僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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Ms.マーベル:もうフツーじゃないの

Ms.マーベル:もうフツーじゃないの (MARVEL)

Ms.MARVEL:NO NORMAL
著:G・ウィロー・ウィルソン(ライター)
 エイドエイアン・アルフォナ(アーティスト)
訳:秋友克也
刊:MARVEL ヴィレッジブックス
アメコミ 2017
収録:Ms.MARVEL v3 #1-5(2014) ALL-NEW MARVEL NOW POINT ONE #1(2014)
☆☆☆☆

 

マンハッタンの対岸、ジャージーシティに住むカマラ・カーンは、
パキスタン出身の両親の間に生まれた16歳の女子高生。
学校の事とか家の事とか何かとムズカシイお年頃なのに、
もう面倒どころじゃない面倒が!ヘンな霧を浴びたら手が伸びるぅぅ
体が縮むぅぅぅ、あぁ、私、もうフツーじゃないのね……。
ヒューゴー賞を受賞した新感覚のヒーローコミック、ついに日本上陸!

 

という事でマーベル新世代の旗頭、2代目ミズマーベルことカマラ・カーンちゃんです。今月の末にようやっと待望の3巻が出るので、せっかくなので1巻から取り上げていこうかと。2巻の時点で一応次の予告はあったのですが、その後はカマラちゃんがメインで活躍する「マーベル・ライジング」が出たくらいで3巻は音沙汰無し。

 

同時期に新世代マーベルヒロイン連続刊行という形で「グゥエンプール」と「スクレイルガール」が出たものの、グゥエンプールのみ全5巻完訳(4巻5巻が同時発売と半ば強引な形で乗り切った!)Ms.マーベルは2巻で止まってしまって、こりゃ売れなかったんだろうな~と思ってたのですが、このたび3巻の発売が決まって嬉しい限り。

 

アニメにも出て、ゲームでも主役扱い、そしてMCUドラマ化も決定と新世代のキャラクターとしてはマイルズ・モラレス版スパイダーマンと共にマーベルが総力を上げて押してるキャラという印象ですが、実際この辺はどういった所でしょうか?

 

本当に人気があるが故の扱いなのか、会社側の押しとしてのキャラなのか、本国の実際の状況を知らないので、その辺はどうなの?


ムスリムの女の子がMs.マーベルの名前を引き継ぐという形で、
相当に話題にもなって、政治の方の世界でまで騒がれたという事なのですが、アメリカ在住のムスリム系が人口のどれくらいなのかは私はわかりません。ただ、実際にジャージーシティアメリカの中でムスリムの割合が最も多い街だそうです)

 

9.11以降、イスラムへの風当たりが強くなった中で、実際にムスリムである編集者や脚本家がこれまでに経験してきた事を生かして作品を作りたいといった背景と、実際に彼ら彼女らはどういった生活や感覚を持っているのか知っておきたい、みたいな部分の両方が最初に注目される切っ掛けになったのはわかる。

 

でも、私の勝手な想像ですけど、例えば黒人がブラックパンサーとかに対して、自分達のヒーローだって思うのとも、またちょっと違う気がするんですよね。勿論、ムスリムの人達にとってはそういう感覚はきっとあるんだろうけど、例えばアジア系のヒーローが、それこそ昔から居てポリコレ的なバランスも含めて配置されても、正直そこまで突出した人気があったかといえば、そんな印象はあんまりないです。

 

でも、カマラちゃんの場合って、ムスリムって実はよくわかんないけど、何を考えて、どんな生活をおくってるの?イスラム教徒とか、あいつらは全員テロリストなんだっていうような決めつけはやっぱりちょっと違うと思う、今の時代、いろんな人が居るんだから歩み寄りもきっと必要、というのがムスリムでもそうでなくても、送り手側にしても読者側にしても一定数はちゃんと居たんじゃないかなと思う。

 

で、そういう所から入って、この話の面白い所はカマラちゃんは親がムスリムっていうだけで両親は尊敬してるし、別にムスリムが嫌って言う程では無いんだけどあくまでアメリカ生まれだし、新世代としてただその教義に縛られるだけなのは嫌だ、まだ何にもなれないただのオタク少女だけど、自分が何者なのかを知りたい!みたいな所を丁寧に描いてある。

 

この辺のバランス感覚が絶妙。政治的背景が注目された切っ掛けでもあるし、そこは作品の根っこにあるんだけど、そこだけに注力せずに、きちんと今風の若者感覚とかを丁寧に描いてある。この辺はマルジャン・サトラピペルセポリス」なんかにもちょっと通じる部分があると思います。

 

いきなり捻りの効いた凄い深くて複雑な話とかじゃないんですよね。新しい読者層の開拓という作品の目的もある作品ですが、そこが単純にムスリムの為のヒーローだけじゃなく、女性読者や若い読者とかにちゃんと響いたのが結構大きいのではないかなぁと思います。

 

家族や友達との関係、宗教的背景、そして偶然から能力に目覚めた彼女の戸惑いと、ヒーローオタクとしての舞い上がり方とか、やっぱり面白いもの。

 

いやアメコミってね、昔から新たしいキャラクターや新しい層の取り込みとか、色々と挑戦してきたんですが、これがなかなか難しいんですよね。会社側が頑張って売り込んで押しまくっても、結局定着しなかったり、その時代は結構な人気を博すんだけど、その時代のみの人気で時代が変わればその変化に対応出来ずに出番も無くなって行くみたいなの、山ほど繰り返してきたわけで、果たしてこのカマラちゃん押しが、後の時代ではどうなってくのかは気になる所。

 

プリキュアとかもそうなんですけど、単純にその作品やキャラクターのファンとしての「好き」も勿論あるんですけど、おじさん視点になるとね、親心と言うか、保護者気分というか、カマラちゃん、順調に育ってくれたらいいなぁとかそういう目線でも見てしまいます。

 

ムスリムキャラっていうのもあるんですけど、コスチュームが肌を露出してないんですよね。初代Ms.マーベルのキャロル・ダンバースがキャプテン・マーベルになって、あのハイレグコスチュームでなくて、普通に全身タイツみたいなコスチュームになってるのもそうなんですけど、女キャラだからって何も肌を露出しなくたっていいだろうというのも時代の変化ですよね。

インビジブルウーマンとか最初から肌を出してないヒロインもそりゃ居るわけですが、日本で言うビキニアーマーみたいなのも、それはそれでアリなわけで、スーパーヒーローガールだからって肌の露出をしなければならないわけでもないし、逆に今の世相を考えてそういうのをもうやっちゃいけないとかいうのでも無いと思うんです。

 

その人の考え方でどっちでもアリだよね、と言えるのが多様性なわけでそんな風に思えるのがこの作品の面白さかなぁと思います。

 

自分でヒーローのファンフィクション(同人小説の事です)を書いちゃうようなオタク要素があるっていうのも大きいと思いますが、カマラちゃんはこの等身大感が素晴らしい。

 

1巻だと能力に覚醒して、戸惑う中でとある事件には黒幕が居た、くらいまでで終わっちゃうのですが、(2巻でその話に区切りはつく)それでも十分に面白い一冊。

 

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