僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

見たもの読んだものなどの簡単な記録と感想のチラシ裏系ブログ

新幹線大爆破

新幹線大爆破 [DVD]

監督・脚本:佐藤純弥
日本映画 1975年
☆☆☆☆

 

<ストーリー>
新幹線ひかり109号に爆弾がセットされた。その爆弾は時速80キロ以下になると自動的に爆発する。犯人は500万ドルを要求し警察は取引に応じるが逮捕に失敗…。

 

乗り物パニックサスペンス映画の金字塔。日本映画のみならず、世界にも影響を与えたと言われるこちらの作品。「スピード」なんかもその系譜ですね。

 

宇多丸スクリプトドクター三宅さんがおっしゃってましたが、その乗り物と共に物語の推進力も停滞しないので(車両が止まらない限り、状況が常に動き続ける)名作になりやすい、といった映画の構造にも関わる面白い部分。

 

路線の切り替えとかのタイムサスペンス、現場と指示側の葛藤、二転三転する物語展開と、後の作品にも影響を与えているのもよくわかる、面白い作りでした。

 

「タワーリングインフェルノ」とかパニック映画のヒットを見て、日本でも二番煎じでそういうのを作れ!という所から始まったらしいこの企画。ものすごく東映らしい出発点です。スーパー戦隊とかでも、流行ったものをモチーフとして取り入れたりとか、今でも東映の社風は大して変わってません。

 

ただ、予想してたのと違ってたのは、高倉健演じる犯人側三人の事情とかが徐々に明かされて行ったりする中で、学生運動くずれだとか、高度成長の影にあったもの等、意外と社会派要素も強い。そもそも「新幹線」ってのも万博とかと同じで、日本の象徴という意味合いも強いので新幹線の話にしたらしい。高度成長経済、技術信仰、安全神話みたいなものへの皮肉。単純なパニック映画と思って見たのですが、実は「太陽を盗んだ男」とか、そっち系の作品でした。ラストも思いっきりATGとかアメリカンニューシネマ系。

 

海外版では犯人周りの描写を無くしてパニック物のエンタメとして売って、それがヒットしたらしいのですが、そうしたい気持ちもわからなくはない(2時間半と長尺ですし)そしてそれでも面白い作りにはなってると思う。でもやっぱり批評性とか社会性みたいなものがあってこそ、歴史に残る作品になったんだと思うし(ただ、あまり日本ではヒットはしなかったとか)個人的にも社会性のあるものの方が作品としての価値は上がる、とは思うかなぁ?

 

ただこれ、予告がひどいです。


新幹線大爆破(予告編)

時代と言ったらそれまでかもしれませんが、ひたすら恐怖を煽る文句を並べて、今見ると不謹慎極まりないです。今だと多分、試写会での評論家とか雑誌の評価を並べて、「最も恐ろしい映画」とか恐怖を煽るにしてもそんな風になるんでしょうね。やってる事の本質はさほど変わらないにしても、洗練されてきているというか、規制が厳しくなったというか、世の中少しづつでも変わってきてるんだなと、時代を感じます。

 

時代と言えば指令長役の宇津井健は、今だったらこれ佐藤浩一がやる役だよね?とか色々想像できてそこも面白い。高倉健とか千葉真一の役は今だと誰でしょうか。

 

こんなご時世ですから「復活の日」とかも再注目されてるらしいのですが(私はゾンビ物の亜流として昔見ました)この辺の時代の邦画って私はほとんど見て無い。ブログ再開するここ1~2年前に、まあ勉強がてらに、とか思って「仁義なき戦い」とか「八つ墓村」とか色々見てました。好きかどうかと問われれば、そんなに好みではない分野ですが、歴史に名を残す作品はやっぱりそれだけのものがあるし、今後も少しづつですがそういうの拾っていければなと思います。

 

有名だけど見た事無い映画なんて山ほどありますよね。映画館で新作が見れなくなってしまっていますが、過去に遡れば見るものなんて星の数ほどありますので、決して暇はしておりません。

フレッシュプリキュア! ミュージカルショー ~うたって おどって しあわせゲットだよ!!~

歌手も登場!スペシャルライブ♪Ver.

フレッシュプリキュア! ミュージカルショー ~うたって おどって しあわせゲットだよ!!~ TECD0648 [DVD]
2009年
☆☆☆


プリキュアシリーズ6作目「フレッシュプリキュア」のいわゆる着ぐるみショーのミュージカル版。


遊園地とかイベント的な所でやってる着ぐるみショーは初代からあったようですが、こういう形でのミュージカル劇は何時から始まったのかは後追いの私にはわかりません。ただ、DVDでソフト化されてるのはこの「フレッシュ」から。12作目の「Go!プリンセスプリキュア」までソフトは出てたのですが、その後は出なくなってしまいました。

 

遊園地とかのプリキュアショー自体は近年の作品まで含めて、参加者が撮影してるやつがYoutubeに割と落ちてるのですが(撮影禁止じゃないのかな?私は実際に足を運んだ事無いので不明)オールスター版とか、追加戦士が入る前と後とかで色々あるのでその全貌は把握しきれません。本編と同じ作家が脚本書いてたりするものもあったりするようですし、声優さんはきちんと本物を使ってるので、割と貴重かなとは思うのですが、コンプリートブックとかでも特にその内容が触れられる事もほぼ無いので、ホントにその時にしかやっていない生もの、という感じでしょうか。・・・ライブだけに。

 

ただ、プリキュアを演じてる声優が何人かで一緒に観に行って、子供達が本気でプリキュアを応援してる姿を見て感動&自分達がいかに特別な役を担っているのか改めてそこでより思いを強くした、的なエピソードは結構な頻度で声優さんからは語られますので、こういうのも含めてプリキュアのコンテンツの一部になっているのは確かです。なので、こういった形でソフト化されてるのはありがたい事だと思います。

 

・・・なんて偉そうに語ってスミマセン。ええと、フレは一度見た。ハトも確か見たような見て無いような、ぐらい。中古でソフトは出てる分揃えてはあるのですが、買うだけ買って見ていません。映画は好きな作品とか何度も見返してますが、ミュージカルは「まあいつか見よう。ただし今では無い。」みたいな感じで今に至っております。せっかくブログ始めて、プリキュア映画を1から順番にやってる最中ですので、積みの消化みたいな所も兼ねて、映画に合わせてこれも取り上げていこうかなと。これに関してはプリオタ的な知識とか、文章で何かしら記しておきたかったネタとかは無いですので、初見の緩い感想程度の物になるかと思いますが、よろしかったらおつきあい下さい。

