僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

見たもの読んだものなどの簡単な記録と感想のチラシ裏系ブログ

ガンダムマガジン名作集

GUNDAM MAGAZINE SELECTION
原作:矢立肇富野由悠季
漫画:細井雄二・岩田和久・みやぞえ郁雄・岩村俊哉
刊:講談社 講談社コミックス ボンボンデラックス 第2179巻
 KCDX Gレジェンドコミックス 2006年(連載1990-91年)

 

「F90」関連でこちらも。
映画「機動戦士ガンダムF91」公開時のプロモーションとして半年間6号分発売されていたコミックボンボン増刊号扱いの「ガンダムマガジン」。

その中の6本分のコミックを収録したのがこちらの作品。ファースト・Z・ZZ・逆シャアの外伝が1本づつと、SFC「機動戦士ガンダムF91 フォ―ミュラー戦記0122」のコミカライズ前後編の合わせて6話分を収録。

 

リアルタイムではこの辺は追って無かったものの、この単行本の帯にもある通り、この後本誌6冊分が復刻されて、高かったけどそっちは後に確保しました。このコミックスに収録されてる漫画でわかりますが、存在が貴重なだけで、内容的には全て黒歴史に葬り去るべきものばかりで、レアリティ以外の価値は一切ありません。

 

多少の設定合わせをしつつ、公式の歴史に組み込むべきものとかは一切無し。というかトンデモ描写の連発で非常にヤバイものばかり集まってるので、そういうのが好きなら、くらい。

 

あ、因みに雑誌の形式がそうだったのか、漫画も左開きのセリフも横書きとアメコミ風のフォーマットになってるので、慣れてない人はメチャメチャよみにくいかも?


ガンダム伝説
第1話 RX-78誕生秘話
細井雄二
原作/富野由悠季
メカニカルデザイン大河原邦男
企画/クラフト団
構成:會川昇
メカデザイン協力/山田高裕

 

作画はボンボン餓狼でお馴染みの細井雄二氏。
そして何気に構成:會川昇って。多分「機動戦艦ナデシコ」「コンクリートレボルティオ」「轟々戦隊ボウケンジャー」とかの會川さんなはず。変な仕事してたんだな。
山田高裕(たかひろ)氏は多分「勇者王ガオガイガー」の人のはず。

 

ジオンのMSザクに対抗する為、連邦もMSガンダムの開発をテム・レイ主任の元進めていたが、連邦側にはまともなパイロットも居ないとして、テストもろくに出来ずに開発は難航していた。そんな中、テムはジオン兵の捕虜アルガに目をつける。ザクを乗りこなしていた彼なら、ガンダムの教育型コンピューターの教育係にうってつけではないのかと。

最初は渋るアルガだったがしだいにテムと仲良くなり、モビルスーツが好きな彼はガンダムに息子のような感情を抱きはじめる。ガンダムの完成が近付いた時、パオロ艦長はそんなアルガを消そうとするも、この先の戦いを考えたアルガは自ら・・・。

 

ガンダムにはジオンの血が入っていた、という辺りは価値感の逆転みたいな所に拘る會川さんのアイデアなのかなとは思うものの、そりゃあMSはジオンがそもそも先で、それを参考にしてるのは当然だし、かといってビームガン1発撃って逃げ出す連邦のパイロットって何よ?と変な描写は沢山ある。

 

アメリカン・ニューシネマみたいな結末と、今みたいにネットでいくらでも調べられる時代と違って、小学生が俺はこんな漫画を見たんだ、本当だよ信じてくれよみたいな体験を与えていたのかなと思うと、他の収録作よりは悪くない気がする。

 


ガンダム伝説
第2話 機動戦士Zガンダム 宇宙を超える者
岩田和久
原作/富野由悠季
メカニカルデザイン大河原邦男
企画・構成/クラフト団
メカデザイン協力/山田高裕

 

Z本編前。プロトタイプリックディアス リックディアス改で大気圏突入テストをクワトロ達は行おうとしていた。
かつてのシャア・アズナブルガンダムが目前でMS単独での大気圏突入をした衝撃を夢に見る程であり、ガンダリウム合金を用いたリックディアスでもそれが可能な事を証明しようとしていた。

フライングアーマーに乗り、まさに大気圏突入のテストを行っている時、突如ティターンズのプロトガンダムマークIIが襲来(当然、ギレンの野望で設定されたあのプロトマーク2ではなく、何故か白いエゥーゴカラーの普通のマークII)戦闘に入るも、クワトロのリックディアス改はあっさり落とされ大破。

コクピットのある頭部ユニットだけは無事だったが、それがコクピットである事を知らないマークIIはそのまま帰還。

ばかめ、リックディアスのコクッピットが胸では無く頭部にある事を知らなかったようだな。さあ、このまま大気圏突入だ!

 

と、ディアスの頭部だけで地球に降りるというありとあらゆる全てのガンダムコミックでも恐らくは1・2を争うであろうトンチキなシーンが描かれる。

そしてドヤ顔するクワトロさん。

 


おかしい、これはギャグ漫画なんだろうか?

 


というか、作者さんが多分勘違いしていて、「ガンダリウム合金」という凄い素材を使っていれば、耐熱や耐衝撃とかありとあらゆるものに耐えられて、コックピット回りだけでもそれを使っていたリックディアスは燃え尽きずに中の人にも影響が無い、みたいな感覚なんんだろうと思う。今ならMCUでいう所のビブラニウムみたいな。

 

突入角度の調整一つ出来ない状態で、堂々とリックディアスの頭が地球に吸い込まれて行く姿は、ガンダム史上とんでもない珍シーンの一つだと思う。

 

 

ガンダム伝説
第3話 始動せよ!ZZガンダム
みやぞえ郁雄
原作/富野由悠季
メカニカルデザイン大河原邦男
企画・構成/クラフト団
メカデザイン協力/山田高裕

 

プロトZZの話。
MS21009 プロトZZ
MS21010 ZZガンダム
と、「Z」が「2」になってたり「-(ハイフン)」が数字の1になってたり、まるでゲーメストのような誤植が凄い。

 

かつてのコロニー落として両親を亡くした兄弟が、その後、かたやアナハイムのメカニック、かたやテストパイロットとして再会。

プロトZZのテスト中に機体が暴走。加速が止まらくなる。ZZがドッキングアウトして分離した瞬間に弟を救出すると、兄がコアファイターで救出に向かう。間一髪で生還した二人は、パイロットの生存にはコアファイターが不可欠と判断する。こうしてAパーツBパーツの2つのみだったプロトZZはコアファイターを有するZZガンダムとして完成するのである。

 

いやまて、救出に向かった兄貴のコアファイター。それZZのコアファイターじゃないの?何故ZZ完成前にコアファイターが?
仮にそれをベースにコアファイターが完成したんだとしても、じゃあ元からある「コア」ファイターは何のコアなの?

