原作:宮川サトシ
漫画:北郷海
キャラクター監修:DC COMICS
刊:講談社 イブニングKC 全3巻 2021-22
☆☆★
アメコミキャラを日本人が漫画で描くコラボ物。
「ワンオペジョーカー」と同じ原作者で、タイトル通りのスーパーマンのみならず、ジャスティスリーグも一通り出てくるし、スーパーガールも登場。
基本的には映画のDCエクステンデッドユニバース辺りのキャラクターイメージをベースに、ちょこっと原作のネタも入れたりしてる、独自ユニバース。
というか、スーパーマンを使ってグルメ漫画を描くと言う、「な、何を言ってるかわからねーと思うが」系の漫画です。
まあぶっちゃけ、本当に原作や映画が好きな人なら、この本はガソリンかけて燃やしつくしたいくらいのキャラクターをバカにした作りで、怒り心頭になるような内容かと思いますので、コアなアメコミファンは読まない方がいいと思います。
「デッドプール」の漫画版とかもそうでしたが、アメコミファンからはクズ扱いしかされてないこれ系の漫画ですが、勿論版元の許可はきちんととってやってるものですし、映画の人気は出ても原作アメコミそのものは全く受け入れられない現状があるからこその、こういった形の方がプロモーションとしては有効、みたいな所なのではないでしょうか?
多分、世界中で名作とされ、何年も語り継がれてるようなアメコミの日本語版とかよりも、こういうふざけた漫画の方がきっと発行部数は多いはず。詳しい事はわかりませんが、こんなのでも5千部以上とかは刷ってるよね?アメコミの邦訳版なんて数年後にはプレミアつくものも多い中で、こういう本は10年後には100円コーナーにすらおかれずに捨てられるだけでしょう。昔からアメコミを日本の漫画家が描く企画みたいなのはちょこちょこあったんです。
でもおそらく発行部数は絶対にアメコミ邦訳版とかよりこういう奴の方が多いですよね。なんかそれってさぁ、微妙な気持ちにさせられる半面、面白い部分でもあるかなぁとも思う。
正直、これ書いてる人だって、アメコミなんてダサくてバカみたいとか本心では思って書いてるでしょ。でもそこも面白いとこでね、アメコミリスペクトのある人が日本でアメコミ漫画を書いても、ただの劣化コピーにしかならないのが大半で(全てとは言いませんけども)逆にアメコミじゃこんな漫画読めねーよ!という方がむしろジャンルを跨いだコラボ感が出て、オリジナリティはあるんだよなと思わせられる。
例えばですけど「僕のヒーローアカデミア」って、アメコミリスペクトに見えて、実は全然そんな事無い漫画だったりする。ガワの部分だけ真似て、漫画としての面白さはアメコミ風じゃ無くあくまで日本の少年漫画をやってるからこその面白味だったりするし、逆にそれが海外でも受けてる要因なんじゃないかと。
海外の人にとっては、スーパーヒーロー物という馴染みのある素材ながら、逆にアメコミでは味わえない別の面白さを感じてるから、ただのコピーじゃ無く独自の面白さとして評価されてる。
そういう意味ではさ、この「スーパーマン飯」も変にアメコミ風になんか全くしてなくって、こんなのアメコミじゃ読めないっしょ?みたいな意味では何気に斬新。
いや、面白いかと言えばそこまで面白くないんだよ。
だってセリフに(笑)とか恥ずかしげもなくつけちゃう人のセンスですし。
はい、私は(笑)カッコワライって、自分では絶対に使いません。今まで800記事くらい書いてますが、一度も使って無いはず。
いや使うなって言いたいわけじゃないんです。流石に乱発するような人にはドン引きしますけど、雰囲気とか流れでここは笑うとこだよ的なのはダメだとまでは言いませんけど、自分はそういう安易な感じでは使いたくないな、と10年20年昔からあえて使うことを避けてます。
いやネットゲー初期、それこそドリームキャストで「PSO」やってた初期の頃は「w」とか普通に使ってたんですよ。でも他人のそれを見てると、安易だなぁと感じるようになって、自分はそれをやめて別の言い回しや表現をやろうと思うようになった。
安易さに逃げずに創意工夫の方が私は良いなと思うようになりました。だから(笑)って結構苦手なのです。
でも今回の漫画は(笑)を多用してくる漫画でした。そこはまあ正直、う~ん・・・という感じ。
もう一つ興味深いのは、グルメ漫画ながら「日本の外食チェーン店」とかにテーマを絞ってある部分。いやこんなのね、海原雄山とか山岡士朗なら激怒するとこですよ。こんなもん食えるかってレベルで。グルメ漫画でありながら、高級食材とかでなく、安価なチェーン店に絞るセンス。
外食チェーン店をバカにしてるとかじゃないんですよ。
むしろ私は松屋とか大好きですし、普通においしいですよね。しかもリーズナブル。
外食チェーン店は高級店とは違う魅力があると力説したい方。
でも「天気の子」でもありました。コンビニ飯を豪華だとか言ってしまう若者のうかつさを通して、そこには本人が気が付いていない貧困や格差を意図して描いてたりしましたが、そういうのに通じる面白さだなと感じました。
スーパーマンなんておそらく地球で一番強い存在ですよ。バットマンだって億万長者です。そういう人達に、大量生産の安い飯を食わせてこれが世界で一番幸せだ的な事を言わせる頭のおかしさ。
「天気の子」では明らかに狙って描いていた部分ですが、こちらの漫画では果たして意図したものか、意図せぬものなのかはわかりません(多分、意図はしてない)でもそこは社会風刺とか時代背景の面白さが見え隠れしてたりする。
そこってね、アメコミファンの漫画家が、アメコミのまねごとをして描くような作風だったら、逆に出ない部分だと思うんですよね。
そういう部分で、ストレートに面白いと言うよりは、「ある意味面白い」という感じの漫画でした。
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