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鉄人28号 ~皇帝の紋章~

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漫画:長谷川裕一
原作:横山光輝
刊:講談社 マガジンZKC 全3巻(2004-5)
☆☆☆☆☆

 

元々初版の3巻の発行部数が少なかったらしく、その後再販もされずそのまま絶版、リニューアル版みたいなのも出ていないようなので、プレミア価格がついてました。足を運んで先日ようやく安い価格で手に入れましたので、早速読みました。はい号泣。

 

の前にまずは鉄人28号とは何ぞやってとこから始めましょうか。ぶっちゃけ私も通ってこなかった奴なので詳しく知りませんし。私の興味としては長谷川漫画だから読みたかったって所ですので。

 

ざっくりしたイメージだと、日本の巨大ロボット物の祖、まだこの時点ではロボットに乗り込んだりせずに、離れたとこから二本レバーの操縦桿で操作。旧日本軍が戦争時の兵器として開発していたロボットで、ライバルロボとしてブラックオックスってのが出てくる、ぐらいの知識しか無いかな?

ああ、あと主人公の正太郎君は少年愛としてのショタコンという言葉の語源にもなったって事くらい?

 

元のオリジナルは横山光輝先生。永井豪の「マジンガーZ」と同じくアニメありきの企画として書いたのかな?とも思ってましたが、普通に漫画単体として描かれてたものが後にアニメ化されたっぽいですね。というかその前に実写ドラマなんてのもあったのか。

1956年に漫画がスタートして、1963年に最初のモノクロ版アニメがスタート。
1980年にカラーで作られたのが「太陽の使者 鉄人28号」で、こちらの太陽の使者ってのも後からソフト化の時につけられたものっぽい。
1992年に設定やデザインをリニューアルした「超電動ロボ 鉄人28号FX」というアニメがあって、これは何と無く私も憶えてるかな?「ゲッターロボ號」辺りと同時期でしたっけ?企画としても似てるし。ただそれを見てたかと言えば見てはいないです。こんなんあったなくらい。
そして2004年にも再アニメ化されてますね。それは知らなかった。って、確か今川泰宏が監督やってたアニメ映画版が確かあったと思ったら、ここのTVシリーズからの劇場版って事なのね。
更に同時期に実写映画もありましたので、今回の「皇帝の紋章」もそういうメディアミックスの一環として描かれたって事なのか。余裕があればアニメ映画と実写映画くらいはいつか見ておこう。

 

で、丁度この2004年に横山光輝先生がお亡くなりになられて、3巻の巻末でもその辺りが触れられてます。横山光輝って私は全然通ってこなかったんですね。小学校の頃とか「三国志」読んでる人居たなぁって思い出はあるのですが、私はその辺の時期は漫画と言えばジャンプしか読んで無かった。

 

ただ20代の半ば頃でしたかね、自分は今のままの薄っぺらいオタクのままじゃいかん!と思い立って、ちゃんと語れる濃いオタクにならねば!と映画も漫画も、クラシックでも有名な作品も触れておかないと!とか思い立ち、手塚治虫とか読み始めたんですけど、手塚漫画の層が厚すぎて、石ノ森とか、永井とか藤子両氏とか、数作程度しか手をつけられず、今に至るみたいな。その中でも横山先生とかもいずれとかは思った記憶がある。「ジャイアントロボ」とか見てないけど、何気にアニメ版の「仮面の忍者赤影」とかは好きだったし。

 

とまあそんな感じなので、他の「鉄人28号」との違いやどこをどうアレンジしたのか、テーマ性の違いとか、そういうのはわかりません。

あくまで長谷川裕一の巨大ロボ物アレンジ路線という視点での感想になります。その辺なら長谷川ガンダム全部と、「ビクトリーファイブ」→「ゴッドバード」は読んでますので。

 

いやもう長谷川節全開でした。


過去に囚われる大人と、未来しか見ない少年っていうのをね、ちゃんとその作品に合わせた感じで描いてくるっていうだけで、ああこれ凄いわと納得させられるものがありました。

 

鉄人28号ってね、戦争の為の兵器として作られたわけじゃないですか。巨大ロボ好きとしては、やっぱりそこってちょっとした後ろめたさがあるんですよ。メカかっけーな、と思いつつ、でも戦争の人殺しの道具をカッコいいとか言ってて良い物なのか?っていう。

「ヤマト」も私は見て無いので勝手なイメージでどうこう言うのはフェアじゃないですけど、戦艦大和を復活させて今度こそ勝利を勝ち取るんだ!みたいな思想が見えて私はそこが物凄く抵抗がある。大日本帝国万歳!みたいなさ。西崎も石原も右翼思想の人だし。私は左側なので。

