FALCON & WINTER SOLDIER CUT OFF ONE HEAD
著：デレク・ランディ（作）
フェデリコ・ビチェンティーニ（画）
訳：中沢俊介
刊：MARVEL 小学館集英社プロダクション ShoProBooks
アメコミ 2021年
収録：FALCON & WINTER SOLDIER #1-5(2020)
☆☆☆★
ウィンター・ソルジャーとファルコンが
ヒドラの次期総統を探るために奮闘！
共闘する二人の物語、ここに開幕！
かつての冷酷な暗殺者、ウィンター・ソルジャーことバッキー・バーンズ。空を駆けるヒーロー、ファルコンことサム・ウィルソン。 ある日、二人は謎の少年“ナチュラル”と出会ったことがきっかけで、悪の組織ヒドラの次期総統を決める戦いに巻き込まれていく。 新たな総統の正体とは？ 二人は世界のため、ヒドラを止めることができるのか？
ＭＣＵドラマに合わせてか、同名タイトルの原作コミックも邦訳版が出ました。内容的には勿論ドラマの方とは関係無し。ただこれ、2020年にやってたミニシリーズみたいなので、ドラマもやるんだしコミックでもこの二人のチームアップ誌を出そうみたいな企画だったのかな？二人とも個人での歴史は長いし、キャップ絡みで付き合いもずっとあったわけですが、このタイトルでのチームアップは今回が初めてだったそうで、そこはちょっと意外な感じ。
というかＭＣＵドラマの方も、今回のコミックみたいなちょっとした事件の為にコンビを組んで、なんやかんや言いながらバディとしてお互いを認め合う、ぐらいの軽い話になるのかと予想してましたが、ドラマではガッツリと「キャプテン・アメリカ」の名前とシールドを継承する物凄く重たい話になってて予想を良い意味で裏切ってくれてました。そういう部分では今回のこちらのコミックの方が、予想してた方向性とは近い感じで、またドラマとは別物として結構面白い。
ストーリー的にはマーベルユニバース本編の流れに沿って、「シークレット・エンパイア」事件のその後の話です。シークレット～の方だと、サムは一度引退したものの、それぞれのキャプテンアメリカ像があるから、キャップが二人居ても良いんだ、とは一度はなってましたが、スティーブが若返って復帰したので、その後にまたファルコンに戻ってたっぽいです。
流石にスティーブ程のカリスマ性は無かったからなぁ。そこ考えるとドラマは相当に面白い事やったと思うし、そこは現実の時代性をリンクさせたのが良かったんだと思う。
原作でバッキーがキャプテンアメリカを引き継いでた時期は作中内でのドラマ性はあったけど、やっぱりどこか違和感みたいなのは引きずってましたし、そこはコミック内の話だけでなく、時代や世相という現実とも上手くリンクさせる事が本当の説得力を生んで、そういう現実世界も考えた上での支持があれば定着したアイコンになりえる、って事なのかも。
コミック中のドラマとしての都合だけだとね。面白いけどそれ以上にはならないかなっていう。そうそう、今回ちょっと笑ったのは、バロン・ジモがやはり重要人物として出て来ますが（ドラマと同じくちょこっとだけ共闘したりする）なんとこのジモ、これの少し前のストーリーでパニッシャーに殺されたばっかだったそうで、その話はその話で多分盛り上がったり衝撃はあったんだろうなと想像は出来るんですが、こうやってすぐ生き返るのがアメコミのある意味での良い所でもあり悪い所でもあったりしますね。バッキーと同じく今度は義手のメタルアームになってキャラクター性もアップしたぞ、みたいなのがまさしく良くも悪くもな感じ。いや面白いんですけどね。
キャップの大ファンの両親に育てられ、格闘に関してはサムとバッキー二人を相手にしても簡単に倒してしまえるくらいの天性の才能を持つナチュラルという少年。自分もキャプテンアメリカになるんだ！という純粋さをヒドラ残党に利用され、という割とありがちなストーリーではあるものの、ひと捻りふた捻りもあるし、「キャプテン・アメリカ」というアイコンとは何なのか？どうあるべきか？みたいな所もちゃんと踏み込んで描いてあるので、ちょっと全体的には軽いタッチでギャグも要所要所にありつつサクッと読めて面白かった。
絵もアメコミっぽくなく、日本の青年誌漫画っぽい繊細な線でとても読みやすい。ユニバース的に重要な話とかじゃないけど、ミニシリーズとして軽く読める感じで、それでいて深みもちゃんとあるので、なかなかに面白い一冊でした。
ところでバッキーって猫飼ってたんだな。ちょっと可愛い。
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