僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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キボウノチカラ〜オトナプリキュア'23〜

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Power of Hope
シリーズディレクター:浜名孝行
シリーズ構成:成田良美
TVアニメ 2023年 全12話
☆☆☆★

 

プリキュア20周年記念の特別企画として発表された、初の大人向けプリキュアアニメ企画「キボウノチカラ」全12話終了。

 

う~ん・・・個人的には最後がちょっと私の苦手&嫌いなパターンが来てしまったのと、結構設定とか投げっぱなしにして終わってしまったので、最後の最後に評価を下げちゃったかなぁというのが正直な所。

 

とは言え企画自体は良かったですし、1クールと短い作品でしたが、その間は本家ニチアサ枠とこちらとで週に2本、しかも土日で週末ですから、物凄く楽しい時間を過ごす事が出来て、そこは素直に感謝したい。

 

私は基本そんなにTVアニメとか沢山見る方では無いので、毎週色々なアニメやドラマ見てる人は、いつもこんな感じなのかなと久々に思いだしました。ニチアサは習慣みたいなもんですが、他のアニメとかたまに見ても、ついつい溜めちゃってね、土曜日の仕事帰りに映画館に寄らずにまず帰ってきてオトナプリキュア見てからその後の行動をとる、ぐらいには毎週楽しみにしてました。

 

まず最終回で一番良かった所。
ブンビーさんが「あの子達(プリキュア)はこれまでずっと頑張ってきたんだ。これはこの街の問題なんだから、人に頑張れって言う前にあなたが頑張りなさいよ」的な事を言うのがド正論で面白かったです。

 

子供時代はミラクルライトを振ってね「プリキュアがんばれ~」って言ってれば良かったけど、あなたももう大人なんだし、プリキュアに何かしてもらうだけじゃなくて、自分で出来る事あるだろうし、それを探そうよ、みたいな感じでちょっと笑ってしまいました。少しは成長しろよと。まあそういう事だよねぇ。

 

逆にここが一番ダメだったというのが、まあ世の中的には賛の方が多いんだろうなと思うんですけど、のぞみとココの結末です。
私は頭が固いのか?ココに「初めて会った時からずっと好きだった」みたいな事、言わせちゃダメだと私は思うんですよね。

「5」絡みの記事を書く時、これまでも何度か私書いてきたはずなんですけど、5のスタッフインタビュー集「プリキュアシンドローム」に置いても、中学生と教師の恋については、少女漫画的な感じであこがれる要素だよねっていう人と、いや現実的に考えたらそれ犯罪でしょ?あまりリアルには受け取らないでほしいって、作ってる人達の中でも二つの意見があって、なんか逆に面白いなと思ったんです。

プリキュア シンドローム!〈プリキュア5〉の魂を生んだ25人【描き下ろしポストカード3枚付き】

 

ココの中の人の草尾さんもラジオの中で、のぞみとココの話ではないけれど、先生と生徒の恋愛とかは、あこがれのドキドキとかはいいけど実際に行動に出るのは絶対に止めた方が良いですよ。とハッキリ言ってます。

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勿論、お話の中では「のぞみとココは結ばれて幸せになりました」っていうのはハッピーエンドだと思うし、そういう関係性ではあったのだけれど。絶望の中に居たココにのぞみが希望をくれたし、幼いのぞみの成長をココは上手く導いてくれたのだから、そこに気持ちが芽生えるのは決して変では無いと思うしね。

 

でも、初めて合った時からうんぬんみたいなセリフって、一見ロマンチックに思えて結構な悪手だと私は思っていて、これまた同じような部分で物凄く拒否反応が出た「劇場版ヴァイオレットエヴァーガーデン」を露骨に思いだしてしまいました。
あれもねぇ、紆余曲折の果てに二人が結ばれるのは決して悪くは無いと思うんですけど、同じように最初からずっと愛してたみたいな事を言うんですよ。で、回想シーンが入って、その最初の出会いがヒロインの少女時代、まだ世の中の事を何も知らない10歳くらいの少女に対して当時から抱きしめたいと思ってたとか言っちゃうんですよ。

 

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この辺の日本のアニメの異常な倫理観とかに気付かずに「感動した」とか言うの、私は正直問題あるように思えて、もうちょっと表現考えようよ~ってつい思っちゃう。

 

しかも今回、大人向けですよ。これまた考え方は二分するでしょうけど、現実の辛さや上手く行かなさなんか身に染みて毎日経験してるんだから、アニメの中でくらい現実逃避させてよ、ファンタジーじゃん?

