僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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機動戦士クロスボーン・ガンダム X-11

機動戦士クロスボーン・ガンダムX-11(1) (角川コミックス・エース)

MOBILE SUIT CROSS BONE GUNDAM X-eleven
漫画:長谷川裕一
刊:角川書店 角川コミックス・エース 全2巻 2022年(連載2021-22)
☆☆☆☆

 

宇宙世紀0170――
アッシュ、レオ、フォントらがコロニー降下作戦
「DUST計画」を遂行する中、
カーティスは木星タカ派「オリンポスの下僕」に立ち向かう!
新たな愛機X-11を駆り、兄弟機X-12と激突!!

 

クロスボーンガンダム最新作にして最終章・・・と思いきや、次も発表されました。
そっちはカラス先生の過去を描く短編っぽい?アーノルドとイオの姿も出てましたので、3人分やるのでしょうか。

 

こちらも連載開始時から短期シリーズと告知された上での連載でした。「DUST」本編で途中離脱したカーティス・ロスコの木星圏での戦いを描いたサイドストーリー。

 

「鋼鉄の7人」なんかで凄く感じたのですが、短いが故に密度が濃くなる時の長谷川漫画の構成力の凄さ、流石はキャリア長くやってるだけありますね。2時間映画みたいなもので、描きたい物語やテーマを最初から最後までの流れをあらかじめ決めた上で描けるのは大きい。

 

これは長期連載を見越した作りでは出来ないもので、どちらかと言えば読み切り短編に近いものかと思います。アメコミみたいにミニシリーズ、リミテッドシリーズみたいな文化が今後定着して行ければ絶対に面白い事になるんですけど、実際そこに日本の漫画が向かうのかはわかりません。別の作者にスピンオフ描かせるとか、そういう所はアメコミの真似をしてる流れがあるので、そんな流れも出来ると良いなと思ってます。
日本は長期連載を見越したものか、読み切り短編の2極化になりがちですけど、単行本数冊程度の中編だからこそ出来る作りって言うのがあって、アメコミの名作って大概はそれなので。まあ映画的にまとまった一つの話が作りやすいって事です。

 

で、長谷川先生に何でそんな構成力があるかと言えば、キャリアも勿論ですけど、オタクだからですよね。古今東西色々な漫画や映画や小説やTVや何やらを、もはや博士レベルで履修して、その上それをちゃんと分析して、そもそも面白さって何かを理解した上で漫画を描いてるからこういう形になる。

 

今回、イオの設定がウインターソルジャーっぽいなと感じたり、オチをコメディー的なものにしたり、それでいて現代的なテーマや社会性とかもちゃんと描いてたりして、個人的には凄くマーベル映画味を感じました。
勿論、冷凍睡眠で生き続ける暗殺者なんて昔からの定番です。ギャグっぽいオチをつけてくるとかも別に初めてではない。でも長谷川先生もアベンジャーズとかきっと見てるだろうし、今のエンタメの最前線はこんな感じかっていう部分での影響は少なからずある気がします。

 

「DUST」でも富裕層と貧困層の問題は描いてはいたし、政治と市民みたいな視点も入ってはいたけど、個人的にはちょっと古い描き方かなとも感じてました。ただ今回、ヒロインの薄紅姫イオを使って、精神の貧困みたいなものまで描いてあって、そこが新しいなと感じたし、現代性という面では十分な物に思えました。

 

しかも面白いのはさ、基本的に長谷川漫画って少年漫画で、少年の持つ無限の可能性みたいなものを、青臭くても重視する事が多いと思うんですよね。でも今回、カーティスが主人公、トビアの頃の感覚もまだ残っているとは言え、やっぱり大人です。

 

「命令にしたがうだけの女にしたいブタも…自分で考えられるようにしたいおまえも…自分の望み通りにしたいだけなら…私にとっては同じ事だ!結局はただのエゴじゃないかっ」
「そうだな・・・そうかもしれんな」

 

