僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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ハーレイ・クイン:ガールズ・レボリューション

ハーレイ・クイン:ガールズ・レボリューション (ShoPro Books DC GN COLLECTION)

HARLEY QUiNN : BREAKING GLASS
著:マリコ・タマキ(作)スティーブ・ピュー(画)
刊:DCインク 小学館集英社プロダクション DC GNCOLLECTION
アメコミ 2020年
収録:Harley Quinn: Breaking Glass(2019)
☆☆★

 

ハーリーン・クインゼル15歳。
持ち物と言えば、リュックと5ドルだけ。
そんな女の子。

 

小プロアメコミの新レーベルDCグラフィックノベルコレクションの第1弾。アメコミは通常B5サイズが大半ですが、少し小さいA4サイズ。元はDCインクという新レーベルから出ていた奴で、単品で完結の描き下ろしグラフィックノベルとして刊行されているヤング・アダルト層をメインターゲットに狙った作家性の強い作品で、ジェンダー、LGBTにスポットライトを当てている作品軍だそうな。

 

アメコミは近年だと、LGBTは割と普通にメインのシリーズの方でも積極的に取り入れてる印象ですが、(ブログで取り上げた作品だと「バットウーマン:エレジー」もレズビアン要素が話に入ってましたしね)ティーン向けにその辺りの要素をより身近に知ってもらおう的な、いわゆる意識高い系のシリーズという事でしょうか。

 

「意識高い系」って皮肉とかネタで使われる事も多いですが、私は普通に意識低いよりも高い方が良いと思ってます。深く理解もしないで表層だけファッションとしてやってるような場合だと、確かに滑稽な部分はあるのかもしれないですけど、そんでも社会問題とか全く知らないよりかはマシだと思うんですけど、どうでしょう?

 

私自身が割と半端くさいから言いわけ的にそう思っちゃうのかも?女性の権利向上とかは尤もだと思うけど、露骨なフェミニズムとかには引いちゃう方。男なんてクズしかいない、男は全員レイプ魔なんだみたいな言い方されると、生きててスミマセン。なるべく悪い事はしないようにするからひっそりと生きさせてもらえませんかね?って思っちゃう。男であるだけで、その存在の全てを否定されているような気持ちになってしまう。でもそれって女はこうでしょ?みたいな決めつけの逆バージョンで、男はこうでしょ?って決めつけてるのと変わんないんじゃないかな?と思えてしまって、フェミニズムの人って怖いなと感じてしまいます。

 

作品内で言えば、アイビーがバリバリのフェミニストとして描かれてて、映画の女性監督が賞をとれないのは男性優位社会だからだ、みたいな事を言うのですが、そういうのまさしく私が苦手な奴。確かに当てはまる要素はあるのかもしれない。でもそれが全てじゃないでしょ?みたいな。

 

オリジナルのポイズン・アイビーは環境テロリストみたいな部分も大きいですが、この作品だとアイビーが最初に友達になる普通の意識高い系女子なので、普通にプラカード持って抗議デモしたりする辺りがリアルで面白い部分。

 

いわゆるスーパーヒーロー、スーパーヴィランみたいなものを現実にありそうなレベルに置き換えてあるので、ハーレイにしてもジョーカーにしても、あくまでエキセントリックな常人として描いてあって、逆にそうやってキャラクターを神格化させすぎない事で、あの人の正体が実は・・・みたいなオチも元のキャラだったらできないであろうアイデアになってるので、そこは面白いです。

 

映画「ハーレイクインの華麗なる覚醒」は割と普通のガールズエンパワーメント映画に終始しちゃった印象もあって、単純に作品としては面白いけど、そこだけで終わっちゃったのは少し勿体無いかな?という印象もあるんですけど、ハーレイって時代とともに変化していく立ち位置が結構面白いキャラ。

 

アニメが初出ってのは有名ですが、そこからコミックに逆輸入されて、最初はピエロコスチュームのジョーカーの情婦という位置から、少しづつハーレイの独立したキャラクター象が時代を隔てて確立していく、という他のキャラクターには無い遍歴を持つ。

 

要は最初はジョーカーに依存している存在だったキャラクターが、ジョーカー無しのハーレイ単体で独立するにまで至る、というキャラなんですよね。そこはフェミニズム的にも面白い部分だし、逆にそこがハーレイのアイデンティティと言っても良いくらいにまでなっている。

 

で、さらにその先の模索にまで踏み込んでるのがこの作品かなと思うのですが、そこで邦題の「ガールズ・レボリューション」ってあまりにも古臭いセンスじゃないですか?

 

あえてダサカッコいいみたいなのを狙ったのかわからないですけど、原題が「ブレイキングガラス」なんだから、帯の「ガラスの天井をブチ破れ!」でもいいし、ダサかっこいいを狙うなら「見えない壁をぶっ壊せ」みたいな方がテーマとしては合ってるような気がするんですけどどうでしょうか。

 

そういう意味ではLGBT要素、富裕層と貧困層とか、いかにも今風ではあるんだけど、なんかちょっと狙いすぎてて素直に乗れなかったかもしれません。元々が作家性を重視したブランドでの発売なので、こういう個性の作品としか言いようがありませんが、普通のオンゴーイングの世界観のままでテーマ性を重視した作品とかのほうが私は好みかも。

 

DCはこういう単発の作品が充実していて、このブランドで発売する邦訳ラインナップも結構まとめて発表されたので、それはそれで楽しみです。

 

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