 

今回の「フレッシュプリキュア」に関しては一度は確実に見てます。一番最初の変身シーンにとにかく驚かされるのと、キャラソンのボーカルアルバム1の方の曲がここで使われてるんだなってのと(他の作品はどうなってるか不明)フレ4人の口癖の頭を合わせると「しあわせ」になるのは割と有名なのはこの作品のおかげだったりするのかも?ぐらいの印象。

ピーチ「しあわせ ゲットだよ」
ベリー「あたし、完璧」
パイン「わたし 信じてる」
パッション「せいいっぱい 頑張るわ」
と、最初の一文字を立て読みすると「しあわせ」になるのは割とトリビアとしては有名な方ですよね?アニメ本編では特にそこがフューチャーされる事は無かったですが、こちらのミュージカルでその辺が話の流れで出てきたりします。

 

収録されてるのは2009年8月2日の大阪公演で、前田健が後期EDを放送されたばかりと言ってるので、パッション加入してすぐくらいだと思われます。せつながブッキーを祈里呼びしてるので、沖縄旅行直前くらいの時間軸になるでしょうか。

 

今回見てて気付いたのですが、後にカッパードさんを演じる細谷佳正がちょい役で声当ててたりしました。うん、やっぱ個人的には細谷さんと言えばオルガと「この世界の片隅に」での声のイメージなので、今回の奴は凄く若い声に聞こえます。

 

ラビリンスも絡みつつ、基本的には番外編的なお話や世界観なので、特に本編に影響する部分は無いですが、プリキュアショーは敵幹部の着ぐるみも作られるのが通例ですので、今回はウエスターが登場。プリキュア側はキャラソンボーカルアルバムの曲を歌ってくれますが、何とアルバムには入って無いにも拘らず、ウエスターも楽しく歌ってくれます。これは貴重。

 

実はプリキュア大投票のプリキュア以外のキャラ部門の3票の内、一票は私ウエスターさんに入れました。パッション×ウエスターの絡みも大好きなのですが、声を当ててる松本保典さん、初代のジュナとか、5の王様とか、ゴープリのはるはるパパとか、シリーズ跨いで何度もプリキュアには貢献してくれてるので、そんな所まで含めて代表してウエスターに一票、みたいな感じだったりします。

 

中の人と言えば、前田健さん。残念ながらカオルちゃんは今回出てこないのですが(グハッ)ダンスレクチャーとか、ED曲の所で踊ってくれてます。当たり前の話ですけど、振付師なのでダンスのキレが抜群。素直にカッコいいですよね。プリキュアですのでダンス中に女の子っぽいしぐさとかもあったりするのですが、そういう所も変におかしかったりせず、普通にカッコよく見えるのは、本当に流石だなぁと思わせられます。

 

TVシリーズの梅澤プロデュサーが企画の本当に初期段階からまず前田健に声をかけたというエピソードが残ってますけど、EDでのCGダンスもプリキュアの代名詞の一つになっている事を考えると(ダンス自体はガンバランスでフレ以前からやってはいますが)前田健プリキュアの歴史においては結構な貢献を果たしてくれてると思います。つくづく残念な人を失くしてしまいました。せめて、心からありがとうと言わせて下さい。

 

OPの茂家さん、EDの林ももこさんの他、フレでもボーカルアルバムには参加してる工藤真由さんも登場。こうやって色々な人が紡いでいくプリキュアというバトン。とても感慨深いです。

 

最初に見た時はこれどのタイミングだったっけかなぁ?多分、今みたいに重度のプリオタまでにはなってなかったくらいだったのかも?これ系はそんなに面白いものでもないかな?ぐらいに思ったからこそ、後のこれ系スルーする事になっちゃったと思うんだけど、今見るとより深く色々な視点で見れて、意外と興味深く見れました。是非ボーカルアルバムの1とセットで楽しみたい作品です。

 


あ、プリキュアの着ぐるみ表情も変わらないし、ちょっと気持ち悪いとか最初は感じるかもしれません。でも「トクサツガガガ」でもそのネタやってましたが、割とすぐに慣れます。私も最初は、肌色のタイツとかシワになって変だし、コスチュームと顔以外の部分は普通に肌出した方が自然なのでは?とか思ってました。うん、でもそれやると多分、普通にコスプレになっちゃうし、変な生々しさが出ちゃうからきっと意図する所とは別方向のものになっちゃうんでしょうね。リアルなプリキュアとかじゃなく、アニメから飛び出したプリキュアっていう意味では、これで多分正解なんだと今は思えるようになりました。

 

ってな感じで次はフレプリ劇場版です。

 

フレッシュプリキュア!ボーカルアルバム1~太陽の子供たちへ~

フレッシュプリキュア!ボーカルアルバム1 〜太陽の子供たちへ〜
ミュージカルでも使われるピーチの「ハッピーカムカム」が好きです

 

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エンターテインメントアーカイブ 宇宙の騎士テッカマンブレード

エンターテインメントアーカイブ 宇宙の騎士テッカマンブレード (NEKO MOOK)


発行:株式会社猫・パブリッシング NEKO MOOK 2956
2020年
☆☆

映画秘宝」復刊号買わなきゃな、と本屋さんに足を運び、棚を眺めていると・・・

宇宙の騎士テッカマンブレード」のロゴが目に入る。

 

こ、こ、これはっ!
私のフェバリットアニメ作品の一つ、テッカマンブレードではないか!

 

何故今ブレードのムック本が!?

