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ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結


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原題:THE SUICIDE SQUAD
監督・脚本:ジェームズ・ガン
原作:DCコミックス
アメリカ映画 2021
☆☆☆☆★

 

という事で待望のジェームズ・ガン版「スーサイドスクワッド」遂に公開になりましたので初日に観て来ました。
一応DCEUの10本目っていう形にはなるのかなとは思いますが、ほぼユニバース的な関連とか、前作とは関連性の薄い、これ1本の単体で楽しめる作品になってます。

 

まず監督のジェームズ・ガンと言えばマーベルで「ガーディアンズオブギャラクシー」を成功に導いた立役者です。ほぼ無名でマイナーな原作を自分なりにアレンジして、ある意味好き勝手に作ってしまえたと。私も先入観が無かったのが幸いしてか、原作知らないけどこんなに面白い映画になるとは思って無くて、ビックリしましたし、大いに楽しませてもらいました。丁度昨年も見返しましたがホントに面白い。

 

ただ、結構下品な部分もあって、そこはガン監督のカラーでもあるんだけど、よくマーベルこれを許可したなぁと思いつつ、ガンの過去作の「スーパー」とかも私は観てますし、彼は「悪魔の毒々モンスター」とかのトロマ映画出身で、そこでキャリアを積んできた人でもあるので、「ガーディアンズ~」でもガンなりにこれがギリギリかな?ぐらいに、あれでもおそらくはメジャー大作として控えめにしたんだろうなってのは、何と無く想像は出来る作りでした。

 

そこいくと今回の新スースクは最初からR指定。これはいよいよストッパーを外してくるかな?という期待がありました。ガーディアンズの面々も、基本的にはアベンジャーズみたいなスーパーヒーローの集まりでは決して無くて、アウトローな人達が最終的にヒーローになるという物語でしたけど、今回のスースクは形式上「ヴィランの集まり」ですから、倫理なんてクソ喰らえ的な事は堂々とやれるんじゃないかと。

 

そこは凄く楽しみで、より作家性が生かせるという面白味がある半面、実はちょっとだけ不安もあったんですよね。じゃあ私が観たいのはグロ描写なのかと言ったら、決してそんな事も無いので。
そちら方面の映画、決して毛嫌いしてるわけでも無いし、それなりに観てきてる方ではあると思うんですけど、「人体破壊描写が楽しい」みたいな言い方や見方は今でも結構抵抗があって、ホラー映画とかは大好きなんですけど、血みどろ内臓ぶちまけスプラッタ映画みたいなのは、う~ん・・・ってなっちゃう方です。
そういうのは画面に映さない方が良い、なんて事は言いませんが、そこだけを楽しむみたいなのは、なんか今でも抵抗があります。

 

だから新スースクももしそういう所だけが売りになっちゃってる映画だったら、そこは私はちょっと合わないかも?という不安は少しだけありました。

 

で、それがどうだったかというと・・・いやもう流石ジェームズ・ガン監督でした。そういう派手な描写を売りにしつつも、物語やテーマ性、社会へ向けた視点とかもきっちり描いてある。そこは流石だし、ある意味でMCUメソッドみたいなものが生かされてる気がして、ただの派手な悪趣味映画ではない辺りが素晴らしかったと思います。

 

以下はネタバレありなのでご注意を。

 

 

 

この映画で一番好き、一番良かったなぁと思ったのはネズミ使いのラットキャッチャーでした。

 

いやね、たまたまですけど、丁度この映画を見る前に某有名インフルエンサー様がホームレスなんか社会の役に立たないから死んでも良い。自分はホームレスに税金使われるなら猫に使って欲しい、的な事を言って炎上してました。犯罪者と同じでああいうのは殺していいんだとも。

 

最低だと思いました。勝ち組の理論だし、そこは自民が政権を握る資本主義国家という構造そのもののマイナス面で、彼個人だけの問題ではないな、と思うし、そこについて論じたいわけではないのでこれ以上は語りませんけど、「ガーディアンズ~」もそうですし、世間には何あれ?って疎まれるトロマ映画出身のジェームズ・ガンって、視点が社会的弱者の方に向いてて、こんな奴らかもしれないけど、彼等は彼らなりに頑張ってるんだよ!っていうのをずっと描いてきてるわけですよね。

 