 


ガンダム伝説
第4話 νガンダム秘話 ネオ・ジオンの亡霊
岩村俊哉
原作/富野由悠季
メカニカルデザイン大河原邦男
企画・構成/クラフト団
メカデザイン協力/山田高裕

 

UC0094、シャアの反乱から10ヶ月後、赤いヤクトドーガがジェガンと交戦中、バリュートで大気圏へ突入して姿をくらます。更に半年後、マサダ中尉は愛機のνガンダムでその消息を絶ったMSを追い、ある島に辿りつく。先任の調査隊は亡霊に会ったという言葉を残し、次々と消えていた。

共に任務についたジョーン少尉が突如襲撃に会い、やはり亡霊に会ったと言い残し死亡してしまう、海に潜ったマサダνガンダムは、赤いヤクトドーガと遭遇。しかしコクピットハッチは開かれ、そこに誰の姿も無かった・・・。

 

赤いヤクトってクエス機でしょうか?確かあれ、ユニコーンに出てたのがなれの果てとされてた気がしますが、最近は「銀灰の幻影」だかにもヤクトの改造機が出てくるそうなので、別に元の2機だけにこだわる必要は無さそう。
ってかそもそもこのνガンダムはどっから出てきたνなんだ。
ガンダムレオン」だかでレプリカ機があったりしたので、再生産は可能なのかも。

 

しかも謎の少女もシャアの復活を願うとか、どういう方なのかわからないまま。でもサイコミュで外部からMSをコントロールとか、サイコガンダムの時点で出来てたはずなので、そんなに難しい技術じゃ無いはず。

 


■フォーミュラ戦記0122 前編・後編
岩村俊哉
原作/矢立肇富野由悠季
メカニカルデザイン大河原邦男
キャラクターデザイン/川元利浩
ストーリー協力/バンダイ

 

という事でお目当てのフォーミュラ戦記。SFC版のコミカライズ。

因みに、今回の漫画や描き下ろしの表紙だと絵として全然似てないけど、主人公のベルフ、川元さんのオリジナルキャラ設定だとシーブックに似すぎだと思いません?

多分これ、勝手な推測だけど、映画の「F91」の前日譚としてSFCでゲーム作るよ。主人公はまだ決定稿じゃないけどこれね、ってシーブックの絵を渡されたんだと思う。で、グラフィックを作ってゲームを開発していく途中で、映画の主人公はそのまま使えませんよ、ってなって、ええ~結構もう開発は進んでるんだから、1からキャラグラフィック直すとか時間的に無理ですよ、ってなって、カラーパレットだけいじって、シーブックと似てるけど全然別のキャラですよ、って言う事になたんだろうなと昔から勝手に想像してます。

 

そして一応ヒロイン枠のアンナフェル。ベルフの恋人という設定ながら、漫画に登場して2ページ後には死んでいるというとんでもない扱い。
え?何これ作者このヒロイン嫌いなの?と思って調べたら、ゲームでも途中退場するんですね。当時クリアまでやった記憶があるけど、そこは全然憶えて無かった。

 

で、本来のF90のパイロットであったワイルダー中尉。色々絡んでくる嫌な先輩ポジションながら、ベルフをかばって戦死。ヒロインはスルーするけど、こっちは突然乙女チックな絵になって涙をぼろぼろこぼすという不思議な見せ場。

 

そして引き続き、ゲームには居ないウェスバー大尉とやらが、F90の予備機で脱走。実はスパイだった事が発覚し、離脱前に何とかその撃破に成功する。

 

ん?F90に予備機あったの?火星独立ジオン仕様から戻したF90IIなのか?
いや撃破しちゃったんだから違うよね。一体何機あるんだF90は(大概のガンダムはそうだけど)

 

しかもウェスバー大尉って何よ?
F91の新兵器として出たのがヴェスバー(VSBR)当時としては新しい単語でしたので、馴染むまで時間がかかりました。なのに何でこんな酷似した人名をサラッと設定してくるのか意味がわからん。

 

そして後編、機体をF91に乗り換え、(ゲーム的にもそうだったけど、F90とF91の両並びとか見たかった気はします)、シャルルとの最終決戦の最中、クロスボーンバンガード版デススターが登場。え~?ゲームでこんなんあったっけ?鉄仮面=ダースベイダーだからデススターなのかこれ?音楽もメチャメチャSWっぽかったですしね。

 

敵はオールズモビルだけじゃない、その背後にまた別の巨大な悪があったのだ!的な感じで終了。「F91」に続く、という感じでしょうか。
作者的には「F91」すっとばして「Vガン」のコミカライズをやる事になるのだけれど。

 


という事で、貴重なレアコミックの復刊で当時は凄くありがたみを感じた半面、う~んこれは読めたのは嬉しかったけど、封印しておくべきものだったと複雑な心境になったのを憶えてます。
このシリーズ、他にもガンダム短編集として3冊出てたりするんだけど、ボンボン増刊関係で復刻して無い漫画もまだまだあったのに終わってしまった。それこそ「フォミューラー戦記」の読み切り版もボンボン増刊号に掲載されてたそうな。多分、似たようなクオリティなんだろうなとは思いつつ、一度は読んでみたいと思うのがオタクの習性だと思います。

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機動戦士ガンダムF-90

機動戦士ガンダムF(フォーミュラー)-90
原作:山口宏/中原れい
作画:神田正宏
刊:バンダイ SD CLUB 15・17~20号掲載
全5話(未完・未単行本化) 1990-91年
☆★

サイバーコミックス版に続いて、もう一つのF90漫画SDクラブ版の方を。
単行本化されてないですし、そもそも未完です。
最終のSDクラブ20号には、21号に続くという記載はあるものの、そのまま廃刊してしまい、後から描き下ろしで単行本が出たとかも無し。

 

SDクラブ、そもそもの雑誌タイトル通り、SD物がメインのコミック形式の雑誌だったのですが、リアル頭身物のガンダムコミックもそこそこ掲載されてて、こちらの「F90」の他にも、当時のエンターテイメントバイブルMS大図鑑だっけかな?あれに冒頭のストーリー紹介で載ってたフルアーマー百式改と量産型サイコガンダムの月面の戦いという話がこのSDクラブに掲載されてた「シークレットフォーミュラ」の一編が元ネタのはずです。(タイトルがまぎらわしいですが、シルエットフォーミュラとかF系とは関連性は無い)
あと、カイ・シデンがシャングリラコロニーで回収されたガンダムタイプの残骸を調べに来る「機動戦士ガンダム 英雄伝説」辺りが割とマニアの間では有名でしょうか。

