原題:WONDER WOMAN
監督:パティ・ジェンキンス
原作:DC COMICS
アメリカ映画 2017
☆☆☆☆★
<ストーリー>
女しかいない島で、プリンセスとして母親に大切に育てられてきたダイアナ。一族最強の者しか持てないと言われる剣に憧れ、強くなるための修行に励む彼女は、その中で自身の秘められた能力に気付く。そんなある日、島に不時着したパイロットのスティーブとの出会いで、初めて男という存在を目にしたダイアナの運命は一転。世界を救うため、スティーブとともに島を出てロンドンへと旅立つ。
「ワンダーウーマン1984」年末公開から日本だけ繰り上げ公開になりました。早く見れるのはありがたいけど、今年の映画収めだろうと思ってたので、ちょっと拍子抜け。多分その後1~2本は見る感じにはなりそう。今年のアメコミーヒーロー映画は結局「ハーレイクイン」と「ワンダーウーマン」だけになってしまいましたね。マーベル好きとしては悲しい限り。
それはさておき、WW84も勿論楽しみではありますので、今回はその予習というか、1作目は第一次世界大戦の1917年から2作目は1984年と時代が飛んでるので直接のその後からの話では無いようですが、せっかくだから感想も書きたいし、とりあえず前回の復習。初見はリアルタイムで映画館で見てます。
一応はDCエクステンデットユニバース(DCEU)の4作目。2作目の「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」で初登場したワンダーウーマンのオリジンを描く1作。
ワンダーウーマンと言えばやっぱりフェミニズム運動との連動というか、その象徴みたいな所を外しては語れません。その流れで言えば、今回の映画もスーパーヒーロー映画としては初の女性監督作品で、確か映画史に置いても女性監督作品で歴代最高の興行収入とかを記録したんでしたっけ?
単純に女性ヒーロー主人公だと、古くは「スーパーガール」とか「キャットウーマン」。DCでなくマーベルですが「エレクトラ」もありましたね。ただどれも興行的にも批評的にもぱっとせず。スーパーヒーロー物に限らず、ハリウッドが女性主人公のビッグバジェット映画にやや及び腰なのは、やっぱりヒットしないから、という所らしい。そういった空気がありながら、その壁を見事にぶち抜いてくれたのが今回の「ワンダーウーマン」だった、というのが、いやもう流石というか、ワンダーウーマンがいかに女性にとって特別なアイコンである事の証明にも繋がって、そこは凄く面白い部分。
今回、第一次世界大戦が舞台になってますが、原作の設定はどうなってたっけかな?ワンダーウーマンの初出が1941年。丁度第二次世界大戦の頃ですね。スーパーマンやキャプテン・アメリカとかと違って、戦争に向き合うヒーローみたいなイメージはワンダーウーマンはあまり無いかな?(実際そういうエピソードがあったかどうかはゴメンなさい私はよく知りません)
作品の初出よりもさらに遡って第一次大戦を舞台にしたのは何だろう?と思って少し調べてみた所、なるほど、丁度この時期にイギリスで女性参政権運動が始まって、そこから女性の社会参画や権利向上、ウーマンリブ運動へと繋がって行く基礎になったというか、最初の一歩みたいなものでもあったと。
作中でも会議にダイアナが乗り込んで、何で女がここにいるんだ?つまみだせ!みたいなシーンがありましたが、まさに当時の社会を表していて、そこにワンダーウーマンが風穴を開ける、という所に意味があるわけか。
単純に原作がそうだったから、とかではなく、原作とは違うんだけどワンダーウーマンという映画で何を描くべきか?ワンダーウーマンというアイコンが描くべきものは?というのをちゃんと歴史を考えて作ってあるわけですよね。うん、面白い部分です。凄い映画だなこれ。
ただ、逆に「愛の為に戦う」みたいなのは原作重視なのかな?という気がしました。愛と言っても色恋よりも「慈愛」みたいな方だとは思いますが、個人的な好みというかこの部分良いなと思ったのが、ダイアナは戦争の諸悪の根源は戦神アレスなんだ!って突っ走って、お前がアレスだろ!とドイツの高官を倒しても何も変わらなかった、クリス・パイン演じるスティーブ・トレバーがそこに対して、戦争って言うのは誰か悪人を倒せば終わりとか単純なものなんかじゃないんだ、これが人間なんだよ!っていうシーンが物凄く良かった。
現実はヒーロー一人がどうこうできるものなんじゃない!みたいなメッセージというかテーマ、ベタではあると思うんだけど、個人的にとても好きなんですよね。私はヒーロー大好きな人ですし、斜に構えたヒーロー否定みたいな所が好きなんじゃななくて、特別な一人が世界を変えるんじゃなくて、そこに影響を受けた我々自身が、みんなで変わっていかなければならない!みたいな方向が私は物凄く好き。いわゆるツボです。
なので、その後に「私がアレスだ」とか出てきたのはちょっとガッカリ。ドイツの悪人じゃなくて、和平交渉をあえて仕掛けて、どうせ人間には無理でしょ?というのを高みの見物してた奴こそが実はアレスだった、という捻りはあるものの、この後は超人バトルになっちゃうし、そこだけはちょっと残念でした。
最初にセミッシラ(パラダイス島)を舞台に、女だけの世界とか不思議な画面が見れたかと思うと、今度はイギリスに来てカルチャーギャップの面白さを描きつつ、ジェンダー論的な部分でチクリと風刺してきて、市街戦、塹壕戦の中をワンダーウーマンの無双というビジュアル的に面白すぎる絵があって、盛り上がってきたクライマックスがこれか、みたいな所はありましたが、それでもやっぱり圧倒的に面白いし、ワンダーウーマンとは何か?をきちんと描いてあるのは評価せざるを得ません。
ワンダーウーマンの生みの親、そして嘘発見器の発明者としても有名なウィリアム・モールトン・マーストンの半生を描いた「ワンダー・ウーマンとマーストン教授の秘密」という映画も見た事があるのですが、あれはあれでフェミニズム文化の象徴を描いた作者が、実はSM嗜好の人で、一人の人間の裏と表の奇妙さみたいな面白さはありつつも、ややスキャンダラスな野次馬根性が見え隠れするような作品でしたので、その作者の手を離れて、アイコンとなったワンダーウーマンの本質みたいな所とちゃんと向き合ってこういう映画にしたこちらのパティ・ジェンキンス版ワンダーウーマンの価値は本当に凄い。
逆に良すぎるくらいなので、続編「1984」大丈夫なのかな?とちょっと心配になるくらいです。
まあ、ハードルを上げすぎて見るより、下げて見る方が期待外れだったとはなりにくいので、1作目よりは下だろう、ぐらいの感覚で続編に挑みたいと思います。
映画『ワンダーウーマン』本予告【HD】2017年8月25日(金)公開
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