 

いやまあ特撮とかでたまに古い作品のムック本とか出たりするからな。おそらくそういう流れか。と、とりあえず手にとって軽くパラパラめくって見る。全話のあらすじとかは載ってるけど、全話解説とかでもない様子。インタビューも少なめで、監督や脚本、声優さんのインタビューも無い。・・・う~ん、これはちょっと微妙そう。


しかも3000円と安くは無い価格。どうしようかなこれ。実は「テッカマンブレード」って過去にもこれといった本は出て無い作品なのです。貴重なのは確か、買い逃して、後から買っておけばよかった、となるのも悔しいですし、ええい、もうなるようになれと結局購入してきました。

 

設定画とかは割と掲載されてる感じですが、基本的に私はムック本とかでも読む方重視で、ビジュアルガイドっぽい物はあまり買いません。ライダーとか戦隊で終了後に出る「公式読本」ぐらい読み応え有る奴が好き。そこまで文字数は多くないけど、プリキュアのコンプリートガイドも価格が安めなのに内容がとても充実してるので、オタク系ムックとしては最高にコスパが良い物凄く良心的な本です。そういうものと比べてしまうと、私の好むタイプのムック本とは相当にかけ離れた一冊でしたが、「テッカマンブレード」の本が今の時代に出ただけでもそこは貴重と思うしかないです。

 

ええと、せっかくなので一応作品の概要とか私の個人的な思い入れなんかも語っておきましょうか。

 

宇宙の騎士テッカマンブレード」1992-93年に放送されたタツノコプロ制作のTVアニメ。一応1975年のタツノコアニメ「宇宙の騎士テッカマン」のリメイク的な位置づけですが、設定上の繋がりも無く、いくつかのキーワードや固有名詞を引っ張ってきてるくらいで、基本的に作品としては別物。

 

タツノコヒーローを今風にして集結させてた「インフィニティフォース」なんてのもありましたが、そっちに出てたテッカマンは初代の方で、ブレード要素は無し。インフィニティフォースはTVシリーズと映画と完走しましたが、う~ん正直つまんなかった。見所ゼロとまでは言いませんけれども。


それだったら「科学忍者隊ガッチャマン」を、それこそガッチャマンのタイトルだけ使って、後はブレードと同じように別物に作り替えた「ガッチャマンクラウス」の方がずっと面白いです。ヒーローアクションみたいなのを期待すると痛い目を見ますが、社会学をベースに作られた(BDの解説書で作り手もそう言ってます)世にも珍しい「社会学アニメ」になってました。万人向けとは言いにくいですけど、私は2期目の「インサイト」も含めて、とても楽しめたし、BD買いそろえるくらいメチャメチャ好きな作品です。

 

タツノコと言えば今は「プリパラ」とかのプリティシリーズとか、派生会社から独立した(だよね?)プロダクションIGの方が有名かなとも思いますが、「ガッチャマン」とか「タイムボカン」シリーズとか、タツノコらしい昔からの独自のコンテンツは持っている会社で、定期的にリメイクしたり、実写映画やったり、今やってるヒロアカの後に始まった「ハクション大魔王」もタツノコですよね。そんな有象無象のリメイクがあるのもこの会社の特徴。その中の一つにこの「テッカマンブレード」も入る。

 

スーパーロボット大戦」のGBA版「J」とDS版「W」に参戦した事もあるので、その時に割と知名度も上がった気がします。ええ、私もブレード目当てでやりましたとも。最優先でフル改造して完全にブレード無双でした。

 


ロボットでは無いものの、変身ヒーロー物をガンダムっぽいリアルな感じでやる、という意図があったのは今回のムック本の植田プロデューサーのインタビューで初めて知りました。(そういう意味じゃ買った価値はあったかもね)「ガンダム00」でも描かれる軌道エレベーターとかを92年のこの時点で取り入れてあるのは、ガンダムがコロニーならこっちはオービタルリングと軌道エレベーターでリアルな世界観を作りだす、という事だったようです。

 

そういう当時の最新科学を取り入れつつ、異星人の侵略と、少しづつ明かされていく主人公Dボゥイの家族の愛憎劇を描くドシリアスなハードSF。

 

主役の森川智之が必殺技「ボルテッカ」の叫びで声量だけでマイク破壊した逸話と、弟でライバルのテッカマンエビルを演じた子安武人がここで演技に目覚めた事は割と有名なエピソードかも。後はアニメ主人公で最も不幸な運命を背負わされるとかも。

 

私はまだ学生の頃で、同じくタツノコ制作の「天空戦記シュラト」とか「キャッ党忍伝てやんでぇ」とかも好きで見てて、そんな流れの一本がこの「テッカマンブレード」でリアルタイムでハマってたかと思います。4種出てたプラモも全部買いました。

 

とにかく重い、とにかくシリアス、とにかく暗い、でもカッコいい。それでいて設定なんかも上手く作ってあって、特にSF小説なんかを読みあさるSFファンとかでは無かった私は、これくらいの作品であっても、侵略者ラダムとテッカマンの関係とか、メチャメチャ良く出来てると思ったし、話にもグイグイ引き込まれて、ビデオ録画何度も見直してました。

 

で、大人になってからもDVD-BOXは即買いして、そこで何周かしても面白い。そっから更に10年とか経ってたかもしれませんが、ニコニコで配信してるので見ても、それでも最高に面白い。

なんて書いてると、また1から見返そうかな?なんて思ってしまうぐらいに好きな作品です。

 

その前の「シュラト」の時も騒がれてましたが、絵のクオリティも結構ガタガタだったりする作品なんですが、それもまた味、とか判官贔屓で言ってしまいたくなるくらいにはファンです。OP詐欺とか言われたりもしますが、OP担当の大張さん的には「ドラグナー」とこれが代表作的に言われる事も多い。

 

絵的には今回、キャラデザの湖川さんのインタビューも載ってますが、全く思い入れも無いし、良い思い出も無いと、ファンにとってはちょっと悲しくなる言いようでした。まあキャラデザとしては別名義になってるくらいだし、Dボゥイとアキとミリーだけ佐野さんで、残りをってのも仕事としてはどうかと思うし、仕事だからやりましたってなっちゃってるのは仕方ないとも思わなくは無いです。全く安定してない作画を見れば色々な事情があったんだろうなってのは何と無く想像できる。

 

でも、それでも私はこの作品が好きな事に何の揺らぎもありません。

 

ムック本としては、そういう各話の作画もそうだし、ドラマやテーマ、各話のあらすじだけじゃなくて、全話分の「解説」を読みたかったし、OVAの2にも触れていながら、真の完結編になる小説版「水晶宮の少女」には全く触れて無かったりと、本としては非常に残念な作り。


解説やスタッフ・キャストインタビューが充実してる本が出れば、間違い無く私は買いますので、いつの日にかそんな本が出る事を夢見て、待ち続けたいと思います。


Tekkaman Blade テッカマンブレード OP1 full

 

