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育ってダーリン!!

育ってダーリン!!〔新装版〕A (少年サンデーコミックス)

Grow up my Darling
著:久米田康治
刊:小学館 少年サンデーコミックス 新装版全2巻(A/B巻)2002年
(連載:週刊少年サンデー増刊S 1994-95 週刊少年サンデー 2002)
☆☆

 

久米田康治の古い作品で読んで無かった奴を確保。
ラーメン屋にでも置いてあったのかっていうくらい染みがついてたりしましたが、私は別に潔癖症じゃないので安けりゃOK。

 

初連載作品である「行け!!南国アイスホッケー部」の後半と並行して月間の増刊号の方で連載してた作品っぽい。南国といえば下ネタですけど、こちらはあんまりそちら方面の描写は無いので、そういう部分では差別化してたのかな?

 

今の連載漫画は週刊にせよ月刊にせよ、ほとんどのものが定期的に休載入ったりしてますけど、当時は週刊連載の他に月刊誌でも連載持ってたりとかする作家さん、たまに居ましたよね。手塚時代はそれこそ並行で何本もやってましたけど、今思えば流石になんという時代だったんだと思わなくもない。

 

それだけ作家の方に表現したいものが多かった(今も「カイジ」の福本先生とかそうですよね)というのもあれば、編集側からの要望で何とかこなしていたとかもあるでしょうし(「キン肉マン」の連載中に「闘将!ラーメンマン」やってたのはそういう経緯だったみたいですし)そこは様々な事情があるのかな?久米田先生も「絶望先生」と同時に他者作画の原作のみですが「じょしらく」も重なってやってたりしましたしねぇ。

 

主人公の女子高生・羽留うららにひょんな事から祖父同士が決めた許嫁が居る事が発覚。それは小学5年生の坂本冬馬君だったが、今は不釣り合いでも大人になってしまえば5歳差なんて大した事は無いと考えたうららは、冬馬君を自分好みの立派な男に育てあげる事を決意する!みたいなラブコメ

 

「南国」は下ネタでブレイクしましたが、本来はあだち充とか高橋留美子みたいな所を目指して漫画家になったんでしたっけ?そういう意味では本来やりたかった路線なのかも?

ただ、久米田康治は世間で流行ってるものの逆張りみたいな所で差別化して個性を出す作家でもあるので、この辺の時代だともう「プリンセスメーカー」みたいな女の子を育てる育成ゲームみたいなのがもうあって、じゃあその逆で男の子を育てよう、みたいな発想ももしかしたらあったのかなと思わなくもない。

 

序盤は特に「男たるものこうあらねばならない」みたいなネタで進むので、凄く当時らしいというか、今の時代だと男らしさ女らしさの強制みたいなのは批判されがちなので、今はこういうの無理だろうなと思わせられます。
私はポリコレだのコンプラだの推進派な方ですけど、逆にそういうので描けなくなるものがあって窮屈に感じる人も確かに居るのかなとは思う。いやむしろ新しい価値感が描けるんだから、それは選択肢が増えてより世界が広がるんじゃないの?とも思うので、その人の考え方は全然あっても良い気はしますが。漫画でも小説でも映画でも何でも基本はその作家の思想を表現するものですし。

 


で、1年半くらいの連載で、冬馬君も小学校を卒業。中学に行く事になるんだけど、努力して優秀な進学校へ。で寮に入る事になり、二人は離れてしまう展開に・・・で割とクライマックスっぽいドラマが描かれる。ギャグ物でありながら衝撃のオチがつく最終回というのが久米田康治の特徴というか作家性かなと思うのですが、その辺りの片鱗はここの小学生編?でも見え隠れしつつ、おそらくは編集側からは継続してほしいとの要望があったのでしょう。これまで同棲していた設定が、今度は冬馬君の寮に寮母としてうららが入ると言う設定変更で数話は連載が続くも、間もなく突如の休止で連載ストップ。旧単行本も1巻のみ出て以降は音沙汰無しという感じになってたようです。

 

この辺りの経緯はその後も明かされて無いそうですが、まあ勝手に想像するに、終わらせられるキリ良いタイミングがあったのに、もっと続けて下さいと言われて路線変更の新しい展開を必死に考えたのに、そこに文句言われて喧嘩でもしたか、やる気をなくしちゃったか、担当編集が変わって切られちゃったか、そんな感じじゃないでしょうか。

 

集英社のジャンプ系みたいなアンケート主義と違って、多少展開が遅くても打ち切られにくいのがサンデーの特徴みたいな所もありますけど、昔から小学館は編集部側に高学歴が多くて漫画家を見下してる人も多い、みたいに言われる事が割とありましたしね。若い漫画家と編集部って二人三脚みたいな所もありますし、相性悪いと厳しい部分もあったのかなと勝手に想像してしまいます。

 

そんな路線変更の新展開から間もなく止まってしまった連載でしたが、そこから5年後くらいにサンデー本誌で完結編最終2話が掲載。すぐにそこを収録した単行本が新装版として全2巻で再刊行。増刊連載時は時期も重なる南国後期くらいの絵柄ですが、流石に5年後の完結編は「改蔵」の絵柄になってて、おまけページもチタンと羽美が出てたりします。

 

絵柄の違いはいかんともしがたいですが、締めくくりが流石は久米田先生と言いたくなる展開。5歳差カップルという設定もそうですし、5年後に最終回を描き下ろしという、時間の差というメタ要素を物語のオチ的に持ってくるこのセンス。

 

改蔵」「絶望先生」みたいなどんでん返し的なものでは無いけれど、例えギャグでも何事も無かったような最終回ではなく、ストーリー漫画的なオチはちゃんと欲しいと思ってる人なのでしょう。そういう意味では最後どうなったのかな?がちゃんと気になる作りにしてあるのは良いですね。

誰だってあると思うけど、途中までは読んでた漫画、いつの間にか買わなくなって最後どうなったのか知らないな?みたいなのってあったりしません?そこ考えるとね、面白いオチを用意しようという久米田先生なりの最後まで読んで欲しいっていう考え方なのかも。

単行本でおまけページを足すのは連載だけじゃ無く単行本を買ってくれた人に少しでも満足して欲しいから的な事は以前のインタビューで言ってたと思うし。

 

とまあ、単純に面白い漫画だったかと言われるとぶっちゃけ私は微妙でしたが、久米田康治ヒストリー的には、らしさは十分に垣間見える感じで、今更ながらにでも読んで損はしませんでした。

育ってダーリン!!〔新装版〕B (少年サンデーコミックス)

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