僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

見たもの読んだものなどの簡単な記録と感想のチラシ裏系ブログ

ビフォア・ウォッチメン:オジマンディアス/クリムゾン・コルセア

ビフォア・ウォッチメン:オジマンディアス/クリムゾン・コルセア (DC COMICS)

BEFORE WATCHMEN:OZYMANDIAS・CRIMSON CORSAIR
著:レン・ウェイン(ライター)
 ジェイ・リー、ジョン・ヒギンズ、スティーブ・ルード(アーティスト)
刊:DC ヴィレッジブックス ビフォア・ウォッチメンシリーズ4(全4巻)
アメコミ 2014年
収録:BEFORE WATCHMEN:OZYMANDIAS #1-6 :CRIMSON CORSAIR :DOLLAR BILL #1(2012-13)
☆☆

 

「ビフォア・ウォッチメン」シリーズ4冊目。
ビフォアシリーズはこれで最後になります。マクガイヤーゼミのウォッチメン回に合わせて急いで読む感じだったので、これじゃTVシリーズ間に合わないとそっちも見始めてしまったらこれが面白くて止まらず。ドラマ6話まで見てまずこっちを先に終わらせようとなんとか読了。

 

ライターのレン・ウェインは私何か読んだ事あったっけかな?あまり知らない人ですが、編集者兼ライターのようで、オリジナルのウォッチメンでも途中までは編集者として関わっていた様子。

 

解説書によればウォッチメンの元ネタの一つである「アウターリミッツ」とオチが同じになるので、レン・ウェイン的には別のラストにしようと提案するも、ムーア先生は断固拒否。それで袂を分かつ事になってしまった、という事らしいです。

 

別にウォッチメンがパクリというわけではなく、そもそも文芸とかありとあらゆるカルチャーの引用を隠さずに使ってるのがウォッチメンという作品ですし、最終回にちゃんとアウターリミッツがTV放送されるシーンも入ってます。

 

新装版はムーア先生の意図で原書から余計な物は一切つけてくれるな、という事で、解説も何もついてないですが、最初に日本語版が出た電撃版の方は巻末に解説がついてました。アウターリミッツの件とかもそういうので知った口ですし、色々なカルチャーに精通していないとその奥深さの全てはなかなかわからないと思うので、個人的にはやはり解説がついている電撃版の方が楽しみやすいと思ってます。


普通に読むだけでも唯一無二なレベルで圧倒される作品ではありますが、古本屋とかで電撃版を見かけたら持ってない人は是非確保してほしい。背景一つにこんな意味が籠められてるのかとビビる事請け合い。(新装版の時はネットで解説という事でサイトが立ちあげられてましたが、確か途中までで終わっちゃってたはず)

 

という事でオジマンディアス編。
この後のダラー・ビル編にも通じるのですが、登場人物の成り立ち、若い時から今に至るまでの流れを描く事で、キャラクターに深みを与えるという、コミックに限らず、映画でも小説でもそうですが、そういう基本的な所を描く、というのがこの人のスタイルなのかな?

 

基本に忠実な分、あまりウォッチメンらしくはないかも。オジマンディアスの天才ぶりが常人には理解できないレベルなので、逆に変人としての面白さは勿論ありますが、いささか正統派な描き方すぎるきらいもあります。

 

こういう基本に沿った描き方って、基本である分、良い面は当然あるんだけど、同時に逆にマイナスになっちゃう事もたまにあるんですよね。

 

物語の悪役とかラスボス、敵のライバル的な存在。彼も実はこういう悲惨な生い立ちがあって、こういう悲しい事を経験したから悪の道に走ってしまったんだよ、っていうのは、感情移入しやすくなる半面、逆に普通の存在に見えてしまう事があったりします。

 

私の好きな「プリキュア」で、最初に見始めた「ハートキャッチプリキュア」で、ラスボスのデューンという人が、何故こんな悪の道に走ったのかが最後までよくわからなくて、そこの部分は少し深みが無いな、とプリキュア見始めた頃は思いました。