本編終了後にセルフリメイク的に作られた短編の「ツインブラッド」
テッカマンのグロアレンジはちょっとキツイですが、ストーリーも凝縮されてる感じで良いです


テッカマンブレードTwin Blood

リスアニ! 2020 MAR. Vol.40.2 「ガンダムシリーズ」音楽大全 -Other Century-

リスアニ! Vol.40.2(M-ON! ANNEX 645号)「ガンダムシリーズ」音楽大全 -Other Centuries-

エムオン・エンタテインメント刊 2020年
☆☆☆☆

宇宙世紀編に続いてアザーセンチュリー?編。まあ宇宙世紀以外の奴です。
90年代のG/W/X、ゼロ年代の種とOO、10年代のAGEやオルフェンズ等、物凄く幅と作品数が多い。つーかこれ∀とGレコは宇宙世紀に入れた方が良かったのでは?富野だし、別の年号表記とは言え、一応宇宙世紀の未来って設定ですしね。

 

とにかく前冊と同じく、流石に楽曲に関わった人全員ではないにせよ、相当な人数のインタビューをまとめてあって、今まで読んだ事の無い人も多く居ますし、しばらく似たようなコンセプトの本を作る必要が無い程の決定版。ガンダムは特定のシリーズを少し見たくらい、の初心者ではなく全部とまでは言わないまでも大体の奴はガンダム見てるよって人なら、絶対に買って損は無い本かと思います。

 

私はしょこたんがMCやってるNHK-FM土曜2時からの「アニソンアカデミー」というラジオを毎週楽しみにしてるのですが(と言っても仕事中に聴いてるので、最初から最後まできっちりは聴けないのがもどかしいのだけど。去年の仙台公録に参加できて凄く楽しかったなぁ)水木のアニキとか堀江美都子さんとか大御所が出ると、大体の人がアニソンを取り巻く環境とか今と昔では全然変わっちゃったからね、ってよく言うんですよね。

 

宇宙世紀編の方で、ファーストの劇盤とかZの主題歌で、富野がそれ以前まではアニメの音楽なんて業界からはバカにされてきたものを変えようとしてきた、みたいな話は新鮮だな的な事を書きましたけど、その後の流れの、アニメファンには悪評高くネタにされがちな90年代の「アニメの内容とは何も関係ないようなタイアップ」の時代から、ようやく作品に沿った曲を作るようになるゼロ年代、そしてCDが売れなくなりつつもアニソンだけはそれなりに売れ続けて(他のランキングはジャニーズとグループアイドルとエグザイルだけっていうね)音楽業界もアニソンを無視出来なくなってくる10年代とか、それぞれの時代でガンダムの音楽は何をしてきたのか?みたいな所が読み取れる構成になってるのがメチャメチャ面白いです。

 

正直に言えば、CDが売れないから色々なアーティストがアニメに近づいてきてこれまで散々バカにしてきた所謂オタク層からお金をいただこう、みたいな流れだと私は思ってました。うん、それまあオタクの被害妄想に近いけど。

 

でも、この本を読むと、割とアニメ業界の方からのアプローチの仕方も変わって行ってたんだなぁというのを知る事が出来ました。ただアーティストに丸投げするわけじゃなくて資料や脚本まで渡して、この世界観に合う形で作ってほしい、みたいなのをちゃんとやるようになって、一つの作品を一緒に作る、的な形になっていったと。

 

90年代でも本当はそういう形でやりたかったアーティストも居るんじゃないかな、なんて言ってる部分もあって、なるほどそういうものだったのかも?なんて思わせられる所はありました。

 

その辺、ガンダムは90年代の時点でもそれなりのブランド力はありましたし、G/W/Xもきちんとガンダムの世界観に寄り添う形で楽曲が作られているのでそこは恵まれてる方だと思います。私はその中だと「ガンダムX」が凄く好き。

 

でもね、ガンダムXの監督の高松真司(他は「銀魂」と「マイトガイン」が代表作)私も詳しい事は知らないのですが、少し前に高松が監督してた何かの深夜アニメで主題歌が決まってたそのアーティストが、つまんないアニメの主題歌やる事になったけどどうせなら銀魂の方が良かった的な発言をしちゃって、高松がそれにブチ切れて、放送直前に主題歌の話を白紙に戻したとかいう事件があったじゃないですか。

 

元からアニソンシンガーを目指してた系のアーティストならともかく、普通のバンドとかとのタイアップだと、まだまだそんなものなのかもね、とは思ったりします。

 

ガンダム」とか、或いは他の有名なアニメならともかく、有象無象の深夜枠1クールアニメとか、そこまで作品に合わせて一緒に作るなんてやりたがらないでしょ?みたいなのはまだまだあるのかも。となるとアニソン系シンガーとか、声優アーティスト、或いは出演声優にそのまま主題歌も歌わせちゃうとか、やっぱそっちに流れちゃうよね、とも思わなくは無いです。

 

そんな感じの事を考えると、何だかんだ言って「SEED」って挑戦も上手くハマったし、西川が本気で協力してくれたのも良かったし、更にはその裏でというかEDで梶浦由紀を使うセンスも凄いなと認めざるを得ない。種はそんなに好きなわけじゃないのですが、確かに21世紀のファーストガンダムと呼ばれるのは決して過言ではないそれだけのものはあったのかもしれないな、と改めて知らされました。

 

因みにOOのED石川智晶「Prototype」を作る時に水島監督が筋肉少女帯の「モーレツア太郎」を参考に渡したという下りがこの本のハイライトです。ああ、こんな感じの曲が欲しいんですね・・・ってなるか!


prototype pv


筋肉少女帯 - モーレツア太郎

 

主題歌を歌った人全員分のコメントが欲しい!という欲はありますが、それでもこれだけの人を集めたのは凄いし2冊合わせてメチャメチャ満足度の高い良い本でした。

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アベンジャーズ (MCUその6)

アベンジャーズ DVD+ブルーレイセット [Blu-ray]

原題:MARVEL'S THE AVENGERS
監督・脚本:ジョス・ウェドン
原作:MARVEL
アメリカ映画 2012年
☆☆☆☆

 

MCU6作目、フェイズ1としてはこれがラスト。今見ると、割と変な映画だなぁと思ってしまいました。

 

私は元々アメコミファンでしたので、コミックのクロスオーバーを映画というメディアで再現しようとしてるんだなと言うのは最初からわかってましたが、正直ここが山場と思ってました。一部の好きな人達だけが、この映画過去の単独作品と繋がってるんだぜ!的に盛り上がって、映画界からはマニア向けにちょっと変わった事をやってみた程度で終わるんだろうなと。まさかここから更にシリーズが盛り上がって、名実ともにナンバーワンコンテンツになってしまうとは夢にも思ってませんでした。

 

