僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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メタモルフォーゼの縁側

【メーカー特典あり】「メタモルフォーゼの縁側」コレクターズ・エディション(Blu-ray 2枚組) 〔コメダ先生 ミニサイン色紙セット(2枚組)付き〕

監督:狩山俊輔 
原作:鶴谷香央理
日本映画 2022年
☆☆☆★

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<ストーリー>
毎晩こっそりBL漫画を楽しんでいる17歳の女子高生・うららと、夫に先立たれ孤独に暮らす75歳の老婦人・雪。ある日、うららがアルバイトする本屋に雪がやって来る。美しい表紙にひかれてBL漫画を手に取った雪は、初めてのぞく世界に驚きつつも、男の子たちが繰り広げる恋物語に魅了される。BL漫画の話題で意気投合したうららと雪は、雪の家の縁側で一緒に漫画を読んでは語り合うようになり、立場も年齢も超えて友情を育んでいく。

 

大ヒットの話題作とまでは言わないものの、一部でちょこっと話題になってタイトルとおおまかなあらすじくらいは目に入ってきてました。

BLとか腐女子とか、実際にはほとんど触れてはいないものの、オタクとして生きてればまあ日常的に耳にする分野ではあるし、実際どんなもん?的な興味もあり、せっかくだからこの映画も見ておく事に。

いつもの如くアマプラ無料。まあ月額払ってるんだから実際は無料じゃないんだろうし、ピンポイントで見たい作品が入って無かったり別料金だったりはするけれど、そんでも色々無料で見れちゃうのはつくづく変な時代だなと思う。昔で言うTV放送みたいな感覚なんですかね?

 

とまあそんなBLへの興味もあって見たのもあってか、あれ?意外とBLだからこそっていうような部分はほとんどない。
作中で取り上げられる作品が、BLじゃなく普通の少女漫画でも話としては成り立たないわけではないが、あえて言うなら世間一般的な目線から言えば「えっ?」って一瞬思ってしまう物。

女子高生とおばあちゃんが漫画を通して友達になる。えっ?普通はあんまりそういうのは無いよね?そもそもそんな世代が違ってて友達になれるものなの?的な、ちょっとアブノーマル的なものという意味でのBL。

 

そしてもう一つ、芦田愛菜演じる主人公のうららが、とにかく引っ込み思案。BL本も、隠れて読むのが彼女の流儀。決して回りにBL好きなんてカミングアウト出来ないタイプ。こういう所は単純に漫画好きというより、BL好きっていう設定の方が親和性が良かったのかなと。

 

見た目はねぇ、そりゃあ芦田愛菜ちゃんですからメチャメチャ可愛いのだけれど、キャラクターとしては「陰キャ」という立場。逃げ腰で一歩踏み出せない彼女が、頑張って頑張ってようやく一歩踏み出せたかな?くらいで終わる感じがほほえましい。

 

宮本信子演じるおばあちゃんの雪さんも、夫に先立たれ、自分もあと余命いくばくか等と考えはじめていた中、新しい世界と新しい友達に胸をときめかせる、というのが過剰だけれど過剰になりすぎない程度に描かれるのが素晴らしい。

 

個人的には、新刊が出るペースを計算して、あと○年は死ねないな、とか考えちゃう辺りがオタクあるあるで楽しい。「ガルパン」完結するまで私も死ねないな、と思ってるぞ。あと、貸本時代の大好きな漫画を捨てられずに持ってるっていうのも良かった。


冒頭、おばあちゃんが本屋に入ってきて「ああ涼しい」とかセリフで言った時は、あ、これもしかして心情を全部セリフで言っちゃうようなTV演出の映画か?大丈夫かな?とか思ってしまいました。

あるいは「原作アリ」の作品で、そういうセリフが原作にあるから使ったのか?とも。
実際これ、原作が女性向けの漫画なんですね2019年の『このマンガがすごい!』オンナ編1位を受賞してる作品だったんですね。

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これも世間からのBLへの偏見と同じように、私の凄く偏見じみた感覚で言えば「少女漫画とかレディースコミックとか、結局は全部恋愛脳なんでしょ?」みたいなね、酷い偏見が未だにあったりするのが情けない所ですが、それこそトミヤマユキコ先生の「少女マンガのブサイク女子考」とかを読むとね

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女子コミでも色々あるし、作家ごとに挑戦はちゃんとやってるんだよ、というのを教えてもらいましたし、そっちの本でもおばあちゃんが主役の話とかもあったりして、そこは共通項だなと感じました。

 

やっぱりルッキズムとか男性社会のおかげでね「可愛い女の子」以外の女性は価値が無いみたいな社会の中で、陰キャだって居るしおばさんもおばあちゃんも居るのが現実だぞと。それこそ「水星の魔女」で家父長制への対抗部分もありつつ、少女が乗り越えるのは母であったり、周りにはちゃんとおばさんもおばあちゃんもいるというのを描いただけでも新鮮に見えたっていうのはね、普段からいかに歪んだものを見ているか、見せられているか、っていう事だと思うんです。

 

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いかにもな子供部屋おじさんで、私のブログを見ていただければわかるけれども、900くらい記事書いて、その中の9割以上が凄くオタク臭いものばっかじゃないですか。私は周りにもオタクである事を隠してないので、そう言う意味ではオタクやってるとずっと楽しいよ、的な事はたまに言ったりするんですけど、それと同時にね、現実がとても辛いからオタクに逃げ込むしかない、みたいな部分もやっぱりあるんです。

 

この辺はなぁ、オタクじゃない人には少しわかりにくい感覚なのかな?とも思う。最近だよよく「押し活」とか言いますけどね、押しがある生活、押しがある人生は凄く楽しいんです。でも同時にねぇ、現実が辛すぎるからそういう逃避場所が無ければ、息をつぐ事すら困難。世間の風はやっぱり冷たく厳しい、みたいな部分がある。
そんな自覚もありきでオタクをやってるので、現実逃避、逃避の場であってもそこに何かしら意味を求める。というか、やけ食いという逃避はするけれども、そこはジャンクフードだけじゃなく、何かしら栄養のあるものを!そうすればきっとこの逃避も何かしらの力になってくれるはず!とか思いながら逃避する日々です。

 


好きな物がある人生は楽しい。
世間から変な目で見られようと、その世界にはその世界にしかない魅力がある。
そして私もねぇ、本音で語り合えるような友達が欲しい。
別に女子高生の友達がいいとか贅沢は言わないから。

 


ああそうそうこのエンディング。

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主演の二人が歌ってて、ほのぼのしつつ変な歌だなこれ。もしかして昔のカルト的な楽曲のカバーなのかな?と思ったらやっぱり。

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昔と言うほど昔でも無いけど、これが原曲なんですね。主人公のお母さん役で出てた人のバンドのT字路sってやつの曲なのか。超カッコいい。

 

西岡恭蔵「プカプカ」とかを彷彿とさせる感じで良いですねぇ

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オーケンチルドレンとしては古のパンクやロックもこんなに味のある曲があるんだぜって紹介してた時期があって、そこに近い物を感じました。なんかそういう系譜が今もちゃんと残ってるんだなと思えて感動してしまった。

 

メタモルフォーゼの縁側。変化への玄関。いや玄関じゃ無くて縁側ってのが良いのか。
一歩踏み出せはそこには知らない世界が広がっていたという感じで素晴らしいです。

 

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