THE AMAZING SPIDER-MAN: CIVIL WAR
著:J・マイケル・トラジンスキー(ライター)
ロン・ガーニー(アーティスト)
訳:御代しおり、今井亮一
刊:MARVEL ヴィレッジブックス
アメコミ 2013年
収録:THE AMAZING SPIDER-MAN #532-538(2006-7)
☆☆☆☆
愛する家族を守るため、
頑なに一匹狼を貫いてきたスパイダーマン。
しかし、今やアベンジャーズの一員となり、
アイアンマンことトニー・スタークの右腕となった彼は、
かつてない安らぎを感じるようになっていた。
共に戦う仲間の存在は、こうも心強いものなのか。
だがしかし、一つの悲劇が安寧の日々を吹き飛ばす。
過酷過ぎる現実を目の前に、彼は、自らに誇れる
ヒーローであり続ける事ができるのか……。
シビル・ウォーのもう一人の主人公ともいうべき
スパイダーマンの激動の日々を
克明に迫った長編ストーリー。
クロスオーバー第2弾としてここに登場。
君はどちらに付く?
という事で「ノー・ウェイ・ホーム」の興奮も冷めやらぬまま、新刊もほっといて旧作を読む。(いや新刊も溜まってるんですが)
「シビル・ウォー」時にスパイダーマンは3冊分もタイイン誌が出てました。これが最初の一冊目。「シビル・ウォークロスオーバーシリーズ」として通販限定で出てた奴で、最初のこれは当時に読んでましたが、残り2冊は積んだままで読んで無かったはずなので、せっかくの機会に積みを消化しとこうかなと。
MCU版でトニーと師弟関係になってたのは、この辺りの時期の関係がベースになってた感じですね。アイアンスパイダースーツもここで使ってた奴ですし。
スパイダーマンがTVの前で自ら正体を世間に明かすっていうのは当然大きい問題で、超人登録法賛成派をより正当化させる為の行為ですから、「シビル・ウォー」本編でも大きくは描かれた部分ですけど、その部分をさらに深堀したのがこちらのアメイジング・スパイダーマン雑誌のタイイン。
解説書でも触れられてますが、シビル・ウォー本編のライターはマーク・ミラー。(「キックアス」とか「キングスマン」も描いてる人です)ぶっちゃけ私の中ではマーク・ミラーって悪趣味方向の人なので、そんなに好きでは無いのですが、流石にマーベルの本編という部分で、賛成派のアイアンマンと、反対派のキャプテン・アメリカのどちらが正しいとか言いきれないようなバランスでは描いてました。どちらかが悪で、どちらかが正義とか善悪で描いちゃうと、読者に揺さぶりをかけるっていう話になりませんしね。
でもタイイン誌は本編の流れを受けつつも、各誌の担当ライターが自由に書くので、(この本で言えばトラジンスキーが担当ライター)もうあからさまにキャップに肩入れして話を書いてて、アイアンマンが露骨に嫌な奴として描かれてたりするのが良くも悪くも面白い所です。
面白いと言えば、原作のこの時点でのキャップは反対派の代表ながら、キャップ本人は別に世間に正体は隠してないんですよね。「キャプテンアメリカ:ニューディール」において、9.11を彷彿とさせるテロリストに対して宣戦を布告してる。ただしこれはアメリカという国の総意やアメリカを代表しての行動では無い、スティーブ・ロジャースという個人の意見なので、異を唱えるなら私個人に対して行うべきものだ、的な感じで、世間に正体を出してました。
「シビル・ウォー」も勿論、9.11があっての流れの上で愛国者法とかそういう現実の流れを踏まえての展開なので、やはりそういうのはアメコミらしくて面白い部分です。個人的には日本でもこういうのどんどんやってほしいんだけど、映画でもそうですし、政治なんかを扱った真面目な映画はそれはそれで作るけど、娯楽映画は別って分け方になるのが主流なので、そこは凄く勿体無いと思う。近年のMCUなんかはそこを上手くミックスさせてくるから面白いのにね。
って、今回はスパイダーマンの話だった。
ピーターも基本、法を守る側のヒーローですし、MJやメイ伯母さんといった家族を守る為にはきちんと政府の公認で保護を受けた上でヒーロー活動をした方が良い、という決断を下すのですが、反対派を裁判も受けさせずにネガティブゾーンの刑務所にぶち込むというトニーらの行動に遂にブチ切れるという展開。トニー・スターク、リード・リチャーズ、ハンク・ピムといった天才陣営が揃ってて、中には弁護士で法律の専門家でもあるシーハルクも賛成派陣営に参加してる。そこは正しいはずだと思いながらも、同時に、トニーには自分を利用しただけなんじゃないかという疑念も生まれてしまう。
かつての仲間を投獄し、それがヒーローの姿なのかと、考えを改め、国の理想や自らの信念に従い、キャップ側に鞍替えするピーター。しかし、一度世間に正体を明かした後では、さらなる悲運が待ち構えていた。牢獄の中でスパイダーマンの正体を知ったキングピンは、部下に指示。スパイダーマンでは無く、ピーター・パーカーを狙えば長年の恨みを晴らす事が出来ると、銃口は家族にも向けられ、メイ伯母さんがその凶弾に倒れる。
・・・といった所までを収録。
この後は「スパイダーマン:ワン・モア・デイ」に続く。(他のシビル・ウォータイイン2冊はまた別視点っぽいので)
「シビル・ウォー」本編だけだと、本編なのにダイジェストストーリーみたいな風にも感じられたり、掘り下げが弱いので、やっぱりここはタイイン込みで色々な視点なり色々な人物像の思想が入るとグッと面白く感じますね。
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