なので公開当時のキャッチコピー「日本よ、これが映画だ」っていうの、ファンとしても凄く恥ずかしかった。いやいやいやいや、これより凄い映画なんて山ほどあるし、一部のファンだけ盛り上がってる物にそんな偉そうなコピーつけて映画ファンを煽らないで!こっちは細々と楽しんでるだけだから!反感買って炎上させるだけだから!頼むから余計な部分で水を差さないで!ぐらいに思ってました。

 

日本でもそこそこくらいはヒットしたものの、確か「スパイダーマン」単独の方がまだ興行収入良かったくらいだったような。そこ考えると、「シビルウォー」でのスパイダーマン参戦は日本ではやっぱり結構大きかったのかなと思います。

 

アメコミ読んでて、クロスオーバー面白いなと個人的に思ったのは、90年代に出た「バットマンパニッシャー」と「バットマン/スポーン」の日本語版です。バットマンはDC、パニッシャーはマーベル、スポーンはイメージと本来は版権が違うので、上記の奴は結構特例的なものだったりするのですが、ヒーロー同士がガチで戦って、しかもそこで勝敗としての決着がついたりするんですよね。

 

ヒーローが戦うとか言っても、どうせ序盤は誤解から戦ったりするけど、最後は結局黒幕の悪役とかを協力して倒すんでしょ?と思ってました。でも、そうはならずにスポーンの顔面にバットラングぶち込んで終了。しかもレギュラーシリーズに戻ってもその顔の傷残ったまま、とかやってるのを見て、アメコミすげぇ!と思いました。


自社のみのキャラクターならまだ理解できても、他社とのクロスオーバーであきらかな勝敗までつけて大丈夫なのかこれ?とアメコミ読み始めて間もない私は結構な衝撃を受けたのでした。その後に何年もファンやってると、あーそりゃバットマンには勝てないわな、負けても別に損しないし、むしろ拍がつくくらいよね、と理解するのですけれど。

 

そんな感覚がありましたので、この映画の序盤で、ヒーロー同士が戦うのが実はめっちゃ楽しい。そうそう、ガチで戦っちゃうとか日本のクロスオーバー物には無いアメコミらしい部分だよね、ソーにボコボコにはされてるけど、それでもアイアンマンすげぇ頑丈じゃん。みたいな所でワクワクします。

 

映画としては、終盤のアッセンブルを盛り上げたいからこそ、前半ではやたらヒーロー同士がいがみ合ってる部分ばかりを描く、という物語構造の上での形ではあると思うのですが、アイアンマン、ハルク、ソー、キャップとそれぞれ別の作品があったからこそ、争う姿もまた見ていられるのだなと。仮にその前の作品が無かったり、あるいは見て無い上でいきなりアベンジャーズに入った人なんかからすれば、何だこの協調性の無い人ばかりのチームは?ともしかしたら嫌気が差してしまうものだったりするのかもしれません。

 

で、そこがまとまるのは普通に考えたら単純に強大な敵の存在があってこそ、と思うのですが、1作目のこの作品のメインヴィランはロキ。しかも何か意図がありそうな所は匂わせつつも、中盤でもうヒーロー達に捕まってしまうと。この展開こそが変な映画だなと思ってしまった要因かも。ある意味じゃトリックスターのロキの面目躍如かもしれないけど、1作目からこの捻った展開。ボスキャラ倒すために団結とかじゃないんだ?って。

 

最後にチタウリ軍団と戦うとこでアッセンブルはするわけだけど、クライマックスにボス敵居ないのは結構変な感じでした。この作品の時点でサノスの存在を明らかにしてそれでエンドゲームまで引っ張ってあのクライマックスなんだから、本当にタメにタメたなぁと思わされます。

 

今回見返して、ああこんな感じだったっけかって部分では、単発映画の無かったブラックウィドウの過去が示唆されてたりしたのと(ロキとウィドウのやりとりは見ごたえありました)ホークアイが前半は操られて敵として動いている所。

 

「ソー」にチョイ役で出てたものの、本格的な出番が今回からのホークアイですが、まあロキ一人じゃ敵の面子が少なすぎるのもあって操られて敵になってるんだろうなと思ったのですが、考えてみれば原作ホークアイって初登場時は敵として出てきたんだっけ、その辺りの再現という事なのかもしれません。

 

セルウィグ教授も今回悪役になってるけど、次のダークワールド何してたんだっけ?とか色々と忘れてる事も多かった。見入ってしまったのもあってかエンドゲームでの介入は特に思い出す事も無く、意外と普通に見てしまいました。

 

最終決戦だけはちょっと長いかなぁと感じましたが、この作品なりの工夫はありつつも、後のルッソ兄弟はアクションの面白さをさらに詰めて加速させていったのだなぁと改めて感じました。

 

うん、でもまずはこのアメコミファンでさえ本当に実現できるのか?と疑問視したこの作品を実現させた事。そして決してここが終着点で無く「集大成もうやっちゃったからこの先つらくない?」にはならずに「いやいやこれクライマックスにみせかけたまだ序章だから」とばかりにここを起点としてさらに先に進む事を考えるとすごくワクワクさせられますし、歴史的にも物凄く価値のある一本である事は間違いないです。

 

友達とも少し話をした事があるんですけど、スターウォーズのオリジナル3部作とか、ああいう歴史をかえてしまったような作品をリアルタイムで体験出来ていないのはちょっと悔しいよね、でも今やってるMCUこそが今の時代における歴史的に特別な物をまさにリアルタイムで体験してる形だから、そこは嬉しいよね的な話になった事があります。まさにその通り。

 

何度も言いますが、元々アメコミ好きだった私は、この「アベンジャーズ」1作目を映画館で見た時は、ここまで大きいコンテンツになるとは全く思ってませんでした。


当時の自分に、数年後はアベンジャーズが興行成績オールタイム1位になって町中にマーベルグッズが溢れてて、オタクじゃない層までもがアイアンマンとかキャプテンアメリカかっこ良いよね、なんて会話が通用するんだよ~なんて言ったって絶対に信じないと思います。いや世の中変わるもんですね。うん、MCUって凄い。

 

さて次回よりフェイズ2に突入です。


『アベンジャーズ』予告編1

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映画 プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!

