僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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ハピネスチャージプリキュア! オフィシャルコンプリートブック

ハピネスチャージプリキュア! オフィシャルコンプリートブック (Gakken Mook)

刊:学研 Gakken Mook
2015年
☆☆☆☆☆

 

流れの上でせっかくなのでこちらも。
BDも揃えてありますし時間があればTVシリーズ見返して感想も書きたい所ですが、まとめ本のこちらにサラッと目を通してハピチャの雑感などを。これまでもこれからも毎回言いますが、ムック本としては何でこれ定価1千円なの?安すぎない?と思うくらいの充実度で、コンプリートブックは1年間の締めくくりとしては欠かせない本です。

 

前回の映画感想の時にハピチャは人気無いって書いたらツイッターで絡まれましたが、基本的に作品人気投票みたいな奴では下に来がちなのは事実です。「ハピチャ」だけでなく「スプラッシュスター」と最近だと「プリアラ」もそういう傾向はある。でもね、t程度の差こそあれそれぞれにどの作品も面白いんですよ、という事を私は言いたいだけです。

 

NHKプリキュア大投票の時も作品の人気に順位をつけるのはいかがなものか?みたいな論議はありましたけど、私は自分が好きな物を他人からどうこう言われてもそんなの全く気にしませんし、自分が好きな物くらい他人からの評価なんか気にせず揺るがない自信を持って堂々と自分の言葉で語れよ、と思う方。プリキュアに限らず映画でも何でもね。

例え自分が好きな物を否定や批判されたって、その意見が納得するものなら、なるほどそういう見方もあるのか、それも一つの意見だなってって思えばいいだけだし、それが理屈の通らないどうでもいい感情論とかだったら、こんなの相手にするだけ時間の無駄って思うだけです。

 

「SS」の事は映画の感想の時に色々書きましたので、よかったらそっちも見てやってください。「プリアラ」は順番的にまだ先なのでその時に書きますのでまずは「ハピチャ」を今回は延々と語ります。

 

こちらの本で長峯監督のインタビューも載ってますが、「そこは僕の技量がたりなかったのかなと反省してます」とか他にも結構ネガティブな言葉が何度か見受けられて反省モード入ってます。これ、結構プリキュアでは珍しいかもしれない。

思ったほどの人気や評価が得られなかった、っていうの結構空気として伝わってたのかなぁと心配してしまいます。

 

これ、いくつか理由は挙げられますが、個人的に一番大きい要素って、観る側の期待値が上がりすぎたのも原因なのかなと思ってます。

 

プリキュア10周年のロゴマークと共に、アバンで歴代プリキュアのメッセージがハピチャには入りました。「プリキュア10周年記念作品」というのを前面に押し出していたわけです。それだけでも何と無く特別な作品なのかなって期待値が上がってしまいますよね。

 

そして監督が長峯達也!今に至っても歴代売り上げ1位で人気でも群を抜く「ハートキャッチプリキュア」の監督です。ひめも長峯ブルーとか言われて、まるで「ハートキャッチプリキュア2」的な作品として期待は更に上がるという状況。まずそこもマズかった。

 

注目度が高い割に、ハートキャッチの方が面白かった、とか言われがちです。ちなみに「ハトキャ」、評価も高いし実際に新しく独特の作風で面白いですし、プリキュア史上最高の売上を残してるっていうのも十分に頷けますが、あれはあれで複合的な要素が重なって好成績っていうのもあるんですよね。

 

基本的にプリキュアって深夜アニメとかと違って映像ソフトの売り上げに依存しないコンテンツです。確かソフト販売よりもレンタルとかの方を重視してるんだったっけかな?(ソース忘れたのでここはあんまり本気で捉え無くて結構です)基本的には子供が見る番組ですからね。DVDやBDの売り上げが主な資金回収&利益になる深夜アニメとはそもそも作り方からして違う物。当然メインの主力はおもちゃです。後はアパレルとかも含めたキャラクター使用版権。

 

ハトキャは実はそこでも新しい事をやってます。初代~フレまでの変身玩具って、全部白黒の液晶モニターがついてる電子玩具なんですよね。それがハトキャの変身アイテムの「ココロパフューム」は液晶モニター無しで、光と音声のみに振った玩具でした。ライダーや戦隊の変身アイテムみたいな感じですね。で、今のライダー、戦隊みたいに「こころのたね」というコレクションアイテムを集めるタイプでした。(当然アパレルのおまけでついてくる物とかもあれば、食玩ガシャポンと多様な展開)基本的にはプリキュアはハトキャ以降この路線になります。