DCからオファーがあった時にも、DCのどのキャラ使っても良いですよ、何なら「スーパーマン」やってみませんか?っていうオファーだったらしいんだけど、少し考えて、ガンは結局「スーサイドスクワッド」を選びました。そこってやっぱりスーサイドの面子が、刑務所に入れられてる犯罪者ではあるけれど、国家にいいように使われる社会的弱者という部分があったからだろうというのは想像できます。スーパーマンよりもこっちの方が自分の描きたいテーマに合ってるからっていう。

 

鼠はみんなから嫌われてるけど、彼等は彼らなりに一生懸命生きているし、一つの命である事に変わりは無い。

そんな事を言ってくれたのは私の心にグッと響きました。


親父がタイカ・ワイティティだし、2世は日本語版だと悠木碧が声やってるし、今回の一番の押しキャラです。原作知らないんですけど、2世は映画オリジナルキャラだとか?

 

ただ、そこに文句をつけるのはおこがましいのですが、これでマーベルは「スクイレルガール」の映画化は遠のいたなって思ってしまったのだけが残念ポイント。スクイレルガールは鼠がリスになってるだけで、見せ方とか見せ場の作り方はほぼ同じようになっちゃうキャラなので、そこだけ、あっ!先にやられちゃった?とか思ってしまいました。DC「アクアマン」も面白かっただけに、マーベルの同じようなキャラの「サブマリナー」はアクアマンの後だと似たようなビジュアルになっちゃうだろうからこれ作りにくいだろうなと思ってしまったのと同じ感覚です。

 

で、そんな社会的弱者の描き方もあれば、アメリカのマッチョイズムの化身としてのプロレス出身ジョン・シナ演じるピースメイカー。彼はアメリカを守る為なら他国がどうなろうとかまわないという個人主義として描かれる。アマンダ・ウォーラーもそうでしたけど、彼女の命令に反して、生き残った数名のスーサイドメンバーが、目の前の命はほおってはおけないと、再び町に戻る姿ってカッコ良く無かったですか?ただの悪党がヒーローになる瞬間ですよね。

 

インフルエンサーはもしこの映画見たら、こんなの欺瞞だとか左翼の人道主義だとか思っちゃうんでしょうか?目の前に困ってる人が居たら助けようとするって当たり前の話じゃありません?自分の利益にならないから放置する、むしろ心では死んでほしいと思ってる。いや人としてそれヤバくないか?大丈夫なの?と逆に心配になってしまいます。

 

あの見た目からしてヤバイ、ノーマンベイツ君ことポルカドットマンでさえ勇気を振り絞ってヒーローになろうとした。もう頭は狂ってるハーレイクインでさえ、子供は殺しちゃいけないとか最低限の倫理をここにきてようやく自分なりに成長してきている。どんなクソ野郎でもさ、輝く瞬間はあるっていう描き方が素晴らしい。

 

今回の主人公とも言えるブラッドスポート。前作のウィル・スミス演じるデッドショットと凄く共通する部分も多かった。前作も私は決して嫌いでは無いですが、今回と見比べると明らかに違いがわかってしまいます。前回もきっと同じような事をやろうとはしてたんだろうな、とは思うんだけど、悪役とか言ってる割に言う程そんな悪い奴にも見えないし、さほど普通のヒーロー映画と変わんないのでは?という印象でしたが、今回はまずこいつらヤベー奴じゃんっていうのを描いておいて、クライマックスにようやくヒーローとしての姿を描くと言う、きちんとした起伏をつけてある。

 

こういうとこに正直差が見えましたね。あと前作はキャラ紹介を工夫も無く延々と繰り返したり、今回は思わせぶりな冒頭のチーム結成から、それを捨て駒として早々に全滅という工夫も面白い。あとスターロがバカバカしいんだけど非常に怖い。そして気持ち悪い。このセンスはなかなか他の人には出来無さそうな感じだなぁと非常に面白く観れました。あと犬人間ウィーゼルも面白かった。
それでいて、ただのバカ映画をやりたいだけじゃなく、ちゃんと映画として完成度の高い物を目指すっていう辺りがまさしくジェームズ・ガンの手腕というべきものでした。


これは「ガーディアンズ3」も期待出来るし、DCも最近はユニバースとしてより単発でどんどん面白い作品が増えてきてますので(次は予告解禁されてた「ザ・バットマン」なのかな?)アメコミヒーロー好きとしては嬉しい限りです。

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