僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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<生きづらさ>の理由 (やまがた発)社会問題と市民活動の社会学

著:滝口克典
刊:よりみち文庫
2023年
☆☆☆☆

 

筆者の滝口克典氏は私に社会学を教えてくれた恩師のような方です。
とは言え、学校で教師と生徒として教わったというのではなく、非常勤講師のかたわら、<若者の居場所と学びの場>というコンセプトを掲げて「ぷらっとほーむ」というNPO活動を共同代表として運営されていて(現在は解散)、そこに私も通っていた中で色々と勉強をさせていただいた、という感じの流れ。

 

こちらの本はそんな滝口さんが山形新聞で連載されていた記事を13のテーマに分けて分類、再構成した本という形。

 

扱っているテーマは社会問題、災害、原発避難、地方消滅、メディア・コントロール、差別、現代家族、子供の貧困、非正規雇用ブラック企業、ひきこもり、ホームレス、自殺の13種。

 

今回の本には入ってないけど、当時は「戦争」についても当時の活動とかで私は学んだかな?あとは他の問題にもほぼ全部繋がってるけど、「政治」なんかもそこでの活動で学んだ事が私の考え方の基礎みたいになってるし、当時は正直よくわからないままに学びの場に参加してましたけど、全体的な「社会学」そのものが今に至る後々まで私の考え方の根っこになってくれてる感があって、サブカル社会学的な観点で語る、みたいな私の作風もこの辺りが原点だったりします。

 

本としては、先に挙げた13のテーマに対して、山形で実際に活動している人達の声や事例を拾って紹介していく、というのが中心。そこをただのガイドブックにするのではなく、筆者の社会学的な分析・解説を加えて、これはこういう社会背景があって、こういう効果のある活動なんですよ、というのを社会学初心者向けに丁寧に描いてある。

 

一つ一つの問題や活動は実際に本を読んでもらう事にして、私も昔思ってた事なんですけど、この中で紹介している個々の活動、おそらくそんなに大きな活動では無いです。少ないと10人以下とか、多くてもきっと100人行かない規模くらいかなと。2~30人程度しか人を動かせなくてさ、そんなんで社会を変えられるわけないじゃん?って思いません?私も自分がその手の活動とか参加する前は思ってましたよ。言葉は悪いけど自己満足に近いんじゃないかって思ってた時期が・・・私にもありました。

 

でも、そんな数の大きさなんか実は意味が無くって・・・というか意味が無いわけじゃないけど、千里の道も一歩からってやつで、人間なんて目の前に居る一人の事だって全部なんかわからないのに、一万人を啓蒙して社会を動かすんだ!とか言う方が実はヤバいんじゃないかと今は思ったりするようになりました。

 

インフルエンサーがさ、何のエビデンスも無いくせに、何万ににも影響を与えたりするのって、あれメチャメチャ危険じゃないですか?
まさしく「それはあなたの感想ですよね」レベルの事を、その程度の話と受け取らず、発言者側も受け手側もそこにスッと乗ったりするの見てると、とてつもなく恐ろしいと私は感じます。

 

100万人に向けて無責任な言葉を発するよりさ、目の前に居る5人や10人でも、そこと向き合う事の方がずっと大切な気がします。
私もそういう場で救われた一人ですし、勉強するに当たっても、自分はここがわからない、ここに書いてある・言ってる事に納得がいかないでいる、これってどういう事なんですか?というのを滝口さんなりに直接聞けたのはメチャメチャ大きくて、まさしく「腑に落ちる」という言葉通り、自分で納得して無いものってちゃんと飲み込めないから身に付かないんですよね。納得できて初めて自分の身になり力にもなる。そういう経験をさせてもらったっていうのは物凄く大きいです。

 

それは10人以下のゼミだったりだからこその感覚で、50人に向けた授業や講習であるとか、本を読んだり動画を見るだけでは得られないものだったんじゃないかと。だからこそ、社会活動とか言ってるけど参加者少なくね?という最初にあった疑問が、いやそういう草の根活動こそが本当は大切なんだよ。数だけ夢見たって仕方ないじゃん!
と考え方が変わった理由です。

 

理屈っぽいのは昔からの性格でもあるけど、そこにより拍車がかかってエビデンスをやたら求めたりするようになったのはその辺が由来。

 

本の中で語っているテーマからは若干ずれる部分ではありますが、そこはあえてとして、「私と社会学」についてもう少し語ります。

 

私はねぇ、子供の頃から何をやってもダメな人だったんですよ。運動はビリ、成績もビリ、面白い事を言うユーモアとかもなく、クラスの組み分けみたいなのも、みんなの嫌われ者で友達が居ないので一人余ってしまうみたいな人でした。いじめられて学校に行けなくなったりもしました。
母親からも「お前は何をやってもダメだから人の3倍努力しろ」と言われたし(本人に悪気は無く、ハッパをかける為に言ってたんでしょうけど、今ならNGですよねこれ)父親からは「女の腐ったのみたいにメソメソしやがって。お前は俺の子供じゃ無い」って言われました。今ならDVじゃねーか!って突っ込めますけれど、子供時代の私にそんな知識があるはずもなく。

 