全部単行本化されてないのでなかなか取り上げられる機会も無いですが、おそらくはその「英雄伝説」のエピソードは「ピューリッツァー」でもわかる人にだけわかるような形で軽くは触れてくるんじゃないかと思います。

 

ああ、そういえばM-MSVを展開してた時期なので、ガンダム4号機5号機のパイロット名もこちらで連載してた短編小説での名前が生かされてます。
ボッシュもこちらのSDクラブ版ではウェラー大佐と呼ばれてたので、フルネームが元々設定されて無いので、じゃあボッシュ・ウェラーって名前だった事にしましょうか、というやりとりが「F90FF」の山口宏対談でありました。(そもそも大佐と大尉で階級は違うんだけど)

 

そこでも触れられてる通り、SDクラブ版はオリジナルの脚本担当だった山口宏氏は一切関与していないものだそうです。ただ、ストーリーラインは大まかには同じ流れになってるので、オリジナルのサイバーコミックス版をベースにしてこちらは独自に展開されたものと思われる。

 

因みにフルネームが記載されなかったボッシュは良いとして、主人公デフ・スタリオンはどちらも共通。


でもサイバー版シド・アンバーがこちらではベック・ベノ
サイバー版のナヴィがこちらではサニナ・イリューシュという名前になっている。
(乗機も「STガン」から「STジェガン」となっていて微妙に表記も違う。因みにB-CLUBだかに載ってた設定ではSTはセンサーターレットの略だったはず)

ついでに艦長もサイバー版がノヴォトニーでSDクラブ版がドルス指令と、結構違う部分も多い。

 


テスト中に2号機が強奪され、その正体が火星を拠点とするオールズモビルというジオン残党組織だと判明、事件を表に出したくない連邦は、証拠隠滅の為、火星に向かうのだったが、火星についた時、ウェラー大佐がその本性と目的をあらわにする、ぐらいまでで終了。

(左がSDクラブ神田版で右がサイバーコミックス中原版での同じ場面)


昔から、F90関係の話でオールズモビルの首魁がジョニー・ライデンだったみたいな話があって、え?そんな設定あったっけ?SDクラブ版でそういう描写があったっけかなぁ?と思って今回確認しても、どう見ても何もそういう情報が無い。

 

どゆこと?と思って今回改めて調べたら、SDクラブじゃなく雑誌B-CLUBに掲載された山口宏氏のインタビューで、構想段階ではそう言う案もあったみたいな事を語っただけなんですね。作中で一度でも描写されたとかじゃなく、ただのインタビュー記事で、しかも構想段階での話なら、その辺は無理に設定に組み込む必要は無いでしょう。

 

つーかサイバーコミックスで木星で怨霊みたいなのと戦うジョニー・ライデンの話とか無かったっけ?「ジュピターミラージュ」だっけかな?
ジョニー・ライデンの帰還」が完結した今、流石にもうその後の人生まで作ってあげなくて良いんじゃないでしょうか。

 

で、F90の最大の特徴と言えば武装の換装ですが、サイバー版では最終決戦時に混合装備、こっちのSDクラブ版ではテストでAタイプを装備するのみ。全然生かせてねぇ~っ!って感じですが、そこは結果としてやっぱりゲームの「フォーミュラ戦記0122」が一番生かした形になるのでしょうか。

 

他にサイバー版とSDクラブ版の違いと言えば、SDクラブ版の方は割と初期から「プログラム タイプAR」というのが意味ありげに出ていて、そこは特に強調したい部分だったのかなと思います。

19号の表紙。こうしてみると、F90も正統派なガンダムの1機なんだよという形で当時は売り出そうとしていたのがわかる。今では山ほどある外伝ガンダムの一つ程度の扱いですが、当時はまだこういうの貴重でした。

 

入手困難で読めないとなると、ますます読みたくなるのも人の心かと思いますが、プレミア価格とか出してまで読むものでは無いのでその辺りは御一考を。(私は昔に集めてただけですので)
確かここからのコミックス化は「ムサシロード」と「ダブルゼータくんここにあり」くらいしか単行本は出て無いはず。「ダブルゼータくん」はその後何回も出し直ししてるのにね。と考えるとそこはやっぱりちょっと勿体無い気はします。

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機動戦士ガンダムF90

機動戦士ガンダムF90 (B-CLUB COMICS)

MOBILE SUIT GUNDAM F90
作画:中原れい
原作:山口宏
監修:サンライズ
刊:バンダイ B-CLUB COMICS 全1巻
1991年
☆★

 

映画「機動戦士ガンダムF91」のバックアップストーリーとして展開された「F90」の漫画版。サイバーコミックス23号から30号で掲載された全8話構成。

 

今みたいにガンダムエースでじっくり時間をかけて丁寧に外伝をやる、という時代では無いので、正直内容的にはしょぼいのだけど、当時はこういうものをありがたがるしかなかった。

 

サイバーコミックス自体もね、ガンダム専門誌では無いにせよ、バンダイ管轄の版権物とかがそれなりに掲載されてたので、状況的にはダムエーにも近い部分はありつつ、基本的に当時は単行本1冊分ぐらいが目途としてあったし(大半はそれにすら届かなかったけど)ガンダムエースも初期の頃の作品のインタビューとかを見てると、外伝物は単行本1~2冊分、みたいな形で編集部の方と話になってた感じでしたし、「F90FF」みたいに単行本10巻越えなんてのは逆に珍しい。

 

作中の時系列的には
U.C.0112 が「F90FF」1部
  0115 が「F90FF」2部
  0120 が今回の「F90」
  0122 SFC版「フォーミュラ戦記」
  0123 映画「F91」漫画「シルエットフォーミュラ」

という形。
商品としてノーマルの「F90」1号機は当然として、青いカラーリングのF90「2号機」とその2号機がオールズモビルに奪われて改造された赤い「火星独立ジオン軍仕様」がこの作品の初出MSという形になる。

 


基本的にこの辺の外伝系は、マニアには常識だったけど、そこから更にPSの「SDガンダム GジェネレーションF」でSDながら劇中再現のショートムービーがあったのとステージでストーリー再現がされたので、そこで「閃光のハサウェイ」「クロスボーンガンダム」らと一緒に一気にメジャー化した印象。その後の他のゲームへの出演時でも声優とかBGMがGジェネFをベースに登場するようになりましたしね。

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お話としては試験中のF90がオールズモビルに襲撃され2号機を奪われる。それを回収するためにオールズモビルの本拠地である火星に乗りこむ、というだけの話で、展開のツイスト的に連邦内部に敵の内通者が居て、それは主人公デフの直接の上官であるボッシュだった、ぐらい。

 

