MOBILE SUIT GUNDAM AGE MEMORY OF EDEN
監督:綿田慎也
日本 OVA 2013年
☆☆☆★
BD持ってますが、丁度配信でやってたので再見。
去年にAGE関係のコミカライズとかまとめて読んでて、締めにこれも見ておこうかなと思ってたのですが、なかなか時間がとれず今回は丁度良い機会でしたので。見るのは今回で2回目だと思います。
ガンダムAGEをゼハート視点で再編集した総集編OVA的な奴です。確かレンタル版だと前編後編に別れてた気がしましたが、ソフトは1本で出てます。ただ内容は同じなので、途中で一度エンディングスタッフロールが入る。TV2部のアセム編と同じSPYAIRの「My World」が流れますが、アセムのおしりプリプリな絵は気になりつつ歌詞がすごくアセムっぽくてとても好きな一曲なので、これはこれで嬉しい。ちなみにM後編のEDは新曲。
そこ考えると一応は前編がアセム視点、後編がゼハート視点的な作りかとは思いますが、前編後編通して、TVシリーズとは違う第4の主人公としての「ゼハート編」というのが相応しい1作。
私も「ガンダムAGE」自体には色々と言いたい事はありつつも、そんな事言いだしたらどのガンダムシリーズにも良い部分悪い部分ありますしね、こんなの認めないとか言ったって仕方無いと思ってる人です。
TVシリーズだと作品の中心に居たのはレベル5の日野さんですけど、その日野を外して(一応は監修と言う肩書にはなってるけど)サンライズ側としてはあの作品をこうチューニングするよ、という感じの作品なので、ベースは同じでもやっぱり結構作風は違ってて、また別の面白さは十分にあるんじゃないかと思ってます。
TV版のラスボス的な存在だったヴェイガンギアとかの出番も一切カットして、あくまでゼハートの物語としてある潔さは凄い。この割り切りの良さが素敵。
最終的にゼハートの登場機となるガンダムレギルスもTV版のガンダム風なトリコロールカラーから、赤に変更。元々がガンダムのライバルキャラとしての記号として赤いMSがゼダスRとかゼハートカラーとしてとか使われてましたが、「火星の象徴としての赤」みたいな意味合いから、「血ぬられた赤」としてレギルスが赤い色に変更されてるのは面白い部分。
確かTV版よりデシルとかの幻影と会話するシーンが「MOE」では大幅に追加されてたはず。個人的にTV版よりその部分が一番面白く見れた部分でした。
TV番だと2部のデシルってそんなに印象に無いんですよね。1部では魔少年としてフリットのライバルキャラとして出てきた割に、部をまたいで成長した姿のデシルって早々に退場したイメージしかない。ゼハートの兄として、その兄弟さえも自身の理想を叶える為にゼハートが手をかけるっていうのがキモになるわけですが、それが亡霊と言うか怨念と言うか、ゼハートの心の内の葛藤というかで、後々までねちっこくゼハートを攻め立てるっていう描写がとにかく良い。
世話役のダズとかマジシャンズ8のドール(フラムの兄)とかも同じ感じで出て来ますが、彼らの屍の上に自分は立っているって描写が面白くて、しかも最後は自分を慕ってくれていたフラムまで手にかけるというゼハートの追い込まれっぷりが素晴らしい。
そこが「自分の理想を実現する為に」という揺るがない理念では無く、ここまで来たらもう後戻りは出来ない、自分は多くの屍の上に立っているから、という、間違ってるかもしれないけどもう進むしかないんだ感がやっぱりゼハートのキャラクターとして物凄く面白いんじゃないかと。
かっこたる信念を持ったカッコいいライバルキャラ、とかでは決してないんですよね。そういう意味で「MOE」という作品においてはやっぱり迷いのある主人公感があるというか、ダークサイドに落ちてしまって戻れなくなってる情けなさみたいな所が、逆にこれまでの主人公とは違う感じで凄く面白い。
そこ考えるとね、やっぱりアセムは王道なんですよ。焦りだけを募らせる序盤から、色々な経験を得て成長するってキャラですしね。ゼハートを主人公として観た場合でも、従来通りライバルキャラとして見た場合でも、あまり例の無いキャラクターになってて、そこに目を付けて、ゼハートの物語とした「MOE」の視点の面白さがここにある。
「MOE」では存在すら出て来ませんが、一応のTV版のラスボスとも言えるゼラ・ギンスなんて、ただのぽっと出のキャラでしかなくて、さっぱり面白くも何ともなかったですしね。やっぱりキャラクターはドラマありきだからこそ面白いというのを改めて考えさせてくれます。
で、まだまだゼハート語り続けますが、これはTV版の方でもあったセリフだったっけかな?あったとしても正直印象には残って無くて、MOEだからこそ印象に残るセリフでもあるんですけど、自分はコールドスリープを使ってまで時代を越えて何やってるんだ?的な事をゼハートが言うんですね。
TV版だとアスノ家が血筋として3世代それぞれの主人公になってるわけですが、その対になってるのがゼハートなわけですよね。家族を持つ事で無く、コールドスリープという技術を使って世代をまたいでいる存在だと。そこ考えるとさ~、1部のデシルの役割もゼハートでも良かったんじゃね?かたや世代を重ねているのに対して、もう片方は一人の人間がずっと戦い続けているっていう対比にもなって面白かったんじゃないかと。
自分の家族(兄=デシル)をも排除するっていうとこでの対比だったのかもしれないし、家族になれたかもしれないフラムもその一環とも言えなくは無いけどさ。
あとは対比という所で言えば、アスノ家のAGEシステムが作品のモチーフにもなってる「進化」を主人公サイドで表現してましたが、対するヴェイガン側はイゼルカント様が実は火星の民を救うのではなく、進化した人間だけを生き残らせて次の時代を作っていくっていう考えだったのも対になってる部分ですよね。
ある意味、ギレンが唱えた優良人種説にも近いわけですが(そのギレンの考えはナチズムのアーリア人種説がベースですけど)、フリットが後に救世主と呼ばれたのと対になってて、イゼルカントはゼハートに救世主になる事を求めてたりするわけで、この辺の地球側とヴェイガン側との対比の部分も「MOE」では凄くわかりやすく描かれてて、面白い部分。
ガンダムAGETV本編では、雑と言うか余計な部分が多すぎて、本編見てるだけだと何だかな~って印象の方が強かったのですが、こうして総集編OVA的な形でも、纏め方しだいでAGEって色々面白い部分あったんだよなって再確認させてくれます。それだけでも十分な価値はあったのかなと。
私は富野ファンですけど、「Gレコ」TV本編は正直よくわかんなかったし、それをわかりやすく再構成したというふれこみの映画版の方でも、全然上手く出来て無いと思ってたりします。そこ考えるとさ~、この「MOE」のエッセンスの抽出の仕方って実は相当に上手いんじゃないかと思ったりする今日この頃です。いやGレコも一つ一つの演出とかセリフ回しは面白いんですけどね。
関連記事
ガンダムAGE
監督:綿田慎也