僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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すごい科学で守ります! 特撮SF解釈講座

すごい科学で守ります: 特撮SF解釈講座

著:長谷川裕一
刊:NHK出版
1998年
☆☆☆☆★

これほどまで“愛”に溢れた特撮考証本をキミは読んだ事があるだろうか!
“バトルフィーバーJ”から“メガレンジャー”まで
スーパー戦隊』を、人気まんが家が超(スーパー)SF解釈!!

 

特撮ファンの間では聖典とまで言われた「すごかが」シリーズ。
今は全3冊をまとめた「グレート合体愛蔵版」が出てますが、私が持ってるのは昔の方の1冊目のみ。2・3巻目も何度かブックオフで見かけた事はあったけど、1冊目読んでからにしておこうかと思って実は確保して無い。

 

石ノ森名義が外れた「バトルフィーバーJ」から、刊行当時の最新作だった「メガレンジャー」までを、単品での作品解説ではなく、ロボットの構造を軸に一つの世界観で繋げるという面白い視点で展開された考察本。

 

当時は昭和ライダー、昭和ウルトラマンはシリーズ間を通しての同一世界というフォーマットが用いられていたが、スーパー戦隊は極一部の例を除けば、毎回世界観を一新しているというのが公式の見解だった。そこを、あえて繋げて考えると言う、斬新でありつつファンならつい妄想してしまうものを、それなりの説得力を持ったロジックで展開するという面白さ。


同時期に柳田理科雄著「空想科学読本」シリーズが世間的にも話題になって大ヒットしてた時期でした。ただそちらは、漫画や特撮、アニメや映画で描かれてるものをリアルな科学で検証するとこんな風になっちゃうんだよ、あんなの嘘っぱちの塊なんですよ、みたいに作品を否定する傾向が強かった中で、そういうものに対するカウンター的な部分も大きかったのでしょう。

 

でも、それもわかるにはわかるんです。特撮に限らず、アニメやガンダムでもそう。なんとなく飛行機っぽい形してるけど、これで本当に揚力が作れるの?エンジンはどこ?ジェット推進の吸入口と排出口は?飛行機なのに垂直離陸出来る理由は?こんなのリアルじゃないよね?ただの子供騙しじゃん!っていう考えも、一度はみんな通る道だと思う。そういうのもオタクからの卒業の理由の一つとして決してゼロではないはず。

 

いやでも、卒業しないオタクはそうじゃないのです。いやだって未来の技術なんだから、今の科学技術で考えたって仕方ないし。異星人の技術が使われてるから、考え方が根本から違うし!みたいな、なんとかこっちはこっちでそれっぽい理由を見つけようとする。

 

私がプリキュアをやたら社会学フェミニズム文化とか、小難しい理屈を重ねて語るのも同じ理由です。メインターゲットの未就学児が、プリキュアなんて子供っぽい、変身なんて現実には出来ないし、あれは嘘の話なんだって言ってアイドルとかに流れて小学校に入る頃には卒業してしまうものを、いやいやそういう事では無いんだよ、と良い歳したおっさんがそれっぽい理由をつけて、君らがバカにして卒業していったプリキュアは実はこんなに凄いんだぜ的にロジカルに語ろうとしてるのもきっと同じだと思われます。

 

そんな人がこの本読んで、楽しくないわけないじゃないですか。しかも「クロスボーンガンダム」の長谷川先生ですよ?「ガンダム」と「イデオン」を繋げた「逆襲のギガンティス」の人ですよ?

 

デンジ推進システム。3点でエネルギーフィールドを構築してそこで揚力を得ている。まさしくこれ、ガンダムで言うミノフスキークラフト/フライトみたいな技術なわけです。あんな木馬型のホワイトベースが空飛ばないだろう!みたいなツッコミに対して、いやミノフスキークラフトで飛んでるので!そういう技術なので!っていう奴ですよね。

 

戦隊ロボも、最初の飛行メカが出てくるデンジマン以降はその系譜が引き継がれて行く、というような目から鱗の設定。

そして合体変形も、縦分割と横分割では、それぞれの技術系譜があり、母艦なども含めて歴史とともに進化していく。

 

いやここね、変形のギミックとかそういうのって、おもちゃの都合とかもあると思うんですよ。こういう技術を使ったから次はこうしてみよう。或いはこれは前のと同じ形で行けるんじゃないか?みたいな。使える素材の変化なんかもきっとあるはず。

 

そうやって繋がって行くものも、ただおもちゃの技術がこうだったで終わらせるのではなく、作品内の世界観に落とし込んで、ロボの開発系譜もこう繋がっていったのではないか?みたいに落とし込むセンスが本当に素晴らしい。

 

ただ、理屈でこねくりまわしても厳しい部分も当然出てくる。実際にある自動車の形をただ数倍にしたようなものは、果たしてどんな意味があるのか?ターボレンジャーカーレンジャーでは一見繋がりがありそうで、それはまた別の宇宙文化圏によるものだ、的な解釈で、海と宇宙は全く違うものなのに、宇宙でも水上船と同じような形の船を作ってしまうような例がある、みたいな話をされると、おお!確かに!みたいに、色々とあれやこれやと捻りだしてくるのが面白い。

 

厳密にTV本編の描写を追っていけばね、いや話が繋がってるわけないでしょう?ここも矛盾してるし、ここも変じゃん!みたいなのが無限に出てくると思います。そもそも作り手がそうは作って無いんだから。でも、物事をただ否定するだけでは何も生まないし、逆に僅かな痕跡でも、例え強引で無理矢理な解釈でも、こう考えるともっと面白くならない?という方法論の方が私は素敵だなと思う。

 

それを感情論ではなく、ロジックの積み重ねできちんとやってくれるのが長谷川先生の面白さです。以前のクロボンのインタビューでも作品によって感情や勢いと理論武装の組み立てのバランスは事なるって言ってて、そこは面白い部分だなと感じます。

 

オタクにしか支持されない漫画家ですが、だったらオタクな自分が長谷川先生を応援しないでどうするよ?という気にさせてくれる人なのでまだ読んで無いものも山ほどあるので、私は長谷川先生を応援していきます。

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