総集編ディレクター:中村紗弥加
シリーズディレクター:西尾大介
シリーズ構成:川崎良
日本 TVアニメ総集編 2021
☆☆☆☆
先日ようやく手に入れた「MH総集編」です。
無印の時は新品で普通に買ったんですけど、実際に見て、う~んまあこんなもんかな感が割とあったので、MHの時はスルーしてしまいました。TVシリーズのDVD-BOXは持ってますし。
前回の無印の時は、全49話分を260分に編集という形でしたが、今回は無印よりTVシリーズの話数は少ない全47話ながら、310分と、より長尺に。そのおかげか、え?このエピソードも拾うんだ?的な意外な話も結構入ってました。
ただその分、5時間10分というのは一気に見るには長い。ディスク2枚なので私は2日間に分けてみましたけれど。
でも、前回の時もそうなんですが、基本的にプリキュアは1話完結。毎回、怪物が出てきて変身してそれを倒してって言う基本フォーマットがある上で、細かい積み重ねだとか、一気にストーリーが動く回とかで全体の話を進めるという作り方なので、いくら編集しても時間の一本の映画(或いは2時間半の前後編)みたいな感じにはなりようがないので、その辺はどうしても微妙になってしまうのは仕方の無い所です。
逆に全体的なストーリーの軸が薄い分、いかにもツギハギで飛び飛びの総集編映画的な違和感も無かったりはするのですが。
無印「ふたりはプリキュア」から地続きの2年目としての「マックスハート」なので、TVシリーズは2度目の誕生日とか、2度目の文化祭だとか、そういう2年目らしいエピソードが豊富だった印象なんですけど、総集編的にはその辺りはあまり重視されておらず、序盤はひかり/シャイニールミナスの登場に軸を置いて編集してあって、後半はパワーアップからの最終決戦的な大枠で編集。その中に細かいエピソードを重ねて行くという感じだったかな?
MHって、一応の目的として12のハーティエルを集めて行くというストーリーラインが一応あるんですよね。勿論、玩具連動になってて、そこは玩具会社からの要望で入った要素なんですけど、12って何かと言えば、当然1年間って事ですよね。1ヶ月毎に新しい妖精(ハーティエル)が出てくると言う計算でしょうから、そうやって見ている子供達を開きさせない工夫なんだろうなと、大人の視点で考えるとそこに色々と見えて来ちゃうんですけど、プリキュアってね、仮面ライダーとかと違って、アイテム収集要素はあんまりストーリーの核には持ってこないんですよね。そこはこの後も続くシリーズとして引き継いでる特徴。
プリキュアは日常を守るヒーローなのであって、正義の味方で悪を倒す事を目的としたヒーローにはしたくないとして、そこは初代からずっと続いているコンセプトの一つです。勿論、シリーズによっては多少の揺れ幅や描き方の変化はしていたりもするので、そこはシリーズを俯瞰して見た時に別の面白さがある部分です。(その辺は過去記事でも色々と書いてきたので、興味ある方は適当に過去のプリキュア記事を読んでみていただければ)
ただ、スポンサーですから玩具会社の要望も勿論汲み取りつつの展開になるので、基本的にプリキュアはどのシリーズも、自分からアイテムを集めに行くというより、話が進むと自然に手元に集まってくるという状況が多い。
こと、MHに関しては、最初はちょっと謎めいたミステリアスな存在である九条ひかり/シャイニールミナスが、光のクイーンの生まれ変わりであり、クイーンの命がルミナスで、心がクイーンチェアレクト、12の志がハーティエルというのが最初に明かされる。なので、前半は心の無いひかりが、ハーティエル(志)を一つずつ取り戻していく事で、徐々に人間として成長していく、という話になってるし、ハーティエルの一つ一つに、
シークン=探求
パション=情熱
ハーモニン=調和
インテリジェン=知性
ピュアン=純真
ウィシュン=真実
ホープン=希望
ブレイブン=勇敢
プロスン=繁栄
ハピネン=幸福
ラブラン=愛
エターナルン=永遠
という性格付け、テーマが設定されてると。
これね、逆に脚本家の方にも、こういうテーマで話を1本作ってねって言える分、意外と良い方向に作用するものだったんじゃないかな~って私は思ってたりします。