映画プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!【通常版】 [DVD]

監督:大塚隆史 脚本:村山功
日本映画 2009年
☆☆☆★

 

プリキュア映画6作目。オールスター映画としてはこれが長編映画1作目になります。DVDにも特典として入ってますが、まずプリキュア5周年記念として「5GoGo」のゲームOPで初期3シリーズが集結。(勿論、OP映像だけでなくゲーム中でもクロスオーバーしてます)、その流れで前作映画に「ちょ~短編プリキュアオールスターズ」が作られる事になり、この時点ではあくまで1回だけのお祭り映画としてこちらの「オールスターズDX」が作られる事になります。

 

5周年記念でのお祭り映画と言うのは簡単ですが、それが許されたのは東映という会社の社風も大きい。せっかくなのでその辺りの説明から入ります。


東映は今でこそ特撮の分野で一人勝ちしているものの、映画制作会社としては後発で、作家性や品質よりも売れれば何でもありという、ある意味での節操の無さが特徴の会社。俳優と会社が独占契約を結んでいたスター俳優ありきの時代から、東映オールスター時代劇とかを作っていた歴史もあり、アニメの世界でもかつては「東映まんが祭り」というような、ごった煮コンテンツを排出してきた会社でもある。そういう社風があるからこそ「プリキュアオールスターズ」という企画が実際に通って実現化出来た。

 

逆に言えば、プリキュアを作っているのが東映アニメーションでは無かったとしたら、こういうお祭り企画映画が実現できたかどうか微妙な所だったと思います。

 

スプラッシュスター」の記事にタイトルだけ引き継いで、主人公や世界観を全く別の新しいものにするという試みは、女の子向けアニメではプリキュアが初めてだったと書きました。となれば世界観が繋がっていない別々の物語の主人公が終結する「女の子向けオールスターアニメ」も必然的に「プリキュアオールスターズ」が初めての作品という事になります。そういう意味で、歴史的にとても意味や意義のある重要で貴重な作品になっています。

 

本気でその辺の歴史を踏まえるなら手塚治虫スターシステムとかそういう話にもなるのですが、あくまでおおまかに見ての話です、一応。

 

ただ、せっかくなのでライダーとか戦隊とかのニチアサ枠くらいは触れておきましょう。まずは仮面ライダーから。

ライダーのオールスター物と言えば平成ライダー10周年作品の「仮面ライダーディケイド」です。ディケイドはプリキュアオールスターズと同じく2009年。企画的にもっと前から動いてるはずですので、一概にどちらが先とか片方が参考にしたとか断定はできませんが、ほぼ同時期と考えれば、そういった所からもオールスターズ物は東映の社風である事が伺えます。

 

え?昭和ライダーとかでも先輩ライダーが助けに来たりとかしてたじゃん?とかおっしゃる方も当然居るでしょうけど、一応、昭和最後の「仮面ライダーブラック」までは半ば無理矢理ですが、あれ一応は同じ世界観の続きの話という事になっています。それは何故かと言えば、原作者の石ノ森章太郎先生がご存命だったから、だと思われます。一人の作家が生み出した世界であり一人の作家が生み出したコンテンツというのに拘っていたわけです。(そこも厳密に言えば漫画版が原作では無いのですが、話がややこしくなるのでここではスルー)

 

石ノ森先生が亡くなった後に始まったいわゆる平成ライダーは、「原作:石ノ森章太郎」という表記を今も残しつつも、実際の所は特定の原作者が居ない東映のコンテンツになり、作品も「仮面ライダー」のタイトル以外は過去作とは繋がりの無い1作づつの独立した作品になります。そんな中で、平成ライダー10作品目として「ディケイド」が過去の仮面ライダー全員集合するというオールスター物として、作られました。


元々繋がっていないものを無理矢理繋げたので、世界観や設定的におかしい所、矛盾する所だらけです。これはお祭りなんだから細かい事言うな、というのがとても東映的ですし、前述の通り、もう石ノ森章太郎が亡くなった後なので、矛盾してようが何だろうが、そこに異を唱える人は居ないのです。勿論、ファンは困惑して異を唱える人は大勢居ましたが、東映は作家性や作品性なんてどこ吹く風で、売れたもの勝ちだと好き勝手に突き進みます。だってそれが東映の社風なのですから。

 

続いてスーパー戦隊を見てみましょう。戦隊のオールスター物と言えば「海賊戦隊ゴーカイジャー」です。2009年のプリキュアAS、ディケイドよりも遅くこちらは2011年の作品になります。ファンを困惑させまくったディケイドと違って、その反省を踏まえてなのか、オールドファンにも気を使い、過去作品をただの使い捨てにはせずに最大限のリスペクトを持った上で扱う丁寧な作風で大好評を持って受け入れられました。ええ、私も大好きな作品です。(丁度youtube東映特撮チャンネルでも配信開始されたので興味ある方は是非)

 

ゴーカイジャーはそれでOKです。でも、戦隊の場合、過去作品とのクロスオーバーやオールスター作品としてはゴーカイジャー以前から「スーパー戦隊VSシリーズ」というVシネマがあり、それがそういった流れの源流にあります。現行作品と、前年度作品のクロスオーバー作品で96年の「超力戦隊オーレンジャー オーレVSカクレンジャー」がシリーズ1作目。25周年、30周年作品など特別な区切りの際には前年だけでなく、過去作品から数名厳選された形でオールスター的な作品が作られています。


戦隊も平成ライダープリキュアと同じように、1作ごとに違う世界観で作られています。例えば「警察戦隊デカレンジャー」では異星人が普通に地球に住んでたりする世界観なので、前後の戦隊とはどう考えても同じ繋がってる世界では無いのですが、そういう細かい事は言いっこ無しよ、とばかりに無理矢理作品を通します。

 

戦隊は1作目「ゴレンジャー」2作目「ジャッカー電撃隊」のみ石ノ森章太郎原作という表記が入ってますが、以降は「原作:八手三郎」となり、それはプリキュアにおける「原作:藤堂いづみ」と同じく、東映という会社の企画名義でしか無く、それは作品が個人の所有物では無い事を意味します。そういう部分を見ても、スーパー戦隊VSもまた世界観が違うとかそんなの知った事じゃねぇ!という東映の社風を垣間見る事が出来ます。

 

そういった背景も「プリキュアオールスターズ」というコンテンツが生まれた土壌になっているというのは知っておきたい所。勿論、東映以外の制作会社だったら絶対にこれは出来なかったとまでは言わないし、企画の発案でもある鷲尾Pも、そこまでの意図では無く、あくまで5周年を迎える事が出来た特別記念としての作品だったとは思いますが、これが成功した事によって、秋の単独映画とは別に、毎年春にやる定例のコンテンツとして定着していったという部分には大きく影響していきます。一度売れて成功したのなら、じゃあ次もとなるのは会社としては当たり前の流れですから。