そういう考え方もあるのはわかるし、それはそれで否定はしないんだけれども、それ言っちゃったらさ、今回の「オトナプリキュア」なんか成立しなく無い?アニメの中で社会問題とか説教とか入れないでよ、って、今回のテーマ全否定にならないですか?

 

或いはですよ、今回は超不自然なくらいにこまちとナッツの関係には一切触れないんですよね。私は「5」だと昔からこまち押しです。ココのぞだけ幸せになりやがって!とかそういう事じゃ無く、こまちとナッツこっちのカップルは結局その後、立ち場や環境の違いで離れてしまった、みたいなのをむしろあえて入れて欲しかった。上手く行く恋もあれば、上手く行かない恋もある、そんな酸いも甘いも経験してるのが大人だよねって言う比較にしてくれれば良かったのに。

 

夢見る少女だけが女性の魅力じゃないよ、夢破れて現実を生きてる大人の女性も、日々頑張ってるんだしそれもまた魅力の一つですよ、という描き方が何故できないのか?こまちびいきだって思うかもしれませんが、実はこまちさんのラストカットとかあれはあれで凄く良いなと思ったんですよ。小説家になる夢は叶えられていないけれど、日々大切な日常に囲まれ、王子様じゃなく近所のおばちゃんと仲良くなったそれもこまちの大切な物語を描いてる最中ですよ、って普通に素敵じゃ無い?

 

逆に言えばSDGsうんぬんっていうテーマの方も描きかたが正直平凡だし、意識高い系を目指しながら、表面だけをなぞった薄っぺらいものになってたように感じるし、その薄さがプリキュアの関係や設定に関しても同じように薄く感じた。
1クールという短さもあるし、基本5とSSの二人の個人回を一人づつやって回したというのもあるけど、テーマというよりは懐かしコンテンツの方向に舵を切ったという感じなのかなぁと。

 

いや最初はね、番組スタートする前は、もうプリキュアに変身は出来ないけれど、そのプリキュア魂があれば大人でも誰かを助けたり問題を解決する事が出来る。プリキュアの本質とは変身する事じゃ無く、その精神性にあるんだよ、だからこれを見ている大人の貴方たちも、かつてプリキュアに憧れた子供時代をもう一度思いだして、現実の世界でも誰かの心のプリキュア、そして自分の心の中にあるプリキュア魂を忘れないでいてね、という作品になると、勝手に思い込んでいたんです。

 

そしたら本当にプリキュアに変身して敵と戦いはじめた。
え!そういうのなの?ってビックリですよ。

 

しかも変身すると当時の姿に戻る。いやそこは大人なまま変身してよ!これ最終回で大人変身くるかなぁと密かに期待しましたが、結局そういうのはありませんでした。まあハートキャッチでもキュアフラワーがおばあちゃんから若い姿に戻ってましたしねぇ。

 

この「子供に戻る」っていうのもそれはそれで独特の面白さは秘めていて、昔の魔女っ娘物、魔法少女物って子供が大人に変身して問題を解決するみたいなのが多かったんです。それは男の子向けで言えばロボット物にも共通する文脈で、子供のままでは力が足りず世間に相手にされないけれど、ロボットという力を手にする事で世間に一人前の存在として扱ってもらえる、あるいは社会に何かしらの爪痕・影響を与える事が出来るようになる、そういうメタファーだったわけです。