で、それが近年の「F90FF」において設定の掘り下げが行われ、F90ラスボスのそのボッシュが実は凄く深い経歴で、ファーストからZ&ZZ、逆シャアからF90までの宇宙世紀ガンダムの歴史の本筋に近い所に存在していた重要キャラになって、その意外性が設定マニアにバカ受けして一気に跳ねた。

 

これが世に出た当時は「ガンダム」という特別な機体を手に入れれば世界を動かす事が出来ると信じている、ちょっと頭がアレなガンダムおじさんでしかなかった。

 

「これがガンダム!悪魔の力よ!!」
というセリフは、あくまで主人公の方のデフが「ガンダム」っていう特別なMSに乗っている事と、それに搭載されているのがアムロ・レイのデータを元に作られたサポートAIだったた為、特別なのは機体やAIであって、パイロットとしてのデフは凡庸な存在でしかない、みたいな言いがかりに対してのカウンターとしてそういうストーリーになってただけかと思われます。

 

で、最後にデフがヒロインのナヴィから、あなたアムロ・レイに似てるわねって言われてしまうのって当時の私は悪趣味なギャグにしか見えないと思ってました。だって、自分は過去の何かじゃなく、自分って言うアイデンティティをちゃんと持ってるんだ!俺は俺だ!っていう主張をしていながら、アムロに似てるとか言われるんですよ?多分作品の意図としては、アムロの再来と呼べるくらい凄い主人公なんだよ的な事を表現したかったんだろうなとは思うんですけど、ならこのシナリオはどうなのよ?って当時からずっと思ってました。やるなら「ニュータイプなんてもう古い考えなのかもしれないわね」みたいな事を言わせるべきですよね?

 

その辺ね、F90FFで掘り下げ入るのかなと思ってたら、そっちじゃなくライバルボッシュの方にメスを入れてきたという。(「F90クラスター」ではデフも多分色々とフォロー入る気はするけど)

 

で、ボッシュの方ですが、「F90」内では、ページによってジム3に乗ってたとジェガンに乗ってたとか、いやその場で適当な事書いてるよねこれと思ってたら、いやそれはジム3からジェガンに乗り換えただけですよ、どこか矛盾してます?という設定に。しかもカラバからずっとアムロの部下だったという設定が追加される。確かにアムロ信者なのはF90でもありました。

 

ん?でもそんなアムロ信者のボッシュが、オールズモビルに寝返ったり、ギラドーガをベタ褒め、ジオンの技術は素晴らしいとか言って無かったっけ?なんかテキトーな展開やってんじゃねぇよ、と思いきや、いやいやいや何言ってるんですか、1年戦争時はジオン兵だったんですよ、それがZの時にカラバに合流してアムロと出会う、そこでアムロに惚れてそのままロンドベルについてきたと。

 

そんなアムロの命を奪ったのがνガンダムの光で、その後の調査であれはサイコフレームという謎技術が起こした特異な現象だったとユニコーンの時に発覚する。尊敬するアムロさんの命を虹の彼方に消し去った悪魔の力、それが「ガンダム」なんだと。

 

30年前にちょろっとだけ描かれてた描写をひっぱり出してきて、その印象とか意味性までガラッとひっくり返してしまうとか、いやこれアメコミかよ!って思いました(アメコミはたまにこういう事をやるので)
スピンオフを違う作家が描くとか、クロスオーバーやユニバース設定とかアメコミの面白さを近年は漫画も真似するようになってきたけど、今回みたいな30年前の設定を今持ちだすとか、そういうのもまたアメコミ的だなと。長期コンテンツ・長期IPの生かし方としてそういう共通項が出てくるのも面白いとこです。

 


MSはカッコいいし好きだけど戦争は嫌だ。テストパイロットだから人は殺したくない、だとか後の「神の雷計画」にも通じそうなオリンポスキャノンとかの超超超遠距離砲とかどこまで戦略的に意味あるんだ?っていう感じだったり(実際神の雷計画は1度ズレても意味の無いものでしたし)気になるポイントはいくつかあれど、ボンボン系とかの外伝よりはマシながら、それでもやっぱり当時なりの薄っぺらい漫画だなぁと思いつつ、それを後付けだろうが何だろうが無かった事にせずに生かして新しい角度からスポットライトを当てるというのは素直に面白いです。

 

作品単体での評価はしようもないですが、周辺まで含めたF系ガンダムという枠組みはまだまだこれからの可能性も秘めてて、個人的には応援したい所です。

あ。ついでに言うと漫画の本編中ではボッシュの死亡とか確認されてないので・・・

機動戦士ガンダムF90 (電撃コミックス)

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機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(上)READING CD

Universal Century 0105 GH
小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(上巻)朗読CD
著者:富野由悠季
朗読:佐々木 望
Blu-ray機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ [劇場限定版]」同梱特典CD
2021年(原作:1989年)
☆☆☆☆★

 

限定版BDについてた朗読CD。何とCD6枚での収録で、総計407分。
確保はだいぶ前にしていたものの、未開封のまま放置(当時の新品とかじゃなく中古の安井やつです)してたのですが、先日ちょっとまた岩手へ遠征に行った時のお供に一気に聴きました。片道3時間ちょっとくらいの距離まで行ったので。

 

しかし全部で7時間弱くらいですよ?相当なボリューム。
朗読CD・オーディオブックってジャンル自体はおそらくCDの黎明期からあるはずですが、CDショップで一つコーナーが設置されるとかはなく、そこまでメジャーにはならずに終わったのは、CD1枚に収録できる時間の関係なのかなと。

同じく普段から愛聴しているラジオCDなんかはMP3フォーマットで7時間とか普通に1枚のCDに収録されてるけど、音楽CDみたいに普通のCDプレイヤーで再生できるの規格は確か60分70分くらいが最長のはず。

 

閃光のハサウェイ上巻は約300ページ。今だとガンダムと言うタイトルだけでラノベ枠に入れられてしまうけど、当時はラノベなんて言葉がまだ生まれる前でしたし(ただしティーン向けブランドの角川スニーカー文庫の枠は設立済み)文字量的には一般向け小説と大差は無いはず。バウストンウェル系は新書枠で展開してたりもしましたしね。単行本1冊分のボリュームでCD6枚。

普通は商品として出すならCD1枚か2枚。多くても既存のケースで対応できる4枚組がせいぜいのはず。オーディオブックがメジャーになれなかったのは、そういう事情もあったのかなと勝手に想像してしまいますね。

 

因みにドラマCDと何が違うのかと言えば、セリフ以外の所も当然全部読む。キャストは1人。キャラによって声色やニュアンスなんかも変えてますが、男だろうが女だろうが全て佐々木望さん。

 

音楽、BGMも一切入らない。効果音もゼロ。文章中の擬音も普通に音読。これがドン!とかバキッ!とかわかりやすいものはまだ良いんですよ。フヒュゥーン!とかバフォー!とか、音読するとシュールこの上ない文字もあったりして、そこは流石に首をかしげるレベル。

