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劇場版 SHIROBAKO


劇場版「SHIROBAKO」本予告【2020年2月29日(土)公開】

監督:水島努
日本映画 2020年
☆☆☆☆☆

 

2016年に放送され、アニメの制作現場を描き話題になった「SHIROBAKO」の劇場版。
P.A.WORKS制作のお仕事シリーズ2作目に当たる作品で、まずはそちらの説明から。

 

1作目が2011年放送の家庭の事情で母元の実家の旅館で働く事になった高校生の緒花を描いた「花咲くいろは」。こちらも人気が出てその後に劇場版も作られましたが、劇場版はお母さんの過去を中心に描かれたりと、続編というよりややサイドストーリー的な作り。
2作目が2014年放送、時間軸上は今回の劇場版の4年前になるTVアニメシリーズ「SHIROBAKO」。
3作目が2017年、かつて一時期実際にブームになったと言われる、日本国内で独立国を設立するという体の村おこし事業を描いた「サクラクエスト」。

 

私は話題になってたのと、アニメを見る上での勉強にもなるかなと思って「SHIROBAKO」から見始めたのですが、これがやっぱりとても面白くって、せっかくと思い「花咲くいろは」も見てみたら、負けず劣らずそちらも面白かった。その後に第3弾として発表された「サクラクエスト」のみリアルタイムで見てました。

 

シリーズ毎に監督や脚本は違うのですが、どの作品も仕事って何だろう?働くって何?みたいな事をちゃんとテーマとして向き合って描いてあって、ただ設定として仕事の現場を舞台背景にしてるだけとか、メインの女の子のキャラがかわいいとかだけじゃなく、職種は違えど実際に働いている身にとっては、色々と身につまされる部分が多くてどの作品もとても面白かったんですよね。

 

花咲くいろは」は主人公が高校生ですので、実家の旅館で働くっていう部分をしっかり描きながらも、まだ社会に出ていない人にとっても見やすいですし、2作目3作目ではほぼ描かれない恋愛要素とかも入ってるのが、作品の作りとしてメチャメチャ上手く出来てるなと思います。仕事がテーマだけど学生のアニメファンにも見てもらえる作りになってるわけです。

 

3作目のサクラクエストは素材としては一般的には馴染みも無く若干とっつきにくい印象もあるのですが、個人的にはNPO活動に参加してた経験もあるので、NPOあるあるが凄く描かれてて面白かった。

仕事=社会にどう向き合うのか、みたいなものもあるんだけど、同時に個人のパーソナルな部分としては承認欲求というのも、仕事と言うか生きる上で重要になっている事は社会学なんかでもよく言われてる事です。サクラクエストはその辺りまで踏み込んで描いてあるのが面白い。

 

まあ何が言いたいかと言えば、3作とも面白いのでオススメしたくなる作品だなと。

 

そんな所で今回の「劇場版SHIROBAKO」ですが、いやもう流石。お仕事シリーズとしてブレないで作ってくれたのがホントに素晴らしかった。「劇場版花咲くいろは」の事もあったので、実は少し心配してた部分もあったんです。TVシリーズが凄く人気が出て、それを受けての劇場版だったので、アニメ現場で働く5人の女の子のその後を描く、みたいなファンムービー的な作りになってたらちょっと残念かもと思ってたのですが、全然そんな事無かった。

 

逆にキャラクターメインで見たかった人には不満もある作品かもしれませんが、個人的にはちゃんと今回も「お仕事って何だろう?」を軸に描いてあったのがとても良かった。

 

流石に主人公の宮森はメインとして描かれますが、他の「上山高校アニメ同好会」(私の地元の山形ですよ)出身4人がムサニの他スタッフとほぼ同格として描かれてるのが良かった。流石にいくらかは優遇されてますし、印象に残るドラマもきっちりありますが、多分、TVシリーズを知らずに単純に一つの映画として見た人が居れば、そこの差ってわからないレベルだと思います。

 

なので、この映画周辺で一番の不満点と言えば、それはパンフレット。アニメファンに向けたような作りをしていて、正直腹立ちました。ムサニアニメーションのスタッフとか、周辺の人々の顔と名前が流石に全部は憶え切れてないので、そこはパンフで確認しようかなと思って買ったのですが、人物紹介でメインどころしか絵が乗って無いわ、それこそスタッフインタビューとかが読みたい作品なのに声優メインだわ、映画パンフでお馴染みの映画ライターとか評論家の作品解説も無いわでガッカリ。

 

え~と、ブログを見てもらえればわかると思いますが、私はアニメも好きですが、普通に映画はアニメ以上に見てるし、そういう人から見てもこの「劇場版SHIROBAKO」って凄い作品だったと思ってます。
パンフ制作はP.A.WORKSの仕事じゃなくて、発行する所が編集者とかライターを集めてって感じだと思うのですが、う~ん、この作品の本質みたいなとこ、伝わってる?という感じがぬぐえず。いやもしかしたら今後ムック本とか出すから詳しくはそっち買ってね、アニメ業界儲かって無いんだからそこは協力してくれ!なのかもしれませんが。

 

今回の劇場版、太郎の企画書に点と線が円になるみたいな事が書いてありましたし、杉江さんのアニメ教室でもそういう描写がありました。作品としても個々のスタッフを集めて線を繋げて最終的に円にするみたいな事を示唆するものを入れてありましたよね。(実に映画的!)なのでその円とは繋がっていないパンフの件は凄く残念だな、とより感じました。