女児物にせよ男児物にせよ、そういう文脈で魔法やメカがまだ小さい自分が大人への対抗手段を手に入れるという成長や社会と向き合う物語になっていた。

 

そういう文脈を踏まえればですよ、今回大人が子供の姿に戻るって、それはそれで色々な意味を持たせられそうな設定じゃ無いですか?昔は、子供のままでは戦えないから大人に変身したのに、今の時代は大人では戦えないから子供に変身する。

 

これって面白いテーマだと思いません?
本当の意識高い系プリキュアならそこをちゃんと意味のあるものに描いてたと思う。
今回はそういうとこもまた「意識高い系」を装ってるだけで、実際はそうじゃない感じが見え隠れして、そこが残念ポイントでした。

 

だってね、そもそも「HUGっとプリキュア」で凄い事をちゃんとやったじゃないですか。大人だって何でも出来る、男の子だって、おばあちゃんだろうがおじさんだろうがその心があれば誰だってプリキュアになれるっていうのをもう描いてるのにですよ、大人はそのままの姿でプリキュアにはなれないって、テーマが後退してないか?HUGを経て今更これなの?と正直思ってしまった。

 

ただ、そこでまた思いました。プリキュア20年分の変化やテーマや描き方を全部見てきてるのはお前が(私が)プリキュアオタクだからだろうと。そもそもが「HUG」より後退してないか?なんて思うのは私がオタクだから。

 

わ~プリキュア5子供の頃に見てたよ、懐かしいね!こうしてのぞみちゃんたちと再開できて嬉しいね!今のプリキュアは知らないけど、私のプリキュアはこれだったよ!っていう人達に向けた作品ですよねこれ。

 

プリキュアのメインターゲットは未就学児というのと同じように、キボウノチカラのメインターゲットは子供の頃にプリキュア5を見ていて今は大人になった世代。
そんな人達に対して「HUG」と比べてうんぬんとか言ったってさ、なんかニュースサイトで男の子がプリキュアになったとか見た気がするな、ぐらいしか知らないだろうし、むしろそれが普通、それが大衆で大多数かなと。

 

今回は「5」と「スプラッシュスター」がメインで、初代も最後だけ少し。プリオタ的には鷲尾P期、最初の5年間の、いわばプリキュアのファーストジェネレーションを軸に扱った作品。この時代って、意識高い系要素ってエッセンスとしては最初から入ってはいたものの、そんなにね、そこを軸にどうこうっていうのはあまりなかった世代。

 

それこそジェンダーとか多様性とかの切り口で語られる事が多くなった意識高い系プリキュアは「HUG」辺りがきっかけで、近年はその流れにあったわけで、しかもその切り口が世界水準に匹敵する所が私はプリキュアの本当に凄い部分だと思ってる人ですが、まあオタクじゃない普通の人はそこまでは意識なんかしてるはずも無いでしょう。

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そこにこそジェネレーションギャップが生まれるわけですが、そんな「プリキュアでジェネレーションギャップを語る状況」こそが面白味ですよね。そもそもが20周年特別企画なわけですから。それは「男プリ」も賛否あるの前提で新しい事をやりますよ、という意味ではきっと同じです。

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なので、ちょっと描き方が浅いんじゃないか?と文句は言うけれど、別にこれが失敗だったとか、こんなのはプリキュアじゃないとか、そういう事を言うつもりは一切無いです。一つの挑戦、ユニークな企画を楽しませてもらいました、とは言えますし。

 

冒頭に書いたブンビーさんだけでなく、満・薫を独特のポジション(ただの仲間ポジだけでなく、闇の存在から生まれた人では無いもの設定が生きてるのが素晴らしい)で使ってくれたのは良かったものの、え~じゃあみのりちゃんは今何やってるのよ?とか気になる部分はありました。

 

大人「デジモン」とかは見て無いのでどういう設定なのかは知らないけど、スーパー戦隊とかの10イヤーズ系、現実のそのキャラの演者の状況とかが何と無くリンクしてたりするのがこの手の時間を置いたアフター物の面白味です。

