオールスター的な作品が作られています。


戦隊も平成ライダープリキュアと同じように、1作ごとに違う世界観で作られています。例えば「警察戦隊デカレンジャー」では異星人が普通に地球に住んでたりする世界観なので、前後の戦隊とはどう考えても同じ繋がってる世界では無いのですが、そういう細かい事は言いっこ無しよ、とばかりに無理矢理作品を通します。

 

戦隊は1作目「ゴレンジャー」2作目「ジャッカー電撃隊」のみ石ノ森章太郎原作という表記が入ってますが、以降は「原作:八手三郎」となり、それはプリキュアにおける「原作:藤堂いづみ」と同じく、東映という会社の企画名義でしか無く、それは作品が個人の所有物では無い事を意味します。そういう部分を見ても、スーパー戦隊VSもまた世界観が違うとかそんなの知った事じゃねぇ!という東映の社風を垣間見る事が出来ます。

 

そういった背景も「プリキュアオールスターズ」というコンテンツが生まれた土壌になっているというのは知っておきたい所。勿論、東映以外の制作会社だったら絶対にこれは出来なかったとまでは言わないし、企画の発案でもある鷲尾Pも、そこまでの意図では無く、あくまで5周年を迎える事が出来た特別記念としての作品だったとは思いますが、これが成功した事によって、秋の単独映画とは別に、毎年春にやる定例のコンテンツとして定着していったという部分には大きく影響していきます。一度売れて成功したのなら、じゃあ次もとなるのは会社としては当たり前の流れですから。

 

そんな感じで、一種のお祭り映画ですので、秋の単独映画と比べるとストーリー性よりも、この時点で14人のオールスターの活躍する姿を描く方がメイン。基本的には強大な敵が現れて、それを協力して倒す、くらいしか話はありません。

 

ただ、クロスオーバー作品としての作りはきちんと重視してあって、初代の3人がSSの咲ちゃんの実家のパンパカパンに行き、SSの二人が5のナッツハウスにアクセサリーを買いに行き、5のキャラが初代のタコカフェにたこ焼きを食べに行く、という別のシリーズの世界に顔を出す、というきちんとクロスオーバー物の面白さを考えた上での構成。

各作品ごとに、本来は繋がってはいない作品ですが、大きく世界観が違うとかは無いものの、5は日本でありながらヨーロッパ風の学校という描写でしたので、厳密に考えるとあれれ?な部分は出て来ますが、そこは前述の通り東映作品ですから、言いっこ無しよ、というスタイルです。

 

監督は後にASDX3部作の次にTVシリーズの「スマイルプリキュア」を手掛ける事になる大塚隆史。MHから演出としてデビューしているプリキュア育ちの演出家。過去のシリーズ全部に参加してるので、キャラクターをきちんと理解してるのと、各作品ごとに印象に残る目立つ演出をしてきて、頭角を現してきたからこその初監督起用。作風としてはドラマ性よりも、楽しさや派手さの方を重視して作る印象があります。近年「ワンピース・スタンピード」を大ヒットさせ、今では実績も十分です。ワンピースは私全然知らないのですが、映画の方はプリキュアオールスターズで培った、多くのキャラを魅力的に描く事を重視して作られた事と繋がっている、的な評価がよく見受けられました。

 

TVシリーズの方に目を向けると、今回の「ASDX1」で新人プリキュアとして登場する「フレッシュプリキュア」がシリーズ6年目としてTV2月スタート。今回の映画は3月なので、本当にプリキュアになったばかりの新人という事になります。


そして作り手側も最初の5年間のプロデューサーを務めた鷲尾さんがTVシリーズからは身を引き、フレッシュ以降から4年間続く梅澤プロデュサーに交代しています。理由としては、同じ人がずっと上に居ると風通しが悪くなって、新しいものが生まれなくなるからという理由だそうです。そういった部分もあって、現場は共通ながら指示を出す上の方がそっくり入れ替わって、まさにタイトル通りフレッシュさを打ち出したのが「フレッシュプリキュア」という作品です。フレッシュが今のプリキュアのテンプレートになっている面も凄く大きいので、個人的にも入門用としてフレッシュはオススメです。

 

で、TVシリーズを後任に委ねて、抜けた鷲尾Pは今回の劇場版の方に回り、オールスターズを立ち上げる。新人への継承が作品の内外両方で行われる、という実際の制作側のメタ構造なっているのが特徴。まあ梅澤Pは新人では無いですけれども。3月公開の映画と言う時期的な面もあって、オールスターズ系の春映画は引き継ぎ、継承という役割でこれ以降毎年公開されていく事になります。

 

作品として明確な役割・名目・理由づけがあるのはやはり大きく、オールスター物として一度きりの特別編に終わらずここから毎年の恒例コンテンツとして定着していきました。同じく春に公開された戦隊×ライダーの「スーパーヒーロー大戦」系が数作で終ってしまったのは、スケジュール面もあるとは思うけど、そこにきちんとした作品としての役割を見出せなかった、という風にも考えられます。

 

長年続けていけるシリーズコンテンツとして、プリキュアはそんな形で、色々考えて作ってあるというのをこの「ASDX」一つでも伺い知る事が出来る。そんな作品なのです。

 

15周年を機会に、多少は掘り下げられる事も増えてきた印象はありますけど、基本的には子供向けコンテンツなのもあって、プリキュアってこういう部分をこれまではあまり深く語られてこなかったし、ファンもよほどの濃いマニア以外はあまり語っていないような気がしますので、せっかくだからと長々と書いてみました。プリキュアってまだまだ深堀りできる部分、一杯残ってると思います。時間があれば「プリキュアとは何か?」みたいな新書一冊書きたいくらい。

 

私はオールスターズでも最初のDX3部作よりその後のNS3部作が好きなんですが、DXの方が人気あるのって、DXはプリキュア全員がセリフあるとか、逆にNSは喋らないキャラが居るからとか、割と表層的な部分だけで評価されてるんだな、という印象があります。その辺りはちょっと先になりますが、NSの時にでも書こうかなと思ってますので、興味あるかたはしばらくお待ちください。

 

今回は最初のオールスター作品というのもあって、人数も少ない分、きっちりどのキャラにも見せ場が用意されてて、やっぱりそこは上手く出来てます。初代~5までのOPをバックに活躍する姿は文句なしにカッコいい。

 

そんな先輩達(鷲尾P)のエールを受けて、フレッシュな新人がここからスタート。ピンチの時に、日常会話が入ってそこから反撃の狼煙を上げる所はすご~く鷲尾キュアらしい部分でした。

 

そんな感じで次は「フレッシュプリキュア」になります。
せっかくなので映画の前に1本寄り道しようかな。


Pretty Cure All Star DX Op

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