学研 月刊アニメディア 2023年10月号
徳間書店 アニメージュ 2023年10月号
「プリキュアオールスターズF」特集でアニメ誌2誌で表紙コラボ、というなかなか変わったプロモーションをしてきた今回。
アニメージュの方は映画の後にプリキュア増刊を出すのが定番ですし(今年もあるよね?)TVシリーズ放送終了後に出るコンプリートブックは学研なので、おそらくはアニメディアの方の編集部も協力してるはず。そういう意味では元々プリキュア贔屓なアニメ誌と言える。(もう一つあるアニメ雑誌の「ニュータイプ」はプリキュア扱ってくれないんでしょうか)
表紙と同じ絵のクリアファイルも両方の雑誌につくので、コラボとしてはちゃんと足並み揃えてる感じなのはありがたい。
いや・・・ありがたいのかこれ?
監督&脚本インタビューは両方に載ってるものの、キャストインタビューはそれぞれのチームで別れてたりする。当たり前っちゃ当たり前だけど、違う会社のライバルがコラボするんだから、どっちも得するようにどっちも買ってね、という仕様。上手くやってますね。
普段はアニメ雑誌とか買う事は無いですが、せっかくのプリキュア特集だし両方買わせていただきました。プリキュア記事だけでも読みごたえは結構あるのでお金を無駄にしたとかは特に無いです。
アニメディアの方が「映画オールスターズF」の記事だけじゃ無く、TVシリーズの「ひろがるスカイプリキュア」「キボウノチカラ」舞台「ダンプリ」の記事まであってお得感は勝るかも。というか「ダンシングスタープリキュア」って公式的には略称が「ぼくプリ」なんですか?略じゃなくない???そういうものなの?まあいいけど。
逆にアニメージュの方は連載記事の「この人に話を聞きたい」というアニメクリエイターへのインタビュー記事があって、今回は今千秋さん。名作「映画ハピネスチャージプリキュア 人形の国のバレリーナ」の監督もやっていた方なので、プリキュア話もちょこちょこ出てきて面白かった。
プリキュア記事以外はパラパラと軽く目を通した程度ですけど、特集だけでもページ数は割とあって満足度は高い。
映画公開前のインタビューになるので、情報的には限られた形ですので、終わったらそこはまた是非増刊号でじっくり語ったインタビューが読みたい。
そんな中でいくつか気になった所をピックアップ。
「オールスターズF」尺的にはいつもの70分弱のようです。ちゃんとしたオールスターズをやるには2時間尺とかないと厳しいけど、それだと準備に2~3年かかる。毎年新しいシリーズに切り替わるプリキュアはそれだと2年先のシリーズもそれなりの形になった上でないと作れないし、そこはプリキュアというコンテンツのジレンマという事らしい。
いやこれね、コロナ禍で「ヒープリ」の春映画が延期になって、スケジュールもずれ込んだのもあったけど「トロプリ」「デパプリ」での春映画枠が無くなっていました。そこに対して私は20周年枠で特別な映画を作ってるから、その都合じゃないかと言ってたんですけど、そもそも現実問題そこは難しいっていう感じなんですね。
まあその分、20周年企画で予想外の物が色々出てきたので、もっと幅広く考えていくっていう事なのでしょう。
今回の「F」も本来はオールスターズとして企画が始まったわけじゃなく、20周年の内の後半10年分の集大成をやりたいというのが田中監督の意図だったみたい。結果的に全員を画面には出そうという事になってオールスターズにはなったものの、「ゴープリ」以降の選抜メンバーになってるのはそういう事のようです。
「プリキュアって何?」が大きなテーマになってるらしく、そこはタナカリオンらしいテーマの置き方だなぁと。自分がTVシリーズの監督やった「ゴープリ」の時点で、そこまでの過去11作を踏まえて、じゃあプリキュアってそもそもどういう存在なの?みたいな定義の為直しが「ゴープリ」にもあったわけで、その作風・・・というよりはモチーフの選定や描き方みたいな所かな?そういうのがゴープリ以前と以降ではまたちょっと違う形で、ゴープリがプリキュア史におけるターニングポイントとなったのは疑いようも無い部分。
ゴープリ以前のシリーズも含めて、どの作品も等しく、僕・私の考えるプリキュアはこういうものだと思うけど、みんなはどう思う?みたいな所が作品ごとに形になってきた。プリキュアはこうであるべき!みたいなものに囚われ過ぎない自由な作風がプリキュアの面白さだし、ゴープリで問いかけをして、そこに続く人達が、私の考えるプリキュアはこうかな?みたいなアンサーを出してきた。そこの集大成を再び田中監督がまとめるって面白いです。