っていうとこがさぁ、なんか私も身につまされる感じでした。
私も、ついつい皆が自分の頭で考えて、自分の意見を持つべき。映画でも漫画でも、100人居れば100通りの感想が無いのはおかしい、誰でも言える事じゃ無く、自分だからのものを出さなきゃ面白くないよ、とかつい簡単に言いがちです。
こうあるべきだ、自分は間違っていない確信があると言いたくはなるものの、それは考え方の押しつけでは?と言われちゃったらさ、確かにそうかもね、と、それはそれで受け止めるのがやっぱり大人なのかなと。これが少年だったらさ、「絶対に違うっ!」とか対抗したくなるじゃん。なのでこのシーン、メチャメチャグッと来ました。

 

あと何気に凄いのが、薄紅姫ってモビルトレースシステムじゃないけど、MSを身体的に捉えるというちょっと面白い要素があって、絵的には裸の巨人という喜んで良いのか何だかわからん画面になるけど、これを持ってくるセンスが長谷川節だなぁと思う。

 

ミリタリー路線とか、あと08でも対人兵器とか出た事ありますけど、そういう兵器としてうんぬんではなく、巨大ロボット物なんだから、巨人と人間の関係性や対比みたいなのって面白い部分ですよね。しかも日本には実物大のガンダムが3体もあるという凄い時代ですから。

アムロがジオン兵をガンダムで踏みつぶすって某島でのシーンって絶対実物大ガンダムを見たからこその発想と嫌がらせだと私は思ってるんですけどどんなもんでしょうか?

でも、巨大ロボと人間の対比って絶対に面白い要素ですよね。そこわかってるから無印クロボンで「トビアvsX2」とかやったわけですし。

 

その中で巨人としての全能感みたいなものもありつつ、MSを身体的に捉えるなら、人間では出来ない動きを出来るのがMSの強みでは?っていう疑問も当然あって、それは例えば「Vガン」でエクソシスト張りに頭部を180度回転させて後ろにバルカンを撃つとか面白いシーンがあって、あれ私大好きなんですけど、人間にはそんな事出来ないじゃないか?みたいなツッコミに対して、薄紅姫さん、X12で人の体とは思えない足技とか使ってますよね?そこが単純に面白いのと、じゃあ何で今回そんな巨大女みたいな演出をしてるのかといえば、最後にイオが「心を開く」というのを絵で見せるという演出ありきでの描写でした。

 

いや~、こういうのが漫画としての上手さです。


最も、最近は売れるコンテンツって物語やテーマ性とかではなくキャラクター性が一番の売りになってるようで、そんな部分ではやっぱりこの絵ではあまり評価はされないんだろうなとも思います。

 

いや、そうじゃないんだ!漫画で本当に大切な事は・・・とか言った所でね、それはあんたの中ではそうなんでしょ、そこ押しつけるのはエゴだよって言われたら、やっぱり「そうかもしれないな」としか言いようがないし。

 

で、そんな色々なテクニックを持つ長谷川でさえ生かしきれなかったラスボスメカのシュヴァイン。海老川メカで当然、エレゴレラの系譜。
Iフィールドに隠れて自分だけビームが撃てるって前にも何か居たような?と思ったんですけど、確か無印のエレファンテ戦がそんな話じゃなかったっけ?と思って調べたら、一応設定上はそもそもエレゴレラがエレフェンテの系譜だったっぽい。そこは上手く考えてあるんですね。ただシュヴァインの設定画を見ると、何と「ビームマクワ」という面白い隠し武器が設定してあって、うわっ長谷川これを生かせなかったのはちょっと勿体無いぞ!という感じです。

 

クロスボーンの触手状のスラスター、からの光の翼!とかビジュアル的に生える新しい要素もありつつ、最後はコアファイターが抜けた空洞という、RGのプラモいじっててこれは使えるって思いついたアイデアなんじゃないかと思える辺りが面白味でした。

 

「鋼鉄の7人」の集大成感、「ゴースト」で描いたネクストステージの新しさ、「DUST」のおいおいとんでもない事をやってくれたな!というのと比べると、流石に単体では見劣りしてしまう感じはしますけど、まあそこは最初から小作品だからと言ってますし、この先の未来がまた描かれる事があるのかは不明ですが、もし描かれる事があれば、主人公としてではなくキンケドゥ的なね、導き手として再び出会える事を願ってます。とりあえず、トビア=カーティスとしての冒険は一応の一区切り。

次の「KA・RR・AS」も楽しみにしてます

機動戦士クロスボーン・ガンダムX-11(2) (角川コミックス・エース)

 

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