劇場先行版 機動戦士ガンダム ジークアクス ビギニング
監督:鶴巻和哉
シリーズ構成・脚本:榎戸洋司
日本映画 2025年
☆☆☆☆
昨年1月に公開された「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」から丁度1年くらいですね。
お!また劇場でガンダム体験かと嬉しくなります(いや去年はガンダムシネマフェスという企画で「ファースト」3部作とか「逆シャア」も劇場鑑賞しましたが)
ただ今回は映画用のオリジナルでは無く、TVシリーズ放送予定「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」の序盤を特別編集した劇場先行公開版という位置付け。
「エヴァンゲリオン」のスタジオカラー製作。庵野は監督では無いものの、脚本にも関わるという事でしたが、私的には「エヴァ」も映画の「シン」シリーズも全部あまり乗れなかった口。そんな感覚の人なので、今回の映画もTVシリーズも全く期待してませんでした。まあでも「ガンダム」だからね。SD以外は全部見てきた身としては、「とりあえず『ガンダム』だから見る」という人です。
なんだか今回は宇宙世紀のパラレルなんじゃないか?という噂は聞こえてきましたが、予告編を見る限りは「水星の魔女」と同じく基本的には若い人向け、今のティーンエイジャー向けの作品なんだろうなと。
やっぱり水星の魔女は発想が素晴らしくてね、老害オタクが文句言うのをもう前提に作ってて、お前ら向けに作ってるわけじゃないからジジイは見てくれなくて結構。未来の無い年寄りじゃ無く未来のある若者に向けて作るんだっていう割り切ったコンセプトだったのが良かった。老害ガンオタ向けには宇宙世紀物もやるからそっちにだけ金出せばいいよ、というマーケティングありき。そしてその後も「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」でSEED世代にピンポイントで狙って作って大ヒット。それは素晴らしいです。
ガンダムの生みの親である、富野由悠季と安彦良和には手切れ金を払って引退させて、お前らじゃ金にならないからって容赦なく切り捨てた先に、結局それが失敗だったら目も当てられないけれど、そこでやっぱり上手く商売が出来たんだから大したものだと思います。感情的にはあまりいただけないなと思いつつ、二人とも実際に老害と言われるタイプになってしまいましたし、新しい時代を作るのは老人では無い!って言われたら引きさがるしかなかったのでしょう。酷い会社だと思う反面、仕方ないよねとは思います。
まあそんな背景もあり、全然期待していなかった。
しかもTVシリーズの先行公開版だし、映画の映像では無いだろうしな、とタカをくくった感情で観に行った所・・・
画面のクオリティ凄くない!?
私は深夜アニメを沢山見るというタイプのオタクではないので、今のアニメ業界うんぬんはわかりません。
映画「スパイダーバース」でアニメのクオリティが1ステージ上に上がったなと思いつつ、まあでもお金かける劇場映画作品なのでそこは特別かなと思ってたら、その後アメリカのアニメがTVシリーズも異常なクオリティになってるのを知る。あら、もうアニメも日本はもう世界最高水準からもっと下のレベルなんだなと思ってました。
でも今回の「ジークアクス」観て、あれ?日本のアニメもTVアニメでこのクオリティ出せるのかってビックリした。これが特異点なのか、いやこれぐらい今は普通だよって言うのかどっちなのか私にはわかりません。でも私は素直にビジュアルショックを受けました。その点に関しては劇場で見れて良かったなって思います。
以降は大いなるネタバレを含みます。
結局は宇宙世紀のパラレルみたいなものなのか、それを匂わす程度の設定のお遊び程度なのか、どちらにせよその辺に触れますので、もし作品が気になってるなら、実際に足を運んで自分で確認した方が面白いと思います。あ、こういうのなのねっていう面白味がありましたので。
以下ネタバレ中尉
じゃなくネタバレ注意
はい。普通に「シン・機動戦士ガンダム」でした
「シン・ゴジラ」「シン・ウルトラマン」「シン・仮面ライダー」に続く「シン・ガンダム」って奴でしたね。インタビューなんかを見ると初代ガンダムリメイク部分はやっぱり庵野さんのメイン担当のようです。せっかく新しい物を見に来たのに、前半はガッカリでした。
