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映画 Go!プリンセスプリキュア Go!Go!!豪華3本立て!!!

映画Go!プリンセスプリキュア Go!Go!!豪華3本立て!!!(Blu-ray特装版)

監督:貝澤幸男/座古明史/宮本浩史
日本映画 2015年
☆☆★

 

プリキュア映画19作目。TVシリーズ12作目「Go!プリンセスプリキュア」秋の
単独映画です。

 

今回はタイトル通り今までのプリキュア映画には無いちょっと変わった構成で、短編・中編・長編の3本立て。短編・中編の方はフルCG作品で、長編のみこれまでと同じ手描きアニメ。尺が3本合わせて75分と他の映画の1本分と変わらないので、長編とは言いつつ他の映画と比べたら尺は短く、目新しさはあるものの、ちょっと物足りない感じ。

 

ひとつ前の春映画「プリキュアオールスターズ 春のカーニバル」もこれまでとは違った実験的な感じでしたし、それに続く今回の秋映画もまたもや実験的な形。前年の「ハピネスチャージプリキュア 人形の国バレリーナ」が映画として結構ビックリするくらい良かったのと、TVシリーズの「ゴープリ」が非常に高いクオリティで進行してたのもあって、ゴープリは2作とも映画には恵まれなかったなぁと、ファンはモヤモヤした感想を持ったというのが正直な所でしょうか。

 

ただこの辺は制作側がゴタゴタして足並みが揃っていなかったとかでは無くて、時代に合わせて常に進化・アップデートしていくっていうプリキュアらしい部分もあってこそなので、ここでの試行錯誤を安易に批判したって仕方無いかな?というのが今の気持ちですかね。勿論、私はリアルタイムで劇場に観に行って、今回はイマイチだったなぁって思っちゃったのは事実だし、多分ソフトを買ってその後に1度見ただけで、今回でようやく3回目くらいだと思います。

 

ブログで感想書いててちょこちょこありますけど、これは確かイマイチだったなぁとか思いながら見ると、でも意外と面白かったなってなりがちで、やっぱりあまり期待値上げてハードルを高くするより、あまり評判は良くないけど、意外と見所はあるよ、みたいな方がある意味幸せな部分はあるかもしれません。

 

これね、私は友達とかにもこれ超面白いから見てよ!みたいにお勧めするのはあまりしません。だってそう言っちゃうとハードル上がるじゃん。これは割と万人が面白さを理解出来る奴だなって場合は行けるのですが(例えば「ヒックとドラゴン」とかね)意外とそこは難しい所。私はどこからどう考えてもガチオタタイプの人ですから、一般人的な感覚との乖離、例えオタクでも割とライトな感じのオタクの人の感覚とはやっぱり話してても違うなって思うんですよね。そこら辺は難しい所です。

 

でもやっぱりそういう客観的な視点って言うのも大事で、大人としては今回の映画は物足りないと感じてしまうかもしれないけれど、もしかしたらメインユーザーの子供達には3本も見れてお得!いつもより楽しかったって思ったかもしれない。

 

これまでもたびたび書いてきましたけど、プリキュアのメインターゲットは「子供」と言っても、実際のデータから言えば小学校に入る前の未就学児がメインの客層になってたりする。プリキュア映画が70分弱くらいなのは、そこらへんの層の集中力を踏まえて短くなっていると。しかも未就学児とひと括りにしてしまっても、この年齢層の子供は1年違えばその辺りの成長の幅も全然違うと。その辺りが難しい部分と言うのはシリーズ問わず、インタビューなんかで何度も目にしてきました。

 

今回の「ゴープリ」から、立ち上げの初代~5GOGOまでの5年目のプロデュサーだった鷲尾Pが復活してます。プリキュア単体のプロデューサーという立場では無く、東映アニメーション全体を総括する立場として(要は出世したのね)再びプリキュアにも戻ってきたと。

 