ひかりが一つ一つこういう心を学んで成長していくんだよ、という話になるかと思いきや、後半の方は割とひかり個人ではなく、プリキュアサイド全体の話になっちゃってましたけど。そりゃあ知性はほのかと相性が良いですし、恋愛話は藤P先輩となぎさだよねって感じではありますが。総集編では唯一回想扱いされてたブレイブンとかちょっと不憫でしたが。
ああでも、なぎさの夜空の告白とかちゃんと総集編でも入ってるので、そこはやっぱり見所です。
ハーティエルの最後の一人がエターナルン=永遠ってのも割と意味深で面白い部分なんじゃないかと。
エピソード的には、「かんたんルミナス」で有名な11話もちゃんと残ってました。作画崩壊の事例で取り上げられる事が多いんですけど、あの話は作画を簡素化して、動きの方に振ってる形になってるからなんですよね、あれ。勿論、作画が良いに越した事は無いですけど、そこをおちょくってる人が居たらそういう人はプリキュア見ないで取り上げてるだけなので、無視して良いです。MHって、OPからしてそうなんですけど、簡素な線にして、動き重視にしてある所が何箇所かあって、動きとして見る分には逆にクオリティが高いっていう所、何箇所かあるんですよね。実際これスケジュールがキツかったんだろうなってとこもあったりはするんですけど。
あと意外な所では、修学旅行先にルミナスが行ってしまう話もちゃんと残ってました。洋館の少年とひかりが会うシーンがあるので、流れとしては必要なんでしょうけど、私はあの話は流石に無理が無いか?と感じてしまった話でした。
でも、そういうのも含めて「MH」なんだよって言われてる気がして、変な所を隠してしまわずに、みんな一生懸命作ったものを安易に否定してくれるなって言われてるような気がして、そこは今回良かったと思える部分でした。総集編ですから、丸々カットされてる話もいっぱいありますしね。
あ、個人的な所では、ひかりの友達として奈緒と美羽が出てくる15話が残ってたのが嬉しかったなぁ。私この話凄く好きなので。高校生とバスケット勝負をする中で、ほのかのアドバイス一つでガラッと展開が変わるっていうのが面白くってね。「凄い・・・」「みんな凄いよね」「ううん、雪城先輩が」「ん?」っていうのがとても好き。
ああ、ほのかで言えば、なぎさとキャッチボールをするとこも、今回総集編で改めて、ゆかなの芝居・声の出し方がメチャメチャ良いなって思いました。
「MH」ってね、正直を言えば、2年目だけあって、2年間の集大成のラストが本当に凄くて大好きな半面、1年目よりはちょっと退屈に感じてしまう作品でもあって、今回の総集編を見てても、中盤はちょっとそんな風に感じてしまう部分は無きにしも非ずでしたが、やっぱり最後は大号泣ですよ。
最終決戦もちょっと短く編集されてたのかな?サーキュラス、ビブリス、ウラガノスの最後って、あのまま次の涙のシーンに繋がってましたっけ?なんかその後にバルデスとの1戦があってからのあの涙のシーンだった記憶が?逆に短縮された事で3幹部の矜持みたいなのがプリキュアをそこまで追い詰めた感じに見えて、良い編集だったように感じました。いや元からそうだったらただの勘違いですが。
最終決戦のね、「心は何物からも自由だわ」っていうの、もしかしたら若干宗教じみた説教に聞こえる人も居るのかな?と昔から気にしてるんですが、そこって実はプリキュアの根っこにある考え方で、そこは初代から通して「ふたりはプリキュア」のテーマ的な部分でもある。
「女の子が自分の足で凛々しく立つ事」そこさえ外さなければプリキュアは何を描いても、どんな方向に行っても構わないというのが鷲尾Pのプリキュアに対するスタンスですけど、そうそう、やっぱりプリキュアってこうだよね。愛や平和の使者がプリキュアなんじゃない。
ちゃんと自分の頭で考えて、自分の力で立ち上がる強さ。そこを各々が持って欲しい、そういう願いが込められたのがプリキュアなんだなって改めて感じさせてくれました。私がプリキュア好きなのは、その部分にも共感してるからというのもあるんだろうなって、今回見て思わせてくれた。
クイーンは光と闇の調和っていうけれど、ルミナスはルミナス、九条ひかりとしてこの世界に存在していて良いんだ、っていう落とし所もね、ああ、プリキュアって良いなと。
まさしく「ありがとう&あいしてる」の言葉を作品に返してあげたい。
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