Animage TROPICAL-ROUGE! PRECURE SPECIAL ISSUE
徳間書店刊 2021年
☆☆☆☆☆
今年も無事に出ましたアニメージュプリキュア増刊。
これもプリキュアの1年間を楽しむ中での定番の1冊、風物詩の一つです。
秋映画のネタバレまでとTVシリーズ放送ギリギリくらいまでの内容。
最初に出た「ハピネスチャージ」の頃から毎回ですけど、表紙絵がパワーアップフォームなのが豪華な感じでとても素晴らしい。その絵のクリアファイルもついてくるし、満足度は高いです。
時期的にも映画の方を中心に構成されてるのですが、TVシリーズの方も勿論紙面は割かれていて、実は今回ちょっとドキドキしてたのが、TVの方の監督の土田さんのインタビュー入ってるのかなぁ?ってとこでした。
そこはちゃんと入っててまずは一安心。いや何でそんな心配してるかというと、別にインタビューとかコメント出さない人とかでは無いのですが、過去のインタビュー記事とかだと、正直凄く素っ気ないんですよね、土田さんって。
他の人から出てくる土田監督の印象も面白くて、頑固者で独自のロジックをもっていてこだわりが強いと。別に人を寄せ付けない気難しいタイプとかでは決して無さそうなんですけど、凄く独特な人の印象があります。
だって今回のインタビューでも、この本を手に取る人達に向けて作ってるような作品じゃ無いので、メインの子供達が楽しんでもらえる事を第一に考えてますって言ってたりしますし。
そこが土田監督なりのプリキュアへの向き合い方なんでしょうし、一演出家としてだけでなく、シリーズディレクターという立場としてのスタンスなんだなと思えて面白い部分です。
個人的にもね、過去作のTVシリーズの数々の伝説回とか、映画の方の監督もやられていて、やっぱり凄く面白かったので、ずっとTVシリーズの方の監督もやってほしいなって思ってた人です。トロプリが発表される前に私もどっかの記事でその辺は書いてたはずですし。
でも実際のトロプリ、意外と真面目な作りだなっていう印象でした。毎週カオス回で、ギャグ路線全振りになるのかなと。勿論。全体的には明るく楽しくって方向性ですし、10本立ての33話とかギャグに特化した話もあったけど、基本的には凄く真面目に作ってある印象。
ん~?ちょっと予想してたのとは違うかなと思ってた部分もあったのですが、なるほど今回のインタビューで納得。そういう、何だこれカオスかよ!っていうのはやっぱり大人の目線から見た面白さなんですね。
そこじゃないよ、まず純粋に子供が楽しいと思ってもらえるように作るのがプリキュアだからね、大人が面白いと思うような所を狙っては本末転倒。それはプリキュアじゃないよねっていう考え方なんだなぁと。
要所要所に大人が思わず吹き出してしまうような部分はあったりするけど、思った以上に真面目に作ってあるのはそういう事だったのかと腑に落ちました。
プリキュアシリーズの現状は絶賛堕落中と監督は感じていて(そのロジックは本編記事を読んでから判断して下さいね)その中で、まさしく今は何をするべきかっていう所で今回挑戦してみたと。
この辺りは言われると確かに頷ける部分もあって、近年のシリーズはメッセージ性とかが割と強めに出ていました。大人としてはそういう部分って凄く面白いんですよね。でもそれって大人の目線だろうって事ですよね。なんかもうプリオタとしてはぐうの音も出ない。
「スマイル」の大塚監督とは割と波長が合うのかなと思いますが、大塚監督も、自分がシリーズを受け持った時にまず第一に考えていたのが、日曜の朝にいかに子供達に30分間を楽しんでもらえるか、まずそこが一番大事だと。メッセージ性とかテーマは二の次っていうスタイルでした。勿論、毎回きちんと、今回の話では子供に何を伝えたい話なのかっていうのは脚本家とは詰めてそこは軸にしているっていうのは言ってました。
土田監督としては、ちょっと今のままの路線だとこの先はもう良くない方向に行くよっていう危機感は正しいと思うし、じゃあそういう路線をやってる先人達は間違った事をやってるのか?と言えば、それはそれで視点の違いだと思うんですよね。大人が見て面白いっていう方向にばかり行くのは確かに違うと思うけれど。
ここで面白いなと思う部分と注目したいのは東映アニメーションの人材の豊富さです。誰か一人が、プリキュアってこういうものなんです!という決めつけをしないで、今回の土田監督みたいに違う意見を持ってる人でも起用するし、今はプロデューサーも持ち回りで変えてたりするのも、一つの色に染めないで、様々なカラーを出せるようにっていう部分ですよね。
過去にも鷲尾Pが5作で身を引いたのは、一人の人がずっとやってると風通しが悪くなるからっていう理由でしたし。これが出来るのがプリキュアと東映アニメの強みだよなと改めて感じました。土田監督、村瀬プロデューサー、シリーズ構成の横谷さんと、3者三様のやりとりや、どんな思いで作ってるのかがインタビューから読み取れて、そこはメチャメチャ面白かった。
敵幹部内の争いとかやったってそれは楽しく無いでしょ?
っていうのもね、子供達がそこに面白味を感じるかと言えば、確かにそこが面白いと思うのは大人だけかもね、とは思いましたし。いや私は大人だからそこも楽しみだったりするけれど、それで子供達が喜ぶのかって言われるとね。
うん、でも大人視点では敵幹部のレギュラー陣もプリキュアの大きな面白味の一つなんだよなぁ。毎回のアニメージュ増刊でしか読めない敵幹部の座談会ってメチャメチャ楽しいんですよね。プリキュア側の座談会って他でも沢山読めるし、何なら映像とかでもちょこちょこ見れたりする。でも敵幹部のは、ほぼアニメージュ増刊だけですよね。今回もすっごく面白かった。仲良くやってる3人に嫉妬するバトラーさんとかもう最高に楽しい。
いやこういう本を楽しんでる事に対しては監督には申し訳ないけれど。プリキュアはお前らの為に作ってるわけじゃないぞ!って絶対言われそうで。
トロプリではハイライトと瞳孔無しの瞳の表現は監督NGって事になってるそうですが、ネットとかだとあれって所謂「レ○プ目」って言われちゃうんですよね。過去のシリーズでは何度か使ってる表現ですが、今回はその描き方はNGの指示が出てるそうです。
そういう言葉を使われがちっていう部分も多少あるかもしれませんが、多分そこが一番の原因じゃなくて、それを「呆然として気力を失ってしまった表情」という風に捉えられるのは大人の視点であって、それって子供にストレートに伝わる感情なのか?みたいな感覚があるのかなと。
ビックリしてギョエー!って目が飛び出すとかそういう記号的なやつなら子供も楽しく思ってくれるだろうけど、目のハイライトが無くなる事で伝える絶望感とか、確かにわからないような気がする。
以前のプリアラ映画でのインタビューだったっけかな?子供にも伝わるギャグとそうでないものがあって、そこは前に苦労したので気をつけてる的な事を言ってたりしましたので。
今回はどのインタビュー記事も総じて面白かった。
「トロピカル~ジュ」の伸ばし棒が普通の「ルージュ」じゃなく「ル~ジュ」なのは「~」の方が波っぽいからです!とか細かいとこも凄く面白い。
みのりん先輩のキャラ付けに最初は苦労するかと思ってたけれど、描いてる内に勝手に成長してくれたので、実はそこよりさんごちゃんの方が目立たせるのに苦労してるとか色々な事が知れて楽しい。
非常に満足度の高い1冊でした。
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