TVシリーズ7作目「ハートキャッチプリキュア」を売上的には頂点として、そこから少しづつ下がり始めていた時期です。10周年を越えて、コンテンツとしては世間に対して十分に定着していた半面、定番化すればマンネリだ何だと好き勝手言われがちでもありますし、男児女児問わず人気が出た「妖怪ウォッチ」とか、アナ雪の大ヒットによる「ディズニープリンセス」という新しい枠組みのコンテンツなんかも台頭してきた頃ですし、近接ジャンルの女児向け物でも「アイカツ」やら「プリティーシリーズ」とかが成長してきた所もあります。この辺は2年目の「MH」の時に「ラブ&ベリー」の人気に食われたような所とも共通していて、プリキュア映画の興行成績が10億前後以上には決して広がらないように、ある程度のパイが決まっていて、その中でシェアを取り合っている、というような状態である事は読み取れる。

 

「春のカーニバル」を成績の良かった映画ハトのプロデューサーにまかせて、新しいアプローチを試みたり、今回の映画見たいにプリキュアを立ち上げた初代プロデューサーのお墨付きで、これまた春映画とも違う新しい方式を試みてみたりと、この辺りはきちんと流れがあった上での試行錯誤になっている。

 

ただのプログラムピクチャーとして同じような事をただ繰り返して微妙に縮小していく事を続けるより、シリーズの今後を見据えて変化させて行く事を選ぶ辺りがとってもプリキュアっぽくないですか?鷲尾さんが当初は10年続くコンテンツにという目標を掲げて、それを達成した今となっては、今後の20年に向けて、今度は親子2世代コンテンツとして育てるって言うのをここ数年はインタビューで言ってます。その辺りはプリキュアに復帰したこの辺りからやっぱり考えていたんだろうなというのはよくわかる作りになってる。

 

DVD解説書に載ってるインタビューでも、「S☆S」の時もデジモンとの併映とかやってましたし、昔は「東映まんがまつり」とか何本か合わせてやってたの東映お家芸じゃないですか、とか言ってます。オールスター映画も東映お家芸でしたし、実際プリキュアとは別枠で「東映まんがまつり」を鷲尾さんは復活させたりしてますし、その辺りは面白い部分。

 

で、3本の作品それぞれを見て行くと、単純に面白いかと言えば個人的にはまあそこそこくらいの感想にはなっちゃうんですけど、スタッフの配置とか作品の方向性としては色々と面白い部分はある。

 

まずは1本目。
キュアフローラといたずらかがみ』(短編)
こちらは監督が後に「キラキラプリキュアアラモード」を担当する事になる貝澤幸男監督。貝澤さんはプリキュアに関わるのはこれが初めてですが、東映のベテランアニメーター。「プリアラ」も二人監督体制で、そこはベテランと若い子を組ませて、技術とかを引き継がせていくという目的があっての事でした。それはプリキュア単体のみならず、東映アニメーションの未来を見据えてって事ですよね。

 

SD体型で、フルCG作品ながら、モーションをプリキュア歌手&キュアソードの宮本佳那子が担当してたり(モーションキャプチャーでなく、先に演じてもらったものをベースに手付けで動かしたそうな)「スイート」の時にやったプリキュア人形を動かすみたいなコンセプトの「プリキュアオールスターズDX the DANCE LIVE ~ミラクルダンスステージへようこそ~」の延長と言う意識もあったそうな。

 

映画の冒頭に5分くらいの短編が付くって、ディズニー/ピクサー映画なんかでも毎回やってますし、そういった所への挑戦でもあると。しかもサイレントで動きのみで楽しませると言う色々と凄い挑戦。

 

CGも髪の毛一本一本を細かく描くタイプの奴で、やはりディズニーピクサー的な物への挑戦でもあるし、そんな感じで、過去や未来も踏まえていれば、海外コンテンツへの挑戦もありつつ、サイレントという表現の内面への挑戦もある。なんか凄い頑張ってますよね、これ。

 

続いて2本目
『パンプキン王国のたからもの』(長編)
こちらは普通のセル画・・・はもう使って無いか。まあいわゆる普通のTVと同じく手書きのアニメーション作品。ゴープリ映画と言えば基本的にはこれを差す、いわゆるメインの作品。

 

監督はTVシリーズ「フレッシュプリキュア」の座古明史監督。なのでキャラデザもフレッシュの香川さん。何気に面白いのは脚本を書いたのが「5GOGO」でアナコンディさんを演じた山像かおりさん。今回も声優としては王女様役で出てますが、自分の所属する劇団で脚本・演出なんかもやってるらしく、鷲尾さんの要望で今回の脚本を担当する事になったそうです。

 