 

劇場版なので、劇場版アニメを作るというのはやっぱりベタですが、その入れ子構造はメタ的にとても映画に合った作りになってましたし、この映画の先にあるものを想像して見てたので、ホントに全てのシーンが泣けて泣けて仕方ない。
実は私は上映時間の7割8割くらいをずっとグズグズ鼻すすりながら半泣きで見てました。コロナウイルス蔓延が懸念される中、やな客だなぁと思われてしまったと思います。同席されてた方は本当に御免なさい。一つだけ確保できてたマスクは使用してましたし、検査はしてませんが風邪の症状も全く無いのでそこはご心配無く。お客さん、かなり入ってました。普段映画館行ってる時は10人以下とかザラですが、大きい箱の6割くらいは埋まってた気がします。

 

これもアニメ業界あるあるで、ムサニが一挙にスタッフ減ってそこは冒頭からちょっと寂しい気持ちになりましたが、TVシリーズでも描かれてたように、あの業界は常にスタッフが動いて色々な会社を渡り歩くのが普通っぽい。自転車操業の中で企画凍結やトラブルも日常茶飯事。権利関係はガイナと庵野のカラーの下りを思い出しました。乗り込んでいく所をアクションシーンとして描くのはTVシリーズの踏襲で、いかにもSHIROBAKOっぽい作り。

 

それでいて、ただのアフターストーリーや、アニメあるある話に終始せず、ちゃんとお仕事って何だろう?をテーマとしてぶれずに描いてあるの。何度でも言いますが、そこが本当に素晴らしかった。


ずかちゃんの、事務所や後輩への向き合い方。
安原さんの作監になったものの、未だに自信を持てずにいる姿。
りーちゃんの師匠との距離の変化。
瀬川さんと相変わらずめんどくさいイデオンコンビとか、他にもレギュラーキャラの今の姿が各キャラわずかな時間ながらきちんと描かれる。
転職しちゃったけど、万策尽きたもちゃんと聞けるサービス精神。

 

個人的にはCG制作みーちゃんの納期と後輩への接し方の葛藤とかがグッと来るポイントでした。なかなか仕事を上げられないで苦戦している後輩、でも彼女にも得手不得手があって、得意な物なら十分な力を発揮できる。少子化でどこの会社も後継者不足です。育て方も本当に大事。
そして「この車は何キロで走ってるの?コーナーのRは?この速度でこの曲がり方は変じゃない?」「そんなメインのシーンじゃないしそこまでやってたら納期間に合わないですよ。むしろアニメでそこまでリアルを求めるなら実写やればいいじゃないですか」的なシーン。

 

ゲームセンターで対戦格闘やってるシーンを思い出して下さい。瀬川さんはレバーワイン持ち、太郎はかぶせ持ちをしています(遠藤さんはどうだったっけ?)画面内の格闘ゲームも、ポリゴンは粗めなものの、ダウン攻撃とダウン回避で避けてる所が見えて、凄まじく本物っぽく見えるし、攻撃ボタンを押すテンポも物凄く格闘ゲームのリズムでした。わかる人にしかわからない部分だけど、ものすごくリアルなのです。

 

実写映画でも、とあるキャラクターが何かから逃げだして、ゲーセンで憂さ晴らし、みたいなシーンよくあります。で、そこでも負けてクソッ!ってなるのが定番。でもそういうシーンってレバガチャボタン連打なんですよね。負けるシーンならそうだろうとも思わなくもないですが、そんなわずかな数秒のシーンをこの映画ではきちんと取材して、それっぽく見せる努力をしているのが見てとれました。
凄くないですか?そう、そのこだわりが生むものってちゃんとあるんだよ。

 

とゆー事はですよ、この映画の全てのカットがこういうこだわりとか思考錯誤とか、スタッフの汗と涙で出来ているわけです。そこが伝わってくるからこそ、もうただ見てるだけで何気ないシーンでも涙が出て止まらなくなっちゃった理由なんです。

 

最後にも脳内ぬいぐるみコンビに言わせちゃいました、この映画で言いたい事は
伝わったかなぁ?って。最初、宮森のお姉さんは言う訳ですよ「あんたは好きな事を仕事にしてていいわね」って。大して利益も出ずに縮小していく会社、ろくでもない業界人とのトラブル、なんとか納品日前の完成までこぎつけた。仕事をやりました。大人としての責任を果たしましたよって。

 

でもそれで終わりでいいの?あなたが本当にやりたかった事って何?自分が求めてたものってこれ?もう一度聞くよ、あなたにとって仕事って何?

 

いやもう100点です。今時、有名作家も原作も無しで劇場オリジナルのアニメ企画なんてそもそも無いでしょ、ってとこに目をつぶってでも100点。

 

一つの映画としてもうメチャメチャ良かった。
TVって何?マスコミって何?報道って何?を描こうとした「さよならTV」と、一つの作品を作る意味とそれが残すものは一体何か?を描いた「映画スタプリ」とセットで見ておくべき作品です。


さて皆様もご一緒に!


どんどんドーナツどーんと行こう!

きゃらスリーブコレクション マットシリーズ 劇場版「SHIROBAKO」 宮森あおい & 宮井楓 (No.MT782)

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