KANG THE CONQUEROR: ONLY MYSELF LEFT TO CONQUER
著:ジャクソン・ランジング、コリン・ケリー(作)
カルロス・マグノ(画)
訳:吉川悠
刊:MARVEL 小学館集英社プロダクション ShoProBooks
アメコミ 2023年
収録:KANG THE CONQUEROR #1-5(2021)
☆☆☆★
Only myself Left to Conquer
征服すべきは己のみ
タイムトラベラーにして、全宇宙の支配者。その名はカーン
征服者カーンことナサニエル・リチャーズ。
圧倒的な科学力とタイムトラベルの技術を誇る彼にとっては、
時間の流れなどなんの意味も成さず、全ては征服の対象でしかない。
あらゆる時空を縦横無尽に行き来するカーンは、時に無慈悲な征服者として、
時には勇敢なヒーローとして、あらゆる時間軸の中でいくつもの人生を生きてきた。
果てのない征服の果てにカーンが目にしたものとは!?
MCUフェイズ4~6「マルチバースサーガ」のラスボスという紹介がされている征服者カーンさん。古参のヴィランながら、こいつそんな大物だったっけ?という印象もあったりするのですが、そもそも邦訳版の範囲だと、出番がゼロでは無いにせよそんなに目立ったエピソードが出ていないというのもあるかもしれない。
そんな中で、2021年に出た個人タイトルのミニシリーズの邦訳版が出ました。カーンが出てた昔の作品を集めた奴ではなく、主な過去エピソードをカーン視点で新たに描き直すという感じなので、そこはやはり映画に合わせてのキャラ紹介編みたいな感じで描かれた作品なのかなと思います。
単純な好みだけなら、絶対こんなタイトル読まないやつだよなぁ、でもまあこれも勉強だからとか思いながら読み始めたのですが、これが意外と面白かった。
そうか・・・カーンは鳳凰院凶真、オカリンだったのか!
と言う感じで、タイムトラベルものならやっぱりその辺の面白さになるのかと、結構思ってたのとは違う面白さの一編でした。まあ流石に「シュタインズゲート」の方が百倍くらいは面白いけども。どちらかといえばシュタゲの元ネタである2002年版「タイムマシン」とかの方に近いかも。
何度も何度も、幾度となく歴史を繰り返しても、望んだ結末にならずに苦悩する。それが愛する女性に振り向いてほしいが故に、という意味ではサノス(MCU版では無く、デスの愛を求めたインフィニティガントレット版)にも近いと言えば近いですし、「ヤングアベンジャーズ」の時のように、別の時代の自分が目の前に立ちはだかったりする。
昔からカーンは別の時代に別の名前で存在したり的な設定はいくつもあるので、自分対自分みたいな、冷静に考えると頭おかしくなりそうな展開もあるし、古代エジプトの王ラマ・タトがカーンであったというのは元からあるネタで、その時代を再度描く事で、エジプトと言えば・・・月の神コンシュー。愛するラボーナがこの時代のムーンナイトだった!(今作のオリジナルだそうで)みたいな展開もあれば、この時代からもうあいつ生きてるよね、と原始のミュータントであるアポカリプスも絡んできたりと、この辺りはマーベルユニバース的な面白さがある。
アベンジャーズやファンタスティック・フォーと対峙する現代を経て、更には遠い未来まで話が進むと、もはやカーンの思考も人知の及ばぬ所にまで辿りつき・・・という展開はSF短編ちっくで別ジャンルの面白さが味わえました。
サノスの次はFFもあるし、順当にギャラクタスとかじゃないの?とか思ってましたが、まさしくパラダイムシフトというか、ただのインフレではなく別方向にずらすというのは発想としてはアリかなと思わせられた。そんな新しい発見があってちょっと面白かったです。じゃあこれでカーンが好きになったかといえば別にそんなこともないですけども。
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