 

でも、そこ以外はメチャメチャ良い感じです。アナウンサーとかでなく、プロのベテラン声優なので、セリフとキャラの声の使い分けがビックリするレベル。
ハサウェイの声が過去作と違って映画では小野賢章に変更になっちゃったからせめてこっちで佐々木さん版のハサウェイの声が聴けるから嬉しい、とかいうレベルじゃないのです。全部のキャラが佐々木望版。マジでこれは凄い。

 

作品の内容に関しての感想は、劇場公開の時と、TVエディションの時で2回も書いてるので、今回はそこまで掘り下げて書きませんが、数ある富野小説の中でもトップクラスの面白さなんじゃないかなと思う。

 

でも多分、たまたまそうなっただけなんですよね。同時期に書いてた「ガイア・ギア」とテーマとかは近いものですし、昔小説を読んだ時はそっちのガイアギアの方が面白かったんですけど、戦闘シーンが少ないが故に、2つの戦闘シーンがより引き立ったり(だからこそ興味が基本MSだけだった中学生の時の私には決して響きませんでしたが。ガンダム出てこねぇし)そこに至るまでのかけひきやサスペンス。

 

そしてやっぱり富野の思想ですよね。コロナで多くの人が亡くなったけど、地球全体の間引きとしてはむしろ良かったんじゃないかと思う、とか、普通の人や社会的地位のある人がそれ言ったら間違いなく炎上案件なのに、あの人昔からそういう主張でそういう作品作ってきたような人だからなと思われてスルーされたのか、一歩間違えば社員では無いけど一応仕事の深い付き合いでもあるサンライズなりバンダイナムコ全体が火消ししなきゃいけないレベル(先日の古谷さんは炎上したし)なのに、誰も気にしなかった富野という面白人間の思想。(逆に富野信者は一歩引いて判断できないからこの面白さにすら気付いて無いであろう辺りも私的には面白ポイント)

 

映画版「閃光のハサウェイ」は富野本人じゃないからこそ俯瞰して見えてくるその作品の持ってる本来のポテンシャルの引き立たせ具合こそが真髄。朗読CDという形ながら、久々に原作小説にこうして触れる事になって、そこが新たに見えてきてホントに楽しい。

 

原作小説だけでも面白い。映画だけでも面白い。比較する事で両方が面白い。

 

逆シャアの時の「世直しの事を知らないんだな」みたいな部分から派生して、シャアと同じくハサウェイもテロ行為を肯定しつつ、市民の声で、あいつら暇だからそんな事考えるんだよ。こっちは毎日の生活に終われてそれどころじゃねぇっつうの、と堂々と作品内で語らせる面白さ。やっぱこれですよね。

 

そこからのガイアギアが組織論みたいなのを軸にしてましたし、その前の段階のそこに至るまでの思考実験が「戦ハサ」の本質だと私は思う。

 

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機動戦士ガンダムF90FF ファステスト・フォーミュラ 5~11(完)

機動戦士ガンダムF90FF(5) (角川コミックス・エース)

F90FF MOBILE SUIT GUNDAM F90 FASTEST FORMULA
漫画:今ノ夜きよし
シナリオ:イノノブヨシ
シナリオ協力:小太刀右京(チーム・バレルロール)
キャラクターデザイン:金世俊
メカニックデザイン:森木靖泰
オリジナルF90デザイン:大河原邦男
原作:矢立肇富野由悠季
刊:角川書店 角川コミックス・エース 全11巻 2019-24年
☆☆☆☆★

 

ファステストフォーミュラ第2部。
悲劇的な結末で終わった第1部のUC.0112から3年の時が流れて、第2部はUC.0115年(劇中ですぐ0116年に時間経過)

 

F89のパイロットだったギデオン・ブロンダインが再びファステストフョーミュラに招集を受け、チームリーダーを務める事になる。そこではかつて子供だったリヴ・アンゲリカがディル・ライダーと名前を変えて昔のリヴとは全く違う少年に成長していた。今度のファステストフォーミュラ部隊は実験テスト部隊ではなく、ジオン残党らを対処する実戦部隊となっていた。

 

1部はF90の新武装がメインで、敵もトニー・スタークみたいな「FF」オリジナルの勢力でしたし、元々「F90」が好きな人以外にはさほど注目度も高くなかった気がしますが、第2部に入り、中原版「F90」のボスキャラだったボッシュ・ウェラーが登場した事で、ファンがざわつく。え?今になってボッシュを掘り下げるのか?・・・と思った矢先。

 

今度はまさかのMSA-0120が登場。型番だけで名前無しながら、マニアの間ではその番号からフリーダイヤルと呼ばれていた幻のMS。F90とコンペで競い合ったアナハイムのMSという設定上に存在するMSで、かつてはサイバーコミックスに一度イラストが載ったのみながら、既存のMSとは全く異なるゼントラーディのメカみたいなデザインに、メガブーストやら半重力ブラックホール砲とか設定オタクもどう解釈して良いか困るビックリドッキリメカ。タイラントソードと大差無い。

 

これ出たときに、サイバーコミックスの元編集者だかがツイッターで、あれはサンライズとかバンダイの権利じゃ無いので訴えるみたいな事を言ってましたが、その後も特に問題にもならなかったので、きっと大丈夫だったんでしょう。

 

そこから更にバズ・ガレムソン登場。今度は「シルエットフォーミュラ」のボスキャラ。タチバナ家(クライマックスUC)フォンセ・カガチ(Vガン)カラス(クロスボーン)と、おいおいこの年代のキャラ全部出す気なのかと。

 

ゲスト的な顔出しではあるので、上手くやったなと思いつつ、今度はゲストに留まらず、ストーリーの軸・話の中心としてハウゼリー・ロナをガッツリ掘り下げてきた。凄い、「F91プリクエル」でもここまでやってないレベルで、本来の意味での「F91」前史であり、まさしくUC100年台の総括じみてきた。ハウゼリーの野望が色々な所に派生して行った、いわばこの年代のジオン・ズム・ダイクンみたいな存在かもしれない。

 

トワイライトアクシズ」の設定にも直接触れてるし、何なら「ガイアギア」のゾーリンソールまでひっそり紛れ込ませてたりする。直接ではなくとも、「AOZ3」「ムーンクライシス」辺りを思わせる部分もあるし、時代の違う「∀」っぽい部分も。

 

そう、正直こういうのが私はガンダムでやってほしいと思ってた部分。ガンダムってシェアードワールドっぽい部分がありつつ、外伝とかは各作品それぞれ違う人達が描いてるので、ちょっとした顔見せ程度はたまにあっても、勝手に他の人が描いた漫画とかのキャラを使う訳にもいかず、その辺りは結構難しい。

