僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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映画 プリキュアオールスターズNewStage みらいのともだち

映画プリキュアオールスターズNewStage みらいのともだち

監督:志水淳児 脚本:成田良美
日本映画 2012年
☆☆☆☆

 

プリキュア映画12作目。オールスターズとしては4作目。TVシリーズ9作目「スマイルプリキュア」新人研修映画。

 

プリキュアオールスターズ最終作とされた「DX3」ですが、単独秋映画よりも興行成績の良いオールスターですので、簡単に終わったりは出来ません。

 

あからさまにインフレに達していたDX3の後のオールスターはどうするのか?初代から関わっていた鷲尾プロデュサーも抜け、2代目の梅澤Pがオールスターも制作。「NewStage」というタイトル通り、新たな次のステージへ進みます。

 

DXシリーズ、あるいはオールスター物はある種のお祭り映画である事は過去の作品でも語ってきました。派手な花火を打ち上げれば良い、細かい事は言いっこ無し、強だけの特別なお祭りを楽しんでね、というのがDXです。

 

そんなオールスターのお祭りが通例になって、当たり前の普通になった時、このNSでは何をしたのか?答えは「普通の映画を作る事」でした。

 

普通の映画って何ぞや?主人公の成長や変化のドラマです。(それが全てでは無いですが)これまでのオールスターズDXシリーズって、言う程ドラマ部分は重視されてなかった。強大な敵が現れて、新人プリキュアが先輩の助けを借りながら、なんとか危機を乗り越える。


一応は新人プリキュアが最初と最後を締める主人公っぽい立ち位置にはなってましたが、先輩プリキュアをただのメンター役だけに留めず、20数人分もの変身や必殺技や見せ場なんかが用意されるという、ただそれだけでも尺を使ってしまう状況。勿論、現行作品のファンだけでなく、過去のプリキュアも大活躍してくれるんだから、終わってしまった作品のキャラにまた会える、という満足感は非常に高い。ただその分、ストーリーやドラマにじっくり尺を割けないという問題も発生します。

 

ただでさえ子供の集中力を考えて約70分という短い尺でやってる中で、毎年4~5人づつキャラクターが増えてしまって全員に均等に活躍場面を作るだけでも精一杯。しかも前作よりもスケールダウンさせたくも無いしと、敵もますます強大になる。そういう事を素人ながらに考えるだけでも、なかなか大変ですよね。

 

オールスターという看板を掲げながらも、新しい作り方として導入したのが、映画用に、映画のみの主人公を置いて、その変化の成長ドラマとして一本芯を置こう、というのがこの作品における坂上あゆみちゃん。

 

プリキュアではなく、プリキュアにあこがれるだけの普通の女の子です。勿論、他のプリキュアに合わせてドラマを作りやすく中学2年生という年齢設定になってますが、あゆみちゃんは勿論、プリキュアを見ているメインターゲットの女の子達の代表です。プリキュアカッコいいな、素敵だな、でも自分はプリキュアにはなれない普通の女の子だし、と、そんなの感情移入度MAXじゃないですか!

 

ええ、私は幼女じゃないので、ホントにメインターゲットの女の子達がそんな風に思ったのかどうかは知りませんけれどね。

 

素人的に考えると、じゃあもっと年齢を下げてせめて小学生とかに設定した方が自分を重ね合わせてくれるんじゃないか?と考えがちですが、実はそこもまた色々と面白い部分。確かにより感情移入出来る子も居るんでしょうけど、半端に自分と年齢が近かったりすると、私はプリキュアになれないのに、なんでこの子はなれるの!悔しい!という嫉妬も生まれたりするようです。

 

男の子向けの「スーパー戦隊」でもそこは同じで、「五星戦隊ダイレンジャー」における小学生追加戦士のキバレンジャー「超力戦隊オーレンジャー」におけるキングレンジャーなんかも、小学生が変身者でしたが、思ったほどは人気が出なかったそうな。50人もプリキュアが居る中で小学生プリキュアがミューズ、一応エース、マシェリと3人しか居ないのもそういった事情もあるのだろうと推測出来ます。単純なようで意外と扱いが難しい。

 

で、そんなプリキュアにあこがれる普通の女の子のあゆみちゃんが、ひょんな事から意図せぬ形で、プリキュアの敵になってしまう。闇堕ちとかそういうのではなく、流れでそうなってしまう辺りの作りがとても上手いし、とても面白い。

 

え~、私プリキュアの敵になっちゃったの?どうしよう。
ドキドキしますねこの展開。

 

そんな中、プリキュア達から説得を受けるものの、あゆみちゃんはこう言います。私はあなた達みたいな特別な力は持っていない、あなた達とは違うんです!って。

 

なら協力するから一緒に行こうと言われ、しぶしぶ納得はするものの、肝心のプリキュアがピンチに陥る。もう自分しかフーちゃんに気持ちを伝えられる人は居ない。

 

そこでついにキュアエコーへとあゆみちゃんは変身するわけです。

 

「誰かを守りたい、そんなやさしい気持ちがあれば、女の子は誰だってプリキュアになれるのよ」

とミューズは言う。なんだこの展開。最高じゃ無いですか。

 

特別な力なんかじゃない。誰かを救いたいと心から願い、勇気を振り絞って一歩前へ踏み出すこと。それこそがプリキュアなんだと。見ているあなた達だって、きっとプリキュアになれる。

 

そんなメッセージだけでも100億点じゃないですか?