 

細かく言えば、初代でもプリカードとか収集要素はありましたし(これも女児物でカード集めって過去に例が無いので心配されたそうな)、追加戦士のシャイニールミナスミルキィローズの変身アイテムは液晶無しでした(どっちもバカ売れした)。とまあそういう所もあって、ハトキャは玩具の売り方まで上手く行ったみたいな部分もあったりします。

 


ハピチャに話を戻すと、当然そも流れは引き継いでいて、変身アイテムのプリチェンミラーはプリカードを集める要素があります。ただこれ、実際持ってる人ならわかると思いますが、変身アイテムの割に相当に大きいのです。メインターゲットの未就学児の女の子が持って変身ごっこをして遊ぶにはちょっと大変。しかもカードを3枚重ねて入れるっていう仕様なので、ちょっと難しいんですよね。

 

更にですよ。プリキュアは変身玩具の次の主力商品が妖精の玩具なんですけど、その「なかよしリボン」カード排出ギミックのおかげか、全身プラスチックという代物。サブ妖精の「おしゃべりぐらさん」はいつもの感じでしゃべるぬいぐるみで良いのですが、リボンの方は置き物感満載。まあ子供の感覚はわかりませんが、素人目にというか、大人目線から見ると、これ売れねぇだろうな~って感じでした。

 

そういう所からも、え?ハピチャ大丈夫かこれ?とちょっと心配してしまう感じでした。

ただこういうのって、要は積み重ねだと思うんです。前の売れ筋をただ繰り返すんじゃなくて、今度はこういう新しい要素をやってみよう、次はこういうのどう?という、1から考えるのではなく、前提として前の物があるから、その次のものを考える、という形。

 

実はこれ「ハピネスチャージプリキュア」という作品そのものも同じなのです。

 

先に触れたように長峯監督にとっては2作目のTVシリーズのディレクターです。(劇場版は他にもやってます)

 

シリーズ構成の成田良美も、「プリキュア5(GOGO含む)」から2度目のシリーズ構成担当です(脚本は他のシリーズもやってます)

 

他にも例えば前期ED「プリキュア・メモリ」も2番はオールスター用にと過去作のタイトル入れてたりしますけど、それだけでなく歌詞にある「夢見るつぼみはあきらめない」は「5GOGO」OPの「夢見てるつぼみはあきらめない」のセルフオマージュです、作詞の只野菜摘本人がそうインタビューで答えてました。元のも自分で書いた歌詞だから大丈夫だろうと思って、と言ってます。

 

プリキュア10年分の総括や総決算をやろうっていう程の作品では無いのですが、そんな感じで前にやった事の次をやろうっていう気分が見え隠れするのがハピチャという作品です。

 

そこで私が何を言いたいのかというと、これ、初代「ガンダム」の次の「Zガンダム」みたいなものになっていると。初見では複雑怪奇で何をやってるのかさっぱりわからないゼータガンダムですよ。初代で戦争はもう描いちゃったから、今度はもっと先の事をやってやろう、内部抗争とか三つ巴とかまで今度は描いちゃう。だって前と同じ事やったって仕方ないでしょ?前のについてこれたならもっと次の段階に進まなきゃ。

 

今でこそ「Z」も人気作の一つになってますが、そこって要は自分の世代のリアルタイムだったから特別な思い入れもあるっていう面も絶対ありますよね。そこはプリキュアだって同じで、人気投票どうのなんかよりも、自分が最初に入ったやつとか、リアルタイムで見てた奴って誰が何言おうが特別な物です。

 

まあ「ハピチャ」がZガンダム程に複雑なのかと言えばそんな事は無いですけど、そういうこれまでの積み重ねの「次」を描いた所に面白さがあったりはするのです。

 

例えばですよ。ハピチャの特徴に「恋愛要素」ってのありますよね。成田良美がシリーズ構成だった「プリキュア5」も恋愛要素は強めでした。のぞみとココ、こまちさんとナッツとか、ドキドキしましたよね。でもね、続編の「5GOGO」だと恋愛描写ちょっと減っちゃうんです。それは未就学児の女の子にとっての恋愛要素って「あの子は何何君の事が好きなんだって、キャー!」ぐらいのものだったりするので、あまりそれ以上の事は書けなかったとインタビューで言ってました。(でも映画でキスシーンとか入れてあったりするのですが、その映画の監督が長峯さんだったりします)

 

