監督・キャラクターデイザイン:宮本浩史
脚本:坪田文
日本映画 2017年
☆☆☆☆
プリキュア映画22作目。
TVシリーズ14作目「キラキラプリキュアアラモード」春の新人研修映画。
春のオールスターズ映画の系譜としては9作目ですが、今回からは直近3世代のクロスオーバー作品に路線変更。DX3部作、NS3部作と来て、ミュージカル路線の2作を経て、流石にもうオールスターで全員出すのは物理的に無理が来ているとの判断がなされたのでしょう。
一番最初の「プリキュアオールスターズDX」はそこまでの4世代分、プリキュアの人数は14人でしたが、今回は3世代分12人ですから、一人一人にきちんと見せ場が作れる・・・と思いきや、普通に考えればメインキャラが12人ってそれでも十分に多すぎです。しかもプリキュア映画は尺が短いっていうね。
そういうものをね、普通の映画の尺度で語っちゃってもしゃあないよね?というのは常に頭の中には入れておきたいと思うし、春映画ってやっぱり改めて考えても特殊なものです。逆に言えばそういうのをずっと続けてきてるプリキュアって相当に特殊なんですよね。あって当たり前になっていて、そういう視点で改めて語られる事なんてほとんど無いんですけど、私はそこは踏まえておいた方が良いと思うよ。
当時の評判も、オールスターじゃ無くなったっていう部分での不満が多かった印象。特別駄作扱いされるような作品では無かったけど、取り立てて今でも語られるっていうタイプの作品でも無い感じかなぁ?
個人的には割と好きな方に入る作品ではあるのですが。多分劇場でリアルタイムで見たの含めて4~5回くらいは私見てる作品ですし。
あと、単体で語るだけじゃ無く、縦軸で見た時にちょっと面白い位置にある作品でもあるので、その辺について語ってみようかな?
監督が宮本浩史で脚本が坪田文というスタッフ構成。坪田さんは後にTVシリーズ「HUGっとプリキュア」でシリーズ構成を担当して、色々と話題を振りまいてくれましたが、今回は宮本浩史監督の方に注目。
ゲーム会社出身のCGディレクターで、プリキュアにはCGモデリングの仕事で「ハートキャッチ」から参加。3DCGでキャラクターを作るだけでなく、演出もやりたいって事で、「スマイル」のEDはディレクションも担当。
いやね、プリキュアのCGエンディングダンスって今やプリキュアの大きな魅力の一つじゃないですか。別にこの人が始めたっていうのではないんですけど、CGでの描き方って「スマイル」~「ハピネスチャージ」辺りが可愛さの頂点を極めてる感じで、私はその時期のが一番好きだったりします。勿論、今のも凄いですし、そこは技術の変化や見せ方の違いなだけなんですけど、単純な好みで言えばこの時期の描き方が私は死ぬほど可愛くって大好きです。
「NS3」の時もエンディングムービーだけで1億点とか私感想書いてますけど
ハピはTV版EDもホンっとに可愛い。
で、
スマイルプリキュア
前期ED「イェイ!イェイ!イェイ!」
後期ED「満開スマイル」
スマのEDってダンスの後ろで小芝居してるパートがあって、確かその辺を作ってたのが宮本さんだったはず。
こういうのがあったので、その延長としてCGだけで1本話を作らせてくれないか?と、自ら売り込んで「映画 Go!プリンセスプリキュア Go!Go!!豪華3本立て!!!」の中のCG中編「レフィのワンダーナイト」に繋がったわけです。
15分くらいの中尺だったわけですが、じゃあ次は是非長編にも挑戦したいと。
それが今回の「ドリームスターズ」になります。
今回のはフルCGじゃないんですけど(つっても今は全部デジタル環境で作ってるんだからそれもCGっちゃあCGなんですが、その辺は便宜上)従来通りの手書きアニメが30分、CGアニメが30分というぐらいのバランスになってる。そこはそちらの畑で育ってきた人の作品だからこそ、という部分です。
いきなり春映画に抜擢というのも凄いんですけど、そこ実は面白いエピソードがあって、宮本監督、キュアホワイトを演じたゆかなさんの大ファンらしいんですね。まだ監督作みたいなものが1本も無かった頃に、ゆかなさんに挨拶する機会があったそうで、「大ファンなので、将来いつか自分が監督をするようになった時にゆかなさんに作品に出てもらいたい」みたいな事を伝えたそうで「その時を待ってるから頑張ってね」と言ってもらえたと。
いきなり、次のオールスターズの監督やってみる?って言われて、相当なプレッシャーだったそうですが、プリキュアオールスターズなら当然初代プリキュアのキュアホワイトが居るじゃないですか。だったら覚悟を決めてやるしかないと。
それで実際引き受けたら、今回からオールスターじゃなくて直近3世代で!
