原題:Ms.MARVEL
原作:MARVEL COMICS
配信ドラマ 2022年 全6話
☆☆☆☆
ディズニープラス配信のMCUドラマシリーズ。
「ムーンナイト」に続いて今度は待望の「Ms.マーベル」です。
スーパーヒーローに憧れるムスリムの女子高生カマラ・カーンが実際に力に目覚めて・・・という大筋は原作を踏襲しながら、当然MCUですので、ドラマ(映画)用に細かい設定は大幅にアレンジ。
私は原作のカマラちゃんは凄く好きなキャラで、いわば押しキャラの一人。ドラマ化決定!嬉しい!楽しみだなぁと思ってた半面、原作への思い入れがある分、実は1~2話辺りは、なんかこれイメージと結構違う・・・感がありました。
ぶっちゃけ、実写だと体型が思ったより太い。そんな事を言うと、ルッキズムの観点から色々と問題ありそうですが、ちょっとだけ言い訳させて下さい。
特別やせっぽち的な描写があるわけじゃないのですが、絵柄的に原作は細く見える感じの絵柄だったのと(ドラマでもEDで使われてるのが原作の絵柄です)カマラちゃんはムスリムだからお肉とかはあまり食べないので、そんなんも含めてやせ形体型なのかなと勝手に想像してました(後、体が伸びる能力だからその対比として細く見えてるだけかも」)ただやっぱりそこ、個人の勝手なイメージなだけで、直接そう言う描写や華奢な体型であるとかの設定があるわけではない。
あとこれは結構コスプレあるあるなんですけど、原作のコスチュームをちゃんと再現したぜ!とか思っても、実際に着ると何これ何か違う!感が満載だったリ、アパレルのモデルが来てる服を買ってみたら、自分が着ると何か違うだったり、それこそ海外スター、トム・クルーズに憧れてレイバンのサングラスを買ったけど、日本人がつけても実は微妙、みたいなのと似たような感じかもしれません。
正直言えば、今回ばかりはコミックのキャラを実写に上手くコンバートしきれていないな、という印象でした。キャプテンマーベルの衣装が実際にコスプレではあるんですけど、本当にダサくて痛々しいコスプレに見える。
しかもアクションも、もっさりしてて非常にキツイ。あんまり運動神経良さそうに見て無いんですよね。スーパーヒーロー着地のわざとらしさも含め。
・・・が!そんなのは当然ながら、意図された物です。
カマラ役のイマン・ヴェラーニ、撮影前の身体作りは必要なのかケヴィン・ファイギに聞いたそうです。その答えは「必要無し」だったと。普通の人が突然スーパーパワーに目覚めるんだから、最初からアクション俳優である必要はないと。
そこがカマラのアイデンティティって事ですよね。ヒーローオタクであるから行動だけはヒーローの真似出来るけど、実際に身体はついていっていないアンバランスさみたいな部分。終わってみると気付くけど、個人的に気になっていた部分は、意図的な演出だったんだなと思えて、終わりよければ全てよし!と思えるくらいの満足感はありました。
原作の最初のシリーズ、やっぱりムスリムの少女が歴史あるミズマーベルの名前を引き継ぐっていう所で話題にはなったんですけど、宗教的な背景はあくまで背景であって、基本的にはオタク少女っていう部分で若者層の関心や共感を求めようとした作品で、宗教的な主張を直接的に描いているわけじゃあない。
ただ今回のドラマは1947年のインド・パキスタン分離独立の歴史なんかもきちんと話に組み込んでくる。あれ?今回は随分と踏み込んでくるなぁ?とか思って見てたら、ここで何とお母さんとおばあちゃんの和解が描かれる。
これね、うわやられた!と思いました。
家族の和解を描く良い話だなぁっていうだけじゃないのです。今は分断の時代と言われてる世の中ですし、作中で描かれたたように宗教的な分断も背景にある。世界とか宗教とか、物凄く大きい単位であり、大きい世界であり、大きい問題でもある。そんな大きな「分断」という問題に対して、カマラは最小の単位、自分の家族をまずは繋いでみせた。それがありとあらゆる物事の第一歩でもあると言わんばかりに。
そして最終回、一人途方に暮れるカムランをカマラは救う。アブ(お父さん)にも言われるけどたった一人の人間を救う所からカマラ=ミズ・マーベルのヒーロー誕生譚はスタートするわけです。
宇宙をまたにかけ、世界最強のヒーローであるキャプテン・マーベルにあこがれる一人の少女、もう一人の驚異の女の子が繋いだのは、キャロルが立ち向かうような大きな宇宙の分断ではなく、とても小さいけれど、一番身近な自分の家族の分断であり、救ったのは宇宙中のありとあらゆる種族なんかではなく、たった一人の同胞だった。という対比が素晴らしい。
我々ファンと同じ目線から始まるカマラのヒーローストーリーの始まりはこういう小さい世界だからこそ面白いし、そこはヒーローの本質的な部分でしょ?っていう感じがとても良かった。
いわゆるヴィランらしいヴィランが出てこないっていうのも変わってて面白かったし、最初は原作への思い入れ故、微妙に思う部分も多かったけど、そこはやっぱりMCUでした。原作からは大きくアレンジしてるけど、これはこれでまた一つの形かなって思わせてくれるのは流石です。
このままキャプテンマーベル2こと「ザ・マーベルズ」へ続きますが、そこから一気にアベンジャーズ入りするのも良いけど、もうちょっとジャージーシティでローカルヒーローやってるとこも見たいかも。
「スパイダーバース」のマイルズ君じゃないけどさ、今はまだ身の丈に合って無い衣装も、いつか自分の物と思える時が来る、みたいに思えるのはグッと来るし、カマラちゃんらしい未熟なヒーローっていうのも、それはそれで他のヒーローにはない面白い部分なので、そこをもう少し見ていたいっていうのもある。いくつかシリーズを重ねた先に、ああカマラちゃんも今や立派なヒーローに成長したなって思える時が来るのが楽しみです。
いやしかしカマラちゃん、原作のデビューが2014年ですので、MCUスタートのアイアンマン(2008)より後に生まれたキャラなんですよね。それが今やこうやってドラマ化まで辿りついたというのがなかなか凄い。
それだけ人気があるというよりは、会社のゴリ押しみたいな印象もあるにはあるんですけど、個人的にも若手ヒーローの中で私も一押しなのは、割と真面目なタイプの子だからっていうのは結構大きい。若手ヒーローってやっぱりその若さを象徴する為にか、大人の言う事なんか聞かないヤンチャなタイプに描かれる事が多い。その方が若者の共感を呼びやすいっていうのもあるんでしょうけど、おっさんはそういうタイプついていけないので、素直にこの子良い子だなって思えるカマラは貴重な存在です。
といった辺りで、次のドラマは「シーハルク」かな?
の前に短編っぽいですが「アイ・アム・グルート」の方が先に出る様子。
今後もますます楽しみが続きます。
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