DANCING STAR PRECURE THE STAGE
原作:東堂いづみ
スーパーバイザー:鷲尾天
キャラクターデザイン:川村敏江
脚本・演出:ほさかよう
舞台劇 2023年
☆☆☆
U-NEXTの配信で鑑賞。ちょっと尻込みして安い方で見ちゃったんだけど、もしこれからアーカイブで見る人が居るなら高い方が良いかも。安い方は全景カメラのみで、それは普通に観客席の視点だし問題無いかなと思ったんですけど、流石に演者の表情とかはほぼわからず。高い方だとカメラのスイッチングありで、場面によってアップのカットを入れてくれたりとか、ソフト化された物を買って見る感じっぽい。
この手の2.5次元物に関わらず、ミュージカルに馴染みがあるかどうかの感覚の違いも大きいと思うんだけど、元々ミュージカルにやや苦手意識もあるし、凄く当たり前の話だけど、ターゲットは完全に女性向けに作ってあるので、正直を言わせてもらえば、私は見てて結構つらかった。
う~ん、まあ逆に期待しすぎたかな?新しい事に挑戦する人を批判する人間になりたくないし、そんな新しい一歩を踏み出すのがプリキュアでしょ?見る前からガタガタ言うんじゃなくて、せめて見てからにしよう。それで自分に合わなかったとかならそこはしょうがない。という感じで居たんですが、まあ結果は後者になってしまったという感じ。
一応言っておきますが、この作品に対しての批評とかダメ出しとかそういうのじゃなく、多分、この形では結構凄いものを出してくれてるんだろうなというのはネットの感想とか見ててもわかります。特に悪い感想とか出て無いですし、初挑戦だけにまだ手探りだったね~的な意見も無く、2.5次元見慣れてるような人達も凄いクオリティだったって皆言ってます。
個人的にはXで歴代プリキュアキャストの方々が、舞台プリキュア見て来たよ~間違いなく彼らもプリキュアだった的なポストを沢山されてました。エール引坂さん、マリン水沢さん、フォンテーヌ依田さん、ブルーム&イーグレットのおりあつコンビと、ミント&アクアのダブル愛さんが会場で遭遇とか面白い報告もあれば、マカロン藤田さんもハッピーのふくえんさんと一緒に見て来た報告があったり、それだけ見てても楽しい。先輩プリキュアが、後輩の誕生を応援しに来てくれた。そこは宣伝の為とかじゃなく、素直な気持ちのはず。
そういう意味では間違いなくこれも新しいプリキュア。中の人、過去の歴代プリキュア声優の話をもう少しすると、ほぼ毎年、毎回、引き継ぎの話になると「みんなが自分の代のプリキュアが一番だと思ってる」っていうのが出てくる。プリキュアと言えばの多様性、唯一無二の個性が売りで、みんな違ってみんな一番、というのがある意味でプリキュアのカラーになってる。
これ、今回のダンプリ(公式的には「ぼくプリ」が略になるらしい)でもお話の中にそういうのが組みこまれてたりしました。逆にそこが良い面でもあり、私がちょっと入りにくかった部分でもあったのかなと。プリキュアらしい部分、プリキュアっぽい要素、過去シリーズと共通する部分とかも割とあったんですが、作品全体の印象としては、日曜の朝にやってるプリキュアを舞台に持って来ました感はほぼ無いです。毎年通常開催してる着ぐるみショーの派生的なものでもない。
それは、過去のシリーズが一つ一つ違うカラーを持って、自分達のプリキュアはこうなんだって作り手サイドの気持ちと、演じる俳優も自分達はこうだって誇りを持てる作品になってるのと同じように、ただプリキュアを舞台に持って来ました。プリキュアを舞台で再現してみました、ではなく舞台という場で何が出来るのか?中学生の女の子じゃなく、高校生の男の子なら何を描けるのか?子供じゃ無い客層に向けて何を描くのか?