そんなんがあったので自己肯定感が無い人間でした(そこは今も引きずってたりはしますけど)なのでオタクに走ってたんですけど、20代半ばくらいに、ちょっとこれじゃあダメだなと自分を変える努力をして、頑張って彼女作ったりとかもしましたが、まあ当然長くは続かず、みたいなので苦労してた時期で、30になったらもうその先も明るい未来なんか来ないだろうし、もう自分で終わらせようかとか思いながら生きてました。

で、そんな色もがいてる中で、30少し前くらいかな?最初に言った<若者の居場所と学びの場>「ぷらっとほーむ」という所に繋がります。

 

そこで出会ったのが社会学でした。それまでは「自分がダメなのは、自分が努力を怠ってきた結果なんだよな」っていうまさしく「自己責任」という考え方に陥っていました。
でも社会学の視点ではそうじゃなかったんですよね。それはあなたが悪いんじゃなく、社会が悪いんだよ。社会がそう思わせているんだよ、というのを教えてくれたのです。

 

こんな風に言うと「自分の至らなさを棚に上げて、他人や社会のせいにすんなよ」って思う人は今でも物凄く多いはず。「自分はそうならないように必死に努力してるんだからあなたはそれが足りないだけでしょう」って言いたい人は多いんじゃないでしょうか。

 

うん、私も半分はそう思うもの。でも残り半分はそうじゃないよって言ってあげるし、実際にそういうものです。全部じゃ無く、半分は、っていうのがミソ。

 

どんなものでも、片方だけの意見より、両方聞きいれた方が良いです。矛盾じゃないか!曖昧で居るよりどちらでも片方によって、ズバッとこれだと言いきった方が気持ち的にも安定するじゃないか!と言う人も居るでしょう。でもそんな白黒はっきりしないのが人間だし世の中の常です。そんなの都合良く使い分けちゃえばいいんですよ。

 

自分がこんなにダメな人間なのは、自分の至らなさもあるでしょう。そこは認める。でもそれだけじゃないでしょ?自殺者年間3万人の社会って、普通に考えておかしくないわけがない。

 

そこら辺、勉強していくにつれて、気持ちがどんどん楽になっていったんですね。相変わらず自己肯定感こそ低いものの、今はもう死にたいとかさっぱり思わなくなりましたし。

 

最初はただ、自分は何てダメな人間なんだって、自分で自分を責めるだけしか出来なかったんですけど、社会学というか社会そのものを勉強していく中で、うすうす気づいてはいたんですけど、決して自分だけが不幸なんだとかではなく、割とベタな部類なんだと改めて知るわけです。

 

例えば、いじめなんかにしても、やっぱり世間的にいじめとか登校拒否とか社会問題になり始めた時期に私もそこを経験してたわけで、当時のその学校では一人か二人だったかもしれないけど、他の地域や全国では同じ時期にそんな問題は多発してたわけで、ある意味ではベタだったとも言える。

 

社会って基本的にそういうものです。本当に特殊なケースも勿論あるでしょうけど、同じような経験、同じような悩みを抱えている人っていっぱい居るんですよ。視野が狭いとそういうのが見えてこない。

 

同じ悩みを抱えてる人が隣にたら、それって少し気持ちが楽になったりしません?あれ?自分一人かと思ってたらあなたもなんですか?え?あなたも?ええっ?そっちもなの?ある意味こっちはこっちでベタですねぇ、とか思ったりしませんか?

 

「社会」とか言うと、学校の授業で社会苦手だったんだよなぁ、と思う人が多いんじゃないかと思うし、私もそんな印象でしたけど、もう少し違う言葉を言えば「世の中の仕組み」を知る、という事でもあります。

 

例えば今回の本「<生きづらさ>の理由」というタイトルですが、何故そうなっているのか?何が問題なのか?問題を解決するには何が必要なのか?というのを説明してくれるわけです。

 

社会学を勉強してる時に何が面白かったかというと、なんか世の中のありとあらゆる事を理解できるようになっていった事でした。あれってこういう事だったのか?なんとなくこうかなと考えている程度だったリ、或いは全く理解が出来ないものに対しても、それはこういう理由なんですよ、という納得出来る面白さでした。

 

なんかその辺りを知るとね、世の中の全てを理解したとまでは流石に言わないけど、「わからない」事があんまり無くなりました。逆に言うと社会学を使って色んな物事を読み解けるようになって行った。それが凄く楽しいんですね。

 

人は「わからない」から不安になるのであって、わかってると不安や恐怖はなくなるものです。所謂「幽霊の正体見たり枯れ尾花」っていうやつ。そんな視座を教えてくれたのが私にとっての社会学です。

 

世間一般的にはどうなのかは知らないけれど、私の生息しているオタク界隈ではこの辺の考え方を生かしてる人はほぼ見かけないので、かじった程度で本格的に勉強したわけでもないのに、せっかくだからそれを武器にしてしまえという考え方で日々やってたりします。

 

とまあ、半分以上は自分語りみたいになっちゃってますけど、私を救ってくれたと同時に、武器ともなりえるものを与えてくれた、この本の滝口さんには心から感謝してます。改めて、ありがとうございました。

 

そして「社会学」に興味がお持ちの方は是非こちらの本なり、他にも専門書や入門書は沢山あるはずですので、触れてみてはいかがでしょう。

 

噂によると社会学は万病に効くと評判らしいですよ。
(急に最後インチキくさくなったぞオイ)

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