僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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ナイト・オブ・ザ・リビングデッド

ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド スペシャル・エディション [DVD]

原題:NIGHT OF THE LIVING DEAD
監督・撮影・編集・原案:ジョージ・A・ロメロ
脚本:ジョン・A・ルッソ
アメリカ映画 1968年
☆☆☆☆☆

 

年明け1本目の映画は私の愛するロメロゾンビの1作目「ナイト~」から。

 

実は前年の映画ランキングを書くに当たって、今回は本数が少ないから年間じゃなく、代わりにオールタイムベスト10みたいな事でもやろうかなと思ったんですけど、昔に遊びで決めてた時は今ならきっと入れたくなるであろう「エンドゲーム」とかよりずっと前ですし、ブログ書くようになって4年の間に見返してないフェバリット映画とか沢山あるし、逆に前年にフリードキン監督が亡くなられた時期に「エクソシスト」見返して記事書いたりすると、思い入れのある作品だからやっぱり楽しいんですよね。

ポール・バーホーベンは「ロボコップ」か「スターシップトゥルーパーズ」のどちらかは入れたいよな、でも何年も見返してないし(リメイク版の時にロボコップは改めて見た気がするけど)ブログにも記事残してないから、まずそっからやっていこうか、みたいな感じで今年の企画方針みたいなものが定まったので、まずは「ナイトオブザリビングデッド」から。

 

去年、4Kリマスター上映とかやってたみたいなんですけど、地元では上映無くて劇場では見た事ありません。そもそも日本では「ゾンビ」の後にビデオとかで入ってきた作品なので公式的には日本じゃ未公開作品になってるはずですし、権利クレジットを入れ忘れたおかげで、この作品って昔からパブリックドメイン(権利が無いので誰でも自由に使って良い)なので、本国でもフィルムを持ってる人が自由に上映出来て、ドライブインシアターの常連みたいな感じで広まっていったという変わった経緯を持つ。

 

せっかくなのでソンビ詳しくない人の為に基礎知識みたいなものも書いておきましょうか。
一般的にイメージする「ゾンビ」という概念の本当に一番最初の作品がこれ。これ以前にもゾンビという概念やそれを扱った映画はありますが、大元になってるハイチのブードゥー教に伝わる「死者を蘇らせて労働力にする」という言い伝えを元に作られたもので、いわゆる一般的なゾンビの特徴の「死者が生き返って人間の肉を貪る」「ゾンビに噛まれた者はゾンビ化する」「脳を破壊する事でのみ倒せる」というのは全てこの「ナイト~」から始まったもの。

 

例えば「吸血鬼ドラキュラ」はブラム・ストーカー、「フランケンシュタインの怪物」はメアリー・シェリーらの小説が原点としてあるわけですが、それと同じようにゾンビの原点はこの「ナイトオブザリビングデッド」という映画が全ての原点。

 

ここから有象無象の大量のゾンビ映画が量産されたし、ゲームの「バイオハザード」だってこの映画が無ければ絶対に生まれていませんでした。その「原点」をこの目で見れるって結構貴重だと思いません?そんな生まれる前のものまで興味無いよっていう人も多いのかなとは思うけど、良い歳したおっさんの私だって1968年なんて生まれてませんから。

 

私もこの作品を知ったのって初代「バイオ」にハマって以降だった気がします。「ゾンビ」という映画が原点としてあって、どうやらそれは映画マニアの間でも特別な作品としてカルトな人気があるものらしい、みたいな所からレンタルでゾンビを初めて見て、その後に更にゾンビの前にこれがあるみたいな事を知って、あの悪名高い「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド最終版」のDVDを買って観たのが最初だったはず。(その後は知識をつけてコレクターボックスで買い直しました)


で、そんな「ナイト~」のさらに元ネタであるリチャード・マシスン「地球最後の男」「オメガマン」とかまで見たりしてました(確か丁度その時3度目のリメイクである「アイ・アム・レジェンド」やってたし)

 

とまあそうやって掘り下げていく事で知識や見識が広がる面白さ。私的には単純に「バイオハザード」から始まった興味だけど、子供の頃からRPGとかアクションゲームの中のただの数ある中の一つの敵として出てた「ゾンビ」にこんな奥深い歴史(いやむしろ簡単に遡れる程度の近代の歴史しかない)みたいな所に面白味を感じます。