そういうのをね、一生懸命考えて作った舞台なんだなというのは凄く伝わってきました。変な話、これをアニメに置き換えて、或いは男の子を女の子にして、とか形を変えてニチアサでプリキュアシリーズの一つとして放送したとしましょう。あくまで仮の話ですよ。多分、メチャメチャ違和感のある作品だと思う。いやこれプリキュアじゃ無くない?ってなるはず。
じゃあ逆に、ニチアサでやってるようなプリキュアを舞台にコンバートする形だったらどうだったんだろう?それこそ着ぐるみミュージカルをクオリティアップした程度で終わりそうだし、それはそれで多分私はその方が楽しめた気はするけれども、舞台と言う別次元でやるプリキュアなら、別次元が真似できない唯一無二の、舞台だけのプリキュアをやるべきでは?過去に囚われず、時代によって変化する事を恐れないその挑戦がプリキュアでしょ?という意味なら、それはもうまごうことなきプリキュア。
思えば「オールスターズF」も「オトナプリキュア」もそう。過去を引き継ぎつつ、新しい事に挑戦する。「ダンプリ」もきっとそこと同じ精神なんでしょう。そもそもの企画がプリキュアの父である鷲尾Pが言いだしっぺだという話ですし、彼が作った最初の「ふたりはプリキュア」だって、女児物で徒手空拳のアクション。主人公のカラーが黒。バディ物。と、それ大丈夫なの?という前代未聞の企画なわけで、20年経っても守りに入らない、いや20周年だからこそもっと攻めるというコンテンツとしては最高に面白いものの一つという認識に間違いは無い。その一端としての「ダンシングスタープリキュア」は勿論大いにアリ。
そこを認めた上で、個人的には何がダメだったかと言うと、結構プリキュア同士でギスギスしあう感じが割とキツかった。そこは勿論クライマックスで皆が力を合わせるという展開ありきで、むしろ盛り上がりポイントなのかもしれないけど、俺様が一番、お前のダンスなんか認めないとか延々やってるのが、ああ本来のプリキュアならこういうのやんないし、意見が衝突する事はあっても基本1週、たまにクライマックスで2週引っ張る事もあるけど、こんなにやらないよなぁと思えてしまって、そこがちょっと辛かった。
舞台なら当たり前なのかもしれないですけど、特に大きく場面が転換する事も無く2時間半続くんですよ。最初は新鮮だなぁと思えたけど、正直ちょっと途中で飽きてしまった。このテンポ感はTVや映画とはまた別の文脈だなと思う。(そう言う意味で画面の切り替えがあるスイッチング映像の方がいくらか良さそう)
で、プリキュアって基本やっぱりやさしい子が大半だと思うんですけど、こっちの子達は凄く攻撃的でね、そう言う所が中学生じゃなく高校生、女の子じゃなく、全員プライドが高い男の子っていう違いなのかなと感じた。「オールスターズF」でもそうでしたけど、女性のミステリアスさを描いたキュアマカロンさんが、描き方によってはちょっと感情移入しにくいキャラだと思うし、オールスターズなり元のプリアラの中では面白い個性だけど、ゆかりさんタイプがメインキャラ5人全員だったら、それは流石に見ててキツイだろうなと思えたりしますが、なんかね、そういうのに近かったのかも?今回。
そこ考えるとね、今回のセンターのキュアトップはおバカで真っ直ぐなキャラでまだ見やすかったし、部長のキュアソウルがまだまとめ役をしてくれたので見れた。
キュアロック、キュアカグラ、キュアブレイクの3人、特に副部長のカグラさん。和風の衣装は物凄く好みなんだけど、キャラがついていけなかったなぁ。勿論、厳しい態度だけど内心は誰より仲間の事を思ってるとかそういうキャラなのはわかるけども。
そんなメンドくささが可愛いって思うのかもしれないですけどね。