 

そんな感じで、一種のお祭り映画ですので、秋の単独映画と比べるとストーリー性よりも、この時点で14人のオールスターの活躍する姿を描く方がメイン。基本的には強大な敵が現れて、それを協力して倒す、くらいしか話はありません。

 

ただ、クロスオーバー作品としての作りはきちんと重視してあって、初代の3人がSSの咲ちゃんの実家のパンパカパンに行き、SSの二人が5のナッツハウスにアクセサリーを買いに行き、5のキャラが初代のタコカフェにたこ焼きを食べに行く、という別のシリーズの世界に顔を出す、というきちんとクロスオーバー物の面白さを考えた上での構成。

各作品ごとに、本来は繋がってはいない作品ですが、大きく世界観が違うとかは無いものの、5は日本でありながらヨーロッパ風の学校という描写でしたので、厳密に考えるとあれれ?な部分は出て来ますが、そこは前述の通り東映作品ですから、言いっこ無しよ、というスタイルです。

 

監督は後にASDX3部作の次にTVシリーズの「スマイルプリキュア」を手掛ける事になる大塚隆史。MHから演出としてデビューしているプリキュア育ちの演出家。過去のシリーズ全部に参加してるので、キャラクターをきちんと理解してるのと、各作品ごとに印象に残る目立つ演出をしてきて、頭角を現してきたからこその初監督起用。作風としてはドラマ性よりも、楽しさや派手さの方を重視して作る印象があります。近年「ワンピース・スタンピード」を大ヒットさせ、今では実績も十分です。ワンピースは私全然知らないのですが、映画の方はプリキュアオールスターズで培った、多くのキャラを魅力的に描く事を重視して作られた事と繋がっている、的な評価がよく見受けられました。

 

TVシリーズの方に目を向けると、今回の「ASDX1」で新人プリキュアとして登場する「フレッシュプリキュア」がシリーズ6年目としてTV2月スタート。今回の映画は3月なので、本当にプリキュアになったばかりの新人という事になります。


そして作り手側も最初の5年間のプロデューサーを務めた鷲尾さんがTVシリーズからは身を引き、フレッシュ以降から4年間続く梅澤プロデュサーに交代しています。理由としては、同じ人がずっと上に居ると風通しが悪くなって、新しいものが生まれなくなるからという理由だそうです。そういった部分もあって、現場は共通ながら指示を出す上の方がそっくり入れ替わって、まさにタイトル通りフレッシュさを打ち出したのが「フレッシュプリキュア」という作品です。フレッシュが今のプリキュアのテンプレートになっている面も凄く大きいので、個人的にも入門用としてフレッシュはオススメです。

 

で、TVシリーズを後任に委ねて、抜けた鷲尾Pは今回の劇場版の方に回り、オールスターズを立ち上げる。新人への継承が作品の内外両方で行われる、という実際の制作側のメタ構造なっているのが特徴。まあ梅澤Pは新人では無いですけれども。3月公開の映画と言う時期的な面もあって、オールスターズ系の春映画は引き継ぎ、継承という役割でこれ以降毎年公開されていく事になります。

 

作品として明確な役割・名目・理由づけがあるのはやはり大きく、オールスター物として一度きりの特別編に終わらずここから毎年の恒例コンテンツとして定着していきました。同じく春に公開された戦隊×ライダーの「スーパーヒーロー大戦」系が数作で終ってしまったのは、スケジュール面もあるとは思うけど、そこにきちんとした作品としての役割を見出せなかった、という風にも考えられます。

 

長年続けていけるシリーズコンテンツとして、プリキュアはそんな形で、色々考えて作ってあるというのをこの「ASDX」一つでも伺い知る事が出来る。そんな作品なのです。

 

15周年を機会に、多少は掘り下げられる事も増えてきた印象はありますけど、基本的には子供向けコンテンツなのもあって、プリキュアってこういう部分をこれまではあまり深く語られてこなかったし、ファンもよほどの濃いマニア以外はあまり語っていないような気がしますので、せっかくだからと長々と書いてみました。プリキュアってまだまだ深堀りできる部分、一杯残ってると思います。時間があれば「プリキュアとは何か?」みたいな新書一冊書きたいくらい。

 

私はオールスターズでも最初のDX3部作よりその後のNS3部作が好きなんですが、DXの方が人気あるのって、DXはプリキュア全員がセリフあるとか、逆にNSは喋らないキャラが居るからとか、割と表層的な部分だけで評価されてるんだな、という印象があります。その辺りはちょっと先になりますが、NSの時にでも書こうかなと思ってますので、興味あるかたはしばらくお待ちください。

 

今回は最初のオールスター作品というのもあって、人数も少ない分、きっちりどのキャラにも見せ場が用意されてて、やっぱりそこは上手く出来てます。初代~5までのOPをバックに活躍する姿は文句なしにカッコいい。

 

そんな先輩達(鷲尾P)のエールを受けて、フレッシュな新人がここからスタート。ピンチの時に、日常会話が入ってそこから反撃の狼煙を上げる所はすご~く鷲尾キュアらしい部分でした。

 

そんな感じで次は「フレッシュプリキュア」になります。
せっかくなので映画の前に1本寄り道しようかな。


Pretty Cure All Star DX Op

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帰ってきた特命戦隊ゴーバスターズ VS 動物戦隊ゴーバスターズ

帰ってきた特命戦隊ゴーバスターズVS動物戦隊ゴーバスターズ [DVD]

監督:加藤弘之 脚本:下山健人
Vシネマ 2013年
☆☆☆☆

 

藤原啓治さんへの追悼を込めてこちらの作品を。主人公の桜田ヒロム/レッドバスターのバディロイドのチダ・ニックの声を担当。特別編のこちらではちょっとだけ顔出しでの出演もされています。

 

まずは藤原啓治さんについて。「クレヨンしんちゃん」野原ひろし役とMCU版トニー・スターク/アイアンマンの吹き替え版担当辺りがやはり有名どころでしょうか。私はガノタなので「機動戦士ガンダム第08MS小隊」のエレドア・マシスと「機動戦士ガンダムOO」でのアリー・アル・サーシェスが印象深い所。

 

