OHSAMASENTAI KING-OHGER
監督:上堀内佳寿也 他
脚本:高野水登
日本 特撮テレビドラマ 2023-24 全50話
☆☆☆☆
スーパー戦隊シリーズ47作目。
前年の「ドンブラザーズ」が従来のファン層以外の所にまで飛び火するくらいその面白さが評判となり、歴史に名を刻んだ次のシリーズというのもあり、あれの次は正直大変だろうなと思いましたが、意外な事にまた振り幅を「正統派の戦隊」に戻す事無く、次なる変化球を仕掛けてきたのが「キングオージャー」でした。
現代とは違う設定のファンタジー路線。今はハリウッド映画でも使っている
今回から導入された巨大LEDスクリーンバックウォールを背景に、早朝の街中とか倉庫の中という戦隊お馴染みのロケーションは使わず(岩船山の採石場はアリ)中世ファンタジー風の世界観は最後まで貫き通しました。
流石に場面に合わせてCGの街並みを毎回作るというわけにもいかず、基本的にはいつもの広場的なものばかりで、各国のビジュアルの違いこそあれど、出てくる背景は毎回同じなので、それはそれで狭い世界にも感じられてしまったという欠点も感じましたが、まあ貧乏くさいのは東映特撮らしさでもある。
ラストバトルも思いっきり「エンドゲーム」を意識した作りで、あっちの100分の1以下の予算でこっちは1年作ってんだよ!というコンプレックスむき出しで、でも創意工夫であいつらと同じくらいの事はできらぁ!というのもまた東映イズムな気がします。
最近は「ガーディアンズオブギャラクシー」をやろうとした「キュウレンジャー」くらいでしかそういうスピリッツは感じませんでしたが、80年代くらいの東映特撮、特にメタルーヒーロー系とか見てると、そういう金は無いけどハリウッド映画には創意工夫で負けないぞ的な意気込みを凄く感じたので、私はそこのイメージが未だに残ってます。
前年のドンブラもそうでしたが、商業的には苦戦が続くスーパー戦隊シリーズにおいては、そういう時だからこそ基本フォーマットや過去の例にはあまり囚われず、新しい発想で作品を作ろうという流れはキングオージャーも引き継いでました。
基本として戦隊は各話完結のオムニバス形式が基本のフォーマットの中で、今回は全体としてのストーリーを生かした続きもの。長編ストーリーと言う趣でした。
そして2部構成。中盤で大きなクライマックスを作り、そこから作中内では2年という時が流れて新たに第二部が始まる作り。
多分、飽きさせない為の工夫なのかなと思うのですが、私的には!私個人としましては!1部のクライマックスがあまりにも良すぎて、あまりにも凄すぎて、逆に気持ちがそこで途切れてしまいました!
後半は後半で面白かったですし、終盤は1部2部全部ひっくるめた感じのクライマックスになってるので、そこは1年通して見る価値は十分ですけど、2部に入って最初の方のキョウリュウジャー編とか、2年経っててメインキャラはビジュアルとかも変わってるのに、ブーン君だっけ?あのちびっこが2年経ってない感じとかも気になって、個人的にはちょっと気持ちが離れてしまった部分もありました。
2部からのラスボス、石田彰は良かったものの、他の五道化がやや物足りない印象も。むしろキングオージャー特有の、サブキャラを使い捨てにしない、サブキャラを生かしまくるという作りが物凄く良くて、味方側はサブキャラまで全部面白い。むしろサブキャラこそが面白いみたいな作りの中で、敵側のサブキャラに物足りなさを感じてしまう始末。1部が面白すぎて2部が霞んだっていうのと近いかもしれない。全力出し過ぎて逆にバランスが、みたいな感じかも。
サブキャラの生かし方はジャンプメソッドみたいな所を研究した結果らしいです。キャラクターを使い捨てにしない的な作り方。技術屋で作戦関係にもよく絡んだ分、シオカラ君とか変身しないけどメインに匹敵するくらいのサブキャラって感じで目立ってましたし、モルフォーニャもスズメちゃんも凄く良かった。
メイン6人の中ではやっぱりリタがお気に入りですが、私の持論としてスーパー戦隊派3人目の男子メンバーの個性を生かしてる戦隊は面白いというのがあるのですが、今回で言えばカグラギ殿。クセの強いキャラで、そこはすっごく良かった。
戦隊は人数が多い分、たまに自分の当番回以外はあんまり目立てない空気になるキャラってのがたまに発生して、そういうメンバーが居る作品はちょっとイマイチ。自分の当番回でなくても、存在感を示せるキャラが居る戦隊は安心して見られます。
今回は性格だけじゃなく、国の違いで役割分担みたいなのもきっちり差別化出来てましたしね。しかもメンバー毎に全員分サブキャラがさらに居るという贅沢な作りになってましたし、そこがやはり面白味でした。
そしてスーパー戦隊ならではのロボ戦。序盤は各ソウルごとに生きた固有の人格とかも描かれてましたが、基本的には消化試合として仕方なくやってる感は半端無い。
勿論、それこそ1部のクライマックスとか、こういうのを見たかった!はたまに入る事は入るんだけど、それこそ前作の「ドンブラ」で決して丁寧にロボ周りをやってたわけではないけど、玩具の出来が良くて売り上げは良かったっていう流れを引き継いで、見せる所で見せれば行けるはず、という感じだったでしょうか。
それこそ古い話だけど「世界忍者戦ジライヤ」で巨大ロボの磁雷神はさほど出番があるわけでもないけど売れたみたいな事例もあるのはありますし。
キングコーカサスカブトとか、デザイン的には凄く好みでしたが、ぶっちゃけ出番はほとんど無かった。でも、ほぼ余剰無し(だよね?)で全合体とかやってたのはロボ好きにな人には嬉しかったのかもしれない。
私も基本的には戦隊におけるロボの重要度は気にしない方で、1話とかでよくあるロボ無しで、あくまで変身ヒーロー物っぽい回とか好きな方ですけど、こうしてぞんざいな扱いを受けると、それはそれで勿体無いよなぁと思ったりはします。ロボ戦を物語に上手く生かしてた「ゴーバスターズ」とかやっぱり良かったですし。
とりあえずこんな感じかなぁ?正統派じゃない実験作としては良い方だったと思います。
さて次は「爆上戦隊ブンブンジャー」ですね。
正統派だった「キラメイ」以降は「ゼンカイ」「ドンブラ」「キングオージャー」と続いたので、王道路線に戻る感じでしょうか?モチーフ的にはやっぱり「ゴーオンジャー」に近い匂いは感じますけど、どんな風になるか。
見た目は正直カッコ悪いなと思いますけど、キングオージャーも第一印象でダサいと感じましたし、過去の経験からも見た目の好みは話が面白ければ気にならなくなるものですし、そこはあんまり心配してません。
「ガッチャード」が現状とても見るのが辛いので、そこを我慢して戦隊の時間になれば面白いから!になるのを願いたい。
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