Animage HELIN'GOOD♥PRECURE SPECIAL ISSUE
徳間書店刊 2020年
☆☆☆☆☆
今年も出ましたアニメージュプリキュア増刊号。
私にとっては定番になったプリキュア1年間の風物詩の一つ。
ただ今年はコロナの影響もあってか、毎年夏場に出てる「フェブリ」のプリキュア特集号が出なかったのが残念。中盤までの展開をそっちで補足して、秋までをアニメージュ増刊、で、終わってからコンプリートブック、というのが「プリキュア本」の1年の流れがあります。
アニメージュ増刊は秋映画公開の1ヶ月後くらいに出るのが通例なので、秋映画のネタバレはOKで、TVシリーズ終盤のクライマックス前くらいまでの情報。
全部終わった後のコンプリートブックと比べると後から見る資料としてはちょっと弱いのですが、リアルタイムで楽しむのは勿論、こっちにしか載って無い部分はあるし(映画に関する情報とか特に)、今回の本用のインタビューとかだけでなく、アニメージュ本誌での3月からここまでのプリキュア記事も再録されてるので、コンプリートブック1冊あれば良いか、とはならない辺りが本の作りとしても上手いし、一応は雑誌扱いながら捨てられない「プリキュア本」です。
作品としては「ハピネスネスチャージ」から増刊号出るようになったんだっけかな。私は「スマイル」からのプリオタなので、それ以上前の事は情報が曖昧ですが、プリキュア初期は子供向けアニメというのもあって、アニメ雑誌でもあまり扱って無かったようですが、スマイル辺りから変わって行ったのかな?当時、スマイルが表紙のアニメージュを私も買って、プリキュアがアニメ誌の表紙になるのは初めてとかどこかで見た気がします(間違ってたらゴメンなさい)。
その1年前の「オールスターズDX3」の時に「プリキュアぴあ」という本が出て、その辺りから流れが変わってきて、大人向けのプリキュア本とかも定期的に出るようになって、今の流れがある。
「DX3」並びに同年の「スイートプリキュア」は震災があった年です。その辺りからプリキュアというコンテンツがまた見直される切っ掛けにももしかしたらなったんじゃないかな?とも思う。子供達に夢や希望を与えてくれる「子供向けコンテンツ」って、人が生きる上でも実は凄く大切なんじゃないか?という事に気付き始めたというか。
勿論、作ってる方は最初からそこをわかってて作ってるのでしょうけど、(そこは初代のムック本とか読んでてもちゃんと書いてありますしね)見てる方も、その辺りを意識しはじめる切っ掛けにはなったのかなぁと。そしてそこでヒープリです!
「プリキュアミラクルリープ」の感想記事でもちょこっと触れたのですが、「クイックジャパン別冊おそ松さん」という本にグレース役の悠木碧が『貴方はプリキュア』というエッセイを寄稿しています。これがね、超、超、超ものすご~~~く良い事を書いてます。
今回のアニメージュ増刊でも悠木碧が同じような事をちょっとだけ言ってるのですが、コロナ禍という今まで過去に無い時代になってしまった事で、放送の中断、映画の延期、話数削減とかで「不遇な作品になっちゃったね」なんて言う人も居る。たまたま作品のモチーフが地球のお医者さんなのもあって、「プリキュアがビョーゲンズに負けた」とか茶化す人も出てくる。
でも自分はそんな風には思って無い、本当にたまたまの巡り合わせでこんな時代にプリキュアを任せられたんだから、今プリキュアが必要な人に全力で届けるし、現実の世の中も災厄と戦ってる。(QJ別冊エッセイの方ではそこで生活様式なんかを変えつつ、日々の暮らしを送りながら少しでもコロナを収束させようとしている貴方達もプリキュアなんだよって言ってます)今はまだ全力で戦ってる最中、まだ終わってなんかいない。だから「負けた」なんて言わないで、プリキュアも私も絶対に最後まであきらめないから!
