COSMIC GHOST RIDER: BABY THANOS MUST DIE
著:ドニー・ケイツ(作)
ディラン・バーネット、ブライアン・レベル(画)
訳:吉川悠
刊:MARVEL 小学館集英社プロダクション ShoProBooks
アメコミ 2021年
収録:COSMIC GHOST RIDER #1-5(2018)
THANOS LEGACY #1(2018)
☆☆☆★
宇宙最強の赤ちゃんヴィラン、
ベビーサノスを抹殺せよ!!
サノスとの戦いに敗れたフランク・キャッスル、またの名をパニッシャーは、ギャラクタスと同盟を結んでコズミック・ゴーストライダーとなった。
ギャラクタスと共に、再びサノスに戦いを挑んだフランクだったが、敗北してサノスの部下となり、フォールン・ワン(シルバーサーファー)の襲撃を受けて本当の死を遂げた。しかしオーディンの手を借りて蘇った彼は、今度こそ全ての元凶であるサノスを抹殺することを決意する。
まだ無力な赤ん坊のサノスを殺害するべく、フランクは過去へと向かった。コズミック・ゴーストライダーは今度こそサノスを倒し、宇宙を救ううことができるのか!?
という事で、溜まりまくるアメコミを少しずつでも消化していこう。
今回はドニー・ケイツ作「サノス・ウィンズ」の続きで、そちらに登場した、コズミック・ゴーストライダーが描かれる。時系列的にはこの後に「シルバーサーファー:ブラック」になってる様子。
パニッシャーがゴーストライダー化、しかもサノスを倒す為にまだ赤ちゃんの時のサノスを殺しに行くという、まるで「ホワット・イフ?」みたいな話で、割と話もギャグっぽい展開でありつつ、パニッシャーの本質である復讐と贖罪を結構真面目に描いているという、ドニー・ケイツの筆が乗ってる感じの勢いがメチャメチャ面白い。
「サノス・ウィンズ」の時もそうでしたけど、これどう見ても、これまで何十年と描かれ続けてきたパニッシャーとは別人じゃね?というくらいに性格は変わってるんだけど、テーマとしてはちゃんと共通したものが描かれてるんですよね。
そもそもが「復讐の精霊」であるゴーストライダーが先にあって、そのコズミック版を描くにあたって、誰がその中身にふさわしいかな?っていう所で、復讐にとりつかれた男であるパニッシャーがテーマとして共通してるじゃん、って事でフランク・キャッスルにしたようで、全てを滅ぼす存在であるサノスと共に、人はどう変わる事が出来るのか?あるいはそもそも人の本質は変えられるものなのか?っていう所をテーマにしてある。
育った環境、もしくは育て方によって人は違う道を選べるものなのか?っていうのは考えると凄く面白い部分ですし、例えばサノスなら、彼は生まれた時から征服者としての運命がもう決まってるものなのか?みたいな所に踏み込む話になってるのが、非常に興味深いテーマで、割と軽いノリで話が進みつつ、先の読めない展開でグイグイ読ませてくれる。
「サノス・ウィンズ」の時は、全てを滅ぼし続けて、本当に最後の一人になってしまった時に、何を思うのか?っていうのを、ありきたりな、最後に後悔するとか言う展開にせず、そこで実際に満足するっていう、普通は描かないことをあえて描いてたり、今回も、サノスを赤ん坊の頃から良い方向に進むように導いてあげたら?みたいなものに対して、いやこう来るかと。
ぶっちゃけ、色物タイトルっぽくて、どうなのかなこれ?と思ってたけど、予想以上に面白くて、意外と満足出来ました。
この作品にしか出て無い、アレンジされた未来のヒーローとかも結構面白くって、1コマ2コマくらいですぐ全滅してましたが、成長したカマラ・カーンの姿とかちょっと嬉しいですし、SP//drとかも居て(スパイダーバースのペニー・パーカーのアレです)この世界はこの世界でもっと見てたかったかも。
コズミック・ゴーストライダーはこの後「ガーディアンズオブギャラクシー」に参加してるとの事ですし、ドニー・ケイツは「ヴェノム」(アブソリュートカーネイジ)の後に今は「ソー」とか「ハルク」も手掛けてるそうで、今のマーベルの中核を担うライターって感じのようですね。突飛な発想と、そこからひとひねりある感じが面白い人ですし、今後も色々と邦訳が出そうです。というかその辺をこれから出す為に一連の流れとしてこうやって続けてドニー・ケイツ作を出してきてるのか。
MCUから入った人が、原作はこんな感じなのかっていうような読み方とはちょっと合わない気はしますが、そことは別に元からのアメコミファンの為の今のマーベルの最前線はこういうのですよっていう路線として、それはそれでありがたいです。
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