更にインタビューで面白い発想だなと思ったのは、今回の映画オリキャラのキュアシュプリーム。過去シリーズ全部を知ってる人にとっては、こやつは何者?と思うけれど、別に20年の歴史を全部までは知らない人にとっては、このキュアシュプリームも前の何かのシリーズに出てたキャラなのかな?なんて思う人も居るはず、・・・という発想が非常に面白いです。
仮にアローハプリキュアが出て来たとして、プリオタじゃない人にとっては、こういうシリーズあったのかなと思うだけかもしれない。
とは言え、メタ要素的なものはあくまでわかる人にだけわかるバックグラウンドみたいなものとして描くだろうし、まずは純粋に、そして単純に見て面白いものに仕上げてくるだろうという信頼はある監督なので、素直に楽しむ部分とマニアックに楽しむ部分と
両方に期待してます。
出せる人数的に過去キュアはセンターピンクだけになるかな?と思ったけれど、それだと一人で変身できないミラクルの扱いに困ってしまう。マカロンを始め、キャラの立ってるプリキュアは沢山居るので、じゃあセンターピンクに拘らず、という発想も面白いですよね。脚本の田中仁さんが、「トロプリ」だけは異物すぎてどう動かして良いかわからず苦労したっていう話もまた面白い。
あとは映画じゃ無くTV本編の方の話で、小川監督。
何気にベリィベリーさんもお気に入りだそうな。流石にプリキュア化する事は無さそうですが、シャララ隊長の後釜として終盤に見せ場貰えそうな気がする。
「ダンプリ」・・・ぼくプリ?は
こちらのウェブ記事が面白いです
鷲尾さんの仕掛けだったんですね。そういえばいつか当時のファンが集まる場を作りたい的な事は言ってたような。ふつうに周年ライブとかの事だと思ってましたが、なるほどこういう事かと。
鷲尾さんねぇ、アニメを深夜だけにしてはいけない、それだと将来のマーケットが無くなるから、自分たちでそこは作っていかないと、という理由でNHKで「おしり探偵」やったり、かつてあった「東映まんが祭り」を復活させたりとかもやってる人。プリキュアの初代プロデューサーでしたが、今は東映アニメ全体の管轄やってる人ですし、
単純に目先の事だけでなく、将来まで見据えた視点が素晴らしいですよね。
「キボウノチカラ~オトナプリキュア’23~」
に関しても、今回の雑誌のインタビューやその後のコメントでは特に触れられてませんが、
この記事にだけ経緯が書いてあって、HNKの方から「SDGs関係で何かできないか?」という提案があって、そこにプリキュアを重ねた企画。
私の勝手な想像ですけど「まほプリ2」に関しては深夜アニメ的な所で続編をやってみるという実験なのかなと思うのですが、「キボウノチカラ」に関してはそういうノリで作ってるのでは無さそうなのでもしかして多少教育的な部分もあるのかなと思ってたりします。まあシリーズ構成はお馴染みの成田良美さんですけど。
でね、TVシリーズ本編にしても、映画にしても枝葉の企画物にしても、そこに新しい挑戦をする事に私はプリキュアらしさを感じます。
ただ、政治とかもそうですけど、世の中は基本的に保守派の方が多分多いのでしょう。変に変わった事をするより、いつもと同じで安定してる方が良いし安心できると。
初代プリキュアに対しての鷲尾Pとか西尾監督のインタビュー記事とか読み返すと、結構あちこちで何度も言ってますが、もし上手くいかなかったら、みんなに「ゴメンなさい」してから逃げちゃおうかって西尾さんが鷲尾さんに言ったと。ただ逃げるんじゃなくて、ちゃんとゴメンなさいしてから逃げようなんて言う人だから信用出来たって。
プリキュアだってそうじゃないですか。「NS2」でキュアパッションとキュアビートがグレルに言ってましたよ。間違ったらやり直せばいい、何度だってやり直せるって。
皆が大好きなプリキュアは、挑戦する人をバカにすると思います?失敗した人をそれみたことかって非難すると思います?
「HUGプリ」の最後、みんながプリキュアになれるって教えてくれたじゃないですか。
「ヒープリ」でグレースを演じた悠木碧さんは言ってくれたじゃないですか、みんながプリキュアって。
私は良い歳したおっさんですが、プリキュアになりたいもの。実際そんな立派な人間じゃないけれども、プリキュアの精神、プリキュア魂はこんな私の心にもきっとあると信じたいですよ。
だからこそ「プリキュアとは何か」改めて問い掛ける映画がメチャメチャ楽しみです。