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ガルパンの秘密 ~美少女戦車アニメのファンはなぜ大洗に集うのか~

ガルパンの秘密 ~美少女戦車アニメのファンはなぜ大洗に集うのか~【通常版】 (廣済堂新書)

著:ガルパン取材班
刊:廣済堂出版 廣済堂新書 042
2014年
☆☆☆★


ガルパン」は『ガールズ&パンツァー』の略称。架空の女子校「大洗女子学園」の生徒たちが、戦車を使った武道「戦車道」に取り組む青春物語だ。アニメの人気は未知数だったが、2013年秋に開かれたあんこう祭には10万人もの人が訪れた。「ガルパン」はヒット作の枠を超えて、一つのムーブとなった。それは関わった人々の思いの連鎖の結果だったのだ――。

 


面白そうな新書を発見。著者がガルパン取材班となっていて、謎本的なやつかな?とも思ったのですが、手にとって中を見てみると、取材執筆4人の中に藤津亮太と石井誠と知ってる名前が。あ、ちゃんとした信用出来るアニメライターがやってる本だなと思い購入。

 

時期的にはTVシリーズ終了後、OVAと劇場版が発表されたくらいの時期です。基本的にスタッフインタビュー集ですけど、アニメ制作の方だけでなく、大洗の担当者の方とか、自衛隊の人とかにまで話を聞きに行ってる辺りが面白い部分。アニメ雑誌、アニメムックとは違う新書ならではのアプローチって感じで良いですね。インタビュー集なので、アカデミックな総論とかはあんまり無いですけど、その分サクサクと読みやすいのは利点かな。

 

元々の大洗のあんこう祭って、来場者が2~3万人くらいの規模だったものが、ガルパン以降は10万人になったそうで、そこはやっぱり凄いものがありますね。アニメのおかげでちょこっと人が増えましたっていうレベルじゃない。倍どころか3倍以上。そりゃあ地元の人もびっくりだし、経済効果とかそういう話にもなってくるわな。

 

今年のゴールデンウィークで大洗への旅リポを書きましたが、それも含めて私も大洗には3回も足を運んでたりしますしね。あんこう祭りには行った事が無いのだけれど。

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そしてアニメスタッフの話としては、先日亡くなられたアクタスの丸山社長のインタビューも当然入ってます。ガルパンの生みの親、企画の発端も丸山さん。最終章完結前に亡くなられたのは残念ですが、そこはきちんと後を継いでくれるでしょう。

 

企画の発端は丸山さんが過去にも仕事をしたバンダイビジュアルの湯川プロデュサーに声をかけた所から始まる。残念ながら「アクタス」という制作会社名だけでは客は呼べないので、誰かアニメファンが食いつくような人を一人つれてきて下さいと。親交があったわけではないものの、人伝で島田フミカネがキャラデザをやってくれると。

そこから話が広がり、水島努監督、脚本の吉田玲子が興味を示してくれて、このスタッフならアニメファンがちゃんと食いついてくれるだろうと正式に企画が動く。フミカネ氏へのインタビューは無いですが、他の二人には話を聴きに行っていて、そこはやはり原作物じゃなくアニメオリジナルっていうのが大きかった様子。

 

島田フミカネのキャラデザでありながらね、「ストライクウィッチーズ」「艦これ」の路線に行かなかったのが本当に英断だったというか、ガルパンの評価すべきポイントだと思っていて、いくら美少女+メカという欲望丸出しの企画でも、そこにエロ要素を入れなかったのはホントにガルパンありがとうと言いたい。

 

大洗の人達、やっぱり最初に話を聞いた時はタイトルだけで普通これ引くよねってみんな言ってるし、でも実際に見てみると昔ながらのスポ根物っぽくて普通に面白く見れましたよ的な事を言ってるのがね、まさにガルパンだなぁと。入浴シーンみたいなものはあったりするけれど、あのミニスカートでパンチラは一切無いですし、そういう所の判断は流石です。

 

かと言ってね、最初から御当地アニメみたいなものとして作ったわけでもなく、単純にロケハンとかしてね、地元の一部の人に強力してもらえれば、程度の感覚で居たというのは非常に面白い部分。「御当地アニメとして成功した理由は?」って何度も取材されたけど、その度にわかりませんと答えているというのがね。

 

ただやっぱりあんこう祭が2~3万人から10万人になったらそりゃあ経済効果が露骨に出てくる。で、そんな中でね、地元の商店が勝手にグッズを作ったりしたのを厳しく規制したりせず、最初は目を瞑って非正規グッズを見逃しながらもこういうのはきちんと申請してライセンス料とかも発生するんだよ、というのを徐々に話を通すようにしていったというのも面白い話ですよね。

 

あとは作ってる方も今となってはの話で、私は劇場版公開の時にまとめてTVシリーズを見たのもあってリアルタイムの感覚はわからないけれど、TV放送時は総集編が2回あって、ラスト2話は後からの放送になった(落としたわけじゃなく震災だったので理由は違うけど「まどマギ」とも似てるシチュエーションですよね)わけですが、まあ実際に作ってる方としてはね、スケジュールを守れなかったのが2話分もあったわけですから、普通に社会人の考え方としては信用問題に関わる部分ですよね。そこはしきりに反省してますし、お客さん(視聴者)もそこで離れないで待っててくれたのが本当に助かったと。

 

OVAもそう、劇場版もそう、最終章もそうですがやっぱりクオリティは異常なほど高い。あまりに遅いペースで離脱する人も居るには居るんでしょうけど、多くのファンは首を長くして待ってると思いますし、ガルパン10周年とか去年(今年だっけ?)言ってましたが、その分、コンテンツとしては長く生き残ってるのは経済効果としては悪くない話だなと。劇場版公開前のこの本の時点では、アニメの経済効果がいつまでも続くわけじゃないのは自覚してますし、って一様に言ってたりするけど、実際まだ続いてるわけですしね。

 

ガルパンショップに私もよって買い物してきましたけど、一つの深夜アニメ作品オンリーでお店が維持出来てるってやっぱり凄い事ですし。

 

そんな感じで、色々な視点や知識を広めるという部分では非常に面白い本でした。
みほ役の渕上舞さんのインタビューも当然あるし、変わり種な所ではカトキハジメインタビューまで入ってるので、読んでて楽しい1冊です。

 

この手の新書ってねぇ、話題になったの聞いた事無いしオタクはあまり普段読まないと思う。そもそも本を読まない人には「新書」というカテゴリーすら認識してない人多そうですしね(ブックオフですらハウツー本とか微妙なカテゴリーにしてるし)。
ただ私は割とこういうの好きなので個人的にはサブカル系の新書はもっと増えてくれないかなぁと思ってたりします。

 

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