というオチが待っていたと。ええ~っ!しょんなぁ~って感じですよね。
ただ、ここを切っ掛けに次の作品の超超超超名作「オールスターズメモリーズ」に繋げられたんだから、いや~夢を叶えた宮本監督素晴らしいですね、と心から言ってあげたくなる。多分、オールスターズメモリーズの感想書く時にもこのエピソードに触れるけど、メチャメチャ面白い話で、私は大好きです。
でもってそんな宮本監督らしさというのが随所に現れていて、この作品も見所は多い。プリキュアシリーズの映画って、絵のクオリティに関しては割と波の振れ幅が大きい。作品によってはぶっちゃけTVシリーズと同クオリティの作品も中にはあります。(たまにですけど逆にTVでこのクオリティでやるか!?ってのが混ざる事があるのもプリキュアあるある)
せっかくの映画、劇場版なんだからTVシリーズの絵よりも1ランク上の作画を、って求める人が大半で、むしろそれが普通だと思うんですけど、そこに関してはプリキュアは微妙な時は多々あったりもする。
でもそこってね、東映の社風なので仕方ない。それこそ京アニとか鬼滅のUFOテーブルでしたっけ?ああいう、徹底的にアニメのクオリティには拘りぬくっていう会社じゃないのが東映です。何のインタビューだったか忘れましたが、確かライターさんじゃなく、アニメ側のスタッフだったと思いますが、東映は全体のクオリティよりも、ここ一番の見せ場とか一部分だけにクオリティを集中させる事で満足度や印象を強めるような社風がある的な事を言ってた気がします。
昔の時代劇の時から、観客が「よっ!待ってました」みたいな見え切りの見せ場を軸に演出を作ってきた流れがあるからだとか。確かにプリキュアも変身バンクシーンは一切手を抜かずにそこのクオリティには相当気を使ってますよね。バンクとして毎週何度も流れるからっていう理由も当然あるでしょうけど。
でも宮本監督、そんな東映の血を継いできたタイプの人じゃないし、CGモデリングで安定した作画(?)の上に表情とかでさらに手間を加えてクオリティを上げるっていう流れで作ってるはずなので、そこに対しても違和感の無いようになのか、手書きアニメパートもやたらクオリティが高い。春映画でこの絵のクオリティって結構珍しい部類では?なんか凄く「劇場用アニメーション」してます。
そして面白いのが、劇場用のメインキャラクターにサクラという映画オリジナルキャラを置いて、そのサクラの属する世界はフル3DCG、プリキュアが普段居る世界が手書きアニメの世界という使い分けをしてるんですね。
そこは自分の所属するCG部門とTVシリーズを作ってるアニメ部門の世界の違いって言うメタな要素もある意味透けて見える所ではあるのですが、決してそこを声高らかに主張するわけでもなく、プリキュアを見ているメインターゲットの子供達に、いかに違和感無く見せるか、そして驚いてもらえるかに気を使ってる辺りがまた素敵です。
個人的にこれはアイデア賞だなって思う所は、ほんのちょっとですけど、サクラとホイップが現実世界に出てきてしまうっていうシーンがあります。DVDとかBDで見たって、ん?何だ今の?っていう感じはしちゃうんですけど、あれね、実際に劇場で見た時はメチャメチャ面白いシーンでした。
暗い劇場の中で、背景も暗幕っぽくなってると、白っぽい人物がリアル調のシェーディングで出てくると、ちょっと浮き出ているように見えるんです。なんか大きいスクリーンに対するサイズ感も手ごろで、劇場鑑賞した時は、こんな見せ方もあるんだ!って凄く楽しい気分にさせられました。
それが後にこれに・・・
www.youtube.com繋がったかどうかは定かでは無い。
まあとにかく、CGならアニメ調だけでなくこんなリアル路線に描く事も出来るよ、映画のスクリーンからプリキュアが出てきたら驚くんじゃない?っていうアイデアですよね。そこは宮本監督ならではだと思います。
監督の情熱を見込んでの、TVシリーズで演出をやってる人では無い所からの起用というのも、プリキュアらしい挑戦を恐れない懐の深さでもありますし、そこで変に個人のエゴ丸出しにしちゃうわけでもなく、子供達はこういうのを喜んでくれるんじゃないか?っていうアイデアを存分に詰め込むというのもとても面白いコラボレーションだなと思えて、見ていて凄くプリキュアって良いよな、と思わせてくれる良作です。
細かい所に気を使っているし、随所にコメディシーンとかちゃんと入れてくるんですよね。今まであんまり気にして無かったけど、今回久し振りに観て、ゼツボーグの登場シーンできららちゃんが「ブンボーグ?」っていう所に笑ってしまいました。
あと、サクラの世界が和風なのも好みです。プリオタはみんな思ってるはずですけど、いつか「和」がモチーフのプリキュアもやってほしいんですよね。
「ハピ」のモードチェンジでフォーチュンのあんみつこまちで局地的にやったのと、
ヒープリ映画のパートナーフォームくらいですよね?
大人から見ても可愛いし、子供受けも決して悪くは無い気はするので、そこはいつか是非に。個性も出ますしね。
あとサクラと言えば、劇場版のゲスト1回こっきりですが、中の人がそれなりに思い入れ持ってくれてるのが嬉しい。
サクラがいた…😭✨
— 阿澄佳奈 (@0812asumikana) 2019年7月12日
思い出して泣けてきちゃう。
ステキな出会いでした。
【全プリキュア大投票】
好きなキャラクター[サクラ]に投票しました! https://t.co/6SQ2EAQUHw #nhk #プリキュア #全プリキュア
特にコメントが出た事は無いですけど、おそらくはアスミンもプリキュアオーディションは何度か受けてるというのは推測できますし(実際にプリキュア役が決定した後に、実は過去に何度も受けてたけど落ちてましたっていう話をする例は枚挙に遑がないですので)いつかミズハスさんと一緒に出れたら嬉しいかも。
とまあ多少脱線しましたが、語り甲斐のある面白い作品だと私は思ってます。ああ、主題歌も好きなので、そこは別エントリーで書こう。
絶対、あきらめない
いつも誰かの大切なものを守る
それが!プリキュアなんだからぁ~っ!
この叫びだけでメッチャプリキュア感が出ててとても好き。
関連記事
前作
前前作
宮本監督作