 

ダムA版「ブルー」に「宇宙閃光の果てに」のキャラがガッツリ出たりとか近年は多少あったりはするものの、基本そこは難しい。安彦先生が「オリジン」でファーストをリメイクする事になった時、外伝やMSVも組み込んだ上でリメイクして欲しいと思った人は多かったはず。でもやっさんは自分が関与して無い物は一切使いませんって割り切ってましたしね。

 

かといって設定を拾う事に終始した作品なのかと言えば、そこはちゃんと意識的にディル・ライダー(リヴ・アンゲリカ)の物語をこれでもかとブレずに貫いたのが凄い。父・母・親友・部下・ヒロイン・ライバルであり兄弟?を丁寧に描いてあるし、ニュータイプとは?みたいな部分にもこの作品なりの答えを出そうとしてる辺りが凄く気合入った作りだなと。

 

私も基本的には一度出た設定は例え強引な解釈でもなるべく生かす方向にしたいタイプ。この作品は設定に矛盾があるから無視・非公式でしょこんなの。無かった事に・・・というのはなるべくしたくないですが、作品としてはテーマやドラマの部分を重視したいので、設定遊びだけに終始してる作品はそれはそれであんまり好きじゃない。

その点、この「F90FF」の全方位に頑張りました感が凄いなと。じゃあ話が面白かったかと言えば、そこはちょっと首をかしげる部分もあるんですけど、これは今までに無いレベルで、そうそうこういうのを待ってた!という部分が大きくて、非常に楽しめました。

 

ハウゼリー(ロナ家)の思想という部分ではF91前の前史としてセットで触れるのもありかなとは思うものの、ただ基本的には周辺の歴史をほぼ網羅してから、その集大成として後から楽しむ、という感じの作品かなぁ?

 

作者が特別な思い入れがあるからっていう部分で「フォーミュラ戦記0122」のパートも入れてあるけど、そこは正直ノイズだったかなとも。シャルルとカナタも中途半端な描写で終わってしまった感あり。(そこは続きで描かれるかな?)まあこれが好評を博して次の「F90クラスター」まで描ける機会を得たのは後からの結果論で、連載開始前には強引にでもねじ込むしかなかったんでしょうけど。一応、フォーミュラ戦記は当時のコミカライズが先にありますしね。

 

これが出来たのは、この時代の作品が線になっておらず、バラバラな点としてあちこちに散らばってたからこそこういう芸当が出来たというのはあると思うけれど、1年戦争、グリプス戦役とか、各時代でこんな感じの設定の総決算みたいなのやってほしくはある。

 

多分、「F91プリクエル」の人が近いうちに本編コミカライズもやると思うのだけど、それはきっと映画や小説で描かれてる部分までで終わるはず。そこは長谷川先生辺りに戦後も描いてほしい所です。

 

「F90FF」
ありとあらゆるガンダムへのオマージュが散りばめられた完全にガノタ向けの作品ではあるものの、これまでに出来なかった事をやってくれた力作じゃないでしょうか。私は好きです。続編のF90クラスターにも期待してます。

機動戦士ガンダムF90FF(11) (角川コミックス・エース)

 

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機動戦士ガンダムF90FF ファステスト・フォーミュラ 1~4

機動戦士ガンダムF90FF(1) (角川コミックス・エース)

F90FF MOBILE SUIT GUNDAM F90 FASTEST FORMULA
漫画:今ノ夜きよし
シナリオ:イノノブヨシ
キャラクターデザイン:金世俊
メカニックデザイン:森木靖泰
オリジナルF90デザイン:大河原邦男
原作:矢立肇富野由悠季
刊:角川書店 角川コミックス・エース 全11巻 2019-24年
☆☆☆☆


ガンダムエースで続編の「F90クラスター」もスタート。
検索でウチに入ってくる人はともかく、ブログとしてはガンダム専門って程では無いので一応は1から説明しておきましょうか。


映画「機動戦士ガンダムF91」のバックアップコンテンツとして展開したのが「機動戦士ガンダムF90」。

「F91」はこれまでのアムロとかシャアとかの旧作の直接的な続編ではなく、世界感だけを引き継いだ新シリーズとして制作。時間軸をかなり進めたのでモビルスーツも量産機のジェガン以外は全て一新。
単発の映画と言うのもありますし、商品展開も限られてくる中で、「F91」の前史として「F90」を設定。プラモデル、コミック、SFCのゲームなどのマルチ展開で設定を広げるも、肝心の映画が小ヒットに留まり、それ以上大きく展開する事も無く凍結。同時に「F90」も断片的な展開のまま終了。

 

F90の機体には、アルファベットのAからZまでの26種類のオプション装備があるという当時からの設定だったが、実際に発表されたのはその半分もにも満たないまま終了。
物語や設定的にも中途半端という事は、余白の部分も多いので、その後はたまに外伝なんかに引っ張りだされて、一つの作品と言うよりは多数の作品に顔を出す機体としてF90がある意味定着。

 

ファーストガンダムの時代の1年戦争の外伝が溢れ、設定や機体が交通渋滞。
じゃあ次はとZガンダム辺りの時代も結構増えてきた辺りで、「ガンダムUC」がヒット。これからはまだ隙間の多い宇宙世紀100年以降の時代に焦点を当てて行くよ、という流れが始まり、じゃあ埋まって無かったF90のオプション装備を埋めようか?プラモもバリエーションでいっぱい出せるし、という形で始まったのが


「F90 A to Z PROJECT」

www.youtube.com

それの連動コミカライズ作品が今回紹介する「機動戦士ガンダムF90FF」
漫画を書いてる人は別の漫画家さんですが、サンライズの方で設定やデザインはやっているので、キャラデザも「ガンダムNT」の金世俊さんが担当。
メカデザの森木靖泰氏は言わずと知れた「閃光のハサウェイ」のクスィーガンダムのデザインが有名所。今回のコミック用の敵MSのデザインも相当に世界観クラッシャーしてます。

まあでも
Zガンダム」「ガンダムZZ」(UC0087-88)
  ↓
「ムーンガンダム」(UC0091)
  ↓
逆シャア」(UC0093)
  ↓
ガンダムUC」(UC0096)
  ↓
ガンダムNT」(UC0097)
  ↓
閃光のハサウェイ」(UC0105)
  ↓
ガンダムF90系列


と、逆シャア閃ハサ辺りのアナハイムガンダムとF以降のサナリィガンダムはシリーズとしても1枚壁があった感じを、地続きに感じさせたいんだろうなという意図が読みとれます。

 

「ファステストフォーミュラ」の時系列的には第1部がUC0012年で、作中時間が飛んでの第2部がUC0115年になるんだけど、要所要所(コミックの冒頭毎にプロローグとして入る)にSFC版のゲーム「機動戦士ガンダムF91 フォーミュラー戦記0122)のコミカライズパートも入る。