 

超人機メタルダー」とかもそうなんですけど、日本軍が極秘に開発していた兵器が終戦に間に合わず、後の世に出るっていう設定は凄く好きなんですよね。最初から全部ファンタジーにするんじゃなく、現実の世界や歴史を踏まえた上で、そこをベースにファンタジーとして膨らませるって、映画とかでもとても好きな路線。

 

なのでこの鉄人も設定的にはグッと来るものが最初からあるんですけど、28号が武器を持っていないのは、人の形や手の形をしているのならば、銃を持つ事も出来るけど、鍬や鋤を持つ事も出来る。人を殺す事も出来るけれど、人を助ける事も出来る。そういう思想の上で作られたのが28号なんだっていう部分が今回の話の中で描かれてて、そこは凄く良いなと。

 

で、正太郎君、「皇帝の紋章」=ナチスの遺産みたいな、過去や大人の陰謀に巻き込まれて行くんだけど、彼は後ろを振り向かず、常に前を向く子供、という描かれ方をしてるんですね。少年漫画の少年主人公だからっていうのも当然あるんでしょうけど、そこをただの無垢な少年として描いてるわけじゃない。頭の良い子なので、色々な事を知った上で、苦しくても、それでも自分は自分の意志で前だけを見続けるんだっていう描き方になてって、28号だけでなく、正太郎君もまた鋼の意志を持つ「鉄人」という、まさにこの作品だからこその描き方をしてある。いや上手いな。流石です。

 

それでいて、ロボットとは何か?人の意志を持つロボットと、ロボットの意志を持つ人間とかを対比させたり、SF的なセンスを抜群に発揮させたクライマックスとか、私はもう涙ボロボロで読み終えました。

 

1巻2巻までは、長谷川先生らしく、ちゃんと勝負にロジックのある戦闘シーンとか、シンプルなデザインが故に長谷川絵とマッチしてて面白カッコ良く読めるな、くらいだったんですけど、3巻の怒涛のたたみ掛けがホンっとに素晴らしかった。

 

ロリなヒロインとか、お姉さんの切ない展開とか、クロスボーンとか他の作品でもこれ見たぞ?っていう手くせでもあり、長谷川先生らしさだなっていう部分はある。正太郎君はトビアにかなり近い感じはするし。

 

そんなある意味、いつもの長谷川漫画でありつつも、「鉄人28号」だからこそ描けるものは何か?っていうのにちゃんと向き合って、その上でただのオマージュとかではなく自分の漫画にしてあるのはマジで凄い。

これ、絶版のまま放置されてるの凄く勿体無い作品だなぁ。コンビニコミックとかでも良いからいつかリニューアル発売されたら是非少しでも多くの人に読んで欲しい。

 

日本の巨大ロボってね、やっぱり鉄人28号から始まってる系譜なわけですよ。それを長谷川がこう描くか!ってのが本当に凄かったし面白かったし泣けた。戦争と言う後ろめたさ、人の愚かさの先にあるもの、目指すべき所はここなんじゃないかっていうのをちゃんと描いてる。少年漫画としても大傑作だし、その後に続くロボ物の祖としてもね、その先の未来を見据えているんだっていうのが素晴らしかった。

 

無垢な少年がイノセントを失い大人になるっていう映画でも漫画でも何でも定番なストーリーってあるじゃないですか。個人的にもそういうの凄く好きな話ですし。


でも今回の話もそうだし、「クロスボーンガンダム」のトビアもそうだったけど、その少年の理想や夢を捨てないまま大人になろうとする話なんですよね。大人の言う事もわかる、でももう少し自分はこの理想を追い続けたいっていう。悲しさや苦しさをグッとこらえて、それでもまだ前に進むんだっていうちょっと無理してる感じがグッと来るし、そこが少年から大人に変わる前のギリギリの所を描いてるっていう感じで、少年漫画として面白い部分。

 

いや私はそんなに世の中上手くは回んねーよ、っていう大人の話も好きですが、少年がこれから背負っていくものを感じさせる少年漫画もこれはこれでやっぱり面白いなと思わせてくれる作品です。
ただ少年が主人公で青臭い事を言うだけの作品だと、流石にちょっともう乗れない部分も出てくるんですけど、今回の作品みたいにね、色々ある事は知ってる、けれども、それでも自分は前を向くんだっていうある意味での強がりみたいなのはね、やっぱりグッと来るし、こういう作品は本当に素晴らしいです。

メチャメチャ面白かった。そして泣けました。

 

鉄人28号 2―皇帝の紋章 (マガジンZコミックス)

鉄人28号(1)~皇帝の紋章~ (マガジンZ KC)

 

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