THE AMUSEMENT PARK
監督・編集:ジョージ・A・ロメロ
アメリカ映画 1973年制作(2021年日本公開)
☆☆★
「ゾンビ」のジョージ・A・ロメロの幻の中編(約1時間)
年齢差別や高齢者虐待を題材にした教育映画として教会の依頼で作られた作品ながら、あまりにリアルで悲惨な内容だとして、結局は日の目を見ることなく封印されてしまったお蔵入り作品。
ロメロの死後、奥さんがその遺産を引き継いだロメロ財団の手により当時のフィルムを発掘、レストアされて公開されたという風変わりな経緯を持つ一本。
ただ老人がアミューズメントパークに行って酷い目に合わされるというだけの内容なんだけど、寛容の無さ、リスペクトの無さ、そして希望の無さがこれでもかと描かれる。
ただのジェットコースターとかの乗りものだけでなく、投資や財産に纏わるコーナーがあったり、若者が未来を幻視する占いコーナーみたいなものがあったりと、少々ファンタジックな要素もあり、まあ本来は「非日常の楽しい場」であるはずのアミューズメントパークを人生のメタファー的に描いてある。
世間はこんなにも冷たく世知辛いのか、こんなはずじゃなかったのに!
と嘆いて終わるような内容。
まあロメロですから、ゾンビと同じように風刺劇なわけです。
何で協会がロメロにこんな作品を依頼してるかと言えば、そりゃあ当然ロメロの地元がピッツバーグという片田舎だから。「ゾンビ」もそうだけど、都会に出ずに地元で作るタイプの人ですから、そりゃあ地元の繋がりで映像作ってるとこなんてロメロ先生しか居ないでしょって話だ。
お話として面白いか、映像として面白いかと言えば、ぶっちゃけそんなでも無いんですけど、ロメロの作風という意味ではもう十分すぎるくらいにロメロです。
何か他の映画のソフトとかに映像特典で入ってるくらいの感じで言えばへぇ~こんなの作ってたのかとそれで済んだ感じだと思うけど、ロメロの幻の作品!みたいに構えちゃうと、若干拍子抜けはしちゃうかも。
まあでも、こんなん見る人はロメロのファン以外は居ないでしょうから、そういう意味ではこうして日の目を見る事になったのは有難い。
私はオールタイムベスト作品みたいなのを選出する時は、昔からロメロの「ゾンビ」って言う事に決めてます。ベタですけど、映画オタクにはわかりやすいタイトルですしね。
ただ何も考えず思考停止して本能の赴くままに消費社会を生きるお前らは、生きながらにしてもう死んでいる生きた屍、リビングデッドだ!とか突き付けられたらさ。皮肉屋な私は何それ超カッコいい!痺れる!ってなるじゃん。
そりゃあね、神木君みたいに「先生はロメロって知ってますか?」とか言いたくなるよね?
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