実はTVシリーズで加入が遅く、オールスターズも変化している時期だったのもあって、キュアミューズがオールスター映画でちゃんとした出番があるのはこの作品のみという、ミューズファンにはちょっと残念な部分ですが、これ以上無いくらいにプリキュアを一言で表せる、プリキュアシリーズの代表的な名言と言えるものをミューズが発した事は歴史に刻んでおきたい事実。

 

そして、そんな全ての女の子の代表とも言えるキャラクターが坂上あゆみ/キュアエコーなのです。私も大好きなキャラ。プリキュア大投票では一般キャラ部門であゆみちゃんが居たので勿論私は投票しました。

 

逆に映画としてそういう軸がある分、割を食ったのは新人プリキュアとして登場したスマイルチーム。ただ、そもそもキャラが濃いのと、画面上はあゆみちゃんよりスマイルチームの方が出ずっぱりなので決して目立ってないという事も無く、そこは映画の作りの上手さです。次作「NS2」にも絡むのですが、私は一番好きなプリキュアキュアハッピーです。勿論、投票もハッピーに入れました。キュアハッピーへの愛はNS2の時に語る予定。

 

オールスターズの恒例事項、作品としての存在価値として前作から次作への引き継ぎはちゃんと考えられていて、その分スイートとスマイルは出番が多いのですが、それ以前のプリキュアに関しては出番が激減。

頼れる助っ人として、その前の「ハートキャッチ」「フレッシュ」組は出番やセリフが少ないながらもセリフありで登場。ただ、そのさらに先が問題。助っ人として全員登場はするものの、セリフ無しでの登場。


個人的な感覚でしか無いですが、NSシリーズよりDXシリーズの方が良かったという人の方が多い印象ですが、その多くはその「セリフが無い」事に関しての評価になっているような感じがします。

 

気持ちはわかる。いくら画面に登場していても、セリフの一つすら無く無言なのは、また好きなキャラに会えたっていう感覚がどうしても弱くなってしまうし、むしろ雑な扱いだなぁというネガティブな感情も生んでしまいがちになります。

 

作り手側も、流石に大人数すぎて扱いきれない状況だったので、この作品から本当は直近の作品に絞るなりして、全員出す事は諦めて作ろうとしていたようですが、上からの鶴の一声でオールスターなんだから全員出すこと、と命じられたのだとか。

 

その功罪は一概には言えなくて、確かに声は無くとも出てきてくれるだけで嬉しいという部分はありますし、非常に難しい部分。

 

その「上」ってそもそも誰が言ったのかは明らかにはなっていませんが、スポンサーなのかな?私は勝手にそんな事を言うのは東映プロデュサー白倉伸一郎だろ!とか勝手に決めつけちゃってましたが、白倉さんが一度だけプリキュアに関わった事があったのは次の映画の「スマイル」劇場版だけでした。ちょっと勘違いしてました。白倉さんゴメンなさい。

 

白倉さん、「仮面ライダー」シリーズの方で、みんな思い入れのある過去のライダーをヒーローではなくただの商品として思いっきり雑な扱いで消費した前歴があるので、勝手にそう思っちゃってた。いや白倉さん平成ライダーをここまでブランド化させて、もの凄い功績を上げて東映の取締役まで出世しちゃった本当に凄い人ではあるんですけど。ヘイトを恐れないなんでもあり感はある意味東映らしさと言えなくもない。

 

勿論、この作品における過去キュアは仮面ライダーみたいに倒される為だけに出てくるザコキャラにはなっていないので必要以上に心配する事も無いし、逆にこの後にNSシリーズとして、セリフ入りで登場させられなかった作品を順番に拾っていくという気遣い、或いは抵抗を見せてくれる辺りがプリキュアらしさです。

 

でもってそんな声無し過去キュア登場場面でも初代は喋らないハンデを感じさせない、最高の見せ場として工夫して演出してある所は素晴らしい。タメに溜めての満を持しての伝説の初代登場を、テーマ曲を重ねる事で逆に見せ場として作ってある所にセンスを感じるし、そこでかかるテーマ曲が初代OP「マーックスハート!」じゃなくNSのOPである「えーいえんのーともだち!」である辺りがDXとNSの作風の違いが凄く表れてるような気がします。個人的にNSシリーズが好きなのはそういった作風の変化も込みです。

 

それはお祭りイベント映画から、「プリキュアオールスターズ」シリーズ」として次の段階に進んだ変化だと思うんですよね。最初は特異なものだった作品が、やがてはそれが定番化し、逆にスタンダードになってしまう、それはプリキュアというコンテンツが今でも何度も繰り返してきているプリキュアという作品の特徴的な部分でもあります。
そこを踏まえてみる「NS」の変化や挑戦は凄く面白い。


「DX」から「NS」で何を残して、何を変化させたのか。そこが見所でもあり面白さなのです。

 

このままインフレを続けてほしい、全員に同じ分量で見せ場を作ってほしい、そう望む気持ちはわかるけれども、現実問題それは難しい。それならば一つの作品として、映画としてより完成度を高めたものを作るその英断とその為の工夫がこの作品には物凄く詰まってます。私はそこを支持する。

 

以上、とっても大好きな作品「NS1」でした。でも「NS2」はもっと好き。


あ、サブタイトルが「みらいのともだち」でもリコは出ませんよ、一応。


「MAD」 プリキュアオールスターズNS 予告編 特別ゲスト出演

 


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