ああ、そういえば何かの時にも一度書いた気がするけど、「可愛い」という言葉。20年前と使い方変わってますよね。小さい子ならともかく、中高生レベルの男の子に昔は「かわいい」とかあまり使って無かったはず。多分7、今は男に対しても、使いません?何もビジュアルに対してだけじゃなく、行動とか考え方とか、変な話おっさんとかおじいちゃんに対してだって「かわいい」という形容詞を使うようになったのに私は時代の変化を感じたりしてるのですが(昔はルックスの良い女の子限定でしかかわいいなんて言葉使わなかった気がするんですよね)、そういう視点での「かわいい」はダンプリに入ってたと思うし、よくプリキュアの語源はプリティ(可愛い)キュア(癒す)なんだから、男でプリキュアはねーだろっていう人、今でもまだ見かけますが、「可愛い」は今の時代、きっと見た目だけや女の子の為だけの言葉では無くなってきているように私は思うし、そこは面白いポイントに感じてます。
テーマというか、今回出てくる敵の目的は個性の均一化、グローバル化でした。これ、初期のオールスターズのテーマでしたし、今回の敵はあえて言えば「プリアラ」のエリシオに近い存在でした。そこに関しては他のシリーズとの共通項と受け取るか、2番煎じと受け取るかはやや微妙な所。個人的にはダンプリでしか表現できない答えを提示してくれたとかじゃなく、なんとなくふわっと終わっちゃった印象が強く、そこも残念ポイントの一つ。
一応断っていくと、私はプリキュアに関わらずこの手のコンテンツ、映画でも漫画でもゲームでも何でも、時代性・社会性・先進性・テーマ性を重視してる人なので、楽しかったとか面白かった。カッコ良かったや可愛かった。キャラクターが良かったとかは評価の基準軸としては下の方になっちゃうのでそこはご理解下さい。
そこを踏まえれば、新鮮さでは満点だけど、他の部分が私にはちょっと合わなかったかなという印象。つーか思いっきり印象論ですけど、配信でもお客さんがはける所まで映像映してたんですけど、そりゃあね客の99%は女性ですよね。あれ見た瞬間、「あ、すいませんでした」って気持ちが引いてしまった。
そりゃああなた、普段見てるプリキュアだって子供がメインのお客さんでしょう?その中におっさんが紛れ込んでるんだからそれと同じでは?と思うのが普通でしょうけど、「わかってねーな、プリキュアってそれ以上に凄いものなんだぜ!」とか、つい言ってしまいたくなる魅力があって、それをこうやって日々ブログに屁理屈つけてブログに書いてたりするわけですが、今回の「ダンプリ」に関しては、私はこれ以上は遠慮しておくかな。メインターゲットの方々が楽しんでくれているのなら、それ以上はいいかなって。「客層じゃないのはわかるけど、こんなに面白い物、一人占めしないで俺らにも見せてくれ!」とまではいかない感じです。
勿論、こんなの認めないとかそういうのは全然無いので、これから公式プリキュアの枠に彼らも入ってくるのかどうかはわかりませんが、そこは全然ウェルカムです。
ああ、変身バンクの処理とかは素直に面白かったです。着ぐるみショーの変身も面白い事やってたりするんですけど、舞台でどう客を驚かせるかとか、アイデアが詰まってて良いですね。
あとアクション、最初のキュアトップの必殺技で敵も一緒に踊るので、今回は戦闘をこういう処理にしてるのかと思ったけど、それ以降は普通に殴る蹴るもやったりしてました。そこはどうせならバトルは全部ダンスで勝負してほしかったかも。「マイケル・ジャクソンズ:ムーンウォーカー」のノリで、敵も味方も全員ダンスって面白い画だと思うんですけどね。一見バカバカしいけど、ダンスの説得力でそこは単純に凄いって思えるでしょうし、そんな割り切った作風が見たかったかもしれません。
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