 

今回プリキュア勢の中では唯一咲が既婚してましたが、実際に中の人の樹元オリエさんも実際に結婚されて、声優としては咲以外の役はほとんどやっていない半引退状態なのでプリキュア現役復帰には二の足を踏んでたし、逆に舞役の榎本温子さんは、「Gレコ」の主役で有名な石井マークと結婚したけど、その後に離婚されてて、今は仕事の方をバリバリやってる印象。そういうのもあってか、舞の方は付き合ってた彼氏と別れる話を振られたりと面白い話になってました。

 

TVシリーズでは恋愛要素として描かれた和也お兄ちゃんには触れないのかと思いつつ、(ココのぞだけあんだけやっといて)咲の旦那にせよ、舞の彼氏にせよ基本的には画面には見えない散在として男性ファンにも気を使ったんだなと思いつつ、ここはやっぱりみのりちゃんの成長した姿が見たかった。お母さんなり咲なりが「みのり~」って呼んだら、みのりちゃんが返事するんだけど、画面にはクマのぬいぐるみが置いてあってそれに隠れてみのりちゃんの姿は見えない、みたいなモフルンネタを期待するわけですよ、こういうアフター物には。

 

人気の「初代」と「5」に挟まれ、やや不遇なポジションの「SS」ですが、それがこうやって大きくクローズアップされたのは素直に嬉しいし(私はSSも好きですので)ありがたい半面、変身バンクでフラッピチョッピが画面に映るのに、そこに何も触れないとか、不自然さにも程がありました。

 

そういう設定があるとかではなく、ただの俺解釈ですが、タイムフラワーはあくまでその人の記憶にある過去の時間に戻す力、だからプリキュアに変身すると当時の姿になるし、見た目だけのタイムスリップみたいなもの、だからフラッピチョッピら精霊(妖精)がそこに実際に居るわけじゃない。変身解除後に「チョッピ、いつかまた会いたいな」みたいに昔を忍ぶ描写とかあれば100億点だったんですけどね。「リュウソウジャー」のその後でういちゃんを思いだすみたいな。
もしそんな私が考えたような設定であれば、過去に囚われるんじゃ無く未来を見ようよみたいな描き方も出来ただろうしとか勝手に考えてしまいました。

 

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あとは今回のラストには合わなかったとは思うけど、やっぱりこの世代なら最後にガンバランスを流してほしかったかなぁとか、さなえおばあちゃんが昔からこの街に居るみたいな設定にしたことで、「初代」「SS」「5」が同じ街か少なくとも隣町くらいの距離感になってしまって、そこはオリジナルの世界観ブチ怖しだなぁと思ってしまいました。

SSは港町だからこその舞台設定とメンタルだと思うし、逆に言えば初代と5はこんなに海が近いとそれはそれで変なのです。作中内では直接繋がって無いけど、メタ的に近接した作品群として隣組だったんだね的な落とし所を上手くやってくれれば良かったのですが。

 

う~ん、まあ言いたい事は大体こんな感じかなぁ?
TVシリーズみたいに後からまとめ本とか出たりするのかな?

 

という辺りで、来年は企画枠こそ違えど「魔法つかいプリキュア2」です。
新たな敵でもいいし、魔法で日常のハチャメチャだけでもどっちでも良いですが、今回の「キボウノチカラ」見てて思ったんですよね。ある意味魔法で何でも出来ちゃう世界ですから、他のプリキュア世界におじゃましま~す!みたいな事も出来んじゃね?今回は3世代分のプリキュアを集めたわけですから、それ以降「フレッシュ」から~とかせめて「まほプリ」前後くらいでも良いけど、あっちはあっちで実は同じようなオールスター企画なんですよ、とかだったら嬉しいかもしれない。


実際どうなるかは今の時点では知るよしもありませんが何にせよ、わくわくもんだぁ!の気持ちで待ちたいと思います。もし予想が外れても、それはわざとだし!

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