あとはキャリア初期の頃だと思いますが「機動戦士Vガンダム」で、特に目立つエピソードがあるでもない実質のモブなのですが、名前ありの整備兵ストライカー・イーグル役で最初に藤原啓治の名前を私は意識したのかな。TVでリアルタイムできちんと追いかけたガンダムって私はVガンで、その前からSDガンダムとかでガンダム自体は好きだったのですが、やっぱり子供の頃はMSの方が興味の中心だったものの、Vガンの放送が始まって、これがリアルガンダムの衝撃なのか!と放送されるたびに毎週録画を3~4回も繰り返し見るほどにハマりました。なので脇役のキャラとかまでほぼ把握してたんですよね。整備兵で女の子のネスは出番も多くそこそこ目立ってたのですが、他にもクッフさんとかストライカーさんとか、たまに出てくるリーンホースのクルーも居て、そんな中で藤原啓治も出ていた、みたいな感じです。

 

さてゴーバスターズの方に話を戻します。スーパー戦隊の「帰ってきた」シリーズは、そのタイトル通り、TV放送が終了してから大体半年後くらいに発売されるオリジナルビデオ。撮影はTVシリーズから継続してすぐに作られてるので、あくまでOV用の特別編スペシャル的なものでしかないのですが、リリースまでに少し期間が開くので、ファンにとっては終了後の寂しさを紛らわせてくれる、またあいつらに会える!的なまさしく「帰ってきた」という感じの一本になっています。メインのキャラが様々なコスプレしたりと、どちらかと言えばファンディスク的なコメディ色強めの特別編。全てのシリーズで出るわけではないのですが、定期的には出てるシリーズ。

 

突然現れた謎の敵の前に全滅してしまうゴーバスターズ。偶然にもチダ・ニックが丁度100万人目の死者という事で、神様が一つだけ願いを叶えてくれる事に。TV本編のストーリーラインの起点になった、13年前の悲劇が無い世界を作ってほしいとニックは願う。そこで作られた世界は、ゴーバスターズの各メンバーが存在していながらもTVシリーズとは全く別の生活をしていた・・・的なお話。

 

ヒロムは教育実習生、リュウジは熱血教師、ヨーコはその学校の生徒。陣さんは用務員。と、ゴーバスならではのメンバーの年齢差がある特徴が上手く生きてます。一見平和な世界で安心したニック。しかしそこにも魔の手が伸び、世界を救うためにこちらでは特命戦隊ではなく、動物戦隊ゴーバスターズを結成!という流れになっています。

 

TVシリーズでは前年の「海賊戦隊ゴーカイジャー」が35年記念作品としてスーパー戦隊の集大成をやったので、翌年のゴーバスターズは、これまでの戦隊とは違う新機軸を打ち出した作品でした。個人的にもそのゴーカイジャーとゴーバスターズの2本は私もスーパー戦隊シリーズの中でも1・2を争う程好きな作品。

 

リアルタイムじゃないんですけど、最初はスーパー戦隊ちゃんと見た事無いから、一度見てみよう。せっかくなのでスーパー戦隊のざっくりした歴史も知れるし、ゴーカイジャー見てみようかな?と思って見たら、過去戦隊とか知らなくてもメチャメチャ面白くて、そこから戦隊にハマって、その後、評価の高い「特捜戦隊デカレンジャー」「侍戦隊シンケンジャー」辺りから見て、何作目かはもう忘れましたが、その流れで「特命戦隊ゴーバスターズ」も見て、これがまたメチャメチャ面白くてね。大好きな戦隊です。

 

ゴーカイが震災の年で(最初の予定では数名のつもりだった過去戦隊からの客演が、結果全シリーズ出る事になったのは、少しでも子供達に、そして世の中に何か自分が出来る事があれば、という気持ちが俳優を動かしたという背景もあるようです)そして翌年のゴーバスターズは小林靖子がメインライターで、失ったものは戻ってこないというシリアスで重めなストーリーラインでした。時代背景が作品に影響を与えている2作でどちらも名作です。(ちなみにプリキュアは震災の時が「スイート」で翌年が「スマイル」そちらも時代背景が作品に影響を与えていたりする辺りが面白い部分)

 

今回のOVは小林靖子脚本ではないのですが、シリアスで新機軸を打ち出したTV版「特命戦隊ゴーバスターズ」ではなく、もしゴーバスターズが今まで通りのベタで普通の戦隊だったら?みたいなノリで別の時間軸で生まれた「動物戦隊ゴーバスターズ」というのが登場。現実の震災、或いは作中設定の13年前の悲劇が無かったらゴーバスターズは特命戦隊ではなく動物戦隊になっていたかもね?という形。

 

「動物戦隊」はこの4年後のスーパー戦隊40作目「動物戦隊ジュウオウジャー」でも使われるのですが、ロゴが似てたりするのが今見ると面白い部分。動物モチーフは戦隊初期からあったものの、「動物戦隊」ってあまりにもベタすぎるからと直接タイトルにするのは結果避けられてきたタイトル。同じくOVの「帰ってきた侍戦隊シンケンジャー」でもやはりパロディー的に使われてたりしました。

 

その、もし…の「動物戦隊ゴーバスターズ」が専用のOPはあるわ、TVシリーズが作られたらという体で、第○話みたいな形でダイジェストで数話分作られ、緑の追加戦士のグリーンヒポポタマス(演じるはウサダ役の鈴木達央!)の登場と退場。さらには司令官枠の黒リンのブラックピューマとか、ベタさとパロディー加減が最高に面白い。最終回にはTVのピンクバスターとは別の設定でヒロムの姉がピンクキャットとして入ってる等、ファン向けのネタも秀逸。

 

メインで戦ったりはせず、両方の世界を繋ぐ狂言回し的な役割とは言え、ニックが主人公みたいな形になっていますので、藤原啓治さんがずっとしゃべりっぱなしです。


一時期病気療養で休業してましたが、その後はまた復帰されてトニー・スタークとか演じてらしたので、普通に回復されてたのかなと思ってましたが、突然の他界の知らせで、とてもショックでした。でもこうやって作品は残って行くし、心からありがとうと、そしてお疲れ様でした、とまずは言わせて下さい。


短いながらメイキングも入っていて、ずっと戦隊と関わってきたからこうやって初めて顔出しで出演出来て嬉しいって言う玄田哲章さんも凄く微笑ましいし、藤原啓治もはにかみながら今回顔出しでも出演出来て楽しかったよっていう姿をねこうして残っているのは、悲しさ半面、嬉しくもあります。


心よりのご冥福をお祈りします。


帰ってきた特命戦隊ゴーバスターズVS動物戦隊ゴーバスターズ(プレビュー)