というような事を言ってる。うん、悠木碧凄い。
悠木碧は売れっ子声優の筆頭だし、主役も何本もやってる。アイドル的な活動もしつつ、沢城みゆきとかと同じく、一般向けアニメとかにもちゃんとコミットしてくる実力もある。そんな人が今更プリキュアやっても、そんなにプリキュアに思い入れ持ってくれないんじゃないか?仕事ですから、で終わっちゃうんじゃないかと勝手に思ってた部分が正直あります。
でも、そんな事は全く無かった。多分、凄く頭の良い人なんだと思う。プリキュアとは何か?プリキュアというコンテンツが世の中にどういった影響をもたらすのかをちゃんと自分なりに解釈して、その責務に全力投球して挑んでいる。言われる側の立場じゃ無くてこちら側から言いたい。まさしく『貴方はプリキュア』だと。悠木碧はまごうことなきプリキュアでした。凄い。ちょっと舐めてた自分に反省。ゴメンなさい。
そこで本日放送のヒープリ33話。のどかのかつての主治医だった蜂須賀先生がたずねてくるお話です。のどかの病気を治してあげられなかった事に無力感を感じてしまい、医者をやめる事を決意した。のどかは、先生がずっとそばに居てくれたから自分も耐えられた。先生が「自分も諦めないからのどかちゃんも諦めないで」って言ってくれたから今の自分があるんだと。
でも、先生は自分なりの考えを持っていて、直接治療を施すだけが医者の役割じゃ無い。治せない病気は世の中にまだいっぱいあって、のどかと同じように苦しんでる人もたくさん居る。だったらそこを治す研究をしている所に身を置いて、別の所から人を救う道を探してみようと思う。そんなきっかけをくれたのがのどかだったんだよ。
という、まさしく私も貴方もみんなプリキュアなんだっていうメチャメチャ良い話でした。この脚本を読んでて、あのエッセイに繋がったのかな?と思うくらい。
いやもうヒープリは私にとってここが山場だと言っても良いくらい。勿論、これからの放送も楽しみにしてますが、最終回後にまた感想書いた時、この部分また私は触れると思います。ああ、ヒープリってこういう作品なんだって思いっきりストンと腑に落ちました。
私はプリキュア以外にも趣味はあるので、リピート放送になった時とかめんどくさくて2度目は見て無かったんですよね。他に時間使いたいし。そういうのもあって、ヒープリも毎週の楽しみではあるけれど、作品への思い入れという部分では過去シリーズと比べると正直ちょっと薄かった。うん、でも今回の件でそんな自分とはヒーリングッバイです。浄化された。ヒープリこそが、悠木碧の思いこそがまさしくプリキュアなんだと。
うん。いつだってやっぱりプリキュアは凄い。こんな時代になっちゃったからこそ、プリキュアと共に歩んで行ける事を心から嬉しく思う。心の底からヒープリ、応援していきます。
と、本の内容からはちょいと外れて思いを語ってしまいましたが、上記のような部分も含めて、色々と発見があって面白いです。
キュアグレース、お花のプリキュアではありますが、実はイメージとしては大地のプリキュアだったのね。(エレメント関連も含めてスプラッシュスターとの関連要素も多いですよね)
前作の「スタプリ」のひかるちゃんがテンションMAXな子だったので、それと差別化の意味もあってちょっと落ち着いた子になったと。「HUG」の野乃はなちゃんも名前の通り花をイメージさせる部分もあるけど、あの子はきっとこれから咲くんだよっていう未成熟な部分が大きかったかなと思いますが、のどかは地に足をつけたというか、土台がしっかりしてる子なので、なるほど花を咲かせる大地の方なのかと、すごくしっくり来ました。
声優としてもフォンテーヌとスパークルはキャリアが浅い人なので、そこそキャリアのある悠木碧が支えるという事にも繋がって、すごくわかり味がある。
あとはやっぱり「ナースじゃなく医者」というのもなるほどなぁと。過去には「ナースエンジェル」とかありましたし(よくは知らない)、女の子向けのモチーフとしては看護婦さんって結構使われるイメージありますよね。そこではっきり今回はナースじゃないよ、って意思表示してくるのはまさしくプリキュアだなぁと思う。
ただのわかりやすい記号としてなんとなく使っちゃうとかでなく、ちゃんと現代的なアップデートがされてる辺りがいかにもプリキュアっていう感じがして面白いです。
ここまで放送してきて今更なの?って気はしなくもないけど、まあやっぱり世の中が世の中で、どこか上の空で見てた部分もあるのかなとここでも反省。
そういう基本的な所だと、今回はヒーリングアニマルが実は戦いでは主導権を握ってるっていうのも、言われて改めて気付かされた部分。プリキュアって基本、パートナー妖精は居ても、どちらかと言えば弱い妖精を守るっていう感じでしたけど、今回はステッキに憑依して積極的に指示出してたりするのか。そういう所でバディ感を出してるのね。
何でもアフレコではコロナ対策でプリキュアとアニマルズは別収録してるらしいですが、対談とか読んでると、それぞれのペアごとにやっぱり違いがあって、そこは凄く面白い部分。ラビリンとのどかは一緒に寝てるけど、他は一応性別が違うから無理っぽいとか、えぇ~?そうなんだとちょっと面白かった。
私は猫が好きなのと、ニャトランの声優の金田アキさんが「まほプリ」にも出てたので(インタビューでも触れてくれてます)スパークル押しなのですが、そうかニャトラン確かにちょっと男の子っぽくひなたを引っ張ってる感があってそこも面白い。
なんかそういうのをストレートにやるんじゃなくてさりげなくやってる辺りが香村純子脚本だなぁと思う。香村さんて記号的なわかりやすさを嫌って、さりげない所とか些細な部分でキャラ立てしてくるのよね。
こうして振り返って色々見て行くと、そういう発見があって、香村純子のカラーが大きいなって改めて気付かされるんだけど、じゃあ監督の池田洋子ってどんな感じ?と思ったら、面白い部分がありました。
OP担当のみながら「Goプリ」の田中裕太のインタビューも載ってるんですが、池田さんだと「ドキプリ」の36話が印象的なので(ラケルが八島さんに恋する話)あんな感じで良い?と聞いたって話が面白くて、ああ確かにプリキュアと妖精がわちゃわちゃしてる感じが確かにヒープリと共通する部分あるなぁと関心してしまいました。
流石はプリオタ。勿論、仕事仲間って言うのもあるんだろうけど、あの人の演出だとあのシリーズのあの話良かったよね、とかすぐに出てくるのでしょう。
OPと言えばミラクルリープのOPの隠しキャラとか気付かなかったし、そこも面白かったし嬉しかった。
唯一気になるのは、ラテがアースの変身バンクの時のみ元気になってるのが作ってる方もちょっとは気になってたのね、っていうとこでしょうか。あの辺りは特にエクスキューズもなく、もうそういうものとして処理するしかないのかな?私も実は毎回ちょっとそこ気になってるんですよね。ラテ大丈夫か?無理して無いか?って心配になってしまう。うん、プリキュアを見てると芽生える親心です。
ビョーゲンズ3幹部のインタビューも楽しいし、ヒープリがますます好きになる素敵な1冊です!
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