 

SFC版「フォーミュラー戦記0122」作者が思い入れが強い作品なのでっていう所で入れたんでしょうけど(私も当時クリアまでやりましたし嫌いじゃないですが)知らない人には時間も登場人物も別物なので混乱してしまうかも。「FF」の話としては第1部はそうでもないけど、4巻のラストから始まる第2部が他の作品のミッシングリンク要素が大量に散りばめられていて、この辺の時代が好きなニッチなマニアには好評を持って迎え入れられたが、それは次のエントリーの時に。

 

第1部の話としては、一応は主人公扱いと言っても良いのかな?代替わりする前提ですし、あくまで1部から息子のリヴが主人公と言われればそれまでですけど、一応はF90のテストパイロットとして、メインで戦うのは母親の方のパッツィ・アンゲリカ。

 

リヴが最初からニュータイプ的な能力を匂わせてくるので、そこはきっとF90を引き継ぐんだろうなと思わせてくれますが、1部のクライマックスの時点で「F90Nタイプ」を登場させてくる気前の良さはありがたい。

 

NタイプのオプションパックはNEXTタイプとされてきたものの、ガンダム世界でNタイプつったらそりゃあニュータイプでしょうと。最終決戦のみの特別仕様とかでなく、こうして早めに出してきたのは良い判断。カッコいいけど最後の1戦しか活躍が無いんだよね、っていうのもそれはそれでちょっと勿体無いですしね。

 

そして何よりカッコいい。Nタイプ、プラモが欲しくなるなこれは。F90って私は昔からモッサリ感、前衛的なF91と比べて、ガワラの手癖で書いてる印象の強いF90ってあまりカッコいいMSだと思った事は無いのですが、Nタイプはイマドキなデザインでカッコいいです。

 

ハルファイターとのドッキングもポイント高い。いわゆるスーパーロボット的な「合体」ってガンダムには似合わないと感じる人も居るとは思うんですけど(それこそ本家がGアーマーからコアブースターに設定変更したように)私は合体とか何気に好きです。

 

あと、「Vガン」でも繰り返した所を見ると「F91」では恐らく意図的にやっていた「母のガンダム」的な要素も、こっちのパッツィが育てていたF90をリヴが引き継ぐというのもそれなりに意味深で面白い部分。まあ今回はシナリオの都合って感じではあるけど、アムロにしてもカミーユにしても最初は「父の作ったガンダム」だったわけです。そこはマジンガーZの頃からの系譜、少年が乗り越えるべき存在は父親であるという、古から続く物語の基本構造が根っこにあって、「水星の魔女」はスレッタという女主人公だったからこそあれは母親を乗り越える物語になっていた。

 

そこいら辺の流れを踏まえると、母の作ったMSに乗りこむというのは母体回帰・体内回帰みたいな意味合いが出てくるからこそ、F91/Vガンの後の「ブレンパワード」は子宮がコクピットという発想になったのは文脈として理解しやすい。

 

って、「F90FF」から逸れて富野論になってしまった。
話を戻すと、ガンダムUCは老人ホームだって一部で言われてたんですけど(一番盛り上がるのは旧作メカがいっぱい出てくるとこだから)今はもうガンダムエースって雑誌そのものがそんな感じですし、F90FFも基本はそんな感じ。

 

今回新しく設定されたKタイプとか、後のV2のメガビームシールドのバリアビットじゃん!とか、「Iフィールド全開!」とかもうモロに長谷川節ですよね。
更に新規にはトンデモメカ扱いされてるUタイプとか、いやいやこれ「俺達の最後の希望はこのクロスボーンガンダムなんだ」っていうクロボンのクライマックスに向けての名場面オマージュ。このUタイプのデータとかがあったからクロボンに繋がるんだよっていう、わかる人にはわかる奴ですよね。

 

老人ホームで結構。頭の薄くなったジョブ・ジョンさんの姿は我々の姿だよ、と涙を隠しえません。

 

リアルタイム時に一度だけ絵が載ったEタイプも、何故かその後無かった事になってたりしましたが、新しくデザインされた電子戦仕様も、ああこんな戦い方もあるのかと。電子戦に強いみたいな機体って、索敵や通信が強化されたイメージしか無かったけど、ガンダム世界はコクピットのモニターに表示されるのはCGという設定。だからF91は高速移動で金属剥離減少を起こしたことで、モニター上では「質量のある残像」という分身殺法になっていたわけで、Eタイプは敵MSにダミーデータを送り込むというまさに電子戦らしい描写が非常に面白い。

 

令和の世に甦る昭和の残り火の「F90」がまさかこんなに楽しいとは。

といった辺りで後半の第2部へ続く。

機動戦士ガンダムF90FF(4) (角川コミックス・エース)

 

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機動戦士ガンダム ギレンの野望(SS版)

機動戦士ガンダム ギレンの野望

ディレクター、ゲームデザイン、ゲームシナリオ:浪川真冶
制作:株式会社CSK総合研究所(CRI)
販売:バンダイ/ESP
機種:セガサターン 1998年4月9日
☆☆☆☆☆

実は昨年の末くらいにPSPで「アクシズの脅威V」やってて2部終盤くらいまで進んではいたものの、拠点を出たり入ったりで経験値999とかパイロット育成をやってると作業感が出てしまっていつの間にかフェードアウトしてしまいました。

 

ポリメガにSS版をインストールして、1作目かぁこれはこれで懐かしいなとか、序盤だけちょっとやってみようかとか触ってたら、沼にハマる。
そう、「ギレンの野望」はあと1ターンだけ、あと1ターンだけやったらやめよう、というのがついズルズルと続いてしまうゲームです。


私は多分この初代から、PS、PSP、DC、PS2と果てはWS版まで多分全部のシリーズをやってる。休日、気付いたら朝から晩までずっとやってたとか、もう何度過去に経験してきたかわかりません。

 

PSPの「新ギレンの野望」で初心者向けとか変な迷走しちゃってシリーズ途絶えてしまったんですよね。キッズには難しいという評判から、新規取り込みの為のああいう作りにして失敗。キャラとメカだけ追加して、システム回りなんか変えなくても良いんですけどねぇ。
初心者向けなら、シナリオには絡めずアナザー系の主人公機体とか強キャラを投入して、初心者救済しつつ、経験者で世界観壊したくない人は使わないで進める前提とかやりゃいいのになと昔から思ってました。

 

いわゆる「大戦略」の駒をガンダムに落とし込んだゲームと言われてましたが、私は大戦略一つもやったことなく、コーエー関係とかも全く触ってこなかったので、本格的な戦略シミュレーションはこれが初だったかなぁ?