今回は長峯監督が成田さんに恋愛要素好きなようにやってくれていいですよ、って言ったらしくて、じゃあそれならね、恋愛が成就されるまでを前の作品では描いたから、その次の失恋とかまで描いちゃうわけですよ。勿論、ただ面白おかしくという意味で無く、心の葛藤とかそれによる成長とかをそれによって描けるし、そういう次の段階のドラマですよね。

 

それこそ「5」でもりんちゃんのちょっとした失恋話とかあったりはしたのですが、1話のみの継続性のある話とかではなかったですよね。そういう所を丁寧に作品のテーマとして落とし込んで描く、というのもハピチャの挑戦でもあったわけです。

 

そうやって前に出来なかった事、あるいは既にやった事の次、みたいな所がハピチャの他のシリーズにはない面白さで、そういう意味では「Zガンダム」と同じでその面白さの本質はちょっとマニアックで深い所にあったりするんじゃなかろうか。

 

でもやっぱり、表層上に目をとられて、キュアプリンセスキュアマリンじゃないのにそこにマリンを求めてみたり、世界のプリキュアとか居るんなら、たまに出てきて共闘する話とか無いんかーい!とか(主題歌を手掛けた二人が演じるアローハプリキュアとかは出番ありましたけど)どうしてもそういう所に目が言ってしまうのもまあわかる話ではある。

 

あとはよく言われるのがブルーの存在なんですけど、要はここのポジションも過去の積み重ねがあってこそなんですよね。多分ですけど、ブルーが地球の神様っていう設定が無かったら、ここまで文句言われてないんじゃないかと。ただの優男だったら前作ドキプリのジョー岡田とかと同じくらいで、変なイケメンくらいで終わったんじゃないかなぁ?

 

「世界のプリキュア」って要は過去作のプリキュアでもあって、そのものでは無いんだけど、プリキュアが10年も経ってここまで人数も増えて世の中にヒーローとして認知される存在になったのなら、世界中にプリキュアが居るって言う設定もアリなんじゃないか、みたいな所で作られたキャラクター。

 

前作の「ドキプリ」で最後には世界の平和を守る公認のヒーローになっちゃったじゃないですか。あれはアベンジャーズ的な価値観でもあったんだけど、初期の鷲尾P期のプリキュアが割と自分の大切な存在や日常を守るっていう所に意図的に落とし込んでいた中で、フレ以降の梅澤P期は地球の平和を守るヒーロー的な要素が強まってきたと。

この辺り、プリキュアの第2期の特徴的な部分でもあって、ハピチャの次の「Go!プリンセスプリキュア」からまたちょっと路線が変わる。「なりたい自分」みたいな所がクローズアップされるようになって、「世界の為に戦うのがプリキュア」ではなく自己実現系にシフトする事によって、プリキュアの第3期と言える形に変化していきます。ここがゴープリの圧倒的に凄い所で、そこはまたいずれゴープリ絡みの所で説明します。

 


話をハピチャに戻すと、プリキュア第2期の特徴である「ヒーローとしてのプリキュア」の最後の作品になるのがハピチャという作品です。

 

そのヒーロー要素が頂点にまで強まると、また描くべき描写も自然とこれまでとは違う要素が増えてくるんですよね。自分を犠牲にしてでも世界を救うヒーローでなければならなくなる。男の子向けに多い自己犠牲系ヒーローですよね。(これも今やってる「キラメイジャー」で変化があって凄く面白いのですが)

 

それがブルーの言う「プリキュアは恋愛禁止」になります。個人の都合ではなくヒーローなら自分を犠牲にしてでも世界の為に尽くせと。そんなヒーロー=プリキュアの上に立つ司令塔的存在としてなら「地球の神様」とか変な設定を持ってくるしかなくなるわけです。普通の人がこれ言っちゃったら、あんた何様?ってなるけど、神様が言うんだったら間違いない事だろうと。とんでもねー、あたしゃ神様だよ、っていう。

 

でもってそういう仕組みになっているからこそ、神様も実は間違っていて、実際に戦っているめぐみらの姿を見ながら、神様もプリキュアに学ぶ、という面白いツイストというか逆転現象と言うか、これがプリキュアなんだっていう所に話が転ぶという、枠組みだけを見ると本当に物凄く面白いお話です。

 

初代で「地球の為 平和の為 それもあるけど忘れちゃいけない事あるんじゃないの」ってEDで歌ってた所から、とんでもない所にたどり着きました。凄く面白くないですか?