で、終ってから数年経って近年になってからシリーズ構成の人が書いた小説版が出て、そこにはちゃんとラスボスのデューンの背景みたいなものが掘り下げられて描かれてたんですよね。

ラスボスにも色々悲しく悲惨な過去があって・・・という感じの話だったのですが、わかりやすい半面、ああこれTVでやんなくて良かった、と思ってしまいました。


最初は子供向け番組だから悪側を描けないんだなと思ってたのですが、描かない方が面白かったし、あれは描けなかったんじゃなくて、あえて描かなかった部分だったんだなと、そこで改めて思う事が出来ました。(小説版は小説版で、TVのすぐ後に出たわけじゃないし、後になってからの設定の補足みたいな面もあったと思うので、全面的に否定したいわけじゃないのでその辺りはご容赦ください)

 

今回のオジマンディアス編も、ちょっとそれに近い物を感じました。幼少期のオジマンディアスはこんな感じだったのか、へぇ~。くらいでしかなかったような印象。最終話とかは本編の裏側みたいな所も読めたりするので、まさしくプレリュードっぽくは読めるのですが。

 

超越者、神にも等しい存在であるマンハッタンの裏をかく為に、心拍数や瞳孔の動きまでもコントロールしなければならないオジマンディアス、っていうのは個人的に好きなシーン。感情や心の内までは読めないけど、肉体の物理的な反応なんかはマンハッタンにはお見通しになるはずなので、そこまで徹底しなければならないっていうのは面白いし、神をも欺く人間の精神による人体のコントロールとかなかなかにスリリングです、人間の限界値ギリギリまで超人レベルのオジマンディアスならではです。でもこれ本編でも似たようなシーンあったような。

 

そういえばアートのジェイ・リー。現行のマーベル作品でもたまに描いてますが、私のアメコミ入門でもあった90年代小プロ「X-MEN」の時にクロスオーバー時のXファクターだったっけかなぁ?そこでもジェイ・リーが描いてて、陰影の強い絵にエッジの効いた線で、個人的にとても好きでした。線の細さは今でも同じですが、カラーが細かくなるとなかなかあの雰囲気は出ませんね。

 

二つ目のクリムゾン・コルセア編。
こちらはこれまでのシリーズのリーフ一冊ごとに2ページづつ掲載されていた海賊コミックで、それをまとめたもの。

 

ウォッチメン本編の「黒の船」は登場人物の心象とかとリンクしている感じで、これはこういう意味かも?なんて想像する面白さがありましたが、こちらは正直私にはよくわからず。解説の方でも、あまり本編との関連性は無さそうとの事。

 

そして最後のダラー・ビル編。
ミニッツメンに参加していた銀行のお抱えヒーロー。こちらはどこまでも常人なので、前述の「掘り下げ」として、すごくわかりやすいし、共感もしやすい作品かなと思いますが、果たしてウォッチメンという作品に(いやミニッツメンだけどさ)そういうの求めるかな?という違和感はちょっとありました。

 

 

という事で「ビフォアウォッチメン」全4巻読了。
Drマンハッタン編とミニッツメン編がメチャメチャ面白かったのと、それに続くナイトオウル編が割と面白かった。

 

ただ、ドラマ版「ウォッチメン」を見てしまうと、そうそう!ウォッチメンに求めるのはこれだよ!というのがわかってしまって、そういう意味では読むタイミングがちょっと悪かったかもしれません。

まあドラマ版も今途中なので最後はどうなるかわかりませんが、6話までの時点で、もう100点レベルです。そもそもオリジナルのウォッチメンが100点満点で言えば1000点くらいの作品だったりしますので、あんまり点数に意味は無い。

 

何はともあれ、ウォッチメンの面々がDCユニバースに侵攻してくる「ドゥームズデイクロック」も邦訳決定しましたので、そちらも楽しみに待ちたいと思います。

 

関係無いけど、表紙の「CRIMSON CORSAIR」ってスペルの頭にDがついてDCRIMSONってなってません?誤字っぽいけど「DC」になる辺りがちょっと面白い。

 

関連記事

curez.hatenablog.com

curez.hatenablog.com

curez.hatenablog.com