富や名声よりも家族が大事って最後に王様王女様が改心するのですが、そこに至るドラマが正直無いのが尺の足りなさかなぁと思ってしまうのですが、その原因としての悪役のウォープとか、単純にプリキュアのアクションシーンとかはなかなかカッコ良くは描かれてはいます。

 

ヒロインのパンプルル姫を演じるのは花澤香菜。挿入歌まであったりするのですが、その後はざーさんプリキュアに出れてませんね。割と映画のゲストとかを経てレギュラーとしても再登板って結構あるパターンなのですが、その後はプリキュアで独特のファッションセンスを披露するには至らず。

 

今回見返していて、おっ!と思ったのが、パン・プウ・キンという変な声だけでセリフらしいセリフも無いキャラですが、その3人組の妖精の一人を後のプリアラでキュアジェラート/立神あおいを演じる村中智がやってたのにちょっと驚き。

その辺りも過去と未来の交差って部分かもしれません。

 


そして3本目
プリキュアとレフィのワンダーナイト』(中編)
これ順番的に短編・中編・後編の方が良いのでは?と思ったんですけど、シームレスにエンディングのCGダンスに繋げる為、というのもあるようです。

 

監督は宮本浩史。元々CG畑の出身で、これまではエンディングCGの方に関わってきた中で、今回は初の監督職。で、これが「プリキュアドリームスターズ」に繋がり、超傑作の「オールスターズメモリーズ」にまで発展するという事を踏まえると、結構な重要作です。

 

初CGエンディングになったフレッシュからプリキュアのCGは凄いけど、「スマ」「ドキ」「ハピ」でセルルック(アニメ調)CGはもう極まった感がありました。私もこの時期の可愛いに特化した感じがメチャメチャ好きです。そこを担っていたのがこの監督。

 

ゴープリからちょっと方向性を変えちゃったのもあって、今回の中編もセルルックでなくそっちに合わせたらしいのですが、ゴープリは必殺技バンクをCGで作ってたのもあって、そこは宮本さんがこの映画の為に抜けたのか、ちょっと微妙なんですよね。そこはゴープリの中でも数少ない残念な部分。決してクイリティが低いわけではないのですが、前作までのCGEDで極まったレベルと比べちゃうと若干見劣りしてしまう感じでした。

 

その分、こっちの作り込みは相当に凄いのですが、プリキュアよりレフィの方に肩入れして作ってる感もあって(そこは次の「ドリームスターズ」でもそうでした)若干物足りなさも。その分じゃないですけど、敵のナイトパンプキンが東映的にはフリーザ、プリオタ的には「スイート」のノイズ様でお馴染みの中尾隆聖という豪華すぎる配置で、そこまとても楽しい。

 

CG特有の、正確なモデリングなんだろうけどのっぺりしていて味が無い、みたいな要素が全く無く、CGでも手描きと同じレベルの凄いアクションとか見せてくれます。

 

そういった感じでこれも同様に過去の遺産と未来を見据えた作りになってる。

 


3本の総括としては、リアルタイムだと目新しい部分はあるにせよ、物足りなさの方が上回ってしまった印象でしたが、そこから数年たってこうして見てみると、ここら辺を切っ掛けにして、次のステージへ進もうとしてたんだなぁ、というのがよくわかる感じでした。

 

プリキュアは世代を越えて受け継がれていくもの。そういう視点で言えばこれも決して悪くは無かったかな?とは思える感じです。

 

TV本編の「ゴープリ」は単体で物凄く完成度が高かったので、そちらだけでも十分な評価を与えられる作品かと思いますが、そこで生みの苦しみを味わった田中裕太監督も、今度は自身が後にそうやって変化していく事を自覚して、今度は映画スタプリにテーマとしてそれを落とし込んで行く事になります。その話はまたいずれ。(いや映画スタプリの感想でほとんど書いちゃってるけども)とりあえず次はコンプリートブックに絡めてゴープリ本編を語りたいと思います。

 

映画単体でのサブテキストはアニメージュ「Go!プリンセスプリキュア特別増刊号」が相変わらず良い仕事してますので是非。

『Go!プリンセスプリキュア』特別増刊号 2015年 12 月号 [雑誌]: Animege(アニメージュ) 増刊


一挙に三つのエピソードが展開!映画『映画Go!プリンセスプリキュア Go!Go!!豪華3本立て!!!』予告編

 

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