前半40分くらいがファーストのリメイク&パラレル構成。残りの40分が予告でも公開されてる新しい部分。
多分ですけど、庵野さんはビギニングとか旧作設定部分、後半は鶴巻和哉監督・榎戸洋司脚本で今後の新しい全体的なストーリーを構築していくのかなと。あくまでマチュ、ニャアン、シュウジの新世代の話として。
ヘルメスの薔薇じゃなくて何だっけ?封印された何かとか、ガンダムに歯があるとかエヴァっぽい要素は設定として残ってますけども。
アマテ=ハマーン説とか騒いでましたが、個人的には関係無いように思えました。今回UC0085年のパラレルにしてあるのは、ヒットしたら「ゼータジークアクス」とか作れるように、マルチバース版の既存キャラはとっておいた方が良いですし。何でも「エヴァ」の時も本当は庵野的にはガンダムみたいに別のクリエイターに自由に続編作ってほしかったみたいな考え方だったって話ありました。
因みに!ジオンが勝った宇宙世紀というパラレル設定。赤いガンダムもそうですが、普通に「ギレンの野望」でガッカリ。勿論、ギャンキャノンじゃないけどそれに伴う設定変更の部分とかは素直に面白いんですけど、酷い二次創作感があまりにも強くて、パロディーだよなこれとしか思えなかった。
ただ、流れ的にはそれこそギレンの野望もあれば、例えば球体関節のMSとかは「サンダーボルト」で昔からやってたし、1年戦争のパラレル、そして独自の戦後へっていうのは、そのままサンダーボルトのコピーでした。
逆にね、鶴巻さんとかは私ほとんど知らないのでどうしても庵野関係になってしまうけど、庵野さんとか昔言ってたじゃないですか。自分らはコピー世代なのでオリジナルなんか作れないんですよって。鶴巻監督とかも、もし同じ考えなのであれば、主人公が作中で言ってた、本物の重力も空も海も知らないコピー世代が、その中でどう生きるのか?みたいなメタ部分を作品のテーマとして表現してくれたら面白いかなとは思います。同人ガンダムという陳腐な設定から始まって、その中でも何か一つでも光るものが
あればなと、全く期待せずに見守ろうと思います。
ただこの監督、インタビューでファースト世代の昔からのファンもSEED世代の新しいファンにもどちらにも響いてくれたら嬉しいです、みたいな事言っててね、いやサンライズ的にはSEEDはもうマーケティング上は若い人向けじゃないんですけど?そこも分かって無い人なのか?とその点ではますます期待はしないで見ようかと思わされた。
因みに富野が「Gレコ」で、今までガンダムでやってきた未来は嘘でゴメンなさい。当時はそう思ってたけど、今の時代にはそぐわないので今のスタンダードでガンダム作り直すねっていうのが「Gレコ」です。スペースコロニーで人間が生活するなんてよく考えたら不可能だよね。これからはニュータイプが生まれて世の中を良くしていけると思ったけど、そんな人は出てこなかったし世の中は悪い方向にしか進まなかった事については反省してます。だから今後の経済の話を「Gレコ」でします。
の、後にさぁ、ニュータイプとかスペースコロニーとかバカバカしくね?しかも今後の展開でどうなるかは不明なものの、50億人の人間を殺して何も感じない宇宙世紀とかを平然とやる流れに私はやっぱり違和感。庵野さんはね、社会に興味のないセカイ系の人なので、それを求める気はありませんが、鶴巻監督と脚本榎戸さんには少しだけ大人の対応や視点をお願い出来ないかなと思います。
ガンダム初心者や若い人、或いは老害ファンでも当時見た感覚で、ニュータイプに人は進化していくのかもしれないとか思うのは良いんですよ。でもそっから45年流れて、ニュータイプうんぬん言ってるのってちょっと恥ずかしくない?おじさんがもうジジイになる歳なのにガンダムガンダム言ってるのと別に大差は無いでしょ?みたいな考え方なのかなぁ?私は今の作品なら今の時代性が反映されてしかるべきと考えるタイプなので、そこはすっごく気になりました。
そりゃあ私は重度のガノタですからネタ元のほぼ全部わかるし楽しいですよ。でも楽しければ良いのか?
・・・と、ガンダムが言っている。
TVシリーズ、1年戦争パート無しで放送してくれたら良いなぁ。
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