プリキュア映画13作目。TVシリーズ9作目「スマイルプリキュア!」単独秋映画。私が初めて劇場鑑賞したプリキュア映画で、これ以降は全て劇場で観ています。
そういった背景も含めて、じゃあ思い入れのある特別な一本なのかと言えば実はそんな事も無く、TVシリーズと比べると、プリキュアの映画ってこれくらいのものなんだな、というのが初見の時の印象だった気がします。
勿論、おっさんが一人でプリキュア映画を観に行く、というドキドキとか、ミラクルライトを子供が振っている姿とか、これがプリキュア映画か!みたいな部分はあったのですが、映画として凄く面白かった、みたいな印象は無かったと思います。
逆に言えば、プリキュアはやっぱりTVシリーズ見てこそナンボだぞ、という感覚を知る事が出来たのは良かったのかなと。ここでプリキュアに興味を持って、過去のシリーズを見てみようってなった時に、やっぱりTVシリーズを順番に見ていくとかはこの時点でもう9年目なので流石にちょっとキツイと、まずはかいつまんで映画を見ていったんですよね。そこで各シリーズのキャラクターくらいは知る事が出来ましたが、単純に映画として完成度が高いという程のものではないのも事実。
映画1本見たくらいで知った気になってはいけないな、と思って、確か1年半くらいかけて過去のTVシリーズを全部見ていって、そこからもうプリキュア沼にずっぽり。
TVシリーズを見た上でそこから更に映画2週目だとそりゃ全然印象も変わります。プリキュアというコンテンツの中で、映画の位置付けみたいなものも、そこで学んでいきました。
で、すっかり重度のプリオタになった今見る映画スマイルですが、意外と面白い事をやってるんだなぁと、また違う印象で見る事が出来ました。まず単純に、スマ映画ってミラクルライトを振るシーンって1回しかないんですね。映画館で見ると、明確にここで振ってねって場面以外でも結構適当に振ってたりして結構チカチカしてたりしますので、初見の時はそんな印象無かったのですが、こんなに無かったとは。
「ハートキャッチ」映画の時にちょっと大人向けとして立派な映画に寄せすぎて、映画としての完成度は高くても子供向けとしてはどうなの?そこが気になった的な事を書きましたが、意外とスマもその系譜を継いでたのかなと。監督も脚本も違う人ですが、前のプリキュア映画はこんなんもやったし、今度はこういう感じでやってみようか、的な意味でのシリーズの系譜はあると思うので、スタッフが違うからと、全く別というわけではないはず。
ただ、一見「スマイル」という作品に合わせて、モチーフの絵本や童話の世界と、それがゴチャゴチャチグハグになる、という表層上のビジュアルで、あまり大人っぽい部分は感じさせませんが、テーマやドラマの方に視点を合わせると、映画オリジナルキャラのニコちゃん(なんとCVが林原めぐみだ)の闇堕ちが軸になってる。
子供向け映画でヤンデレってちょっと凄くないですか?一見楽しい映画に見せておいて、実は黒く渦巻く負の感情を描いてるって、あれこんな映画だったっけ?って久々に見た今回は、今まで何回か繰り返し見てた時とは全く違う印象を受けました。
チグハグな絵本世界、という事で違う物語がごっちゃになったり、所謂善玉悪玉の立場が逆転したりするので、最初はニコちゃんって、みゆきのダークサイド的な位置、所謂ダークプリキュア的なものとも近いのかともちょっと思ったのですが、単純なネガポジションともちょっと違う。
最後に白紙のページを、じゃあみゆきが約束通り続きを書くよ的な感じで終わってれば、ネガの存在とも言えたのですが、自分の未来は自分で描く、という結末になる事を考えれば、独立した存在として考えた方が良さそう。
で、そこで面白いのは、じゃあみゆきは何をするのかと言えば、ニコちゃんごめんなさいって謝る。ひたすら平謝り。これが凄い。
今の世の中、謝れない人多くないですか?間違った事をしたら素直にゴメンなさいって言えるのはとても大事。ちょっとニコちゃんのドラマ重く無い?と思った所でちゃんと子供たちへ向けたメッセージになってる辺りはすごくプリキュア映画っぽい。あと舞台挨拶で中の人も語ってるけど、そこでのあかねもとても良い。
そしてこの映画を語る上で欠かせない、TVシリーズ44話。
引っ込み思案だったみゆきが、何故明るくスマイルでいるようになったか幼児期の秘密が明かされる、という、ほぼ映画と同じ話をTVシリーズでもやってしまったというプリキュア界屈指の謎がある。
今回、せっかくなので44話も見返しました。とゆーかBD持ってるので流れで一気に最終話までみてしまいました。
みゆきが笑顔を大切にするきっかけになったお話、というのは同じですが、TV版のスマイルちゃんは結局謎のまま、絵本じゃ無くて、手鏡がきっかけで現れる、という面では、鏡に映るのはやっぱり自分自身でもあると思うので、ニコちゃん以上にみゆきのネガ的存在、いやネガって言うとちょっとネガティブな印象の方が強くなるかな?そもそもTVシリーズだとこの後本当のネガ存在のバッドエンドプリキュアも出て来ますしね。
スマイルちゃんは、あくまでみゆきが本来持っていたポテンシャルみたいなもので、後に、笑顔を広げて・繋げていきたいという気持ちにみゆきは気付くわけだけど、手鏡をくれたおばあちゃんはそんなみゆきの背中をそっと押してあげた、という感じなのかな?近いようでちょっと映画とは違う。
邪推すると、TVシリーズと映画では監督が違うので、映画に納得が行かなかったから同じ話をTVであえてやった、とも思わなくもないけど、監督の黒田成美は映画の後でTVシリーズの演出に戻ってるし、そもそも大塚監督は自分のカラーとかよりスタッフワークを生かすのを重視してる人なので、そこは考えにくい。
映画も44話も脚本をシリーズ構成も務める米村正二がやってたりしますし、TVの44話って所謂個人のお当番回の一番最後。ハッピーの覚醒回で次の45~48話がラストバトルで一気に地続きになっちゃう所で、映画は全員が見てるわけじゃないし、星空みゆき/キュアハッピーの一番根っこにある部分をきちんとTVでも描いておかないと伝えたい事が伝わらない、という感じだったのかなと思う。キャラクターの根本の部分を番外編的な映画で処理して終わっちゃうのはまずいのでは?それは同じになっちゃうかもしれないけどTVの方でもちゃんと描かなきゃ、というか。
両方を比較すると、どちらもそれぞれ一長一短、それぞれの見せ方や良さはあったように感じました。
そういう意味では、スマイルらしさを表層的に散りばめつつ、ちょっとTVとは違うニコちゃん周辺の重めのドラマをあえてやったカラーの違う作品、という感じで映画は映画で独特の魅力があると再確認できました。
正直、スマイルの映画は何度か見返したりはしてるものの、イマイチなんだよなぁとか思ってたのですが、今回は思った以上に深く見れました。面白かった。ちゃんと見返すとその時々で違うものが見えてくる、というのはそれなりにちゃんと映画してるという事なのかなとも思います。
そんな所で次は思い入れたっぷりの「NS2」です。
映画 スマイルプリキュア! 絵本の中はみんなチグハグ!予告ムービー
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