 

やる事が多いとか特に感じ無かったし、特に難しいという印象も無かった。今だとどのユニットが強いとか、おおまかな流れを知った上でやるのでより簡単になりますけど、右も左もわからない中での進め方はそれはそれで苦労しながらで面白かった気がします。

 

昔は全部の拠点でフル生産するくらいフライマンタ量産してたけど、今回はそこそこくらいで済ませて、少し足りないかな?ぐらいのバランスがやっぱり楽しい。思ったよりキツかった、もう少し準備が必要だったかもと思いつつ、苦労しながらなんとか拠点攻略くらいが楽しいですよね。

 

シリーズによっておおまかな流れこそ大差は無いけれど、ユニットの強さは毎回バランス調整が入るので、強い機体は弱くされたり、意外な機体が意外な強さを持ってたりと、2部以降ですが「脅威V」ではバイアランが意外と強くて、え?過去作でもこんなにバイアランって使えたっけ?とか意外な面白さがありました。

 

そこと比べると初代SS、唯一の生産制限がある作品なのでガンダムの量産も出来ないし、3期編成にパイロット乗せると1機になる仕様なので、エースを乗せる機体が無いのがもどかしい。しかもホワイトベース運用してると「RX78-2」もプレイヤーは使用不可。何故かマグネットコーティング仕様は別機体扱い。G3じゃないのに?みたいな不思議な部分もありつつ、そこら辺はもう終盤ですしね。

 

やっぱり連邦は絶えて絶えてからのプロトガンダム無双がメチャメチャ楽しい。
ただ無双と言っても囲まれれば結構粘った末に普通に落ちる。この初代からのエース機のバランスがとにかく秀逸。これは敵として相手した場合も同様。序盤はともかく中盤以降のそこそこのMSにエースが乗ってる時の嫌な感じ。

 

ああ、因みに私は昔からプロトガンダムはユウに回すのが定番。昔はブルーイベントもこなしてましたが今回はスルー。貴重なガンダム枠ではあるけれど、基本このシリーズでBD系は使えない部類。エグザムのおかげで疲労度がすぐにマックスになって、そうすると露骨に弱体化しちゃうんですよね。何気に疲労度もちゃんと意味のあるステータスになってる。イベント進めてもブルーは結局使い物にならない機体だし、敵もニムバス一人を消すだけなのでそこまでメリットが無い。

 

単品のゲームの方のブルーは好きですし、そっちもガンダムゲーの中では上位クラスですので、そのうち再プレイはしたい所。凄く当たり前の話ですが、これが出た時は当然まだドリームキャストが出る前なので、「コロニーの落ちた地で」のメンバーも居ないのが寂しい。ユウもレイヤーも当時は自分がなりきってプレイしてたので、思い入れは凄くある。

 

逆にイメージとちょっと違ってたのは、ジムスナイパー1が意外と弱い。スナイパー2が強いのはどのシリーズも同じだけど、初代は1が強かったイメージがあるけどそうでもなかった。意外と間接攻撃が減らないなぁってのと、シールド無しがツライ。

 

足の速さで孤立した部隊にもフォロー入れるライトアーマーに対ビグザム用のジムキャノンガンキャノン量産型(勿論通常支援も)シールドのおかげで意外と耐久力のあるジムコマンドと似てるようで個性がちゃんとある作りなのは上手い。

ただやっぱり連邦はジオンと違って専用機がほぼ無いのでパイロット用の機体が不足しがちです。続編ではその辺の問題は解決されて行きますが。

 

他には、地上マップが左と右で繋がって無いのがある意味新鮮。ジャブローからベルファストへ行くにはアジアを経由するしかないという、あれこんなんだっけ?の仕様。重要拠点のみで基本は一枚マップの上で戦闘とかは記憶に残ってるんですけどね。狭さを感じてしまう反面、エリアごとに分けられてしまうと全体を把握するのが疎かになりがちなので、そこは一長一短かなぁ?

 

そして今回最も苦労したのは、重要拠点のマップに補給ラインが走って無い事。おかげで戦闘に入る頃にはもう物資切れ直前みたいなケースが多発しました。

 

となると輸送機が必要。連邦なら当然ミデアが必要。が、武装も装甲も紙なので攻略の要のフライマンタの他にドップとかマゼラトップからミデア護衛用にセイバーフィッシュとかの航空機も多少必要。航空機だけでは拠点制圧が出来ないので61式戦車も、という部隊の必要性が出てきて、そこは面白いなと。多分ですけどそこは元になった「大戦略」とかもきっとそうなんでしょうね。

次回作以降ではそこに索敵用ユニットも必要になってくるけど、SS版初代の時点では割とどのユニットでも索敵は出来たりするのでそこはあまり困らない。

 

そういう、MS以外の運用も世界観を感じられるという意味では凄く貴重な経験でそこも面白味の一つだと思う。

 

逆に、いやいやガンダムなんだからMS無しとかつまんなくない?と感じる人にはジオン側でスタートすれば序盤のザクの強さとか十分に味わえますしね。やがてそのインフレは終わっちゃうものの、後半は後半でドムやゲルググの耐久力とか十分すぎる強さですし、今はともかく当時はジオンの方が圧倒的に人気あった印象ですから多分このシリーズもまずはジオンから始めるっていう人も多いのでは。私は昔から連邦&ジム派なのでまずは連邦からが基本ですが。

 

原作再現でデギン公王との和平交渉に応じると史実エンドになるので、そこは無視して徹底抗戦。ア・バオア・クー後も月とサイド3も全部叩くぜ!という強硬派路線へ。

そうか、和平交渉しないとデギンも死なないので、結果キシリアがギレンを討つ事も無く、最後は別に死んでなかったりと、普通にクリアしただけでもif展開が見れて非常に面白かった。

 

後発の作品と比べると、戦闘シーンのスピードは遅いのですが、普通にやってる間には特にテンポが悪いとは感じませんし、イベント・キャラ・メカも少ないものの、ゲーム的にはほぼ完成されてるので、「後の作品の完成度と比べると荒削りだけど光るものはこの時点である」とかじゃないんですよね。もうこの時点で最高に面白い。

 

時代とともにゲーム業界が変わってしまったとはいえ、現行機でこのシリーズ遊べないんですよね?(PSストアとかにはある?)勿体無いなぁと思う。今の人はこのシリーズやってないって事ですよね?ガンダム宇宙世紀)好きでこのシリーズ経験して無いとかある?

 

当時と違って今はより外伝も増えましたし、特にティターンズ系はキャラクターが物凄く増えたので、そこらへんの参戦をいつかお願いしたい。

 

ここから他機種で続編は沢山出たものの、セガサターンが初出・シリーズ原点という部分ではSSを代表する1本と言っても過言では無い。

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