 

更に「ゾンビ」というクリーチャーの他のモンスターとは違う物凄い面白味があったりするのですが、それは次の「ゾンビ(2作目ドーンオブザデッド)」か走る系のゾンビの時にでも語ろうかな?話がまた長くなりそうなので。

 

2作目の「ゾンビ」が私は個人的なオールタイムベスト映画なんですが、「ナイト~」も派手さは無いけど同じくらいには好きで、ナイト~の良さは全てがコンパクトにまとまってる所なんですよね。

 

でもコンパクトでいながらも、ありとあらゆるものがちゃんと詰まってる面白さ。
冒頭の墓場のシーンからバーバラが一軒家にたどり着くまでも、何が起こってるかわからない不安感(こういうのも宙吊りのサスペンスとも言えるのかな)一軒家に辿りついてからのラジオやTVはSFマインド?溢れる、日常の終わりだし、次の「ゾンビ」程では無いけれど、いかにここから脱出するかの手を考えるロジックやシミュレーション的な面白さもあるし、限られた人数しか居ない中での人間同士の対立の面白さは言わずもがな。そこに迫りくるゾンビという恐怖。

 

それを実質的な1シチュエーションでやってしまう低予算映画だからこそのアイデア

 

そしてロメロ本人はこの作品に限っては政治・社会的なメッセージは全部後付けですよって言ってるけど、後付けだろうと何だろうと、そこをちゃんと作品から読みとれる作りになっている。

 

バーバラが主人公かと思わせておいて、結局泣き叫ぶだけの人になってるのはどうなのって意見はわかるし、そこを時代に合わせて強い女性として描いたリメイク版「死霊創世期」もそれはそれで時代に合ってるんだけど、単純だけど主人公と思わせておいてそうじゃないっていう意外性も個人的にはやっぱり好きです。

 

そして実質的な主人公のベン。つい手が出てしまうのはどうかと思うけど、それでもね、この時代に黒人を主人公にして、それを単純に粗暴な性格にしたり面白黒人枠とかにせずに、理知的に一番冷静にこの状況を解決していく主人公っていうのはこの時代においては相当に珍しい。結果的にですが、黒人を良い人に描いて白人を自分勝手で嫌な人間に描いてるわけですし。

 

ここも本当は脚本上はベンもそういう人間として描かれてはいなかったけど、演じた役者さんが学もある人で真面目な人だったから、このキャラ設定はどうかと思うから自分で変えて良いですか?っていう結果というんだから、ロメロの裁量の面白さよ。

 

そして!そしてここからが何より私がこの映画で一番好きな部分。


朝になって保安官らが率いる銃を持った自警団のゾンビ狩りが始まる。まるでハンティングかのように、ゲームをしているかのようにポンポン始末されて行くゾンビの群れ。

 

あの恐怖がここであっさりひっくり返ってしまう。結局ゾンビだろうがモンスターだろうが、人間様には叶いやしないのさ、とでも言いたげ。銃を持った人間の圧倒的な殺傷能力と比べたら、ゾンビなんて可愛いものなのです。というか、ほんの数分前まで恐怖の対象だったゾンビが可哀相に思えてくる。

 

そこからのあのラスト!
この世界には神も仏も居やしないのさ、ここは地獄から甦った死者さえも逃げ出す人間様の世界。

 

なんというドライさ!
超カッコ良くないですか?
超恐ろしくないですか?
痺れる・・・

 

このさあ、一瞬で全てがひっくり返るラストがメチャメチャ好きなんですよ。

因みに「悪魔のいけにえ」もあの善悪がひっくり返るラストが大好きです。

 

いやぁ映画って面白いですねぇ。フィルムがスミソニアン博物館だかで永久保存されるのも納得できますわ。

 

ねえお客さん
ジョージ・A・ロメロのゾンビ3部作(正確にはその後もサーガとして更に3本ある)
ナイト・オブ・ザ・リビングデッド
「ゾンビ(ドーン・オブ・ザ・デッド)」
死霊のえじきデイ・オブ・ザ・デッド)」
是非、憶えて行って下さいまし。

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