 

でもね、実際ハピチャを見て、そうそうこんな話だったよね、って思う人は少ないはず。理屈とか構造の上でそう作られている事がわかる、っていう話。


その辺も実に「Zガンダム」っぽくないですか?説明されると、なるほど複雑だけど結構面白い事をやってるんだなぁと再評価したくなる作りはしていると。まあハピチャは「Z」ほどエキセントリックな表層はしてないけども。

 

でもそういう「ヒーローとしてのプリキュア」が根っこにあるから劇場版もやっぱりああいうテーマになるんですよ、というのは知っておきたい所です。

 

ただ、結局はそこを上手く描き切る事が出来なかった、っていうのも事実で、劇場版の時にも書きましたが、めぐみがお母さんと世界のどちらをとるべきなのか?っていう展開はプリキュアとしては重すぎるので変更になったし(そこも地球の平和と個人の幸せのどちらを優先すべきかって言うヒーロー論ですよね)これはコンプリートブックでも成田さんが語ってるんですけど、本来の構成は1クール目でひめの掘り下げをして(引っ込み思案で世間知らずのひめがめぐみと出会って変わって行くという現状の展開)2クール目でいおなとひめの軋轢を描いていおなを成長させると(追加戦士の販促がここですしね)。ここまでは良い。

 

3クール目は本来はゆうゆうのパートだったらしいのです。実際ファントムとのやりとりはここで描かれてますが、1話のみ・・・。えぇぇぇぇえええ~っ!凄く勿体無く無いですか?「そう、私がキュアハニーなのです!」でお馴染みのキュアハニー/大森ゆうこ。私も好きなキャラなのですが、掘り下げが無いのが物凄く惜しい。めぐみ、ひめ、いおなより凄く達観してるキャラなのですが、彼女がなんでそういうキャラなのかがさっぱりわからない。


物語を通して成長して変化していく要素が無いのよハニーは。ある意味珍しいキャラにはなりましたが、見てる方はそこ掘り下げてほしいじゃん。「しあわせごはん愛のうた」でキャラ立てしたから良いだろうってそんな問題じゃなくね?

 

いつか出るであろう小説版ではゆうゆうのこの辺の無くなった話をメインにしてほしいなぁと思ってます。この路線変更後も逆にそこが面白味にもなったんじゃないかと思ってる派ではありますが、ここの部分だけはちょっと個人的に不満の残る部分です。

 

長峰監督「プリキュア」はバディ物というイメージが強いそうで、ハトキャも基本はつぼみとえりかの二人が軸でしたし、ハピチャもめぐみとひめがあくまで主人公っぽい作りなの、共通してますよね。ハトの時も何気にいつきがサンシャインに変身するまでが彼女のドラマであって、変身後はそんなに掘り下げてないキャラなんですよね。なんか今回もそういう所が出ちゃったのかなと。いつき程にも掘り下げが無いのはちょっと悲しい。

 

で、ここの3クール目で実際は何をやってたかと言えば、日常回とプリキュア定番箱物アイテムに絡めた覚醒回なんですよね。多分、構成が変更になった事を受けて、改めて各キャラの定義付けみたいな形にしたんだろうなと思う。(だからゆうゆうの話も1話は入る。いや覚醒回で2回かな)ここはここで普通のプリキュアっぽくて面白いんですけどね。世界のプリキュアで唯一きちんと描かれたアローハプリキュアも私は好きだし。

 

最後の4クール目は予定通りめぐみの掘り下げ。失恋話もあれば、クイーンミラージュとの決戦があって、その後は誠司君とも戦っちゃうしラスボス戦もあるしと十分な見応え。最終章になってやっと主人公の掘り下げなの?とも思うけど、逆にそこが私はめぐみらしいもっさりした感じが出て好きだったりします。なんか歴代主人公と比べても凄く普通っぽいんですよね。垢ぬけない感じがしますし、やっぱりどこかフラフラしてて危うい。

 

このイメージって割と「ハピネスチャージプリキュア」という作品全体の評価にも繋がってきません?何を描きたいのかが割とフラフラしてて不明瞭だし、迷いに迷って、最後になってようやく主人公らしく覚醒するというもったり感。

 

なかなか伝わりづらいけど、良い子なんだよめぐみもハピチャも、と私は言いたいわけです。そしてその伝わりにくさは過去の積み重ねから来ていて、結構重たい物を最初から委ねられちゃったけど、そこで苦労してたのがめぐみだし、ハピチャという作品。それを理解出来ればハピチャも他の作品には無い面白味があるし、プリキュア第2期の終着点にもなっている特別な作品なのです。

 

と、ついつい7千字も書いちゃいましたが、まだまだ語る事はいっぱいあるのでそれはまたいずれ。

 

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