僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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NOPE/ノープ

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原題:NOPE
監督・脚本・制作:ジョーダン・ピール
アメリカ映画 2022年
☆☆☆★


<ストーリー>
田舎町で広大な敷地の牧場を経営し、生計を立てているヘイウッド家。ある日、長男OJが家業をサボって町に繰り出す妹エメラルドにうんざりしていたところ、突然空から異物が降り注いでくる。その謎の現象が止んだかと思うと、直前まで会話していた父親が息絶えていた。長男は、父親の不可解な死の直前に、雲に覆われた巨大な飛行物体のようなものを目撃したことを妹に明かす。兄妹はその飛行物体の存在を収めた動画を撮影すればネットでバズるはずだと、飛行物体の撮影に挑むが、そんな彼らに想像を絶する事態が待ち受けていた。


タイミングが合わずにスルーになりそうだった所、一番近くの映画館でも遅れて公開。結構賛否は分かれているらしいという噂も耳に入りましたが、まあ他人の評価なんて所詮は他人の評価。自分の目で見て考えなきゃわからないものです。

 

予告を見た感じだと、え?今回は宇宙人物?
シャマランにおける「サイン」みたいなものなのかこれ、元々路線が似てると思ってましたが、そんなとこまで似て来たか、と思いつつ、個人的には宇宙人ネタ好きなので、扱ってるテーマに関しては悪くないけれど、なんか今回は過去2作からは路線を変えて来たのか?という印象はありました。

 

ネタバレありきでの感想になりますので、その点はご注意下さい。

 

やっぱり今回は賛否が出るのもやむなし、という感じはしたかな。
普通に表層上で起きてる事件だけを見てると、一風変わったSFで終わってしまう可能性があるのですが、そこから更に一歩踏み込むと、深いテーマ性が出てくるという感じでしたので、批評家受けはするけど、一般受けはしなさそうな映画に感じました。

 


私も正直、見終わった直後は、UFOのアブダクションに捻りを加えただけの映画かなと感じて、奇抜なアイデアは面白いけど、う~ん変な映画を作っちゃったなぁ?予算が増えて変に派手な作品を作ろうとしてないか?くらいで終わる所でした。

 

でも、映画館を出て家路につくまでの車の中で思ったんですよね。
冒頭のチンパンジーとか一体何だったんだろう?前半がとにかく退屈だったけど、あれ何か意味があったんだろうか?って。

 

で、ふと思ったんです。あの猿も風船を嫌がってたし、最後はアレと同じくパンっ!て爆死させられちゃってたなぁ。ある種同じ運命を辿ったって事か。その重ね合わせだったんだなって。

 

そこ一つ気付くと、あとはあれもこれもとパズルのピースが噛み合っていく。あのアジア人のジュープ、「アレ」にとっくの昔に気付いていて、馬が天に昇っていくっていうショーは、要は餌付けでそれを見世物にしていたっていう事ですよね。

 

映画(映像)の起源は馬と黒人だった的な説明を考えると、映画とは何ぞや?見る方と見られる方の関係やリテラシー、或いは興味に対する本能や、映画スターになったりSNSでバズりたいみたいな欲求も含めたテーマになっていたと、あとから気付く。

 

まあそこまで大袈裟に考えなくてもね、私が最初に思い浮かべたのは少し前に話題というか問題になってた西原理恵子です。
実生活を元にした日常コラム漫画で人気を得た人ですが、いざ子供が大人になった時、自分は嫌がっていたし散々な事を親に強要されていた事を告発し、色々と物議を呼んだあの流れを思い出しました。


いや西原とかあの年代にリテラシーなんてないでしょう?日本なんて偉い政治家でさえ未だに昔の考えを引きずってるんだし、御本人の関係とか部外者はわかりませんが、それを載せるメディアもそう、そこは日本は物凄く遅れてると思う。私も深くは知らないし、言われてみればそこら辺は確かに問題だよねっていう程度の認識しか無いですし。


でも、ネットでバズりたい人なんて、災害の写真を捏造してまで注目を浴びたいわけじゃないですか。そしてそういうのは日々流れてくる。


私はバズった事はありませんが(映画Gレコ3の時だけ1日1000PVとかあってビックリしましたが、3日で終わった。私にとってはプチバズって感じでしたが、普通1000程度はバズったなんて言わないでしょう)注目されたい気持ちはそりゃわかります。

 

でもさ、動物とか子供の面白い動画とかとってさ、物を言えない当の本人たちは本当は嫌がってるとかの可能性は無いの?っていう事ですよね、この映画も。

 

それこそ「トゥルーマンショー」みたいなものですよ。
それ、気持ち悪くない?っていう。

 

ただこの映画が面白いのは、そういうテーマを扱っていながら、ただの批判だけで終わって無い部分ですよね。そこもやっぱりジュープが面白くって、子役としてならした過去だって、アジア人=それこそイエローモンキー的な好奇の目で見られる部分だって普通に考えればあるはずです。子供時代はわからなくても、それは大人になってからなら尚更。
でもね、彼は注目を浴びられるならそれでも良い、そんなかつては人気だった子役の時の知名度を利用してテーマパークをやったりショーをやったりしてる。

過去の知名度を上手く利用しているとも言えますが、過去の栄光を話すれられずに居て、注目される事にとりつかれてもいるのでしょう。

 

みんなに見られたい、でも、目を合わせてはいけない。
みんなそれを見たい、でも、目を合わせてはいけない。

 

この辺のジレンマがとても面白い。
あと「映画」そのものがテーマという部分に関しては、一つ凄く面白いのがあって、映画ってカメラ目線は御法度です。そういう意味では、そこも目を合わせてはいけないもの、そいう事まで意図して映画のテーマにしてある(だから映画の起源に関する説明が最初に入る)っていうのはまさしくその通りだなと思えて、面白い部分でした。

 

私個人だと、これはネット批判的なテーマで描かれた映画なんだと思ったんですけど、よくよく考えるとそこら辺の「映画に関する映画」というのも凄く面白いですよね。

 

「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」的な奴でさ、この映画は「お前に行ってるんだよ」とただ安全圏から見ているだけの観客に語りかけてくるテーマなわけで、じゃああなたはこの映画と目と目を合わせて向き合いますか?っていうね。


なんだか、それなりに派手なビジュアルがあったおかげで、UFOは宇宙人の乗り物じゃなく、UFOそのものが生物だった。みたいな捻ったSF映画だなと単純に思ってしまったのと、後半は何故かアダムスキー型から使途になるわ、まさかの実写でAKIRAの2輪スライドとか、あきらかにはしゃいで作ってる部分とかもあって、え?ジョーダン・ピールって日本のアニメ好きなの?とか意外な所が見られたり(実際、好きでエヴァの影響は公言してるらしいです)単純に映画を見終わった時の印象と、後から考えた時の印象が随分違う感じを受けました。


え~!これ今後はどんな方向に行くんだろう?社会性の強いテーマは特徴ですので、もしかして真面目な映画とかに行っちゃう可能性もあるのかなと思いつつ予算が無いから仕方なくホラー作ってるわけじゃなく、こういう変な話が元々好きでやってるっぽいので、また変な映画作ってくれそうですし、今後また注目したい作家です。

 

 

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